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03月31日 水  ややハイ

 夜の10時から昼の10時まで軽作業。内2時間は休憩だったので実働10時間。まあこんくらいが爺いの限界。なんとか『烏城物語』+二日間の飯代くらいは稼いだぜ。明日は昼勤だから、夜までは自由時間だぜ、イェイ。……などと言いつつ仮眠したら、もう夕方近いぜ。まあいいいや。どうせ1日48時間どころか72時間だったり、1年180日とか120日になりそうな狸の日々。

     ◇          ◇

 ところで帰り道、駅近くで改装中だった長崎屋が、いきなり『メガ・ドン・キホーテ』とかに変身し、華々しくオープンしていた。生鮮食品もある。要するに長崎屋とドンキの合体物件らしい。どでかいダイソーや新古本屋も出店している。おお、これで貧乏人の生活全般をカバーできるショップがついに地元に、などと期待して中をうろついてみたら――わっはっは、どんなにでかくてもドンキはドンキ、長崎屋は長崎屋、ダイソーはダイソー、新古本は新古本。結局、貧しい狸の欲する食材や日曜雑貨や教養物件は、以前どおり他店各所をハシゴしないと安く入手できないことが判明。
 まあ、それでいいのだろう。皆さん適当に住み分けて、つぶれないようにしてください。選択肢が減るのが、いちばんサミしい。

     ◇          ◇

 狸穴の番猫(いや、正確には狸穴が掘られている小山の番猫なのだが)が、近頃とみに肥大化してきた。本来野良のはずなのに、管理人さんや一階の老嬢たちがせっせと餌付けするので、近頃はもう食っちゃ寝食っちゃ寝の安泰生活なのである。今日は見かけなかったが、もう一匹の茶縞も同程度に肥大化している。

   

 ……誰か狸にも餌付けしてくれまいか。


03月29日 月  いなおる

 結局、己の現状にも他への不義理にもあえて目をつぶり、『烏城物語』を10500円(競り合う相手がひとりはいたわけです)で落札してしまった狸に、世間のことなど何も言う資格はないのだが、まあ世間の表通りのようなブログではなく、こんな個人HPの奥の奥までやって来てくださる方々は、今さら狸に世間なみの常識など期待していないであろうと思われるので、いつものように「……生きていてすみません」と力なくつぶやき、といって自死する度胸なども皆目ないので、本当に困ったことである。でもまあ、これで死ぬ前に森安先生の遺作の全容を知ることができるわけで、夜勤一回分程度の投資はやむをえない。……そうか?

     ◇          ◇

 残業して夜中近く帰って、さきほどMIXYを覗いていたら、ニュースだかなんだか判然としない話題の中に、クレーマーに対する対処法が記してあった。明らかにそーゆー仕事に関係ないシヤワセなライターさんの記事なのだろう、『土下座』などという項目もあって、脱力してしまった。
 自作の中で主人公の土下座シーンを打ったばかりだし、自分でも何度か経験があるので言わせてもらうが、土下座が通用するのは相手も正気な場合のみである。ところがいわゆるクレーマーさんの中には、かなりの割合で『誠意なんていらない。常軌を逸する程度の慰謝料がほしい』とか『謝罪など不要。ただ自分が高圧的に猛り狂いたいだけ』という方も含まれるので、そんな場合は、土下座しようが泣きじゃくろうが切腹してモツをさしあげようが、許してはもらえないのである。まあ前者は常軌の逸し具合に応じて対処するしかないし、後者は発作が治まるのを待つしかない。
 無自覚な土下座は己の品性や人生を歪ませるので要注意、と、すでに両方歪んでしまった狸が言っております。……俺や。

     ◇          ◇

 さて、明日は夜勤なので、それまでは自由時間だ。そろそろヘルパー講座の通信分を終わらせないと、6月までに実習終わらんぞ。
 などといいつつ、更新したばかりの打鍵物を再チェックしたり、早くもご感想をいただいた皆様に感謝のコメ返しさせていただこうと思っている、明日のない狸です。


03月28日 日  天気晴朗ならず波高いんだか低いんだか

 昨日の朝に夜勤が明けて、次の仕事は明日の午前中からである。半連休といったあんばいなので、寝たいだけ寝たり打鍵したいだけしたりして、例の茉莉花物件も半月ぶりに更新できそうだ。しかし、どんどん伸びる。それはもうなんぼでも伸びてゆく。当初は100枚程度に収めるつもりだったのが、狸の場合、自立したキャラには行動制限を設けない主義なので、もう220枚に達してしまった。最終的には300枚を越しそうだ。わっはっは。それで食わないアマの特権特権。

