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04月28日 土  犬神家の美学・狸神家の貧困

 そうか、もう30年も前の作品だったか、と懐かしく思いつつ、市川崑監督の『犬神家の一族』をBSで観る。初見の時には狸も若かったので、その周到でスタイリッシュな演出は充分評価できるがちょっとサービス不足、などと生意気に思ったものだが、今見ればもう惚れ惚れとする老練プロの技、知性と情動の連続に恍惚。しかもまったく古びていない。こうなると、次に放映される『悪魔の手毬歌』など、初見時にも「うぬぬぬぬぬぬう」などと唸ってしまっただけに、今観たら悶絶できるのではないか。まだ観ていない昨年のリメイク版も、ぜひ観なければ。そしてあの美意識の集積とも言える『細雪』、これもぜひ再見したい。

 さて、世間の皆様の多くがなんかいろいろ休んでいると思われるGW、そしてそれ以降、狸はちょっと外であたふたしなければならないので、ここの更新もさすがに滞りがちになるかと思われます。半白髪フリーターに明日はない、などとうそぶきつつ、餓死するわけにもいかないので。
 しかしまあ狸が外であたふたしている時に限って、雷鳴轟き風雨吹き荒れるのは、かんべんしていたたきたいのですが神様。……ふだん悪口ばかり言ってるから、無理か。


04月27日 金  すてきなシティー・ライフ

 『東京・秋葉原の電気街を舞台に万引したゲームソフトやDVDを中古品販売店に転売して金を稼ぐ犯罪が横行していることが、警視庁の調べで分かった。ソフトなどの転売が盛んで中古品を扱う店が400を超えるという「アキバ」特有の事情が背景にある。インターネットカフェを泊まり歩く住所不定、無職の「ネットカフェ難民」と呼ばれる若者らが犯行を重ねていたり、転売で得た金でメード喫茶に行くオタクもいて、警視庁はアキバ内で完結する犯行のサイクルができているとみて、警戒している。
 秋葉原の電気街を管轄する万世橋署管内で昨年1年間に店員や警備員に見つかって突き出された万引犯は225件で、前年の118件から一気に倍増した。だが、万引は見逃されることも多く、警視庁は「摘発は氷山の一角」とみている。
 「盗んだ商品のパッケージをはがして中古品として別の店に売った」と供述する万引犯が少なくなく、警視庁が摘発例を分析したところ、未成年の犯行は2割に過ぎず、大半が20代の成人だった。さらに6〜7割が無職で、盗品の転売で生活費を稼ぐ“プロ”の犯行が多数を占めることが分かった。
 発覚しにくいよう「数店舗に分けて売った」と話す者もいる一方、今年2月には、電磁波を遮断する米軍仕様の特殊なアタッシェケースのなかに電波や磁気で盗難を感知するタグが付いた商品を入れて持ち出し、警報機を鳴らなくする手口で犯行を繰り返していた男が逮捕された。男はアキバの軍事オタクがよく着る迷彩服で犯行に及んでいたため、特殊なバッグを持っていても不自然に思われなかったという。
 600もの店舗がひしめくアキバでは、中古品専門店以外にも古物を扱う許可を持つ店が多く、中古品の買い取りを行う店は推定で400軒超。この環境が盗品の転売を容易にしているが、ゲームソフトやDVDは、数日で飽きて売りに来る客も珍しくないため、「盗品かどうかは見分けられない」(中古品専門店)。昨年、店側が盗品と気付いて通報したケースはわずか4件だった。
 被害は数千円単位のゲームソフトやDVDに集中している。「1万円以下の商品を狙う」が万引犯の鉄則。1万円を超す中古品の売却には身分証の提示や住居などの帳簿への記載が必要になるためだ。
 「ネットカフェ難民」の急増が社会問題となっているが、捕まった万引犯にも複数の「難民」がいた。なかには、ネットカフェに備え付けられたパソコンを分解し、内部の装置を中古機器店に売り渡していた男もいた。
 「稼いだ金でメード喫茶に行った」と話す者もおり、捜査幹部は「万引や盗品処分→ネットカフェで寝泊まり→メード喫茶などで得た金を消費−というアキバで完結する犯行のサイクルが生まれている」と指摘している。(桜井紀雄)【4月27日8時0分配信 産経新聞 】
』。

 ……なるほど、そんな生き方も可能かもしれない。その収入源はさておき、『ネットカフェ難民』に関しては、こんな記事もあった。

ネットカフェで寝起きする若者は全国に――。個人加盟の労働組合、首都圏青年ユニオン(伊藤和巳委員長)などが10都府県のネットカフェで実態調査したところ、すべての都府県で、ネットカフェを生活の拠点にする若者がいることが分かった。これまで都市部の一部と思われていたが、全国に拡大する様相となっている。厚生労働省は実態調査を行う方針を決めているが、新たな貧困問題として深刻化していることを裏付けている。
 調査は宮城、千葉、埼玉、東京、神奈川、愛知、奈良、大阪、兵庫、福岡の10都府県19地域の34店舗の周辺で実施した。その結果、10都府県の26店舗で長期滞在する若者がいた。店によっては10人以上の長期滞在者がいるところもあった。
 また、85人への聞き取り調査の中で、住居がない若者の他に、アパートなどを借りている正社員でありながら、長時間労働で帰宅できないため日常的にネットカフェを宿泊場所として利用している若者が相当数いることも分かったという。
 聞き取りの事例では、過酷な生活があった。
 東京・蒲田の24歳男性は、専門学校を出てテレビ局で働いた。時給にすれば400円程度の長時間労働に耐えきれず退職。アパートの更新料が払えず、2年間ネットカフェで暮らす。月20万円の収入はあるが、不安定でアパートを借りられない。店には同じような“住人”が30人はいるという。
 また奈良市の20代男性は、手取りが月に8万円。仕事もうまくできず、家では親に「何しとったんや」と言われるので、ここによく泊まる。食事はここのドリンクやスープですませているという。
 ネットカフェの利用料は1時間200〜300円。ナイトパックなど1500円程度で一晩過ごすことができるシステムもある。東京都内では1時間100円のところもあり、若者が集中している。 同ユニオンの河添誠書記長は「非正規雇用で安定した収入が得にくい若者がアパートも借りられず暮らしている。自己責任論の前に行政のサポートが必要だ」と話した。
 同ユニオンなどは、5月20日正午から東京・明治公園で青年の雇用問題などを訴える集会を開く。【東海林智】4月27日21時17分配信 毎日新聞
』。

 ――こうなると、なにか他人事でない気もしたり、その手もあるなあ、などと、こっそり思ったり。自前のUSBメモリーやHDDでも持ち歩けば、打鍵だってHPの更新だって継続できますしね。風呂は銭湯やコイン・シャワーで。
 しかし、狸の知っているネット・カフェって、個室でも横になれるスペースまではなかったような。毎日体を折り曲げて寝るのはやだなあ。そうか、晴れた日は橋の下で寝袋、雨ならネットカフェ、そんな賢い選択もあるか。って、そーゆー問題の記事ではないだろう、これは。
 いずれにせよ、やむをえずそんな生活をしていると言うより、あくまで当人の嗜好・資質でやっている部分も多そうだ。大都市なら、たとえば住み込みの新聞配達とか、衣食住の確保だけなら、そう困難ではないはずだ。


