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07月31日 火  貧乏舌

 以前明太子様のブログで知った『吉野家の経済学』を図書館で借りて読み始めたのだが、まず意外に思ったのは、狸がウン10年前の予備校時代に仙台駅前で食って感動していた吉野家の牛丼は、実は現在の吉野家の牛丼とは別物らしいという事実。狸が初めて食った頃が爆発的店舗数増加のとば口で、その後コストダウンやら原料高騰やらの問題からタレのパウダー化とかフリーズドライ肉とかで味を落とし一旦倒産するまでが狸の学生時代とカブり、再建してそれからまたなんかいろいろ経営努力の末に、現在は肉もレシピも米も旨くて当然のレベルに向上しているようだ。狸が近頃「旨すぎてなんか変だ」と思っていたのは、肉が変わったせいだけではなかったらしい。言われてみれば、そうだよなあ。現在の吉野家で出てくるのは、『あくまで他に類があるが一番旨い牛丼』であって、狸の舌が覚えている『吉野家牛丼という唯一無二の食物』ではない。倒産前の不味くなった時期でも、狸にとっては『吉野家牛丼という唯一無二の食物』という麻薬的習慣性を保っていた気がする。無性にあの頃の味が懐かしいのは、やはり元来『貧乏舌』だからか。

 いっしょに借りた『猫語の教科書』は、猫好きの皆様ならすでにご存知であろう、ポール・ギャリコの名著(いや、真の作者は正体不明の女性猫らしい)である。猫の立場から人間を牛耳る手練手管を、子猫にでも解るように丁寧に教えてくれる、若猫必読の書だ。以前文庫版を持っていたのだが、売り飛ばしてしまった。しかし大概の『名著』などというものは、図書館に行けばいつでも無料で読めるのである。たとえ橋の下の住人になったとしても、図書館内で読むだけなら拒まれない。狸がなんのかんの愚痴を言っても、この国は文化的にも立派な『飽食の国』なのかもしれない。


07月30日 月  投票所は燃えているか

 全国的に前回の参院選よりは2パーちょっと投票率が上がったそうだ。ちなみに狸が働いた投票所では、4パーも多かったそうだ。さすがにまともな大人にとっては、今回の選挙は大事に思われたようだ。実際現場の体育館に、客足、じゃないですね、投票者の足が途絶えることはまずなく、案内役だった狸が椅子に座れたのは、休憩時間をのぞけばほんの数回、おのおの1分弱程度である。
 しかしまあ、肝腎の狸穴のある地元などは、あいかわらず飲んだくれで好色で文具店も大書店も必要としないような大人ばかりなので、前回よりも投票率を落とし、結果的に県全体の投票率も落としてしまった。日々街を歩くたびに、着実にこの街の大人たちは老人も含め幼児化する一方なのではないかと思ってはいたのだが、こうもあからさまに数字で証明されると、さすがに萎える。これで幼稚園児のような小中高生が増加していたりすると即脱出したいところだが、そちらは案外目立たなくなりつつあるので、まだ希望はある。

 自民の大敗は、安倍さんがどうのこうの以上に、組閣したメンバーにどうも精神年齢推定14歳未満の方々が多く、片っ端から失言やら不祥事の露呈などを繰り返したためだろう。政治家などという商売は、無数の強欲で腹黒い国民を束ねなければならないのだから、よりスケールの大きい強欲さが必要だし、腹なども人並み以上に黒くないと困る。当然弱者は切りたいし、戦争だってしたいだろう。その黒い腹をいかに内に秘めつつ有能な公人を演じきるか、その腹芸が商売の眼目のはず。そりゃ本音などはなんぼアレでもかまわないし、それを仲間内の酒席や、一蓮托生の同族の席で口にするのはかまわないが、公的な場でやったら「ワタシの精神年齢は14歳未満です」と触れ回っているようなものである。また、そうした「ついうっかり」をやってしまっても、本当に人望のある政治家なら、周囲でカバーしたりこっそり言論弾圧してくれたり、新聞種にまでは至らないものだ。どうも小泉首相のあたりから不安だったが、本来首相や内閣をこっそりなんかする職制の人々、一例を挙げれば内閣調査室とか、そのあたりが初めからまともに支持していないのではないか。このままだと9条の件も北の件も、首相や大臣が言葉で強がるばかりで、結局何一つ進展しないのではないか――そんな感じで、右翼にさえ見放されつつある気がする。
 いや、狸はけして弱者として切られたり戦争に巻きこまれたりしたい訳ではないのだが、そこまで狡猾な方でないと、弱者を切ろうとする流れや戦争への傾斜に歯止めをかけられないのは、歴史的に、皆さんもご存知のとおり。

 ころりと話は変わって、狸はこのところ、密かな悪弊に染まってしまった。アイスクリーム――いや、それは高価すぎる――ラクトアイスである。
 元来甘味はそれほど求めない質なのに、猛暑の先週、ふとQQショップでマンゴー味のカップに手を出してみたら、湯上がりに食うとなんじゃやらまことに舌に浸みて旨い。ハマると堕ちる質でもあるので、毎日食い続け、75まで落とした体重が、また77に戻ってしまった。派遣を始める前は80に届きそうになっていたので、「おう、さすがに肉体労働はダイエットそのもの」などと感心していたのに、甘味一発で元の木阿弥になってしまいそう。
 一日100円の支出アップで、簡単に肥えられる――飽食の国の、幸福か、不幸か。


07月28日 土  真夏の体育館

 事前研修2時間、などと聞いていたが、実質説明は30分程度で、残りは現場設営であった。投票所は某中学の体育館――子供でもいれば予想できたのかも知れないが、ちょんがーの狸は、真夏の体育館の熱気などとうに忘れていた。倉庫どころの騒ぎではない。作業が終わって外に出たとたん、照りつける日差しがまるで冷房のように感じられるという……。通常の現場とは違い、他の派遣メンバーがほとんど主婦なのにも困惑。選挙という場所柄で選んだのかも知れず、事実服装は社会人らしいものなどと指示されていたのだが、現場を仕切る市職員の方々は、少なくとも本日は倉庫作業員と大差ない服装で、派遣のほうがこざっぱりしている。全身汗まみれになると知っていたら、いつもの作業ルックで行ったのに。女性軍にはお気の毒。
 しかし暑かったのは体育館だけではなく、帰宅して発泡酒のツマミに『田舎煮・いかげそ里芋』を開けたら、きちんとあったまっていた。流しの下に置いといただけなのだが。
 さて、明日は5時起きだ。起きれるか――もとい、寝れるか。


07月27日 金  Z級ぐるめ・QQ編

 99円ショップにおけるスグレ物として、以前、冷凍シメサバを挙げたが、他にも冷凍の魚類は豊富である。ただし冷凍シメサバ以外は、一般のスーパーの特売でも100円以下で入手できる。
 さて今回ご紹介させていただくのは、まずQQブランドのオリジナル冷凍食品、『麻婆茄子丼の具』。これが美味い。辛味があるので、丼飯の大盛りを楽々カバーできるのもありがたい。
 そして本日出会ったのが、『期間限定・売り切れ御免』と表示された缶詰、東洋水産の『田舎煮・いかげそ里芋』、そして『田舎煮・いかげそ筍』。他にイカ焼きだけの缶詰も姉妹品で並んでいたが、輸入発泡酒の350缶をそれだけでツマミとしてカバーするとなると、やはり中身の食材は複数がありがたい。そして他の店でも見かける100円缶詰『いかと里芋の煮もの』より、固形量が2割方多いのも魅力。
 ……当方、けしてショップQQの回し者ではありません。

 なんかいろいろの出がけに市役所に寄って、参議院議員選挙の期日前投票を済ませる。日曜の投票が出来なくなってしまった。なんとなれば、日曜に隣の市の投票所でバイトすることになったからだ。明日も事前研修とやらで、2時間ばかり出なければならない。2日分の自前交通費を考えればけして割の良い派遣とは言えないのだけれど、まあ、好奇心もあるのですね。
 狸の担当は投票時の会場係だが、夜の開票係でも、たった3時間のバイトを募集している。おいおい大丈夫かよ、そんな気もする。派遣現場では、けっこうスチャラカな仕事をする人間も多いのだ。まあ、狸が投票したのはどっちみち当選確率の低い方や党なので、むしろスチャラカに開票してもらったほうが、票は増えるのかもしれない。