     ◇          ◇

 嫌なこともある。行動時間のズレのためか、このところしばらく会わないですんだ街宣車に、駅前で遭遇してしまった。あいかわらず、アホはアホな話を胴間声で喚き回っているのである。俺たちはアホではなく行動右翼だと言いたいらしいが、仲間内でちまちま車におさまって街中だけうろつている右翼が、どこの世界にいるというのか。そんな暇があったら色丹にでも上陸しろ。だいたい言ってることを聞いてると、ほとんど米帝の手先か北の家族(金さん一家のことです)か、そんな感じだぞ。貴様ら、真実、皇《すめらぎ》のため花と散り、護国の礎となる性根があるのか――なんて、ちっともないから、街中で適当にうろついてるんですね。

     ◇          ◇

 さて、問題です
 28日午後5時の現時点、狸は、マジに頭を抱えている。
 ヤフオクで、森安なおや先生の遺作『烏城物語』を見つけてしまったのである。出版は1997年。東京近辺でドカチンやっていた先生を故郷の岡山に呼び戻そうと、昔の同級生などが尽力して出版した、2000部限定のいわば同人誌、じゃねーや、個人誌ですね。そして森安先生は1999年、結局、東京の立川のアパートで孤独死を迎えた。
 以前から何年かに一度ヤフオクにも出ていたが、数千円から一万円にもなるので、狸は手を出せずにいた。ところが今、おそらく狸自身が明日をも知れぬ状態を続けているからこそ、死ぬまでに森安先生の遺作を手元に置かねば、などと思ってしまうのである。現在狸穴に所蔵されている森安作品は、学生時代に神保町で掘り出した昭和34年発行の少女向け貸本『星』、それに掲載された『星の十字架』をのぞけば、今でも楽に入手できる唯一の共著物件『トキワ莊青春物語』に再録された、掌編三作のみである。
 ちなみに『星の十字架』は、当時の貸本のこと、当然画力レベルは低い。それは森安先生以外の方も同じで、実際、現在でもまともに鑑賞できるのは、超ベテランにして少女挿絵画家の大御所・高橋真琴先生による表紙絵と、本編ではベテラン今村洋子先生の作品くらいで、あとはみんな小学生のポンチ絵みたいなものである。後に今村先生同様一般少女誌の売れっ子となった鈴原研一郎先生が、森安先生よりどーしよーもない絵を描いていた時代である。若き天才・石森章太郎だって、デビュー当時は、今なら小学生レベルの絵を描いていたのだ。ほんとよ。
 閑話休題。
 で、問題です。今回発見した『烏城物語』、開始価格が始めっからドーンと1万円。そのためか、終了時間が明日の夜であるにも関わらず、まだひとりも入札していない。出品者は、たぶん『まんだらけ』あたりの、2万を越えるとんでもねー販売価格を参考にしたのだろうが、あれはあくまでサブカル界の価格破壊王(上方向ですね)による、煽り価格なんだけどなあ。やはり数千円で開始して、まあ最終的に1万前後で落ち着くのが、一般的パターンだ。――そう、つまり1万円止まりなら、けして法外ではないのです。
 しかし今月は、それでなくともパソの買い換えで、1万近くを費やしている。もしここでさらに大枚1万円を投下してしまったら、来月は1日2.5食どころか2食以下に落ちるのが必定。座業ばかりならともかく、けっこう動いてんのよ。森安先生級の撤去現場ではないが。
 ……しかし、森安ダイエット……それもいいかもしんない……じゅるり。
 などと思い始めている狸は、もはや余生を捨て去っていると思うが、どうか。

     ◇          ◇

 亀田興毅君、初防衛に失敗――。
 残念だが、再起してほしいものである。父親がまた暴れまくっているようだが、まあ子供に父親は選べないので、宿命として諦め、冷静にがんばってほしいものである。当の父親や他の弟はどうでもいいけど。
 いや、弟だってまだ若いんだから、親父の馬鹿に気づく日が来るかもしれないな。父親は年齢的に考えて更生は難しそうだ。ボケるまでは荒れ続けるのだろう。しかし、ほんとにこの国は、イケイケ育ちの中高年幼児が多い。……狸もだけど。


03月25日 木  先を越された

広島・福山市で、コインランドリーに不当に侵入したとして、17歳の少年が逮捕された。少年は23日午後にコインランドリーの乾燥機の中で寝ていたところを近所の人に見つかり、警察に通報された。警察の調べに対し、少年は「家出をしており、約1週間前からここに寝泊まりしていた」と話している。(日テレNEWS 3月24日 18:34)