04月26日 木  雑想

 『地球型生物が住める可能性がある太陽系外の惑星を、ヨーロッパ南天天文台(チリ)の研究チームが世界で初めて発見した。AFP通信などによると、この惑星は、地球からてんびん座方向に約20光年離れた「グリーゼ581」という恒星を、13日の公転周期で回っている。半径は地球の約1・5倍、重さは約5倍。地球と同様、岩石でできている可能性が高いという。研究チームは、惑星が恒星の前を横切る際に起きる、わずかな光のちらつきを観測して、存在を突き止めた。恒星と惑星の距離は、地球と太陽間の14分の1程度だが、恒星の大きさが太陽よりも小さく、光も微弱な「赤色わい星」のため、惑星の表面温度は、液体の水が存在できるセ氏0〜40度にとどまるという。ただ、大気の有無や組成などは不明だ。【4月25日16時26分配信 読売新聞】
 ほう、20光年。全宇宙規模では目と鼻の先だが、ぼくらの光速エスパーでも行くだけで30代、戻ってきたら中高年――。しかしまあ、ぜひ一度、強化服を着てばばばばばびゅーんと根性歩きで見に行きたい気もする。

 『
女優の池内淳子さん(73)が、間質性肺炎・胸水貯留のため、5月25日からの「怪談牡丹燈籠」の全国公演を降板することが26日、製作担当の松竹から発表された。胸の違和感などを訴え検査入院したところ、3カ月程度の安静加療が必要との診断が下った。手術などの必要はないという。池内さんが演じる予定だった3役は水谷八重子さんに代わる。【4月26日18時34分配信 毎日新聞】
 胸水貯留というと、数年前に「胸に水が溜まってちゃぷちゃぷ言ってる」などと笑っていた先輩店長を思い出す。その後やっぱり肺癌だと判り、半年ほどで亡くなった。煙草もやらない方だったんだかなあ。その店長が、谷中あたりの下町を散策・撮影するのが好きで、死んだら谷中墓地に入りたいなどと言っていた(しかしあまりに高価すぎて結局入れなかった)のも思い出す。そのことと牡丹灯籠(一応話の舞台は谷中)にはなんの関係もないのだが、なにがなし、池内淳子さんが心配だ。
 先日BSで観させてもらった、故・杉村春子さんの舞台『怪談牡丹燈籠』は、しみじみ良かった。そのシナリオは、カランコロンのお露さんや色男の新三郎はむしろ脇役で、伴臓・お峰の使用人夫婦が主役である。幽霊から100両せしめて新三郎を裏切る、いわば悪役夫婦だが、この夫婦のなんというかビンボな市井感に満ちた夫婦愛と、成り上がった後に齟齬をきたしてゆく有様が、哀しくも愛おしいのですね。そのお峰と、お露さんの乳母であるお米さん(幽霊)、そして最後に登場する明治の上流夫人(このシナリオのオリジナル・キャラ)、その三役を、主演女優が早変わりを交えて演じるのが売りだから、池内淳子さんはさぞ無念だろう。杉村春子さんのような重厚な渋みと愛しさの双方を、今のあの方なら演じられそうな気がするし。水谷八重子さんもいいが、お歳のわりには少々若やぎすぎて、お峰や夫人は良くとも、お米が心配。杉村春子さんの幽霊っぷりには、夢に出てきそうなほど凄味があった。


04月25日 水  有名税

 なにか久しぶりに愛染恭子さんの姿をモニター上で見たら、児童虐待の容疑者になっていた。ありゃりゃと思って報道内容を聞いたら、老母や兄といっしょに、姪の異性交遊を咎めて、殴る蹴るの暴行を加えたのだそうだ。で、その『殴る蹴るの暴行』の結果は、全治2週間の怪我。――『全治2週間の怪我』という定義をご存知の方ならお解りと思うが、それは軽くすりむいたとか、ちょっと足をひねったとか、要はカスリ傷のことである。まあその姪っ子さんも、おばあちゃんとパパとおばさんにいっしょになって折檻されてよほど腹が立ったのだろうが、まだ中学生なんだから、男遊びはほどほどにね。
 しかしまあ警察も、捕まえて角が立つ心配のない出来事にだけは、対処が早い。いきなり逮捕だもんなあ。身内の不始末なんかは、こっそり書類送検と減俸くらいで済ませてくれるのに。

 渡辺秀子さんの失踪(殺害の物証はまだないので、そう表現しておく)と、お子さんふたりが北朝鮮に拉致された(これは確実だろう)事件で、幹部がたかだか『任意聴取』を求められた朝鮮総連は、さっそく「安倍首相の訪米を前に、拉致問題をさらに政治利用しようとする政治弾圧である」だそうだ。あのなあ、それって、「日本人の親子の安否なんて俺らには関係ないもんね」と大声で叫んでいるのといっしょだぞ。背景の実態はともかく、あの北の国のエラいさんたちの徹底した『無神経』には、さすがに唾棄の欲求を禁じ得ない。自分たちへの社会的な視線など眼中になく、とにかく首領様への媚びだけが己の秤なのだろうなあ。

 織原被告の無期懲役判決、ただしルーシーさんに関しては無罪――これは、いたしかたない判決だろう。物証も自白もない事件まで、有罪にはできない。しかし今後の長きに渡って、その手のウンコ野郎が楽な仕事をしてバランスのとれた食事をしながら平穏な生活を送るのが保障されるかと思うと、正直、拳が痙攣する。やはり織原には、たとえば薬剤を注入した上でサムソン系の方に思うさまホッてもらいビデオ撮影してプレゼントする、それくらいのオマケをやってもいいのではないか。


04月24日 火  アバウト

 clown-crown様のブログで紹介されていた血液型性格判断、いや、性格から血液型を推測するソフト(?)を試してみたら、A型度108%、B型度59%、O型度45%、AB型度103%、そんな数字が出た。BやOっぽくないというのは判るが、AとABが両方100パー越えで、しかもほとんど同じ度合いというのは……。もとより血液型性格判断自体が眉唾ではあるのだけれど、そのソフトもずいぶんカオス状である。狸は多重人格か。……あ、そうかも。化けたがるし。

 ところで、この前の雑誌『メフィスト』を読みながら、「うぬぬぬぬぬう、狸の話のほうがなんぼか上等なのに」とか、「あ、あかん。やっぱし完敗」などと惑乱していたら、ふと、たかちゃんたちをあそこに送ったら一体どんな寸評がもらえるか、そんな疑問がわいた。応募要項はきちんと『広義のエンターテインメント』となっている。そして送りさえすれば、なんらかの寸評だけは確実にもらえる。つまり確実に編集のどなたかに通読していただけるのである。第一期ぶんを連作構成にすれば、分量も適度にありそうだ。

「わーい、たかちゃん、こーぎのえんたーなんとか! ぶいぶいっ!」(とにかくよろこんでいるらしい)
「んむ。こーぎといえば、おんみつだ。おんみつ剣士だ。にんじゃでも、いーな。よろしー、まかせなさい」(公儀隠密になるつもりらしい)
「…………ぽ」(編集の人にみてもらう時は、どのお洋服を着ようかとか、考えているらしい)