07月26日 木  炎天下に一週間放置された生クリームパイのような人々→心霊写真

 いや、山口母子殺害事件の公判における、被告人や弁護団の話である。もはやあーじゃこうじゃ言うまでもなく、正直、こうした一幕が公の場で許されるこの国に生きているのが、つくづく辛い。といってこちらが死んでしまうわけにもいかないので、できれば今夜あたり、被告と弁護団まとめて心筋梗塞あたりで突然死してくれまいか。狸穴の周囲を、よく廃品回収の業者が車で回っているのだが、裁判所近辺に廃人回収とかは回ってこないか。とにかく、この陽気にこれ以上、人型放置生ゴミを見ているのがいたたまれないのである。ここまで匂ってしまうと、カラスさえつつくまい。
 しかし世の中、そんなシロモノがいる一方、日々淡々と高貴なる人生を送る方もいらっしゃるのである。夕飯時にたまたまザッピングした『アンビリバボー』なる番組で、日本で稼いだ手術料をせっせとベトナムでのボランティア手術に注ぎ込んでしまう眼科医さんを紹介していた。無論その方は知能にも技術にも意思力にも恵まれ、生活上の心配もないからこそそうしていられるのだろうけれど、知能にも技術にも意思力にも恵まれない人間のクズだって、拘置所にいるかぎり生活の心配はないのだから、ボランティアは無理でも、せめて目立たないところで人知れず腐っているくらいの謙虚さは真似できるはずである。死刑になりたくないなどというワガママな選択肢は、見ず知らずの若奥様と乳児を殺害した段階で、自ら放棄してしまったのだし。

 コロリと話は変わって、その『アンビリバボー』では、夏らしく心霊写真がメインの特集になっており、例によって種々の失敗写真に自称霊能者の方が種々の創作解説を披露、なかなか楽しめた。
 とはいえ、狸はけして霊魂の存在は否定しない。かつて写真の処理そのものが商売だったから、いわゆる心霊写真の大半が単なる失敗写真(撮影技術の不備だけでなく、ハード的な要因やDPE過程の要因でもしょっちゅう起こる)であると判別できるだけで、「どーやったらこんな写真が……」と冷や汗が流れるような怪異な生写真も見ているし、原因不明の写り込み(文字通りのゴーストですね)を、自分で撮った写真に見つけてしまったこともある。
 今でも鮮明に記憶している怪写真――あれは、狸が某カメラ販売会社に入社して、最初の夏であった。新宿サブナード店に配属された狸は、ヤクザの方やら二丁目のミスター・マダムやら、韓国・台湾の在日料理店主の方々やら、濃くて楽しいお客様方に鍛えられる一方、店が暇な時には、下っ端の役目として、新宿戸山団地の広大な敷地内をチラシ配りに歩いていた。ある日たまたま、店の常連である年金生活老人が散歩しているのに出会い、「冷たい物でも一杯」「ナイショよ」というわけで、お宅に上がり込んで一服させてもらった。まあ麦茶のお茶うけはその老人が撮影した風景写真だから、なかば仕事の一部でもあったのだけれど。そこで「ずいぶん長いことあちこち撮って回ったけど、暑気払いになりそうな写真は、これだけだねえ」などと見せられたのが、問題の怪写真のカラーパネルである。
 怪写真にありがちなパターンとして、ちょっと見、ごく普通の風景写真である。だから「暑気払い」の意味は、清涼感のある風景、その程度の意味だと思った。色合いとコントラストから見て、リバーサルからのダイレクトプリントか。山あいの村を斜面から見下ろす構図で、手前がキャベツ畑、その向こうに鄙びた農家、彼方に森と空。いかにも郷愁をそそるその絵柄に、少々難点があるとすれば、中景の農家の庭先を水平によぎるように、なにやら白く太いロープのようなものが写りこんでしまっているところか。
 最初、農家の庭先に何かが干してあるのだと思い、
「……これ、ちょっと惜しかったですね。のっぺりして、どことなく違和感が」
 腹蔵無く言わせてもらうと、老人はにやりと笑って、
「それ、なんだと思う?」
 問われてじっくり検分すると、それは庭先の干し物ではなく、農家の前の道の上、推定3メートルくらいの空中を、写真右端の林から延びており、たまたま庭先あたりで途切れているのだった。
「……消防のホース?」
 無論、消防のホースは水平に村の空中を飛ばない。それに、その先端は、目を凝らせばなにやらちまちまと枝分かれしている。
 まあ目を凝らした時点で、かなり背中が冷たくなっていたのだけれど、いきなり怪奇写真の話題に突入するのも気がひけて、
「……ホースの先っぽに、軍手がくっついて……?」
 老人が「暑気払い」とにやにやしているのも道理、それはどう見ても軍手ではなく、ほっそりした5本の指そのものなのである。つまり、異様に長く長く延びた女の腕が、その農家の前を横切りつつあるのだ。
「……撮ってる間、見えてたんですか?」
「ああ。ブロニカ三脚に据えて24枚撮りの後半10枚、ファインダーでもちゃんと見えた。いや、初めは気がつかなかったけどね。スリーブの原版もあるよ。見る?」
 当然、ルーペでチェックさせてもらった。同じ構図で微妙に露出や深度を変えながら、ノーマルな風景が14コマ、残り10コマでその白い腕が右から現れ、だんだん長くなっている。最後の5コマあたりが露出も深度も固定なのは、そこでその異物の存在に気づいたのだろう。パネルにしてあったのは、最後のコマらしい。
「……続きはないんですか?」
 老人は大笑いして、
「そこまで。三脚かついで逃げちゃったよ。だってあんた、『本体』が出てきたらどーすんのよ。一生寝らんなくなっちゃうよ」
 ごもっとも。


07月25日 水  遅延地雷バトン(信管除去済み)

★現在のメアドの意味は?
そのものズバリ。

★今の着信音は?
ペールギュントより『朝』。

★待ち受け画面は?

イルカが泳いでいる。

★お酒は飲める人?
人並みには。

★酒での失敗談は?
忘年会で火のついた煙草をくわえたまま熟睡した。

★ストレス解消法は?
寝る。

★今この瞬間の髪型は?
風呂上がりなのでベタ。

★今この瞬間の服装は?
作務衣風パジャマ。

★あなたの勝負服は?
チノパン・Tシャツ・ラバー軍手・カッター。

★たばこ吸う人? 吸う人は銘柄も
吸う。狸穴内ではゴールデンバット、外ではフィリップモリスワン。

★あなたの人生で1番の思い出は?
多すぎて選べません。

★口癖は?
えーとですねえ(しかし何度目や)。

★これを聞くと切なくなる!!!!!という思い出の曲はある??
なごり雪、ノクターン(映画『イルカの日』サウンドトラックより)、夕陽のギャングたち、赤い風船(浅田美代子ちゃんの)。

★好きな相手で音楽の好みは変わる?
いいえ。でも、フラれた後で変わったことはあります。中島みゆき姐御の歌とか。

★結婚は何回したい?
正直、一度はやってみたい。しかし言いたくはないが言っちゃうが、この質問を最初に考えた方は、いったい何を考えているのかなあ。これって、「したくない」「一回」と答える人以外にとっては、「何回離婚したい?」と訊いているのと同じだよなあ。

★異性の友達はいる?
いません。

★男女の友情ありえる派?
そりゃありえます。

★それはなぜ?
周りに例があるから。

★グッとくる異性の仕草は?
丸くなって寝ている姿。

★内面で好きなタイプは?