 ――あう、先を越されてしまった。
 いや、先年、近所の銭湯がつぶれて駐車場になった代わりに、どでかいコインランドリーが併設されたのだが、そこの一番でかい乾燥機で毛布やタオルケットを乾燥するたび、これは狸穴に転用できるのではないかと思っていたのである。丸くなれば、人間サイズの狸でも寝られそうだ。予熱で冬もあったかそうだし。しかし、上のような報道があると、なんか真似しにくくなってしまう。
 いいじゃないか寝かしといてやれば、と思いつつ、現状の狸穴で生きるため、日々探食にうろつく狸が一匹。


03月23日 火  たいしたもんだ

 オバマ大統領、やりましたね。
 こっちの国では鳩山さんだか小沢さんだかが、雪崩のように崩落する支持率にもめげず、あいかわらず檻の中の回転車で駆けまわるリスのような虚しい堂々巡りを続けているが、同じような支持率低下を真っ向から受け止めつつ、米国であの形の医療保険改革の端緒を開いたということは、確かにノーベル平和賞に値する偉業である。
 多くの反対派米国民の不安は当たっている。今、あのように税金を食う社会改革は、確実に景気悪化を促進させる。民間保険で足りていた中流以上の国民にとって、それこそなんのメリットもないだろう。かつてさんざん虐げられ尽くした人々と同じ色の肌をした男が、地道に、真摯に、バビロンシステムの土台に蟻の一穴を穿とうとしているありさまは、狸にはとても快感である。『国民皆保険』は、相互扶助ではない。自由競争から最も遠い理念であり、医療関係限定とはいえ、まさに金を上から下に自動撒布するシステムである。
 米国も、日本も、世界も、総体的にはもっと貧しくなるべきなのである。少数の富者と多数の貧者で構成されざるをえない資本主義経済システムを本気で改革しようとするなら、中間値は当然、どーんと下落する。それでいいのだ。でなければ餓死する子供など永遠にこの地上から減らない。
 しかしオバマさん、暗殺されないように気をつけてくださいね。いや、マジで。

 さて、あとはイケイケ現代中国が、いつ我が国のように高度経済成長の限界を迎えてくれるか。
 できれば狸も橋の下でミイラ化する前に、人類の次のステップを瞥見したいものである。そこがまた歴史上なんの進捗もない修羅の戦の世であるにしろ、苦い諦念を越えた慰撫の世界であるにしろ。


03月20日 土  100円の幸福→無料の不幸

 また掘り出し物の話である。仕事帰りに駅前のブックオフの100円コーナーで、『夜光死体』を見つけてしまった。1980年発行の旺文社文庫、英国怪奇小説のアンソロジーである。以前、他の怪奇小説類といっしょに売り飛ばしてしまい、あとで激しく悔やんだ物件でもある。
 収録作の大半は、いつでも再読可能な、他の怪奇アンソロジーでも御用達作家連の著名作だが、その中に2作ほど、ビクトリア朝の珍品(当時は人気作だったらしい)が混じっており、これは他では再読できないのである。特にバーナード・ケイペスの『月に撃たれて』のごとき疑似科学トンデモ・オカルトは、古色蒼然とした文章とあいまって、実に趣がある。
 深夜の山中、滝の水の重なりが複数のレンズの役割を果たし、主人公は背後の洞窟から月面の地獄を遠望してしまう――そんな話である。ドイルやウェルズと同じ時期ですね。大砲式ロケットに乗って月に行き、月人たちと遭遇する――そんなウェルズの『月世界最初の人間』がSFの元祖だとすれば、ケイペスのほうは望遠鏡の科学など取り入れながらあくまで宗教的オカルトなのだが、そこがまた古風で美味。
 目の利く古本屋なら1000〜2000円で商う物件を、発行年月日が古いというだけで惜しげもなく100円棚に並べてくれる新古本チェーン、文化の敵とはいいながら、物好きな貧乏狸には必要悪になりつつある。

     ◇          ◇

 一方、掘り出されずに永遠に土中に埋まっていてほしい代物もある。『ステルス』などという戦闘機アクションっぽいタイトルに惹かれて地上波の深夜映画を録画し、再生開始後3分で消去してしまった。最新CGを駆使した超戦闘機に、いきなり馬鹿が乗っている。その馬鹿は近未来アメリカ海兵隊のトップガンなのだそうだ。近頃のハリウッド映画って、馬鹿でも監督や脚本を担当できるんですね。これなら、あの悪名高いエド・ウッド原作・脚本の『死霊の盆踊り』でも観ているほうが、モノホンのおねいちゃんたちの乳や尻が揺れているだけマシである。
 まあ、日本の映画やドラマや深夜お色気バラエティーだって、乳や尻だけ揺らしときゃいいものを、小学生なみのシナリオや進行台本だのがあるばかりに脳味噌が腐ってしまうケースが多いわけで、ならばやはり『死霊の盆踊り』のように、全編の9割が乳や尻だけなので脳味噌は腐るも腐らないも初めから関与しない、そんな潔さのほうが、人類の産物として遙かに愛しく思われるのだが、どうか。