04月23日 月  まあ予想通りなのだが

 投票した新社会党の青年は、やはり落選した。あの党で、しかも若年――道は険しいだろうが、せいぜいめげずにしゃっちょこばって理想的正論を述べ続けてほしいものである。当たり障りのない日和見や当たり障りのある政治屋さんよりは、見ていて気持ちがいいので。

 先日いかにも喧しく報道された列車内暴行事件、鬼畜に脅されトイレに拉致される女性を傍観した乗客たちがどこまで事態を把握できていたのかは定かでないが、少なくとも『日和見』より『正論』にしゃっちょこばってこだわる馬鹿正直がひとりでもいてくれたら、その女性は人生を破壊されずに済んだのではないか。
 また乗客の中には、狸のような中年男などもいたはずだ。若い女性とウスラハゲ半白髪親爺の存在価値を天秤にかけてみれば、どちらが重いかは言うまでもない。「いやでもワシは会社でそこそこ責任あるし、大事な妻子を養ってるんだから、妙な血気に走って怪我するわけには」といった言い訳で、その若い女性を己より下位に置くということは、畢竟、そのクソバカ便所虫野郎を己より上位に置くことになってしまうのである。

 などと言いつつ狸もたいがいの局面では姑息に日和見を決め込むが、少なくとも昔某駅ビルで盗撮を企てて女の子を泣かした便所虫を、ホームまで追いかける程度の『正論』は失いたくない。もっとも、取り押さえてくれたのは駅員さんだし、本屋の店長もいっしょになって駆けてくれなかったら、怖くてリタイアしてたかもしれませんけどね。ああ、偉そうにごめんなさいごめんなさい。


04月22日 日  なんだかよくわからない日

 なんだかよくわからないのだが、起きたら鼻がつまって口でしか息ができない。他に風邪らしい兆候はないのだが。
 で、朝飯兼昼飯を食ってしばらくしたら、いきなり腹が下った。いつものチャルメラに、もやしと玉子を入れて食っただけなのだが。
 とはいえ全身症状などはまったくないので、市議の選挙に出かける。外はフェーン現象なのか、生暖かい湿気った強風が、根性で吹き荒れている。これだけ強風でも、しばらく歩くと額に汗が滲む。気温は20度を越えているようだ。って、つい三日前は10度以下だったんじゃないのか?
 体調の異常は単に天候不順のため、あっさりそう判断し、投票所の小学校へ。日曜なので当然子供はいないが、ろりの匂いを求めて靴箱のあたりをふんふん嗅ぎ回る。投票は新社会党のお若い方に。念のため、狸はけして左派ではないのである。日教組も、はっきりと嫌いだ。それがなんで今回の地方選挙は、共産党だの新社会党だのにばかり投票せねばならんのか。みんなビンボが悪いんや――というのは冗談(でも半分?)で、だってその方々以上にまともなこと喋ってる候補者がいないんだもん。おとついまで入れようかなあと思ってた民主党の若手が、いきなし街頭演説で自民に媚びだしたりするんだもん。
 もはや風に吹かれてマルクス・ファンタジー方向によろけつつある、弱い狸。


04月21日 土  反日カウチポテト

 ではないですね、半日座椅子塩煎餅で、溜まっていた録画物件の内、日中戦争関係のNHK番組を3本続けて消化する。盧溝橋事件から南京虐殺(虐殺ではないと言う方も相変わらずいらっしゃるが、事情や実数はどうあれ、一般市民を片端から大量に葬り去るのは、普通、日本語で『虐殺』と表現しますね)に至るズブドロの記録や、戦後ずいぶんたってから日本に帰国した残留孤児たちと中国に残された養父母たちの現在の問題、そして、あえて中国を故国として生きることを選んだ残留孤児たちのその後の人生――近頃フヤけた狸の精神が、ドロリと固まって沈殿するような3本立てだった。いずれも演出・編集の介在するドキュメント番組である以上、頭から鵜呑みにするつもりはないが、ともあれ天使も悪魔も同じ人間であり、神様はシカトを決め込んでいる。
 いいかげん煮つまったので、昨夜録画した12チャンの『よろずや平四郎活人剣』の第1回2時間特番も、続けて見てしまう。例によって若手の演技等つっつきたい重箱の隅は少々あれど、全体的にはとても素直で気持ちのいい仕上がり。全国ネットではないのがもったいない。


04月20日 金  こりはびっくり

 さて、慢性ビンボは順調に続き、かつて部屋の壁を埋め尽くしていた書籍類はパラパラに減り、ウィンドウズ以降のゲームソフトもあらかた売り払ってしまい、テリトリー内に引き取ってくれる業者のない古いビジネス系やアート系、そして懐かしのMSXやPC88ソフトの段ボール箱が残ったので、なんぼなんでもこれらは分別ゴミなのだろうなあと思いつつ、念のためあちこちネット検索してみたら――こりはびっくり。秋葉原などではとっくにゴミになってしまったような物件でも、ネット上では未だに市場があるのであった。個人オークションではない。ちゃんとした古物商の業者さんである。
 着払いで査定してくれるというので、ジャンル分けして箱に詰め、ヤマトさんを呼んで、それぞれの業者さん3社ほどに送ってみたら――こりはびっくり。無論買取不可のゴミも多かったものの、合計すれば温泉に何泊かできそうな金額に達し、激しくこくこくしながら承諾メールを返信してしまった。マジかよおい、とさらに検索してみれば、おたく道もすっかり昭和レトロが流行らしく、復古調エミュレーター花盛りである。今さら8色表示でテキストは平仮名だけのエロゲーを何万円もかけてプレイして、その内容自体が楽しいはずはない。要は中身の問題ではなく、それら21世紀では事実上滅びてしまったプラットフォームの骨董的おたく物件を、あえて苦労してプレイできる環境を構築する、それが現代おたくとしての興奮なのだろう。その気持ちは解ります。
 しかし、恥ずかしながらウン十年前に購入して内容すら思い出せない某物件が、いかなる希少ウィンドウズ物件をも越えた値がついてしまいました。と言っても石鹸の国(?)一回分弱で、もちろん生活費に回るのだが。でも、ほんとにそんだけ振り込まれたら、一回くらいは……アレもたまにはナニしないと衰える一方と聞くし……いやしかし、滞っているガス代もそろそろなんとかしないとガス止まるし……ごにょごにょごにょ。


04月19日 木  供養?