……他人の内面をどーやって見るのだ? また言いたくはないが言っちゃうが、この質問を最初に考えた方は、いったい何を考えているのかなあ。サイコダイバー? 内面の美しさも醜さも、当人以外から見れば、外面だけの問題だろうに。

★実際、結婚相手と喧嘩は必要だと思う?
……もはや「人様々」以外の回答不能。この質問を最初に考えた方は――以下略。

★今やりたいことは?
山形の染太の鰻が食いたい。

★何歳(いつ)に戻りたい?
面倒なので戻りたくない。

★最近のマイブームは?
ショップ99の冷凍シメサバ。雑木林。

★一日の睡眠時間は?
いつ寝るかも含め、日替わり。平均すると7時間くらいか。

★好きな色
狸色。

★今まで何のバイトしたことある?
なんかいろいろ、今も増え続けている。


07月24日 火  

 現場によっては「あるある」と聞いていたのだが、実際の経験は昨夜(本日未明)が初めてだった。某ディスカウントストアの拠点倉庫内作業現場で、梅雨のためか入出荷が少なく、やるべき仕事が予定の2時間も前にきれいさっぱりなくなってしまったのである。社員の皆さんも当直のお一方を残し全員帰宅、その当直の方は「時給は予定通りの時間まで出るから、もう帰っていいよ」とのたまい、自身はすでにトラックの出入りも途絶えた発着場で、ラジコン・カーを走らせ始めた。
 さて、残されたお若い衆数人と古狸が一匹、嬉しいような困ったような顔で、休憩室でうだる。なにせ時刻は夜中の3時。始発はまだまだだし、タクシー代など無論出ない。近辺は倉庫地帯だからファミレスもなにもなく、駅前にコンビニがひとつあるきりだ。
 しばらくうだった後、隣駅に住んでいるという若者が、「歩いて帰る」と席を立った。それを見て、狸も徒歩で帰る決心をした。周囲の道は最寄り駅までしか知らないが、その現場は江戸川河口からそう遠くないはずだった。河口から狸穴までは、以前自転車で何度か走って、約6キロと判明している。つまり推定7キロ前後歩けば、狸穴まで着けるはずだ。
 そうして深夜から夜明けまで、給料の出る散歩を始めたわけだが――梅雨の湿気を甘く見ていた。全身ぐしょぬれと化した汗っかきの狸が、深夜ひたすら倉庫地帯をほとほとと行く姿というのは、かなり怪しかったのではないか。幸い夜明けと共に湿気は去って、実に久々のクリアーな空があらわれ、江戸川の土手を朝の散歩に精を出す人や犬が行き交う頃にはなんとか生乾きの狸になっており、さほど怪しまれず犬にも襲われず、なんとか狸穴にもぐり込めた。

 しかし、道というものは、つくづく面白い。知らない道でも、歩いていれば必ずどこかに着く。今回は倉庫街を当てずっぽうに歩いて、予定どおり江戸川に行き当たったわけだが、もしそれを外しても、どこかの線路か幹線道路には必ず行き当たっただろう。山間や荒野ならいざ知らず、およそ人跡のある地域ならば、自分が道に迷っているのか自発的に散歩しているのかは、あくまでそこを辿る自分の気の持ちようだ。


07月22日 日  時をかける少女

 録画しておいた、アニメ版『時をかける少女』を観た。小規模公開から口コミでロング・ヒットになった経緯なども知っていたし、Yahoo!映画のユーザーレビューで、大量の最高点と大量の最低点が渦巻いてお祭り状態だったのも知っていたし、そのお祭り自体がヤラセなのではないか、などという噂も聞いていた。いずれにせよ、大画面の劇場で観なければならないほどの作画クオリティーではない、といった意見は信用のおける識者の方々も書いていたので、いずれレンタルで観ようと思っていたら、なんと地上派で初オンエア。
 で、かつての大林版実写作品(つまり知世ちゅわあああん!)ぞっこん世代の狸としては、半分色眼鏡をかけて観始めたのだが――いやはや、楽しく微笑みながら胸の奥がきゅうんきゅうんとうずきまくるやら、要所要所でうるうるしまくるやら、しまいにゃ涙を本気印で垂らしまくるやら、エラいことになってしまったのであった。つまり、大林+知世級のインパクトだったのである。
 無論人の感性などというものは大人も子供も千差万別だし、現在進行形で中学生や高校生をやっている現代っ子の感性にしろ、こっちは狸親爺ゆえ想像の域を出ない。昔、大林版が初期おたくたちの心をぎゅむむむむむむうとわしづかんだ頃も、巷では「なんじゃこの幼稚で舌足らずな映画は」的な酷評が多かったのである。しかし、これらの作品には、伝わらない人間を憐れんでしまうほどの瑞々しい感性と、それを表現しようとする理知的な誠意も備わっているのである。
 心配していた作画クオリティー、キャラの陰影をきれいさっぱり省略したベタ塗り(これは納期や予算上のアレもあるのだろうなあ)が、かえってアングルや表情の変化、また日常的動作の微妙さを際立たせており、アニメとしては快感だった。元来2Dアニメという奴は、線画が動く段階の快感が、魅力の8割方を占めてしまう(これは白黒テレビ漫画育ちの古狸の郷愁もあるかもしれず、確かに大スクリーンで観るには向かないかもしれない)。そして背景は、文句なしに美麗で、思わずキャラたちといっしょに、その世界に遊びたいレベル。
 内容の詳細などは、観ればわかるのだし観なけりゃ誰に聞いたって伝わるはずのない勘所の作品なので、省略。とにかく狸にとっては、大林版が『中学時代の春に心を戻せる映画』だったとしたら、今回の細田版は『高校時代の夏に心を戻せる映画』であった。


07月21日 土  最初にグー

 エアコン修理清掃助手――そんな夜間バイトに出た。
 やや遠方で、交通費自前のスポット派遣としては少々痛かったが、時給1250円もらえれば、充分元は取れる。しかしその時給は、よほど鷹揚な会社か親方日の丸的会社でなければ、通常、重労働の金額である。
 ややビビリながら、時刻表と地図のプリントアウト片手に一時間半かけてたどり付くと、そこは案外小さな冷機メンテの地方支店で、おふたりの作業員さんと中型ワゴンに乗りこみ、さらに一時間ほど離れた街道筋の大型パチンコ店に移動、当然作業員さんたちはいくつものどでかいエアコン本体や、さらに多い天上の吹き出し口をなんじゃやら機械類なども使用しメンテして回るのだが、狸の仕事といえば、フィルターの清掃やら表面の雑巾がけやら入退店前後の荷運びくらいで、大半は移動時間と指示待ちの待機時間なのである。力仕事30分、軽作業3時間程度か。それで8時間の時給がもらえるのだから、いささか申し訳ない気もする。
 もっともそんな高時給には、無論わけがあるのであり、借りた作業着がススのようなホコリで真っ黒になる。当然、頭や顔も汚れるし、肺にも入るだろう。どでかい業務用エアコンが、大型パチンコ店の濁った空気から集めるホコリは、さすがに黒くてアブラっぽい。それでも作業着は着替えればいいだけで、他の倉庫作業のように、汗びっしょりになった自前の衣類を帰宅後あわてて洗濯する(さすがに日常生活の下着などとは違い、ほっとくとすぐに腐臭を発するので)必要もない。体の汚れは風呂で落ちる。肺の中に関しては、ウン10年煙草を吸い続けている狸のこと、今さら多少のススを吸っても関係ない。
 作業員の方は、班長の方は30前後、お若い方は20代なかばと思われ、いずれもその作業においてはベテランである。そこに無知蒙昧な、それも親のような歳のオヤジが参加するのだから、あちらには少々お気の毒な気がした。いつもの若いフリーターに対するような命令口調や叱咤も当然混じるが、大半は、実に丁寧な敬語で指示してくれたりする。なんだか気を使わせているようで、かえって恐縮。
 そして休憩時間――これはその会社の『習慣』なのだそうだが、
「最初にグー!」
 いきなり、じゃんけんが始まる。一見の派遣も参加する。で、負けた人間が皆の自販機ドリンク代を奢るのである。
 ふだんじゃんけんで勝ったことのない狸としては、いささかビビったが、なんと、二度の休憩時間、いずれもロハでスポーツドリンクやコーヒーをいただいてしまった。生活がかかると、じゃんけん感度も高まるのだろうか。
 会社に帰着後、汚れた作業着は、奥の作業場にある、ごく普通の家庭用洗濯機に入れておく。班長の方は、久々の二連休が取れたので、これから家族や他の同僚といっしょに、山に遊びに行くとのこと。お若い方のほうも、日曜には合流して遊ぶらしい。晴れてほしいものである。
 そんな、なにかと家庭的な、中小企業(けして悪い意味ではありません)らしい現場であった。


07月19日 木  食感覚バトン

 甘木様からいただいたバトンに、なかなか続きを演じてくれない仲良し三人組、および、かばうまがお答えします。

◆コンビニで買うおにぎりの種類は?
「うーんと、たかちゃん、やきたらこ。んでもって、めんたいこ。そいから、ますのすし。あと、びーると、いちごみるふぃーゆ」(まあ大半はパパかかばうまの真似をしているだけなのだろう。)
「こんびには、だめだ。あーんなちっこい、びんぼなにぎりめしが、むやみに、たかい。じまんじゃあないが、おれんちのにぎりめしは、めしをけちらない。いっしょう、きちんとつかう。うめぼしだって、きちんといっこ、はいってるぞ」
「……?」(コンビニなどという下賎な業態には、縁がないらしい。)
「今晩は、狸ではなくかばうまです。以前は焼き鱈子が多かったでしょうか。今は駅ビルの『味噌焼きおにぎり』に凝ってます」
 