     ◇          ◇

 さて、明日は休みだ。さあ鬱ぞ、じゃねーや、打つぞ。


03月18日 木  不規則正しい生活

 夜10時から朝7時まで働く(内1時間休憩・夜食)→朝7時から9時まで自由時間(朝食)→朝9時から夕方6時まで働く(内1時間休憩・昼食)→夕方6時から午前4時まで自由時間(夕食・打鍵などもここでまとめてやる)→午前4時から午後6時まで睡眠→午後6時から夜10時まで自由時間(夕食)。
 このところ、週に1〜2回は、こんな生活パターンになる。つまり、夜勤と昼勤がくっついてしまい、48時間で1サイクルになるわけである。狸の場合、小刻みに打鍵するのが不得手だし、へろへろ状態のほうが脳内麻薬も噴出しやすい。夜勤昼勤ともに軽労働という名の半重労働に当たってしまうと、帰宅後打鍵どころではないが、そこはそれ、たいがいどちらかは待機時間があったりして、どたばたしっぱなしということは少ない。
 計算してみたら、48時間中、労働時間16時間、自由時間(および移動時間)18時間、睡眠時間14時間、食事が5回。もちろん多少のズレは生じるし、残業もあったりするが、それぞれ2で割れば、量的にはまず恵まれた生活習慣に思われる。
 しかし問題は、気分的に2倍の早さで歳月が過ぎてゆく、という点である。風呂には、働きに出る前と帰宅後の2度入れるが、ゆっくりくつろいだり打鍵したり寝たりするのは、あくまで48時間に1度だからだろう。
 こーゆー生活を規則正しく続けると、どうも2倍の早さであの世行き、そんな気もする今日この頃。


03月17日 水  追想

 BSで、1956年のハリウッド映画『追想』を、高校時代以来の再鑑賞。ロシア革命後の皇女アナスタシアを題材にしたサスペンス・ファンタジーである。
 精悍盛りのユル・ブリンナーや、女盛りのイングリッド・バーグマンや、老女優ヘレン・ヘイズの名演がてんこもり。帰宅直後に始まってしまったので、録画しておいて後でじっくり観ようかとも思ったのだが、冒頭部で惹きこまれてしまい、結局お茶だけ飲みながら炬燵に居座ってしまった。いやあ、昔観たときも美味しい映画だと思ったものだが、今観ると美味しさ三倍(当社比)、ラブ・ロマンスとしてもサスペンスとしてもファンタジーとしても心理映画としても文句のつけようがない、『ローマの休日』に並ぶエンタティンメントであった。
 昔、山形の今はなきちっぽけな名画座で観た高校生の頃は、熟女の魅力など知る由もなかったし、『作り話をする側』としてもごく幼かったので、当然『ローマの休日』とは100%別物の印象だったのだが、50過ぎのスレた脳味噌には、同工異曲、じゃねーや、異工同曲と言ってもいい作劇に見えたりもする。登場人物の性格や立場も、ストーリー展開もラストもまったく違ってはいるのだが、なんといいますか、細かい趣向を反転させただけで、構成要素自体は同じなのですね。おまけに『追想』のほうは、実に大人なハッピーエンド。
 しかし、ハリウッド映画に出てくる王女様や貴族の世界って、なんでこうキショクいいんでしょうね。イタリアのビスコンティ映画に出てくる貴族界の頽廃美とか、旧ソビエトの大作歴史映画に出てくるモノホンっぽいけれど空虚な豪華絢爛ロシア宮廷ショーとか、そうした『地場産』には絶対に観られない、憧憬美の世界なのですね。自分たちには絶対に手に入らない世界への、永遠の憧憬。考えてみれば、ビンボな狸の紡ぐ法螺話内に、やたらハイソな連中が美しい形で活躍するのも、たぶん同じ感情からなのだろう。