 『山口県下関市の下関漁港内に100匹を超える子猫の死骸(しがい)が大量に捨てられているのが見つかり、県警下関署が廃棄物処理法違反と動物愛護法違反の容疑で捜査している。
 調べでは、投棄現場は下関市街地と彦島に挟まれた下関漁港内の船だまり。3月上旬、漁港関係者が岸壁近くに大量に浮かぶ包みを発見、開けると子猫2匹の死骸が入っていた。
 目撃者の男性(57)によると、包みはいずれも白いタオルとビニール袋で覆われ、ガムテープでとめられ、1包みに2体入っていた。包みが約30個入った段ボールも2、3箱あり、死骸は百数十匹に上るとみられる。同30日に届け出を受けた下関署は27匹を回収。いずれも、生後1カ月程度で目立った外傷はなかったという。
 船だまりは小型漁船が常時20隻ほど係留されており、昼間は漁業関係者がよく行き来するが、夜はほとんど人通りがないという。
 昨年、一昨年にも数十匹投棄されていた。今年は数が多いため届け出た。近くの県漁協伊崎支店の丹田洋市・運営委員長は「段ボール箱があまり水を吸っていないことから、誰かがこの場に捨てたのではないか。タオルも新しいため供養の気持ちも感じるが、誰が何のためにこんなことをしたのか」と困惑している。【新里啓一】 4月19日12時5分配信 毎日新聞
』。
 ――誰がとか何のためにとか首をかしげる以前に、新しい白いタオルとビニール袋で包んだその神経に、暗澹たる気分になってしまう。
 目立った外傷がないなら、虐待的な意識ではなく、なんにせよそれらの子猫の存在に困ってやったのだろうが、たとえば子猫が2〜3匹であり、それを海に流したのが子供なら、まだ許せる。幼児が不本意ながら家では飼えない子猫をやむをえず始末しなければならないとすれば、なんか可哀想なので清潔な白いタオルにくるんでやるのは幼児なりの優しさと言ってもいいし、また無分別なガキとしては、海か子猫かどっちか、あるいはそのどっちをも汚したくないのでビニール袋に入れるのもアリだろう。
 しかし100匹以上となると、当然大人がなんらかのシステム、あるいはシステムの齟齬の結果としてやっているはずだ。とすれば、新しい白いタオルなどというものは絶対に子猫たちを思って使用したのではなく、その子猫たちを思っているつもりの自分のために使用しているのである。またビニール袋などという物に入れて平然と海に放りこむその神経も許せない。焼いて灰にしてやらない限り、ビニールがあろうとなかろうと、死んだ子猫は腐敗する。その腐敗が海を汚すとでも思ったのか。ビニール袋の中で腐敗する子猫と、海水の中で腐敗する、あるいは魚の餌となる子猫の、どちらが天然の姿か。まあビニール袋の中の子猫もいずれは自然に還れるだろうが、ビニール袋は永遠に自然には還らないのである。そのまま崖から放り投げる坂東真砂子さんのほうが、まだ正直で理性的な気がする。それが自己中心主義の発露であること、つまりあくまで自分の『業《ごう》』であることを自分にも世間にも隠さないし、天然の食物連鎖にも沿っているからだ。
 ともあれ狸の本音を言わせてもらえば、赤の他人の人間ひとりより、100匹の野良猫のほうに親しみを感じる。しかしそれもまた紛れもなく自己中の発露であり、『業《ごう》』なのだろうなあ。


04月18日 水  寸足らずと鉄砲

 我が国で、ヤのつく既知外が市長を撃ち殺すと思えば、アメリカではまたキャンパス内無差別乱射事件。
 まあ鉄砲などというものは、元来寸足らずが無理矢理相手の寸に合わせるために使用するための物だが、その寸足らずがなんか血迷ったりすると、いきおい寸足らずではない周囲でも自衛のため必要になったりして、何かと危なく哀しい。
 また寸足らずというのは、周囲が平穏で波風がたたないと自分の寸足らずがとても目立ってしまうので、意識的にせよ無意識にせよ、とにかく周囲の平穏を乱そうと画策する。たとえばヤのつく方々でも、大災害時などには、あんがい張り切って頼もしく奉仕的な行動をしたりする。周囲が激しくマイナス方向で流れているときは、寸足らずでもその周囲にマッチできるのである。しかし一方、ふだんそれほど寸足らずではない人が、戦時など周囲全体がマイナス方向で流れているときは、実にたやすく寸足らず化して鉄砲玉をばらまくこともあるので、要注意。

 なにはともあれ、もしも狸が誰かに鉄砲を構える立場になったら、自分と相手の寸だけは、しっかり確認したいものである。存在としての帳尻が気になるからだ。


04月17日 火  評する視線

 昨夜の『怪奇大作戦 セカンド・ファイル』第三話『人喰い樹』は、腑に落ちない仕上がりだった。三作中で最も、シナリオも演出も練り上がっていない。中田秀夫監督は、ここまで繋がりの悪い、盛り下げ演出をする方だったろうか。もしや、やる気がなかったのか。いや、そう言えば、ハリウッド版『リング2』もやはり腑に落ちない仕上がりだった。まさかあっちもやる気が無かったとは思えないから――デビュー初期のけっこう面白怖い低予算映画やドラマのほうが、マグレだったのか。

 地元の古本屋の100円ワゴンで、『50年目の「日本陸軍」入門』なる文春文庫を見つける。太平洋戦争開戦から50年、1991年の発行で、著者は『歴史探検隊』とやらになっている。文春にしてはなんじゃやらいかがわしい雰囲気だなあと思いつつ読み始めたら、やはり少々アレだった。よくある蘊蓄本の一種のような面白さはあり、興味深い情報も多々あるのだが、それらを考察する視線が、あまりにフヤけている。まあ現代人として、あの不合理な組織と歴史を揶揄したい気持ちも解るが、たとえば日本兵の正規の下着である越中褌や、兵営での粗末なアルミ食器などを揶揄する視線は、もはや飽食世代の独善的感性に思える。1991年――すでに昭和も終わり平成3年――と言うことは、その本が執筆・編集されたのは、まさにあのバブル全盛期、八紘一宇の夢ならぬ、一億二千万総ネズミ講の夢に踊っていた頃である。なるほど、生活観や視線が多少フヤけていて当然か。

 などと考えていたら、自分自身に『人喰い樹』を駄作と評する資格があるのか、一瞬不安になった。目糞鼻糞を笑う、みたいな。しかしまたよっくと考えてみれば、自分は一介のビンボ狸ながらも、NHKにBS分の受信料もきっちり払っている側なのであった。つまり中田監督の演出料の一部は、狸が払っていたのである。ならば愚痴る権利もあるわけですね、当事者同士。


04月16日 月  大往生

 大先輩の死因は脳の血管ではなく、心臓なのであった。数年前に一度手術を受けたのは聞いていたが、その時すでに心機能は以前の半分まで落ちていたらしい。その頃狸はすでに群馬を離れていたので詳しく聞けなかったし、実際知っていたのは当人と血縁者と会社のお偉いさんだけだったようだ。
 なぜ心臓が半分になってしまったかは、心当たりがある。とにかく夜毎「斗酒なお辞せず」の方で、その頃まだあまり飲めなかった狸は週に一度くらいしかおつき合いしなかったが、もうあっという間に酒場のテーブルが空き瓶でいっぱいになる、そんなペースだった。そして常人の5倍飲みながら、2倍食うのである。当然、体型は酒樽型である。心臓が半分になってからは酒量も半分になったと聞いたが、それとて常人の2倍以上ではないのか。まあ、仕事でも最後まで常人の2倍は売り上げるお方だったわけだから、もともとの心臓がよほど強靱だったのだろう。大笑いしながら飲んで食って働いて――若死にとは言いつつ、狸に比べれば数倍の人生容量を超えた、大往生だったのかもしれない。合掌。