◆コンビニで買う飲み物は?
「しゅわしゅわでも、とろとろでも、ももあじの」
「こんびには、だめだ。あーんなちょっぴりの、びんぼな麦茶が、むやみに、たかい。じまんじゃあないが、おれんちのおふくろは、きちんとむぎをいって、こーきゅーな麦茶をつくってくれるぞ」
「……?」
「俺も、近頃コンビニで飲料は買いません。家の恵子がしっかりスーパーの特売品を確保してくれてます」(とにかくのろけたい時期らしい。)
 
◆目玉焼きには醤油派?ソース派?
「けちゃっぷ。けちゃっぷで、おめめとか、おくちとか描くの」
「ふだんは、しょうゆだ。にほんじんは、しょうゆじゃなきゃあ、だめだ。んでも、ちょっとぜーたくしてよーしょくっぽくしたいときは、うすたーそーすでも、いいな」
「……ぽ。……おしおと、こしょう」(育ちがいいので、食物の話は恥ずかしいらしい)
「やはり日本人は醤油でしょう。家の奴もそう言ってます」
 
◆寿司ネタで好きなネタは?
「えんがわさん、うにさん、んでもって、たまごやき」
「おやじやおふくろといっしょで、えどまえのこはだが、んまいな。まぐろのあかみも、いいな。んでも、かばうまにたかるんだったら、おーとろでもいいな」
「……ぽ。……おーとろさんの、あぶりさん。あと、あと、かっぱまきさん」(価格という概念がないので、舌に忠実)
「新居の頭金が貯まったら、家の奴とまたアンキモを食うのが夢ですね」
 
◆好きなアイスクリームの種類は?
「ばにら!」
「いんや、やっぱし、にほんじんは、まっちゃだろう」
「……まんごー」
「故郷のさくらんぼアイス。一度家の奴にも、食わしてやりたいですね」
 
◆いつも買ってしまうお菓子は?
「いちごみるふぃーゆ」
「梅ジャム」
「……?」
「近頃自分では買いません。家の奴が――」(以下略。)
 
◆ミスドで好きなドーナツは?
「……みすど? ……おうめに、ない」
「んむ。それはきっと、がいこくの、はなしだろー。にほんじんには、かんけーない」
「こくこく」(くにこちゃんの言うことを本気にしてはいけない。)
「近頃店では買いません。家の奴が――」(いいかげんにしろ。)
 
◆味噌汁で好きな具は?
「たまねぎさん」
「じゃがいもなんか、はらにたまって、いーな。あと、夏やすみなら、ナスだな。あさにのこったのを、ひるに、ひやめしに、ひえたまんま、かけるのだ。んで、ざばざばと、かきこむのだ。んまいぞ、これは」
「……なめこさん」(味覚というより、つるつるかわいくておもしろいかららしい。)
「家の奴が作る味噌汁はもうなんでもとても(以下略)」
 
◆好きな中華まんは?
「ごまのあんこの」
「ちゅーかまん? いつか、かばうまに、たかったな。えーと、あの、にゅるにゅるしててんまかったのは……」
「……ふかひれさん。……ぽ」
「……うるうるうるうる」(辛い過去を回想し、涙ぐんでいる。)
 
◆ご飯が少し余った、何で食べる?
「ばたーと、ちょっぴり、おしょうゆ」」
「げ。めしに、ばたー? ばたくさくないか? そもそも、めしがあまるって、どーゆーいみだ?」
「……?」(くにこちゃんとは別の意味で、初めからちょっぴりよそってもらうので、余らない。)
「海苔の佃煮」

 
◆他人に理解されない食べ合わせは?
「いちごみるふぃーゆと、わさびせんべい」
「てっぽうむしカレーと、いなごのつくだに」
「まるめろじゃむさんと、なまゆばさん」
「蛙のカレーと、蝗の佃煮」(くにこちゃんと、がしっと腕をからませている。)
 
◆マヨネーズはマヨラー。ではあなたは何ラー?
「けちゃっぱらー」
「みそらー」
「……ぽ。……しゅがらー?」
「もとマヨラー。今は家の奴に減量を申し渡されているので――でも学生時代は、マヨネーズご飯で一週間とか」
 
◆アンパンマンに出てくるキャラ、誰を食べたい?
「……たべるの、やだ」
「そーか? おれは、あのどんぶりのトリオなんか、くってみたいな。カツドンマンとかな。あと、いなりずしのみこと、とかな。んでも、鉄火のマキちゃんなんかは、くわないで、なかまにしたいな」
「……ぷるぷるぷるぷる」(くにこちゃんが食べている姿を、想像してしまったらしい。)
「俺も……食うのは、ちょっと」
「なんだ、きちんとくいたいのは、おれだけか。みんな、すききらいが、おーすぎるのだ。もったいないおばけがでるぞ」


07月18日 水  へびさんねこさんちょうちょさんくもさん

 本日は曇天ながらどうやら降らずにすみそうなので、昼から無制限散歩に出る。
 駅に行く途中の郵便局で、エクスパックをふたつほど投函。どっちもどうせ用紙代やインク代やパック代の費えに終わるのだろうなあ、と、なかば諦念しつつ、それでもせめてコメントだけでもいただければまったくの無駄でもないのよなあ、と、やはりまだ捨てきれないイロケがある。おもしろいはずなんだってばよう(注・あくまで当社比)。
 朝まで雨だったらしく、いつもの雑木林はたっぷり水を吸っており、さすがに足の裏の感触は懐旧を通りこして、「んでもやっぱし雨の時だけ舗装してほしいかなあ」などと日和ってしまう。尾瀬のように木道を敷いてしまったらどうか。それくらいの費用は狸が出してあげます。ただし夜が明けると葉っぱにもどりますが。
 そんな薄暗い雨上がりでも、蝶々さんたちはひらひらと探食活動にいそしんでいる。蜘蛛さんも水滴を宿した巣で、監視に余念がない。足元からにゅるにゅると逃げて行く蛇さんたちは、残念ながら、何を考え何をやっているのか不明。緑地公園の野良猫さんたちは、公園が湿っているせいか、皆さん河原のブロック敷きに下りて、散歩中やら睡眠中やら。ホカ弁のシャケで餌付けを試み、一匹だけ成功。
 それから河原の土手を駅ふたつぶんほど歩き、電車に乗って久々の秋葉原へ。さすがに近頃は疲れているので、アキバまでぶっ続けで歩く気にはなれない。処分品ワゴンのエロゲには、出物なし。すでに『意外な秀作』が埋もれられる環境ではないようだ。中古で安くなったら買おうか、などと在職中に思っていた物件は、3年たっても安くならない。だから、もう買えない。買えないよう買えないよう、と道端で泣いていたら、親切そうなおじさんが通りかかって、「よしよし、かわいい狸のぼうや、泣くんじゃあない。おじさんが買ってあげよう」――などという虚しく恥ずかしい夢を見ながら、ヨドバシでインクと用紙と各種ROMを補充。ポイントがありがたい。

 散歩の間、たかちゃんたちと脳内で遊んでいると、今回は主役のはずのゆうこちゃんが、なにやら恥ずかしいのか奥にひっこんでしまい、たかちゃんとくにこちゃんばかりが時空を越えて漫才を続けている。しかしそれでは、全体のオチが最後までつかない。ことほどさように、あの三人組は難儀である。


07月17日 火  天気予想→吉牛

 本日は一日中曇りのはずだったので、久々に無制限散歩でも、と思っていたら、霧のような雨が朝方から続いた。お天気のおねいさんやおにいさんやおっさんがたは、あいかわらずオチャメである。
 散歩ができないなら稼がねば、ということで、派遣の元締めに電話すると、昼前からの現場に空きがあり、急遽、労働セットを携え出勤。本日の現場はなぜか狸同様のオッサンが多く、愚痴やら強がりやらで、なかなか和んだ。帰途、雨が本降りになっていたのは、「負け犬オヤジが群れて和んでんじゃねーよ」といった、天からの戒めだろうか。でもみんな時給分はきっちり働いたのでかんべん。