03月15日 月  68円(税込み71円)の幸福

 久々のお休み、午後まで12時間寝倒して、例のホームヘルパー2級の通信講座テキストなど2時間ほど進めたあと、餌を求めて例の食品系バッタ屋さんに這いこむ。
 ここの68均コーナーは、食品だけでなく日曜雑貨もある。当然68円で売っても損しない物件ばかりで、品揃えにも波があるが、けっこう立派な靴下が段ボール積みで投げ売りされたりもして、狸が日々人間に化けるとき履いて出る靴下は、ほとんどそのとき、まとめ買いしたものだ。
 で、今日は、なぜかCDが並んでいた。ダイソーあたりで扱っているCDとはまた感じが違い、どうも狸が正業に就いていた頃にロードサイド店の一部で扱っていたような安売りCDの不良在庫が、流れ流れてバッタ屋さんに落ち着いた、そんな風情である。内容は例によって例の如く、版権切れのLPからコピーしたような古ジャズや古ポップス、童謡唱歌落語講談浪花節などが多い。その中から、童謡や愛唱歌の寄せ集めが10曲ばかり収録されている一枚を発掘し、収録曲を確認してびっくり仰天。杉並児童合唱団やNHK東京放送児童合唱団に混じって、あの、久保木幸子ちゃんの『星の界』が入っている。ちゃん、などと言っては失礼か。狸などよりは確実に年上の、SP盤時代から活躍していた少女童謡歌手なのである。
 うわあ、まだ活躍しておられたのだ。しかしなんぼなんでも現在2010年、古い録音にしても、大人になってからのものだろう。でもやっぱり懐かしや懐かしや――と、喜々としてカゴに入れ、得体の知れない紅茶パックや聞いたこともないブランドの袋ラーメンなどと共に狸穴に持ち帰って、さっそく再生して二度びっくり。まるで子供時代の声なのである。よく聴けば、最盛期(童謡歌手が少女雑誌のグラビアや記事で大人気だった、昭和20〜30年の頃)の録音よりは、丸みや艶が増している気もする。しかし、狸も聞いたことのある成人後の歌声は、すでにクラシック的発声に移行した、あくまで女性の声だったはずだ。よほど昔の音源をコピーしたのだろうか。いや、それにしては音質がよすぎる。針音ひとつ、テープノイズひとつ窺えないのである。CD作製時にデジタル修正した音源なのだろうか。それとも、狸より年上の声優さんたちのように、今でも少女声で歌えるのか。
 いずれにせよ、68円で、ずいぶん得をした気分である。


03月14日 日  アナグリフUFO

 さて、先週も、いつ寝ていいんだか寝ちゃいけないんだか朝が夜なんだか夜が朝なんだか判然としなかった狸であり、『謎の円盤UFO』に興味のある方も何人かここを見ているはずなのだが果たして赤青メガネを所有しているのかどうかも疑わしいわけであるが、またぞろ、アナグリフの連投なのである。
 いや、そのフリーソフトが実にスグレモノで、ステレオ・ペアの原版さえあれば、ものの数秒でアナグリフ画像ができてしまうもんで、楽しくてしょうがないのである。30分もあれば、こんだけできてしまうのである。しかも明日は休みなのである。



 ビューマスターのリール3枚ひと組ぶん、全21コマのアナグリフ――。
 まあ、色に関してうるさく言いはじめるときりがないので、すべてソフトまかせなのはご愛敬。ほとんどモノクロにしか見えませんね。
 でも、同好の士のつてを頼って話題のグラドル等身大アナグリフ・ポスターの一部を視認させていただいたら、一万円だの一万数千円などという法外な金を取るわりには、やっぱり赤青メガネに頼る以上、柔肌の色など完全再現できるべくもなく、肉眼で見たときの色と、等身大の迫力で脳内補正するわけですね。ステレオ・ペアにサイズ制限がないのだから、でかけりゃでかいほど緻密に見えるのである。むっちりリアルな立体感さえあれば、なんだかよくわからないけれど肌色かもしれない中間色のふとももだって、立派に肌色に見えてしまう。ドドメ色の唇もピンクに見えてしまう。それもまた男の性《さが》なのだろう。

 狸としては、ろり――とは言いません。サイズに比例して一万円以下で売ってくれたとしても、購う余裕はないのである。だから、たとえば生後1ヶ月くらいの小狸とか子猫とか、なるべくちっこくてかわいいのの、ほわほわの毛並みまできっちり見える等身大立体ポスターを、サイズに比例して何百円かで発売してくれまいか、そう切に願うわけなのであった。


03月12日 金  アナグリフ3D

 YouTubeあたりで、昔懐かし『赤青メガネ』による立体視が、復権しそうなあんばいである。
 昔から、立体写真のブームは約20年周期で訪れているわけだが、いよいよネット動画も参入か――なんて、立体写真マニアの方々は、10年以上前から、個人HPで立体動画も発表してるんですけどね。
 で、狸もフリーソフトをダウンロードして、静止画ながら赤青アナグリフを試してみた。さすがに色彩的にはどうしようもないというか、はじめから『赤青メガネ』を考慮して被写体を選んだり、話題のグラドルさんたちの等身大アナグリフ・ポスターのように、それこそ衣装や口紅の色まできっちり色彩設計しないと、どうしても原色部分が破綻する。
 とりあえずカラーも試してみたが、やっぱりモノクロのほうが自然に立体視できるようだ。もし『赤青メガネ』をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ためしに覗いてみてください。表に並べてある平行法や交差法の画像とちがって、なんぼ大きくても練習なしに肉眼で鑑賞できるのがミソですね。