 一夜お客様モードの家庭料理を食わせてもらい、温泉にも浸かり(福祉センターの立ち寄り湯だが)、念願の高崎の美味駅弁『上州舞茸弁当』も味わう。昔住んでいた高崎球場近くのアパート一帯も歩いてみたが、残念ながらアパート自体はきれいさっぱり消えていた。これで、かつて狸の住んだ建物で現存している可能性があるのは、直前の茨城のみになってしまった。なんて、再訪したらもう消えているのかもしれない。

 さて、細々と姑息に生き続ける不肖の後輩は、無常観に浸っているバヤイでもないので、引き続き往生際の悪い人生を、のたのたと続けねばならない。しかしその前に――余った旅費で銭湯に行こう。いや、のびのびと体を伸ばして浸かるお湯に、すっかりハマってしまった狸です。



04月13日 金  薬湯

 『トリックが弱い。手練れ感充分の書き味は大事にしてください。』――以上。それだけ。
 なんだか学生時代に別冊マーガレットのまんが教室に原稿を送りつけ、『
とてもほのぼのとして好感が持てますが、絵柄にもお話にもパンチが足りません。』と、残念賞の複製原画(くらもちふさこ先生のだったか)をもらった時のような気分である。
 やはりミステリー色バリバリのメフィスト賞は、荷が重かったか。そもそも『トリック』などという段階の趣向ではなく、あくまで浪漫メロメロ・エンドまで引っぱるための、軽いフックだけだからなあ。雑誌自体も今回のリニューアル創刊号からは、もう伝奇ロマン色はすっかり抜けているようだし。それでも『手練れ感充分の書き味』とおっしゃっていただけたのだから、文体芸だけは自慢していいのだろう。ならば、初期構想にあったようなトリッキーな要素をさらに加えて――いやいや、それでは浪漫メロメロ・エンドがかえって不純に――やはりこの話はここで打ち止め、放流してしまうか――ぶつぶつぶつぶつ。

 まあくよくよしていても仕方がない。温泉にでも浸かって気分転換したい。しかしそんな金はない。明日は群馬に行く予定だが、新幹線代や外食代や泊めてもらう知人宅への土産や大先輩への香典で、手一杯だ。ならば何年ぶりかで、発作的に銭湯を目ざしてみよう。粗末な昭和の生き残り銭湯が、確か自転車圏内にあったはず――。
 
 で、近頃の銭湯は、高齢者のためか金属製の手摺りが湯船の中までいくつも並んでいるのですね。まるでケアハウスの大浴場のようだ。そして夕方前でも、そのメインの湯船はお年寄りでけっこう混んでいる。
 隣に設けられた、薬湯と称するちっぽけな入浴剤入りコーナー(日替わりで入浴剤の種類が変わるらしい。さすがにダイソーの入浴剤よりは色も香りも濃い)で、貸し切り状態でぶくぶくと茹だる。
 思うさま足の伸ばせる湯船は、やはり狸の鬱に効くようだ。


04月12日 木  鬱るんです

 というタイトルが洒落として通用するには、いわゆる使いきりカメラ(業界での正式名称は『レンズ付きフィルム』。つまり品種としてはカメラの仲間ではなく、フィルムとして扱われる)の『写ルンです』が現在まだメジャーな存在であるかが問題になるわけだが、夕方買い物ついでに確認すると、まだまだあちこちで大量陳列されているようだ。アマチュア用銀塩フィルム存続のための、最後の砦になるのかもしれない。

 で、駅前の大手新刊書店に、明日発売予定の講談社の雑誌『メフィスト』を予約。小さな書店では、いや、けっこう大型店でも「何それ?」と訊かれてしまいがちな、年3回刊行のミステリー・ホラー・伝奇系小説誌である。今回は1年休刊した後のリニューアル再創刊(?)号で、講談社ノベルズの25周年記念なども絡んでいるからか、あっさり女店員さんに話が通じた。1500円もする雑誌なので、できれば図書館に並ぶのを待ちたいが、今回は歳末に応募した死美人物件がどう評されているか、早く知りたい。ところで一年休刊していたということは、応募作も3回分溜まっていたのではないかと思われるのだが、明日の号で本当に全作講評してくれるのだろうか。
 もうドキドキワクワク――と言いたいところだが、夏頃まで各賞の発表前に感じた高揚感は、もはやほとんど感じない。その後の超ビンボのためか昨日の訃報のためか、なにか諸行無常の風ばかり肌に冷たく、「どうせ古臭いとかありきたりとか構成が不完全とか幼稚とか言われるんだろうなあ。そもそも、あくまでミステリーがメインらしい賞だからなあ」などと、すでに不安ではなく諦念に囚われてしまっている。しかしまた、いつぞやのように、たったひとりの編集の方にでも「私は面白かった」と言っていただければ本望でもあるわけで――ああ、打っているうちに、なんとかじわじわと高揚してきたようだ。あまりに重箱の隅ばかりつつき過ぎたせいか、すっかり忘れていた高揚感――あの物件を最初に打ち終えた時のトリップ感が、ちょっとは蘇ってきている気がする。

 諸行は無常でも、森羅万象の魂のボレロは、法身仏にたどり着くまで続くのが本態なのである。


04月11日 水  冒険者バトン?

 回してくれた甘木様ご自身もルールが判然としないようなので、いーかげんにお答えします。

●貴方に回してきた人の職業属性はその人にあてはまりましたか?
 おう、のっけからして、なんだかよく解らない。つまり、甘木様が狸の属性を『賢者』と見てくれたことが当たっているか、そーゆーことなのだろうか。だとしたら、アヤしいですね。どっちかというと、東洋的『仙人』みたいな役に化けたいです。口ではもっともらしいことをのべて、実生活は適当に生きてるだけ、みたいな。

●回してくれた方の職業はどうですか?
 うーむ、やっぱり『学者』よりは、ご自分でおっしゃった『山師(冒険商人)』というのが適切な気がします。山師というとなんだかイカサマ的な印象もありますが、要は他人のあんまり着目しないとこにどんどんツッコんでみよう、そんな感じで。

●好きな元素属性(火、風、雷、氷、光、闇など)は?
 ひえ、ますますよく解らないのですが、狸は夜行性なので実は『闇』か。

●好きな職業属性は?
 仙人。霞を栄養源にして生きたい。

●好きな武器はありますか?
 仙人モードでは、まあ杖でつっつく程度。狸モードでは、ベリードラム・ソニックウェーブ(腹鼓)。

●攻撃派?防御派?
 傍観派。で、勝者でも敗者でもカッコ良かったほうに、後からもっともらしく賛辞の詩を捧げたりする。

●スターテス(力、防御など)を上げる時に真っ先にあげるものは?
 魔力。狸は化けないといけないので。

●冒険に出る前にやってしまう癖を教えて下さい。
 頭にのせるハッパを備蓄しておく。

●主人公の名前を変えられるゲームでは名前を変えますか?
 はい。洋物なら適宜お気に入りの小説やアニメのキャラ名。和物なら、本名。意気込みが違ってくる。

●今までつけた名前で一番ヒットした名前は?
 本名で『果てしなく青い、この空の下で…』をエキスパート・クリアした時には、さすがにおまけシナリオのハレムで嬉し涙を流しました。って、いつのまにかエロゲ・バトンになっとるがな。