 吉野家で牛丼の特盛りを堪能して帰宅、明太子様の読書感想ブログを覗くと、吉野家関係のビジネス書が取り上げられており、ビジネスや経済にはトンと無縁になってしまった狸でも、『
「吉野家の牛丼がなんであんなにウマいのかを知りたい」という、ずれた動機で本書を手にしたのであるが』という記述に、思わずこくこくとうなずいてしまう。その『吉野家の経済学』という書物を読むと、『「牛丼があんなにウマいのに他のメニューがなんでダメなのか」という謎が言外に明らかになる』そうで、そこもまた常々ハテナと思っていただけに、これはぜひ読んでみなければと思う(無断引用、ご容赦)。
 30年以上昔、仙台の駅前で生まれて初めて吉牛を食ったときの感動は以前にも記したが、あの感動とその後の中毒的な習慣性は、やはり白ワインにあるのだろうなあ。その頃ワインなどというハイカラなシロモノにはまったく縁がなく、せいぜい当時の甘ったるい赤玉ポートワイン(本当にチクロ入りジュースのように甘ったるかったのである)くらいしか舌で知らなかった未成年狸は、あの牛丼の中に、なにやら未知の『複雑な豊饒さ』を感じ取ってしまったのであった。日本酒を使った料理とは、明らかに違う酒精を感じたのである。
 もっとも昨今の吉牛は、やはり肉質が良すぎるように思う。一見どーしよーもない当時の輸入バラ肉だったからこそ、その優れたレシピによる「こんな安くてみすぼらしいペラペラの肉でなんでここまで美味い!?」といった、意外性という精神的調味料をも呼び起こしていたのではないか。当時の食欲や舌の若さを差し引いても、あの頃の吉牛は、現在より総体的に『優れモノであった』と断言できる。

 ところで、今しがた明太子様のブログに引用のお詫びのコメントを入れようとしたら、なぜかダブって投稿してしまいました。重ね重ね、申し訳ありません。


07月15日 日  逃げた雌狸が帰ってきました

  ――いえ、clown-crown 様のとこや甘木様のとこで見てしまったバトンの【ルール】で、『見たらやる。タイトルを「彼氏or彼女出来ました」に設定すること。見た人は必ずやる。すぐやる。』とスゴまれてしまったのですが、この歳で今さら『カノジョ』もねーだろー、そう思いまして。
 で、中身を見たら、なんかすでにあちこちのバトンで答えてしまった項目も多いようなので、ここで初めてこのバトンを見た方は、ほっといてフケても狸は責めません。


■好きなタイプを外見で答えよう!
 小柄でおしりがちょっと大きめ。

■年上が好き?
 はい、ろりも好きですが美老婆も好きです。

■財布はどんなの使ってますか?
 いろんなお店のポイントカードが収まる、ブ厚いの。

■携帯はどんなの使ってますか?
 いつも最安価で青いやつ。

■携帯のストラップは?
 おむすび君がどこかに行ってしまったので、イカのてんぷら君。

■手帳は持ってますか?
 ダイソーのメモ帳のみ。

■バックはどんなの使ってますか?
 1000円均一のおっさんバッグ。。

■バックの主な中身は?
 日替わり。今は図書館で借りた本(『ちゃぶ台の昭和』と『われもまたおくのほそ道』)が入ってますが、昨日はラバー軍手やらカッターやら汗ふきタオルやら。

■今はいてるパンツの色は?
 えーと、パンツって、下の? 近頃ボケてるんでめくってみないと――白とグレーのチェック柄。

■星に何を願う?
 ゆうこちゃんの話に、もっともっと感想がつきますように(だって増えないんだもん)。

■もしクレヨンに生まれ変われるとしたら何色がいい?
 肌色。おいしそうだから。……前にあったよな、これ。

■好きなスポーツは?
 根性歩き。観るだけなら、バイアスロン。……これも前にあったよな。

■好きな日は?
 無制限散歩可能の日。

■最後に見た映画は?
 きっちり気合いを入れて見たのだと……『トゥモロー・ワールド』。

■怒ってる時はどうする?
 ぶつぶつぶつぶつ。

■夏か冬どっち?
 冬。どっちみち汗をかくのだが、少なくてすむ。

■最近泣いたのはいつ?なぜ?
 昨日、『大海女の島』を見て。

■ベッドの下には何がある?
 狸はベッドを買わない。もらえても穴に収まらない。

■昨晩何した?
 さすがに爆睡。

■好きな車
 だいぶ前に、特にないと答えた記憶があるが、近頃は乳母車を見ると妙にときめく。

■好きな花は?
 河原のひまわり、谷間の百合、露天の月下美人、尾瀬の至仏山あたりのエーデルワイス、じっと見ているとなんか言ってくれる薔薇。


07月14日 土  肉体と精神

 しかしまあ何度もしつこく記してしまうが、肉体労働のあとの飲食というものは、なぜあんなにも美味であるか。もとから嫌いではない松屋の豚焼肉定食が、天上の味覚に感じられる。大盛り飯も無料の水も、際限なく旨い。雨続きでもけして世の中捨てたものではないなあ、などとゆるみながら、早朝のカラスの群れと、荒らされた生ゴミ袋たちが散乱する街で、いきなり大飯かっくらっているズレた狸であった。
 本日の外食は、派遣の夜勤バイトの交通費が浮いたので、フトコロはそれほど痛まない。実は他の派遣会社から来ていた方々が、なんとタクシー代が出るというので、ナイショで同乗を誘ってくれたのである。狸の登録している派遣会社は、タクシー代もほとんど出なければ(どんな時刻に終わっても、バスや電車の始発待ち)、同じ仕事でも時給が安い。つまり、経費を登録者の苦労でおさえ、ピンハネも多い。グッドウィルほど悪名は高くないが、それに準じる待遇である。それでもちょっとした駅前ならもれなく支店があり、日当を受け取るのに手間がいらず、電車賃がかからない。その利便性で一部上場までもちこんだ、いわばスポット派遣のコンビニである。買い物にたとえれば、ちょっと離れたスーパーならなんでも安いのは知っていても、ついつい近所の高いコンビニで済ませてしまう、アレですね。もっとも狸の場合、近頃コンビニなどほとんど利用していないが。あ、ショップ99も、コンビニか?

 一区切りついて某板にアップしたたかちゃん物を、ありがたい読者様のご感想を参考に、手直しする。たかちゃんシリーズに関しては、あのろりたちの挙動自体はろりたちにお任せなのだが、それをどう解釈しどう構成しどう表現するかは、やはり狸の精神状態にかかってくる。部屋に籠もった状態で続けた部分は、どうしても狸自身のエゴが投影されてしまう。創作全般でいえば、エゴでけっこうの作品形態も当然あるのだけれど、あのシリーズに限っては、たかちゃんとくにこちゃんとゆうこちゃんと社会環境、語り手のせんせいとよいこのみなさん、その相互関係を『たかちゃんワールド』にしたいわけで、あくまで狸はただの成文役である。そしてありがたいことに、うっかり狸のエゴが勝ちそうになると、一部の読者の方は、表現は好意的ながらあくまで敏感に、その違和感を伝えてくれる。お褒めの言葉を糧に打ち続け、ご意見を参考に修正する――キャラと世界観が核となる『たかちゃんワールド』にとって、これほどありがたい環境はない。

 NHK−hiで録画しておいたドキュメント、『大海女の島』を観る。能登半島の沖の小島で、今も存続する海女漁を、大海女と呼ばれる71歳の現役海女さんを中心に記録している。けっこう劇的で涙を誘うシーンもあり、民放のバラエティー仕立てのドキュメンタリー特番だったりしたら、思うさま浪花節的に盛り上げるところだが、そこはそれNHKらしく押さえた表現で、海女やその夫たちの漁人生を、生活レベルで実感させてくれた。
 その71歳の海女さんが、同僚(?)の孫の新人海女さんに、かつて自分がテリトリーとしていた伝説の漁場を、伝えようとするくだりがある。しかしそこはあまりに深く、年老いた大海女さん(近年、病気で胃も切ったのだそうだ)は、ついに海底までたどりつけない。新人海女さんも当然技量不足で、たどりつけない。老いてなお矍鑠とした大海女さんの、淡々と残念がる風情も心に浸みたが、髪を金色に染めた一見コンビニ前でうんこ座りしていそうな18歳の新人海女さん(ふだんは、これみよがしに『海女』の筆書き風ロゴが入ったTシャツなど着ているのである)が、船の端で悔し泣きしている姿なども、思わずうるうるしてしまった。もっともその底にたどりついたとしても、漁場全体がすでに全盛期の10分の1しか収穫がないというから、その伝説の穴場も、今はすっかり様変わりしているのかもしれない。
 で、その大海女さんと旦那さんの、収獲物を中心とした食卓風景などもあり、その洗練されない手料理は、ほんとうに美味そうだ。狸は旅番組が大好きなので、『いい旅夢気分』や、その手の特番をよく見るが、ロハで旅をするタレントさんたちが濡れ手で粟とばかりに頬ばる高価な海鮮料理と、老いてなお現役の海女と漁師夫婦が自分の体で収獲した海の幸の、どっちが羨ましいかと問われれば、それは当然前者だけれど、今どっちを食ってみたいかと問われれば、「はいはいはいはい!」と双手をあげながら、後者である。