          
          花笠なので、いちおうカラー。
          でも、やはり赤や青はメガネをかけると、濃淡違いのチラチラ灰色になってしまう。
          そのほかの色も、変色脱色しまくり。

          
          やっぱりモノクロにしたほうが、なにかと自然に、でっこまひっこまする。

              
              カラーでも中間色ばかりなら、まあ自然に見られるようだ。

          
          でもやっぱり、モノクロがおちつきますね。

 ちなみに『赤青メガネ』は、YouTubeや3Dブームのおかげで、ネット通販物件が多数あるようです。狸は、大昔の雑誌のオマケを使用してますが。文房具屋や、でかめのダイソーで売っている子供向けの工作用色セロファン、あれで自作するのも一興。


03月10日 水  ノーブレス・マラード

 地上デジタル放送への切り替えを促すため、長谷川憲正・総務政務官はアナログ放送の一時停止の検討を指示した。デジタル対応への遅れを視聴者に認識させる荒療治として、米国でもアナログ停波を実施したことがあるが、実現には曲折がありそうだ。
 地デジ対応受信機の世帯普及率は、09年9月時点で69.5%と、目標の72%を下回っている。ビル陰などの受信障害がある世帯が利用している共同受信施設(共聴施設)に限れば、地デジ対応は25.8%と、10年3月末の目標値50%の半分にとどまっている。
 9日の政務三役会議で長谷川政務官が「政府のCM枠内ででも『今から10秒間、アナログ波を止めます。止まった方は地デジに非対応なので早急に変更を』と呼びかけられないか、事務方に検討してもらっている」と説明した。
 石川県珠洲市では今年1月、48時間にわたってアナログ波を実験停止したが、大きなトラブルはなかった。ただ、ある放送局の広報担当者は「全国一斉では苦情が殺到するのでは」と話す。【望月麻紀】(毎日新聞 - 03月09日 21:14)


 まあ、どうで昨今の金持ちのやることだから、貧乏人としては笑って許してやるしかあるまい。体制側が焦っているのは、あくまでバビロン・システムの弱体化を恐れてのことであって、下層民の意識向上には、地上波など衰退したほうが有効だ。狸的には、もう地上波で毎週録画しているのは『鑑定団』くらいのもので、BSでもやっているから困らない。やらなくなったら、それもまた縁起である。

     ◇          ◇

 いよいよ、例のザル法『児ポ法』が、仮想物件(単純所持含む)まで及ぼうとしているようだ。まあ、どうで昨今の金持ちの思いつきだから、貧乏人としては笑って見ているしかあるまい。昔は金持ちでないと『裏でこっそりお楽しみ』は難しかったが、今はネットのアンダーグラウンドで、なんとでもなる。いざとなったら刑務所でタダ飯を食うだけの話だ。
 しかし、あいかわらず実在女児の合法パンチラやTバック業界はお元気で、モデルたちも順調に身を持ち崩し続けている。賢く早々に引退したり、一般アイドルに進める女児はほんの一握りだ。彼女らの表情やボディーラインが、まだ十代だというのに急速に崩れていく様など見ていると、本当に胸が痛む。生活を維持するためには、品性を切り売りするしかないのである。せめて立派な娼婦の心意気に目覚めてくれるのを祈るばかりだ。