●冒険の失敗談は?
 ペーターと名乗って複葉機で空中戦をやったら、まったく気合いが入らず、「アーデルハイドぉ!」と叫びながら虚しく撃墜された。

●次に回す人&貴方から見てその人に似合う職業属性。
 とうとう良くわからなかったので、これにてチョン。

 ……などとお気楽に打っていたら、今し方、またショッキングな訃報が届いた。群馬の高崎で数年間過ごした間に公私ともにお世話になったある先輩が、脳溢血でお亡くなりになってしまった。狸よりも数歳年長なだけだから、現代で言えばまだ初老にも至っていない。お子さんが立派に自立しているのが、せめてもの救いか。
 あちらの同期に連絡ののち、14日に泊めてもらい、15日の葬儀にいっしょに参列することにする。しかし、金がない。次の入金予定は16日過ぎである。それでもあの方の通夜あるいは葬儀に出ないことには、個人的に後世に悔いが残りそうな気がするので、迷わず姉に電話してしまう。旅費の無心である。「だからそういう時のために、ちゃんと少しは蓄えとかないと」という意見に、受話器を抱えて頭を下げつつ――ここをご覧のお若い皆様、くれぐれも狸のようなその日暮らしに甘んじてはいけません。
 そして、なるべく狸より先に死なないように。


04月10日 火  バブルガム・ミュージック

 基本的に、ここではいつ消えてしまうかわからないリンクはなるべくしない原則なのだけれど、ちょっと引用するには長すぎるので、こちらをご覧ください。
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/06/news089.html
 渡辺氏のミクシィの日記で知った記事である。なるほど、もっともなご意見。特に我々ロートルの耳に近頃の若手の楽曲がピンと来にくいのは、どこがサビだか判然としない音と言葉がだらだら続くから、そんな場合が多い。
 上の記事にもあるように、シングル・レコードで育った狸などは、いわゆるバブルガム・ミュージック――アップ・テンポで下手をすると3分かからずに終わってしまい、しかもその短時間の内にきちんと山もあれば谷もある――そんな楽曲で洋楽に目覚めている。
 その頃流行っていた洋楽も、有名どころはときおりCMなどで再浮上するようだ。シルビー・バルタンの『あなたのとりこ』とか、ジグソーの『スカイ・ハイ』なども、そんな雰囲気が濃いですね。
 狸の記憶だと、ちょうど『あなたのとりこ』と同時期にヒット・チャートを賑わして、それっきり忘れ去られつつあるルー・クリスティーの『魔法』、これがなぜかことあるごとに耳に蘇ってくる。これを聴いていると、小学校高学年の頃、寝床の中で初めて深夜放送をこっそり聴き始めた頃の、お年玉を総動員して入手したトランジスターラジオ(さすがにもうゲルマニウムラジオではなかったが、子供向けのオモチャのようなシロモノでも、確か1500円くらいしていた)の低感度サウンドが、走馬灯のごとく蘇ったりするわけです。


04月09日 月  選挙権

 昨日の県議選挙は、苦慮の末やはり共産党の方に投票し、ベテラン女性県議だったので無事当選された。圧倒的頭数を誇る自民・民主に比べれば微々たる数とはいえ、少なくとも『あっちむいてホイ!』の時に、反射的にへそを曲げるくらいの力にはなるはずだ。
 しかしまあ、県全体の投票率は半数を割り、狸の街に至っては毎度4割にも遠く……巣穴を掘った街にあまり文句をつけたくはないが、日々駅の周辺を歩くたびにつくづく寸足らずな都市だと思ってしまうのは、あながち気のせいではないのだろうなあ。明らかにヤンキーやチーマー気分の抜けていない寸足らずな『年齢のみ成人』ではなく、電車の中などで稀にその会話を耳にして頼もしく思ってしまうような、思考回路のしっかりした高校生や中学生に、投票権を与えてみたくなる今日この頃。


04月08日 日  似非おたくの反省

 『ジャミラ』で検索しては、いけないのだった。ネット上で広がっている『ジャミラというネーミングは、アルジェリアの独立闘争で惨殺された少女の名前に由来している』という説は、常々狸が警戒している【知ったかぶり情報のコピペのネット上無限増殖】によったものであって、それに狸自身がまんまと引っかかってしまっていたのである。そのことを狸が悟ったのは、たまたま先日神保町の古書店である書物に出会ったからであり(しかし金が無くて買えないものだからざっと立ち読みさせてもらっただけ)、その物理的な邂逅がなければ、狸もまた誤情報の流布者として一生を終えたことだろう。
 『ジャミラよ朝は近い』で検索すれば、脚本家・佐々木守氏があの悲運の怪獣にこめた真意が、より深く把握できるはずである。HPやブログでも、怪獣ジャミラとその書物の関係を論じた方は多々いらっしゃるのだが、ただ『ジャミラ』で検索しただけでは、ウルトラ関係の表層を軽く撫でた次元のお手軽情報ばかり洪水のように押し寄せるだけで、『ジャミラよ朝は近い』という書物の存在にたどり着ける可能性はまずないだろう。

 1960年、事実上フランスの占領下にあったアルジェリアで、看護婦の少女ジャミラ・プーシャハは、国民解放戦線の一員でもあったため、テロ行為の容疑でフランス軍に捕らえられ、実際にその破壊活動に関わっていた可能性は薄いにもかかわらず、残虐な拷問を受けた。性的な拷問も受けたようだ。ジャミラの家族の訴えによってその事を知ったフランスの女性弁護士ジゼル・アリミは、現地に飛んでジャミラ擁護に当たり、フランス政府やフランス軍の妨害をかいくぐり、フランスの法廷でその拷問行為に対して裁判を起こす。ボーボワールやサガンらも協力したそうだ。しかし政府や軍部の壁は厚く――で、結末は、不明。なんとなれば、その書物がフランスで出版された1962年にはまだ係争中であり、1963年にアルジェリア独立が承認された段階で政治犯は釈放、つまりジャミラはうやむやのうちに解放されているのである。しかしまた、その少女に電気ショック等の過酷な拷問を加え、性器にビール瓶を挿入したというフランス兵たちも、うやむやのうちに名前すら公表されることなく、現在に至っている。
 つまり、少女ジャミラは死んでいない。しかし、泥濘の中で悶え苦しむ怪獣ジャミラに佐々木守氏が託そうとしたものは、科特隊の本部がフランスに他ならないことを考慮すれば、もはや底知れない重さである。

 さて、これからあっちこっち訂正を入れなければならない。やはりおたくの道は足で探らねば、そう自戒する狸であった。


04月07日 土  続・オモライさん

 夕方秋葉原を歩いていたら、また路傍端座型のオモライさんを見かけた。以前見かけた方と同一人物かは不明だが、身なりはさほど悪くないし、臭くもないようだ。それほど近寄って見たわけではないから、至近距離だと臭いのかもしれないが、昔某駅ビルを徘徊していたホームレスの方のように、3メートル以上離れてもあからさまに匂うほどではない。で、前に置いた小皿には、それなりの小銭が貯まっていた。見せ金がなんぼか含まれているとしても、少なくとも餓死は避けられそうである。
 しかしその方をこっそり観察しながら「ふむふむ、けっこういいかもしんない」などと思っている通行人は、狸以外にどれだけいるだろうなあ。なにせ今の自分には、近所にできた99円ショップで見つけた冷凍シメサバがすっげー嬉しい晩のおかずであり、また同じ店で見つけたイカやキャベツや豚肉のちゃんと入った冷凍ヤキソバが、松屋の豚めしに代わる充実のブランチなのである。まあ、その節約ぶんが種々のおたく的処分ワゴン物件やプロバイダー代に回っているわけで、オモライさんに比べれば、実に恵まれているのだけれど。