07月11日 水  三丁目の夕日

 近所の古本屋に、『三丁目の夕日』のコンビニ本が並んでいた。いつもの100円ワゴンではなく、新古のコミックスと並んで、一冊500円、計3巻。なぜそんなに高価なのかといえば、それぞれ付録のついた、某コンビニのオリジナル仕様なのである。昔の雑誌の付録を模した、歌本、双六、絵葉書、組み立て紙模型などなど。
 それらの号は、夜中にホカ弁やファミレス飯やコンビニ弁当ばかり食っていた月給取り時代、ビールや弁当のついでに買った記憶がある。読んだ記憶も、付録でつかのま遊んだ記憶もある。しかし、じきに邪魔になって、ゴミ袋に入れてしまった記憶もある。かつての自分がいかに愚かであったか――日々習慣的に勤めていれば毎月きちんきちんと口座に振り込まれる給料に、生活感覚が狂っていたのだ。肉体的にも精神的にも、『糧』に対する意識が麻痺していたのだ。まだまだ糧となるものを、かたはしからゴミ袋に入れていたのである。
 自戒と懐旧から、つい、その三冊とも、買ってしまった。現在の狸穴には、小学館コミック版の『三丁目の夕日』は、一巻も残っていない。みんな売ってしまったからだ。しかし、ほとんど値の付かないコンビニ版は、離職以降、全部大事に保存してある。今度こそ、墓場まで持って行こうと思う。もっとも橋の下や富士の樹海には、持っていけないかもしれないが。


07月09日 月(ほんとはもう10日の3時)  派遣雑想

 このところ飯の種も趣味も共になんかいろいろの都合で夜型になっており、できれば夜勤の派遣に出たかったのだが、残念ながら口がなく、午後2時から11時までという奇妙な時間帯の倉庫作業に出た。
 その某ディスカウント・ストアの流通センター自体は、一部『自社現場の常識は世間の常識』系社員さん(つまり、まともな作業指示ができないのにバイトや派遣を愚弄する)が多く、ややストレスを感じたが、まあそれはありふれたことなので今さら愚痴るほどでもないとして、なかなか休憩がもらえないのには参った。しかしまた、派遣のお仲間の中にも、そうした現状に「労働基準法はどーのこーの」と愚痴をこぼしつつあんまり働かないおっさん(と言っても狸よりは数歳若そう)もいたりするので、まあ世の中、痛み分けという奴なのである。
 その帰り道、駅から遠い現場から終電めざして歩を急ぎつつ、その竹中直人さんにちょっと似たおっさんが携帯で家に連絡しているのを聞くともなしに聞くと、推定中学生と思われる息子さんとは関係良好のようだし、なんと奥さんが最寄り駅まで車で迎えにきてくれるらしい。平日に日雇い派遣に出ているような現状は、けして安寧ではなかろうに、シヤワセなお父さんである。一瞬、傑作アクション映画『GONIN』に登場する竹中直人さんを思い出し、実は彼が携帯で会話しているのは妄想内シヤワセ家族なのでは、などと想像してしまう狸は、やはりひねくれ者なのだろう。だからこそ、未だに妻子もないのだろう。
 今回の派遣では、なんと派遣会社の支店で時々お世話になる内勤の青年も外勤で現場に出ており、つまり元締め筋の方といっしょに仕事が出来(現場では違う作業ブースだったが)、帰りの終電でも同方向だったので、興味深い話が多々聞けた。内勤といっても、結句正社員ではなく、要は派遣会社が自社に派遣している(?)ような立場なのだそうだ。それでも5年も勤めているので、最近ニュースで良く聞く例の天引き金払い戻しでは、ちょっとしたボーナスなみの臨時収入になった由。もともともらって当然の賃金だったわけだけれど。
 深夜の駅にひとり降り立ち、迎えに来てくれる存在もなく、松屋で牛焼肉定食の肉ダブルのご飯大盛りをかっくらい、中瓶ビールを飲む。本来、さっさと帰宅して輸入発泡酒と自炊で済ませるべき経済状態なのだけれど、まあ、12時間ぶりのご飯なので、かんべん。


07月08日 日  観念と生活

 昨夜の就眠前は、図書館で借りた三島由紀夫氏による自作朗読『サーカス』『旅の絵本』を聴いた。コメントやインタビューも収録されており、つくづく観念と美意識で『独自に世界を装飾する』方なのだなあ、と、感心した。いささかの辟易がなかったと言えば嘘になる。
 本日は風呂に入りながら、NHKラジオの朗読で、女性アナウンサーによる林芙美子氏の『風琴と魚の町』を聴いた。素直に没頭し、素直に涙ぐんだ。30分以上続いたので体はのぼせたが、心は水のように澄んだ。
 やはり、観念や美意識は、生活にはかなわない。嗜好品としてはとても贅沢で結構なのだけれど、旨い米の飯をおもうさま頬ばる時のような、心身共に「ああ、これなんだよなあ」と実感できる味がない。
 などと言いつつ、未熟な狸などはついつい観念だの美意識だのに傾きがちになるので、せいぜいそれらを生活実感レベルまで引きずり下ろす努力は怠るまい、と、日記には書いておこう、まる、と。


07月07日 土  時の流れに

 15年ぶりの復活、ということで、『必殺仕事人2007』、わくわくと見始めたわけだが――うーむ、困った。監督は過去の必殺シリーズの映像美を担った撮影出身のベテラン・石原興氏、音楽は当然平尾昌晃の定番必殺節――しかし、なんか、おかしい。いつまで観ても、なかなかノってこない。
 そもそもシナリオが時代劇としては素人のような。すべての情動においてツメが薄く(というか、浅く)、まるでトレンディー・ドラマのような人物の葛藤だ。昔の必殺は、無論類型的でお約束で、しかも時代劇の本流を逸脱した筋立てながら、細やかな人心の流れやカタルシスの構築においては、時代劇を熟知したライターによって、じっくり書き込まれていた。そして、なんといっても、役者の風合いが違う。藤田まことさんや菅井きんさんや白木万理さんは健在だったが、肝腎の主要仕事人のお若い面々、ことごとくトレンディーな軽い発声、スマート一方の『カッコよさ』。つまり、やっぱり薄くて浅い。監督が故・深作氏あたりなら、あるいはそれら浅い素材からでも血肉の通った根性を引き出せたのだろうが、石原氏の映像美だけでは、とてもおっつかない。
 新聞のテレビ欄の好評を信じた狸が、期待しすぎたのかもしれない。番組評を書いている記者さん自身が、おそらくお若いのだろう。見せ場をスタイリッシュに派手にキメればいい、というものではない。日常を面白おかしく描けばいい、というものでもない。泣き場でそこそこ泣かせりゃいい、というものでもない。ほんのひとことや一動作が集積されて紡ぎ出す綾、その全体がドラマなのだ。
 ……などとぐちぐち打ち連ねていると、おやおや、すっかりいつもの爺いの繰り言になっている。正直、疲れているのだなあ。昔は半日立ちっぱなしで働いても平気だったが、今は足腰ヨレヨレになるもんなあ。たかちゃん方向にまで疲れを持ちこまないよう、あのなんだかよくわからないトリオと、しっかり遊んで解り合わねばなあ。