 ろりが至高なら、聖娼婦も上等。
 そして歴史上、それらに、またそれを描く者たちに、完全な枷を嵌められた司法など存在しない。


03月09日 火  心のお鍋に、天然おダシを

 昨日も今日も、ハンパなく寒かった。とくに本日は、狸穴ではなく吹きさらしの倉庫にいたため、朝夕などマジに息が白いのである。体は動けば暖まるが、指先は軍手をはめていても悴む。
 こーゆー日の晩飯は、お鍋に限る。帰途、るんるんと駅前のスーパーの食品売り場に寄って、愕然とした。チョンガー鍋が消えている。野菜売り場の『お鍋用パック』も、鮮魚精肉の『ちょっとお鍋』も、きれいさっぱりフェイス自体がなくなっている。冬季限定らしかった野菜売り場はともかく、鮮魚精肉コーナーでは去年まで通年の定番だったはずだが、改装で方針が変わったのだろうか。まあ全国チェーンの大手スーパーが、一度「この立地でチョンガーに鍋を与えるのは2月で終了」と決めたら、3月に雪が降ったからといって急遽復活しないのは、システム上、理解できる。しかし理解と納得はまったく別である。「野菜くらい自分で集めて刻めばいいだろう」という世間の道理は、日雇い暮らしのチョンガーにとって、なかなかに酷い道理なのである。スーパー側にしても、この2日間に『ちょっとお鍋』を扱っていたら、けっこうな売り上げになったはずである。
 ことほどさように、ガタイの肥大化した連中が要領よく世渡りしようとすればするほど、人の心という道理に、でっけー穴を開けてしまったりもしがちだ。
 近頃のエコ・キャンペーンなんぞも、そうですね。見まい見まいとし続けてきた大穴がとうとう見ざるを得なくなってしまったので、今度は「もう手遅れ」ということを見まい見まいとして騒いでいる。大丈夫ですよ。そう簡単に地球さんは死にません。人類が滅びればいいことです。
 ……しかし、チョンガー鍋の恨みから人類を滅ぼしてどーすんねん、狸。

     ◇          ◇

 田川氏のミクシィ日記で、すばらしいアニメ作品を紹介してもらったので、思わず情報転載。
 題して『小さなお魚さん』。ロシアの個人作家さんの、手作り切り絵アニメだそうだ。狸は、すでに数回、通しで浸りました。ああ、涙腺がゆるむ。でも口元も、しまりなくゆるみ続ける。
 どうか皆様も、存分におゆるみください。10分弱の作品なので、ちっとも根性いりません。

               

 ディズニーやピクサーやジブリが、ガタイのでかさゆえ見失いつつある『心のお鍋』が、ここには、日々コトコトと優しく弱火で煮こまれております。
 たかちゃんたちが遊んでいるのも、茉莉花館が漂っているのも、どうか、こんなお鍋の中だと思ってやってください。


03月07日 日  フランケン・パソの花婿

 えー、まずはマイクロソフトさん、このところのたび重なる悪口、どうもすみませんでした。パソの不調は、やっぱりハードの劣化だったようです。一昨日金曜の夕方、鬼のように打鍵している最中、いきなり心臓麻痺で倒れ、それっきり息絶えました。
 新調して4年と3ヶ月という寿命はあまりに短すぎる気がして、鬼のような顔のまま蓋を開けてみると、また電源まわりが黒っぽい。そうそう暑い部屋ではないのだが、狸穴の本妻パソは、なぜか代々電源が壊れて先立つ。ファンだってたまにはきれいにしてやってるのになあ、ぶつぶつぶつ。
 とりあえず骨董級のノートパソはあるが、現在打鍵中の物件はしばしばネットで確認したい要素が登場するので、通信速度やウィルス対策は必須である。電話回線モデム育ちで歳のわりにはウブな愛人(Windows98のノートのこと)を、現在の黴菌だらけのネットに晒すわけにはいかない。鬼のような顔のまま速攻アキバに走り、ソフマップで中古を見つくろう。予算は日給一日分。それしか使えないのだから仕方がない。手間暇かける余裕があれば半自作の手もあるが、そんな時間はない。電源が加熱していたということはCPUだって怪しいから、使い回す気にもなれない。とりあえず2006年型のDELの中古があったので、8800円払って担いで帰った。付属品は電源コードだけの、OSもマニュアルもない裸一貫だが、電源とCPUさえ元気ならば、OSやたいがいのパーツは使い回しが効く。そのために、代々どでかいデスクトップを本妻にしているのである。
 夜中までかかって、前妻の死体から使える臓物を抜き、担いで帰った仮死状態物件に移植する。幸い脳味噌の記憶中枢(もとのCドライブのこと)は生きていたので、そっちをケーブルごと移植して、余ったHDDはスレーブに追加。つまりOSやアプリの再インストールは原則しないで済んだ。グラボやDVDマルチドライブもつつがなく移動。さすがにフロッピードライブを入れるマウンターはなかったが、ノート用の外付け物件があるので無問題。こりゃラッキー、などとひと安心して、さて、ネットに繋ごうとしたら――わっはっは、オンボードのLANが蘇生しないではないか。死んだ妻もLANはオンボードなので、移植もできない。手持ちのドライバ類も、まったく当たらない。新妻には、よほど偏狭な回路が乗っているようだ。鬼のような顔のまま、とりあえず寝てしまう。翌日は仕事なので、種々の設定も後回しである。
 で、昨日土曜、早朝から夕方まで弁当工場で自動お握り機にコンテナの飯を放りこみ続け、帰りにネット喫茶に寄って検索してみたら、どうも正規付属のリカバリCDがないと完全蘇生は無理っぽい。ふん、いいもんいいもん。どうせこんなもんだろうと思ったもん、などとすねまくりつつ、津田沼駅前の大手電機屋に寄って、PCIのLANボードを860円で購入。結局合計1万円近い出費になってしまったが、160ギガの内蔵HDDも増えたことだし、まあ、良しとしよう。するしかないだろもう。日曜も仕事なんだから。
 と、ゆーわけで、食肉工場での包丁仕事から帰った本日夜、もとい月曜未明現在、お豆腐のように白かった前妻の代わりに、なんか真っ黒けの新妻(一部だけ奇妙に白い)に狸穴の家風を仕込み終え、ようやくゆっくりお茶しながら睦み合っているのだが――もし内緒のビョーキかなんか持ってたら、なるべくひと月以内に先立ってくださいね。ソフマップの返金保証が受けられますんで。

