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10月31日 日  温故失熱

 確か一昨年の秋口に、ふとしたことからずっぷしハマった、もう10年近く前のエロゲー『WHITE ALBUM』――今でも理奈ちゃんのキャプチャー画像を自己ツッコミに使用してしまうほど愛着の深い狸なのであるが、去年のアニメ化も今年のプレステ3用リニューアル物件も、実はまったくフォローしていない。

 一部のエロゲーおたくには周知の事実だが、オリジナルの『WHITE ALBUM』でメインのシナリオを担当し、あの珠玉の三角関係青春ワールドを造りあげた原田宇陀児さんの名前が、アニメやリニューアル物件のスタッフロールには、いっさい登場しない。どうもオリジナル版の制作後、社長と喧嘩してバックレたためらしい。まあ、もともと社員ライターであり、著作権などは会社にあったのだろうから、その後のアニメ化やリニューアル版には『原案・アクアプラス』『脚本・アクアプラス』、ただそれだけ表示しとけば法的にはなんの問題もないのだろうが――創作行為って、そんなもんじゃないだろう。
 そして、巷では多くのファンに好評をもって迎えられたらしい、カワタヒサシさんの原画の変わりっぷり。確かに昔と違ってデッサンの狂いは減ったし、万人向けの洗練されたキャラデザでもあるのだろうが、正直、凡百のアニメ絵にすり寄っただけではないのか。そりゃプロとして生きていくためには売れる絵を描かなきゃ食えないのも重々理解できるが――創作行為って、そんなもんじゃないだろう。狸としては、必ずしも万人の好評は得られなかったにせよ、オリジナルの『WHITE ALBUM』で萌芽し『誰彼』で完成した、紛う方無きカワタヒサシ印の、あの個性的なキャラたちが懐かしくて仕方がない。

 まあ、そんなこんなで、原作とは別物っぽいアニメだけでなく、原作ファンにも好評を得たらしいPS3用リニューアル物件にも、いまだに手を出していない狸なのであるが――考えてみりゃ、どっちも買う金ないのね。いわんやPS3のハードにおいてをや。


10月28日 木  魔法の調味料

 腐った肉を美味しくする「魔法の調味料」は飲食店の必需品…南京  Y! 【社会ニュース】 2010/09/22(水) 14:50

 江蘇省南京市では、多くの飲食店が肉質を改善する目的で、「嫩肉粉」と呼ばれる粉を使っている。「腐りはじめていても、水洗いして嫩肉粉を使えば、新鮮な肉と同じ味・食感」になるので、“重宝”されているという。チャイナネットが報じた。
 特に焼肉店の場合、「嫩肉粉」を使っているケースがほとんどという。羊の焼き肉が主流だが、南京市周囲は羊の産地でないため、冷凍されて遠方から輸送されてくる。「嫩肉粉」を加えれば、「新鮮な肉」になってしまう。その他の料理でも、「嫩肉粉」は一般的に使われている。
 中国では国家基準で、食品添加物として「嫩肉粉」を認めている。主成分はたんぱく質分解酵素だ。しかし実際には、リン酸塩や炭酸ナトリウム、さらに発色や風味を増すために亜硝酸塩も加えられている。
 最大の問題は亜硝酸塩だ。ハムなどの製造で一般的に使われているが、1キログラム当たり500ミリグラムまでと定められている。市販されている「嫩肉粉」を、「説明書」通り使うと、肉1キログラムあたり3180ミリグラムの亜硝酸塩を摂取する計算になる。腐敗しはじめた肉に使う場合、さらに使用料を増やすことが一般的だ。亜硝酸塩は300−500ミリグラムを摂取すると中毒症状を起こし、ひどい場合には死亡するとされる。少量でも食べ続ければ、発がん性があるとの指摘もある。
「嫩肉粉」をどの程度使うかは、「店の経営者の良心次第」という。30年以上にわたり調理師を務め、2009年に定年退職した鄭幼華さんは、「私は使う気になれなかった」と断った上で、「多くの飲食店で使っている。口当たりとコスト削減のためだ」などと説明した。使用のテクニックもさまざまという。鄭さんは「まして、自分の家で食事を作るならば、絶対に使わないよ」と述べた。(編集担当:如月隼人)

 おお、そんな便利な薬があったのか。彼の国でも節約のために使っているのだから、当然、肉そのものより遙かに安価なのだろう。狸が冷凍庫を入手する前にそんな薬があったら、食費を相当節約できただろうなあ。さすがにマジに腐った肉や、ぶっ倒れるほどの「魔法の調味料」は御免だが、腐りかけを腹を壊さず旨く食えるなら、多少のリスクは我慢できた気がする。