07月06日 金  ばかかおまいら

 うっす、くにこだ。
 かばうまがはたらきにでているんで、きょうは、おれが、きーぼーどかたかたとか、まうすをすいすいぽちぽちとか、こぴぺとか、してみるのだ。

浴槽用浮輪を使用した乳児が、バランスを崩して浴槽内でおぼれ死亡する事故が起きていたことが分かった。国民生活センターが5日、公表した。01〜06年、死亡には至らなかったが同様の事故が他に6件あった。うち1件は現在も意識不明の重体が続いており、同センターは「使用しないか、使用する場合は子どもから絶対に目を離さないで」と呼びかけている。 
 同センターによると、死亡したのは岡山県の生後10カ月の女児。一緒に入浴していた母親が、もう一人の子どもの着替えをさせた後、風呂場に戻ると浮輪ごと転覆していた。重体は広島県の生後10カ月の男児で、母親が着替えている間に転覆しおぼれた。
 他の事故は生後8カ月〜1歳11カ月の乳幼児で、呼吸が止まったケースもあるが、いずれも回復した。
 浴槽用の浮輪は、首がすわったころから2歳半くらいまでが対象。ビニール製の四角形が多く、ずれ落ちないようにパンツ型のシートが付いている。足を通し、座った状態で浮かせて使う。
 同センターが、ベビー用品店などで購入した6種類の浴槽用浮輪を検証したところ、いずれも静かに浮かんでいれば安定しているが、身を乗り出すと、バランスが崩れ転覆。頭が下になって起きあがれず、おぼれることが分かった。6種類とも、日本玩具協会の安全基準に達したことを示すSTマークが付き、安定性や安全性を強調する記載もあった。
 同センターは「尻と足を固定するのは安全のためなのに、転覆すると致命的な要因になっている」として、同協会に製品の見直しと、消費者への注意喚起を要望した。【大迫麻記子】
 ▽日本小児救急医学会理事長の市川光太郎・北九州市立八幡病院副院長の話 足を股(また)で固定するため、ひっくり返っても元に戻れない。はまったままで足が上に浮いて抜け出せない。発見が遅ければ完ぺきにおぼれる。使う必要はないと言いたい。 最終更新:7月5日22時40分 毎日新聞
』。

 きのうのよる、かばうまが、おもわずきーぼーどがえしをくらわせてしまったとゆー、きじだ。たかこもゆーこも、かばうまにきいて、しょんぼりしてしまった。んでもおれは、おもわず、もにたーに、ケリをいれてしまった。このおもちゃをつくってうったやつらは、ばかだ。ばかの、ひとごろしだ。
 じまんじゃあないが、おれは、つよい。だから、あぶないあそびは、だいすきだ。ぶらんこだって、おもいっきしゆらして、だれよりもたかく、そらにちかづくのだ。ときには、そのまんま、むこうのすなばまでとんだりする。いっぽまちがえば、しぬ。んでも、ちかごろだあれも、ぶらんこしょーぶに、つきあってくれない。おやが、おこるんだそーだ。つきあってくれるのは、たかこくらいだな。あと、ちかごろ、こどもがけがをするとかゆって、あっちこっちのおもしろいあそびどうぐが、しょっちゅう、なくなる。これは、こまったものだ。あそびどーぐとゆーものは、いっぽまちがえばしぬくらいが、いっとー、おもしろいからな。
 んでも――なんぼなんでも、あかんぼの、おもちゃだぞ。「赤ちゃん風呂ーと」とか、のーてんきななまえで、うってんだぞ。そいつをつくってうったやつらは、ものほんのあかんぼうで、じっけんしたのか? ものほんのあかんぼうがもったいないなら、ちっこいおさるとかなんかで、ちゃあんと、じっけんしたのか?
 おれには、よわっちいふたごのおとうとと、きんたろうみたくりっぱな、いもうとがいる。だから、あかんぼうのせわは、よーちえんのころから、やっている。いまも、やっている。あかんぼとゆーものは、かなり、ばかだ。んでもって、てごわい。まじに、こわいぞ。ちょっとめをはなすと、にたったてつびんにさわろうとしたり、ねこいらずをたべよーとしたり、えんがわからだっそうして、にわいしのあいだでさかさまになってたりする。ふろにうかべて、じっとしてるよーな、なまやさしーたまじゃあないのだ。そーゆのを、しってるつもりで、んでもほんとうはしらないばかが、きっと、どめくらのひとごろしのおもちゃを、つくってうったのだ。
 んでも、しょーじき、かってつかうおやも、ばかだ。きのどくだが、ばかだ。こうえんのあそびどうぐに、かたっぱしからなんくせつけるおやも、ばかだがな。にんげんとゆーものは、みいんな、はじめはばかなあかんぼだ。おとなのつごうとは、かんけいないばかだ。んでも、しょーがくせーくらいになったら、いっぽまちがえばしぬくらい、あそばなきゃあ、だめだ。ぶらんこしょーぶは、ばかがばかでなくなるための、ぎりぎりのしょーぶなのだ。そーやってしょーぶしないと、きっと、あかんぼみたくばかなまんまでずーたいだけでっかくなって、「赤ちゃん風呂ーと」をつくってうったり、かったりしてしまうんだな。
 おれのいもーとの、ともこは、ちかごろ、はいはいができるようになった。きっと、もうすぐ、がちんこでしょーぶできる。そんな、おとこどうしのたたかいが、とても、たのしみだ。……おれもともこも、おんなだ。

 で、かんけいないが、かばうまが、また、おれたちのはなしを、かいてくれている。びんぼーなのに、ごくろーさんだ。なんだか、よーちえんのころのはなしとか、もっとでっかくなったときのはなしとか、しんだあとのはなしとか、なんだかよくわからないはなしだそーだ。あっちほうこうからきているにーちゃんやねーちゃんは、よろしくだ。


07月04日 水  100円棚の愉しみ

 さすがに本日のジトジト雨だと、なんかいろいろのついでがあっても、いつもの雑木林や緑地公園に途中下車する気分にはなれない。で、久々に神保町に回っても、残念ながら多くの100円ワゴンはビニールで覆われてしまっているのだが、雨の当たらない100円棚は、いくつか開いている。その中に、『ドイツの旅行手帖』という新書を見つけた。著者は本間道氏、昭和34年、三修社発行。直観的に「あ、これは当たり」と踏んで購入、帰りの電車中で内容確認すると、やはり大当たり。著者は当時ドイツに留学したお医者さんらしく、ドイツ語会話から物価や交通料金等まで、現実に留学生活を送るためのガイドブックでありながら、日常生活のエピソードやちょっとした旅行記録も、あくまで生活者レベルで生き生きと記されている。
 実は中学時代から頭の中でいじくっている怪盗物(乱歩というか三島由紀夫の『黒蜥蜴』と、横溝正史の『真珠郎』へのオマージュっぽい)の主人公が、ちょうどその頃の西独留学邦人女性医師に救われた東独からの亡命者の赤ん坊、そんな設定であり、実はかつてのロシアのロマノフ王朝がどうのこうので、果ては怪僧ラスプーチンが創り上げた両性具有のホムンクルスだのなんだの、狸の妄想ゆえなんじゃやら果てしなく泥沼化していくのだが、なにはともあれその時代の西独あたりで保護されて日本に渡ってこないと、なんかいろいろその後の展開が不都合なのである。
 そうした妄想を実際に成文化しようとする場合、当然当時の生活を文章レベルで脳内にでっちあげる必要があり、日本編のほうは狸の人生とほぼカブるのでビンボなりになんとか絢爛豪華にでっち上げるにしろ、当時の西ドイツなど、もはや行きようがない。当時の映画や小説は、あくまで作者の主観が勝つため、映像や社会状況のちょっとした参考程度にしかならないし、当時の旅行ガイドブックなど探し出しても、一見さんの観光旅行しか再現できない。したがって、この『ドイツの旅行手帖』は、狸にとって実に貴重な妄想資料(?)になるのだが、これがなんと100円ポッキリなのである。ちなみにたった今ネット検索してみたら、2.3の古書店に在庫があるようだが、いずれも千数百円の値がついている。
 ことほどさように、人生において、100円棚や100円ワゴン巡りは、どんなフトコロ具合でもどんな天気でも虚しくない。


07月03日 火  なんかいろいろバトン

 ゅぇ様より、名称不明のバトンをいただきました。

Q1.夏休みで最も大変なのって何だと思う?
A.宿題
B.夏の暑さ
C.バイトとか仕事とか
 

 →B。
幸い宿題はもう出ない。まあ夏休みそのものが無いんですけどね。また、飢える覚悟があればバイトも仕事も自由にカットできる。しかし――暑さだけはなあ。もっと山の上にでも巣穴を掘らんとなあ。
「ふるふるふる。たかちゃん、ちがう。しゅくだい、こわい」
 