 さあて、明日、とゆーか今日は、また休みだ。さあ、打つぞ。……でも、ちょっと寝て暮らしたいかも。


03月04日 木  復活(するしかない)

かばうま「はっはっは! かばうまです! 今日も元気に必要以上に働かされてきました! 動悸と息切れが止まりません! これで眩暈も始まったら、マツキヨで『求心』!」
たかこ「おう。たぬきさん、かばうまさんに、もどった。がしがし、がし」
ゆうこ「……ほっ。……なでなで、なで」
くにこ「んむ。この、きみょうなまでのあかるさは、『線香花火の最後の輝き』と、ゆわれるげんしょうだな。なまんだぶなまんだぶなまんだぶ――。しかし、もえつきるときは、たぬきにもどってほしいものだ。かばうまは、でかくて、さばきにくい」
かばうま「はっはっは! 明日は休みだ! さあ、打つぞ!」
くにこ「――むごいようだが、それは、『アブれ』、とゆわれるげんじつだな」


03月03日 水  楽しい雛祭

くにこ「さあ、ことしも、めでたいひなまつりが、やってきた。で、れいによって、たかこやゆうこといっしょに、たぬきのへやに、たかりにきたわけだが――」
たかこ「ありゃ」
くにこ「どーした、たかこ」
たかこ「たぬきさん、へん」
くにこ「へん? まあ、たぬきといっても、かばだかうまだか、ようわからんようなたぬきだからな。いつだって、ふつーじゃないんだが――おう、なるほど。おれも、もう8ねんこのよにいきているが、へやのかどっこで、せなかをまるめてひざをかかえてせけんにせをむけていじけているたぬきとゆーものは、うまれてはじめてみたな。これは、みものだ」
たかこ「でも、ないてる」
ゆうこ「……たぬきさん、かわいそう」
たかこ「うりうり」
ゆうこ「なでなで」
くにこ「あー、こらこら。たかこもゆうこも、たぬきをあまやかしては、だめだ。ほら、この、こたつのうえに、かくてーしんこくしょのひかえ、とゆーものが、ある」
たかこ「かくてーしん?」
ゆうこ「こくしょのひかえ?」
くにこ「んむ。――まあ、しょーじきおれにもなんだかよくわからんが、これをみると、にんげん、どーしても、じぶんをあわれんで、ないてしまうものなのだ。おれのおやじやおふくろも、まいとしこのじき、だきあって、ないているのだ。んでも、たぬきのばあい、いっぴきぐらしだからな。んだから、ひとりさみしくへやのかどっこで、せなかをまるめてひざをかかえてせけんにせをむけて、いじけているのだな。んでも、だいじょぶだ。にんげんもたぬきも、じぶんでじぶんをあわれんでいるうちは、ほっときゃいいのだ。きがすむまで、なかしときゃいいのだ。んでも、たにんをうらむよーになったら、はりとばしたほうがいいな」
ゆうこ「……でも、やっぱり、かわいそう。……なでなで」
たかこ「うりうり、ぷよぷよ」
たぬき「ぽちぽち、ぽちぽち」
たかこ「おう。たぬきさん、なきながら、なんか、ぱそこんしてる」
くにこ「んむ。きっと、よをはかなんで、いしょをかいているのだな。まあ、しにたいやつは、かってにしなしときゃ、いい」
たかこ「えーと――『こうして優子ちゃんは全宇宙を救った女神として永遠に崇め奉られ、タカは優しい両親の腕に抱かれ、クーニは故郷のオーメで念願の酒場を開きましたがすぐに倒産し、アル中のホームレスとして惨めにのたれ死んだのでした、まる』と」
ゆうこ「ぽ」
たかこ「はっはっは」
くにこ「……そうか。こんやのごちそうは、たぬきじるか。――くぬ、くぬ、くぬ!」
たぬき「ぐえええええ」


03月01日 月  まだ

「やっほー! まーだだよー!」
「んむ。これは、まだだな」
「……ごめんね、ごめんね」