 恵まれている証拠に、明日は県議の選挙である。まだ橋の下に住んでいないので、狸でも投票できるのだ。しかし、候補者の方々をつらつらと物色するに――もはや共産党に入れるしかないのではないか。それはファンタジーと現実の混同だと内心思いつつ、他に入れるよりはなんぼかマシな気がする。


04月06日 金  ハーフなきもち

 さて、本日をもって、狸は実に半世紀を生きてしまいました。まあ、ぼーっとしてても死にさえしなければ、半世紀だろうが一世紀だろうが、バカでもチョンでも齢を重ねるのが理の当然。めでたいよりも、頭の白髪増加と生え際の後退が、そぞろサミしい今日この頃である。
 などと年寄りぶってみたりする割には、なぜか近頃、毎日のようにいわゆる朝●ちに恵まれてしまう狸なのだけれど、これもどうやらどこぞが元気と言うより、老化による前立腺肥大の影響ではないかとも思われる。血圧もフリーターになってから一度も計っていないし、そろそろチェックしたほうがいいのだろうなあ。
 なんて、チェックして何がどうだったところで、昔から摂生などしたためしがない。大体、正社員時の定期検診でも、40代になってから血液の中性脂肪がどーのこーの肝脂肪がどーのこーのと毎年言われ続けていた。それでも自堕落に鯨飲馬食を続け馬車馬のようにコキ使われていたのを思えば、今はかなり健康的なのではないか。リブステーキやギトギトラーメン大盛りやカツ丼大盛りの代わりに、納豆や魚の干物をハグハグしているわけですからね。ビールだって毎日350缶しか飲んでないわけですからね。
 で、今後の人生の夢としては、せめて週に一度くらいは豚めしや牛丼の代わりに300グラムくらいのリブステーキ喰って、月に一度くらいは干物の代わりに思うさま大トロや高級鰻を喰って、醜く飽食しながらドンヨリと長生きしたいものである。
 ……見果てぬ夢とゆー気もする。


04月05日 木  摩耗と研磨

 以前にも記したが、例の遺棄乳児救済システムの通称は、いつのまにやら『赤ちゃんポスト』と、世間に定着してしまったようだ。どこの新聞でもどこの放送媒体でもどこの出版物でもネットでも、そう表現されているのだから、そのシステムに対する意見はどうであれ、その通称自体を異常と感じる言霊感覚の方はほとんどいないのだろう。もはや開いた口が塞がらない。
 断言する。この国のマスの感性は、すでにイってしまっている。まあみんなでイってりゃ怖くないのだろうし、みんなイってしまった社会ではイってないほうがおかしいのかもしれないけれど。ともあれ狸としてはこれ以上寸足らずになりたくないので、アホの渦に巻きこまれないよう、今後もできるかぎり眉にツバをつけながら社会に接したい。

 NHKのBSで、このところ往年の名画を録画し続けている。とても全部は観られそうもないのだが、とりあえず昨夜は『歴史は夜作られる』――1937年ハリウッド作の超メロドラマ兼サスペンス兼パニック映画を観た。なんじゃそりゃ、とおっしゃる方もいると思うが、観ればわかります。そう言えば田川氏もマイミクの日記で以前書いておられたような記憶が。とにかくクロスオーバー・エンタメとでも言うしかないてんこもり趣向で、まんま梗概化すれば「……アホちゃうか」に近いのに、見事なシナリオと演出で全編あれよあれよと突っ走ってしまう。
 で、本日は、一転して1956年、イタリアのピエトロ・ジェルミ監督・主演によるネオ・リアリズム映画『鉄道員』。一見地味で鬱系かと思いきや、もうラストでは滂沱と熱い涙雨。いや、けして泣かせ系などではないのだが、前述の『歴史は夜――』とは反対方向のベクトルで、シナリオも演出も深い深い。何より、そのビンボな鉄道員一家の地味な鬱系ドラマを一貫して見つめる末っ子のサンドロ坊や、これがもうけなげでかわいくてコロコロとうまそうでもうおぢさんはおぢさんはうるうるうる。
 ふと思えば、それら二本の映画はいずれもモノクロ・スタンダードサイズなのですね。特殊効果も原始的な時代だから、『歴史は夜――』のクライマックスの豪華客船沈没シーンなどミニチュア見え見え、しかし全体のドラマ的興奮は『タイタニック』を凌ぎます。また『鉄道員』のラスト近い、クリスマス・パーティ後の夜の室内シーン、もう照明効果による階調だけで、総天然色なんぞ敵ではない。

 とまあ、人間の感性というものは、飽食ではなく不足を補うことによって磨かれるのではないか、そんなありがちなオチで。


04月04日 水  雨の神保町

 午後遅く、なんかいろいろのついでに、例によって売本のため地下鉄神保町駅から地上に出たら、いきなり夜になっていた。まだ雨は降っていなかったが、空が実際夜のように暗い。自分で修理した靴を履いている狸としてはとんでもねー不安に襲われ、あわてて中野書店に駆けこみ第一の目的を果たしたが、次の某書店(恥ずかしいので店名はパス)にたどりつく途中で、いっきに満天の満杯バケツがひっくり返った。
 一応折りたたみ傘はあるが、三つ折りのちっこい奴である。ああ、水漏れ靴が。あああああ、これから身売りに出す大事な娘たちが。なにせこの娘たちは紙でできているので、フヤけると半額以下の値打ちになってしまうのである(ちなみにある種の特殊属性を備えた娘たちなので、一般書籍のように水濡れ即ゴミにはならない)。
 とりあえず三省堂に駆けこんで小降りになるのを待つ。当然、山のような本が並んでいるので退屈はしないのだが、売りに来るくらいだから新刊書を買う金などない。ビンボな本好きにとって、三省堂やグランデはもはや煉獄の業火の渦中である。図書館と、古書店の100円ワゴンだけが安息の地なのである。
 にもかかわらず、しっかりあさりよしとおさんの『るくるく』の新刊や、吾妻ひでおさんの『逃亡日記』を抱えて、雨も小降りになった三省堂裏のケム場で一息つく狸はつくづくアレだと思うが、まあ、先に中野書店で予想外の福沢諭吉さんを得たので、いいのである(本当はいくない)。しかし片山健さんの画集、高騰しているのですね。売るのは少々哀しいが、その画業の淫靡なノスタルジアには、すでに30年かけてしっかり浸らせていただいたので、あとは次の方に浸っていただければいい。
 水濡れを免れた娘たちは、残念ながら樋口一葉さんに届かなかった。異国の娘たちだったからか。