 
Q2.異性のどこにまず注目する?
A.やっぱ顔
B.体型とか?
C.声

 
 →B。
恥ずかしながら、お尻が大切です。大きすぎる寸止めでバランスを保っている、お尻。
「うっす、くにこだ。なんだ、かばうまは、しりがすきなのか。おうし、おれのしりでよければ、なんぼでも、ちゅーもくしろ。んでもって、おれいは、ひやしちゅーかでいいぞ。ほんこの店の、ひやしちゅーかだぞ。ほらほら、えんりょするな。うりうり」
 
 
Q3.インターネットを開きました。まず何をしますか?
A.メールチェック
B.ネットサーフィン
C.その他
 

 →A。
まあ95パーは迷惑メールですが、収入源関係が混じっている可能性も。
「……ぽ。あのね、あのね、ゆーこ、おにいちゃまに、まいばん、めーるするの。OYASUMINASAI、って、ぽちぽちして、そーしん、ぽち、するの。でね、でね、そーすると、まいばん、すぐに、ごへんじ、くるの。おにいちゃまのとった、きれいなおしゃしんも、いっしょにくるの。ゆーこのねっと、おにいちゃま、せんようなの。……ぽ」(さすがにおじょーさまなので、情報教育のためすでに専用パソコンを与えられているが、三浦家のサーバーの厳重なフィルター経由でしか、ネットに繋がらないらしい。ちなみに今のところ許可されたメルアドは、歳の離れた弁護士のお兄さんのみ)
 
 
Q4.携帯に入ってる音楽で最も多いジャンルは?
A.好きな歌手の
B.アニメ系
C.ドラマの主題歌とか

 
古い携帯(もう修理ができた)なので、入りません。
「おう、かばうまさんのけーたい、すごいすごい。みにみにえきしょー? どれみも、ぷりきゅあも、ぱわぱふも、はいらない? すごいすごい。おじーさんの、ふるけーたい?」
 
 
Q5.梅雨って嫌だよね
A.だよねー
B.ダムの水が増えていいんじゃない?
C.別にどうでもいいよ 


 →A。
狸毛が濡れると、巣穴がカビるので。
「んむ、たしかに、ぬれるのは、つらい。んでも、つよいおとこは、かさなんぞ、もっちゃあだめだ。かさなんぞもちあるくようになったら、おれは、おとこをやめるぜ――おれのおやじは、いつも、そうゆってる。おれは、おんなだ。でもつよいから、ぬれてゆくのだ」
 
 
Q6.スポーツといえば!
A.サッカーだろう!
B.いやいや野球でしょう!
C.上記は興味ないよ。

 
 →C。
剣道とか柔道とか、一対一系が好きです。あるいは冬季オリンピックのバイアスロンとか、寒げな所でひたすら標的を追う、なんてのも。
「……ぽ。あのね、あのね、ゆーこ、おっきくなったら、すけーと。ひぎあ、すけーと。きれいなすかーとで、すいすい、くるくるするの。……ぽ」
 
 
Q7.秋といえば
A.食欲
B.スポーツ
C.読書 


うーむ、該当なし。落ち葉をながめつつ、感傷にふける老狸。
「きゃはははははは! あきのだいうんどーかい、うんどーかい!」(その狸の尻尾をつかんでひきずりながら、全力疾走している。借り物競走の札に、『たぬき』と書いてあったらしい)
 
 
Q8.携帯電話、どれくらい使う?
A.買ってから1ヶ月でかわることも
B.数ヶ月は使いますよ
C.気づけば何年もたっちゃうんだよね

 
 →C。
ビンボなので再起不能になるまでは使用。
「んむ。それで、いー。おれなんか、けーたいなんて、ちっとも、いらない。ふつーのでんわも、きらいだ。バカとしゃべって、はらがたっても、すぐになぐれないからな」
 
 
Q9.もう7月。家に冷房は…?
A.ある。もうガンガン効いちゃってるよ!
B.あるけど、もったいないからまだまだ粘る。
C.なかったりする……。 


 →B。
ビンボなので以下略。 
「……ふう。かばうまさんのおへや、とっても、あついの。でもでも、こーやって、おめめでおねがいすると――」(すでに美少女の武器を、無意識の内に駆使している)
 
Q10. 試験前…
A. 満単のために勉強だー!!!
B.う〜ん…一夜漬けでやろうかなぁ
C.テスト?そんなん知らんし!!!!!!

 
 →C。
もはや古き良き思い出ですが、その結果として、現在のようなありさまです。
「きゃはははは! ありさま、ありさま!」(そーゆー自分の通知表は、てんから無視している)
 
 
Q11.夜眠れないとき…
A.ぼ〜っとする
B.だれかれかまわずメールして起きてる人を探す

 
該当なし。読む、打つ、聴く(話芸や朗読)。
「ぐ〜ぐ〜、すぴ〜、すぴ〜」(常に快食快便快眠のくにこちゃん) 
 
Q12.夏休み、行くならどこ?
A.海
B.山
C.その他
 

だからもう夏休みという概念がないんだってばよう。でももしあれば、狸なのでやっぱり山。
「ふるふるふる! かりぶのかいぞく! でずにーしー!」
「んむ、おれもことしは、うみがいいな。おやじのいなかも、かばうまのいなかも、やまばっかしだったからなあ」
「……ぽ。あのね、あのね、みんなではわい? はわいにね、おうちの、べっそー。でもって、おふねも、パパのおふねで……」(どうやら『たかちゃんシリーズ』の今後の構想には、長編海洋冒険物もあるらしい)


07月01日 日  チノパンを買いに

 去年の9月に買ったばかり(?)のジーパンに、もう穴が開きかけている。労働時も含め、毎日のようにはいていたからなあ。巷に流行る怠惰隠蔽のための人造見栄穴ではないので、やはりとてもみっともない部位に開いてしまう。内股とケツの間あたりである。ぶよんとしてしまりのない体型の内でもひときわぶよんとしてしまりのない部位のしかも谷間なので、どーしても布地が擦れてしまうのだろう。直立に近い体勢なら他人からは見えまいが、かがんだ状態だと、それはそれはサムソン系の方々にウケそうなあんばいである。内股のなまっちろい肌が、チラリ。
 日雇い派遣の元締めのマニュアルによれば、もともとジーパンは望ましくないとされており、チノパンが望ましいのだそうだ。狸の場合、旧職時代のビジネス系スラックスは何本も備蓄があるが、活動系はジーパンしか用意がなく、ビンボなのでチノパンとやらを新規購入するのも見合わせていた。しかしこのところの陽気だと、汗っかきの狸の労働には確かにジーパンでは吸水量が多すぎ、下手をすると半日濡れたオシメで労働するようなキショクのいい感触になる。
 で、本日は全休なので、駅前のスーパーやらユニクロやら、一円でも安価なチノパンを求めて彷徨した。一番安価なものでも2980円程度はするようで、ありゃりゃ、中国製のジーパンなら1980円くらいで買えるのよなあ、などとせつなく悩みまくっていると、駅ひとつ離れたSCの某テナントで大バーゲンをやっており、一本1280円、しかも二本買えば裾上げも無料とのこと。さっそくぽこぽこと歓喜の腹鼓を打ちつつ、ツータックとノータックを一本ずつ購入。
 30分ほどで裾上げも済み、そのうちのゆったりしたツータックをはいて、雑木林や公園に進軍した。なるほどジーパンよりはずいぶん風通しが良く快適。さすがに地べたや湿った岩に腰を下ろすのは躊躇されるが、ひとたび労働現場で着用すれば、どこで何をしようと平気な状態に変貌するだろう。いっそ古参労働者さんのようなヨレヨレの軍パン(カーゴパンツというらしい)でキメてみたい気もするが、あんがい高価だし、あれは外側ヨレヨレ内側ガッツリだから様になるのであって、人造見栄穴のジーパン同様、中身もヨレヨレだとただの詐欺になってしまう。

 日曜の雑木林や緑地公園には、多数のろりも棲息しており、特にパパさんママさんに連れられた、就学前のちっこい幼児が目立つ。思わずこっそり拉致できまいかなどと妄想していると、いきなり幼稚園ルックのたかちゃんたちが出現、入園式コントを始める。この半年間にも、ときおり出現しては単発ネタを披露してくれていたのだが、まとまった一場を展開してくれるのは実に久しぶり。そろそろ続き書いて、ってことなんだろうなあ。まあ幼稚園ルックだから、過去の外伝といったところか。