04月03日 火  怪奇と洗濯

 さて、昨夜のBShiの『怪奇大作戦 セカンド・ファイル』第一回、ほぼ満足の仕上がりだった。ハイテクもまた人間の『業《ごう》』、そんな元祖の風合いを、充分醸し出していた。元祖シリーズから封印されてしまった『狂鬼人間』へのオマージュ、そんな嬉しい気概も感じられた。ただし正味45分(民放なら一時間枠ですね)の話運びはやや中途半端で、いっそ刈り込んで元祖(30分枠)のように凝縮するか、それとも社会問題や犯人の少女をもっと書き込んで90分枠か、そんな気もしたが、そこはシリーズ企画ゆえ、文句を言ってはいけないのだろう。元祖でも、30分枠が短すぎて、舌足らずな回が多々あったし。
 西島秀俊さんの牧史郎、岸田森さんのような現世と壁一枚隔てた孤高感・浮遊感は希薄だったが、その抜けるか抜けないかの微妙な存在感は、けっこう良かった。
 ただし見え見えCGによる人体自然発火の特殊効果は、やっぱりどーやっても、熱くも痛くもない。近頃ずいぶん巧くなってはいるんだがなあ。

 ところで、ご近所の風呂屋とコインランドリーがつぶれてしまい苦労している話は以前にも打った気がするが、風呂屋はきれいさっぱり駐車場になってしまったものの、その一角に以前より広いコイン・ランドリーがオープンした。そっちのほうは充分採算がとれていたらしく、洗濯機も乾燥機も、かえってどでかい奴が増えている。ああ、これでまた、思うさま汚れ物を溜めておける――これが向上か退行かは、あくまで気の持ちよう。


04月02日 月  にゃん恋バトン

 ゅぇ様から、【にゃんにゃんバトン】というのと、【恋愛バトン】(なのだろうなあ)がいっしょに回って来たのにゃ。
 
【にゃんにゃんバトン】とは、

 
  ◆これが回ってきたら次に書く日記の語尾すべてに
    「にゃ」「にゃん」「にゃー」等をつけにゃくてはにゃらにゃい
   ◆「な・ぬ」も「にゃ・にゅ」にすること
   ◆一人称は必ず「我輩」にすること・・・ん?「吾輩」じゃにゃいんですか?
   ◆日記の内容自体は普段書くような当たり障りのにゃいものでかまわにゃい
   ◆日記の最後にバトンを回す5匹の名前を記入することをわすれにゃいこと
    (吾輩は引きこもりなので省略だにゃ)
   ◆既にやったことがある人でも回されたら何度でもやること
    (世界中がにゃーにゃーになるとにゃんかアレにゃので、やっぱし省略だにゃ)


 だ、そうにゃ。
 で、いっしょに回ってきたので、以下のバトンもにゃーにゃーなのにゃ。

 ●
職業
 もはやなんでもフリーターなのにゃ。

 ●
性別
 オスにゃ。

 ●
恋人
 あれは確かにゃら時代の中頃……ふっ。

 ●
今までの恋歴
 片恋無数、うまくいったのは二匹だけにゃ。

 ●
異性との出会いを求める時、どういう方法をとる?
 ただの発情期なら、全年齢対象の場では言えないとこに行くのにゃ。
 恋にゃら、時も場所も関係ないのにゃ。

 ●
恋人選びで重視するのは?
 しんぞーの踊りグアイにゃ。いわゆるツンデレ型と、ろりぷに型には極端に弱いにゃ。

 ●
見た目:性格は??
 どっちにしんぞーが踊るかで、まちまちだにゃ。

 ●
付き合う異性との年の差は何歳まで? それとも関係ない?
 ひたすらしんぞーの踊りグアイにゃ。

 ●
告白するならどうやってする?
 狸なので、いきなりお尻をフンフンしたいのにゃ。
 でもいきなりフンフンすると後足で蹴られるので、まず腹鼓で軽く反応を確認するにゃ。
 脈がありそうだったら、腹鼓を打ちまくるにゃ。

 ●
自分から告白する方? 待つ方?
 ビミョーにゃ。そこは、臭覚のモンダイにゃ。 

 ●
告白して振られたら、すぐに諦める?
 振られても振られても腹鼓を打つにゃ。ほとんどストーカー狸にゃ。
 諦められるくらいの雌狸ちゃんには、そもそも惚れないのにゃ。

 ●
どんな異性と付き合いたい?
 自分の空白を埋めてくれる雌狸ちゃんかにゃ。

 ●
メールや電話は毎日する?
 これはやっぱし相手によって、腹鼓のリズムは変わるにゃ。

 ●
初めてのデートの代金はどう払う?
 やっぱし雄なのでエサは持参するのにゃ。

 ●
恋人に携帯を見せてと言われたらどうする?
 にゃら時代に携帯はなかったのにゃ。
 あ、電子手帳は見せてあげたにゃ。

 ●
逆に恋人の携帯を見たいと思う?
 狸はあんまし携帯に興味がないにゃ。直で腹鼓通信すればいいにゃ。

 ●
昔の恋人とヨリを戻すのはあり?
 大歓迎にゃ。でも結局またフられたりすると、数年、巣穴でぷるぷる引きこもるにゃ。

 ●
バトンタッチ
 狸なので「にゃんにゃん語会話」は疲れるにゃ。今度、腹鼓バトンでも考えるにゃ。


04月01日 日  エイプリルフール

 なので、気の利いたホラでも吹きたいところなのだが、「狸は橋の下に引っ越しました」くらいのベタしか思いつかず、第一、それとて何ヶ月かすればシャレではなくなる可能性もある。

 NHKのBSで、日曜のアンコール放送(作庭家・重森三玲氏の仕事や人生を、宇崎竜童兄ィがルポするやつ)の録画を観ていたら、直後、なんじゃやら白髪を振り乱した堀内正美さんが、新番組紹介の怪演を始める。『怪奇大作戦』のリメイク番組が始まるらしい。どうやらエイプリルフールのネタではなさそうなので、慌てて録画予約。先般お亡くなりになった実相寺監督も、企画に参加していたとのこと。なるほど、だから故・岸田森さんに代わって実相寺映画の常連化していた堀内さんが、番組紹介役をやっているのだろう。しかし、新SRIのメンバーは、隊長を除けば、みんな狸には馴染みのない若手ばかりのようだ。いっそ堀内さんが牧役をやればいいのに。年齢なんて、どうせ新シリーズなんだから設定変更してしまえばいいのである。

 ネットでその新・怪奇大作戦を検索していたら、どこかからのリンクで、あの大円朝作『真景累ヶ淵』がまた映画化されると知る。監督はあの『リング』の中田秀夫さんで、映画化名は『怪談』だそうだ。特報の映像を観る限り、やたら芸術的で、気合いと金は充分入っているようだが――ううむ、正直、エイプリルフールであってほしいような気のする宣伝コンセプト。「
現代人にも通じる“狂おしいまでの愛”を描きたかった」ですか。えーと、あの大円朝作『累ヶ淵』の根底にあるのは、あくまで因果や欲望やあさましい人間関係であって、亡霊と化す豊志賀など、嫉妬妄想に狂った問答無用の年増ストーカー怨霊、「現代人にも通じる“狂おしいまでの愛”」なんて洒落たレベルではないのよなあ。あれをやるなら、むしろ『リング』的演出のまんまでやって欲しいのだが。