 狸はほんの2〜3年前まで、学生時代以来30年近く同じ小型冷蔵庫(当然製氷室しかない奴)を使い続けていたのである。冷凍室のある冷蔵庫を入手したのは、母親がケアハウスで暮らせる病状ではなくなりグループホームに転居したとき、母自前の冷蔵庫が余剰となったからだ。それまでは、さすがにナマの肉や魚や冷凍食品の場合、期限切迫処分特価品を買いだめするわけには行かなかった。現在は、期限が当日だろうがなんだろうが、安けりゃ冷凍庫に入るだけ買いだめしておけるのだが。
 氷付けにしてさえおけば、氷河期のマンモスだって食える。事実、ウン箇月前の精肉や、歳を跨いだ魚だって、冷凍食材として先進国でも立派に流通している。むしろ、その「魔法の調味料」が必要であるという事実に、彼の国の電力事情や冷凍技術や流通機構のなんかいろいろを、心から心配してしまったりするのだ。

          

 ご、ごめんなさい理奈ちゃん。そーゆー問題ではなかったのですね。
 でもさあ、狸ら世代のおっさんは子供の頃、三丁目の夕日の下で、防腐剤や添加物てんこもりに食って育ったんで、つい……。


10月25日 月  雑想

 毎日新聞 - 10月24日 21:53
 京都府警伏見署向島交番(京都市伏見区)勤務の20代の男性巡査が、交番前の歩道にパトカーを駐車したとして、道交法違反(放置駐車)の疑いで反則切符を切られていたことが24日、分かった。
 同署によると、巡査は今月17日午前1時半ごろ、2件の事件現場間を移動する際、地図を確認するため交番に立ち寄り、歩道(幅6.2メートル)に約5分間駐車した。交番の駐車場は門扉を閉じて施錠していた。パトカーの横は3.6メートル空いて歩行者の通行は可能で、巡査は「少しの間ならいいかと思った」と話しているという。
 道交法で歩道は法定駐車禁止場所で、パトカーなども緊急性がないのに駐車すると違反になる。近くの住民男性が目撃して110番通報し、23日に男性が立ち会って別の署員が反則切符を切った。
 竹内敏明副署長は「署員の指導を徹底する」と話している。【太田裕之】


 まあ別に大した話題でもないのだけれど、なんか和む記事であった。
 世の中には『なんの実害もないけど違法だから犯罪』は多いわけで、その「違法だ!」とふだんワメき散らす側が同じことなどやってれば、さすがに腹が立つ。わざわざ通報し、なあなあでごまかされないようわざわざ立ち会ったというその男性も、過去『なんの実害もないけど違法だから犯罪』で、反則切符を切られたことがあったのだろう。

          ◇          ◇

 倉庫作業が予定より早く終わってルンルンと帰途についたら、最寄り駅に電車が着くのとほぼ同時に、総武線がストップした。市川で人身事故があったのだそうだ。ズバリ、「さあ帰宅ラッシュ本番が始まるぞ!」そんな時刻である。ありがちな朝の跳躍といい、わざわざそんな時刻にホームに跳躍するのは、気持ちはわかるような気もするが、なかなかアレである。
 早急な現場の始末は困難な状況らしく、JR駅のアナウンスは、即座に地下鉄や私鉄への乗り換え案内を始めた。種々の路線が交差並行する地域なので、帰宅できない乗客は生じなかろうが、仕事に疲れ、一刻も早い帰宅を望む人間にとっては、なかなかキツい事態である。ままならぬ憂鬱が高じて、乗り換え路線のホームから跳躍したりしないよう、祈るばかりである。いや、本当の話。

 誰にも迷惑をかけずに死ねる幸福――それがきっと、今の世で一番、光ある幸福。


10月23日 土  生きている

 さて、特に雑想のネタもなく末端労働に勤しみ、暇があれば『茉莉花館』をしこしこと、応募用に一語一句見直すだけの日々である。ただ見直すだけだとついつい読み流してしまう部分が生じるので、ついでにPDF作成用のルビ多用テキストなども作っている。尺度としては、中学時代の自分あたりが、確信をもって音読できない漢字には、片っ端からルビを振る。以前の『月下美人』などとは違いルビだらけになってしまうが、そうした若い対象も想定して語った話だし、文章そのものから読み流しによる遺漏も減らせる。
 そうやってるうちに、封印中の『月下美人』にも、まだ単語の誤用が残っていたのに気づいてしまい、ついでに修正したりもしている。こっちも、最近の文庫本で改版される明治大正昭和の作品のように、ルビだらけにして放流してみようか。もともと、ほとんど同じモチーフで、雪辱戦やってるみたいなものなのですね、『茉莉花館』は。

          ◇          ◇

 ところで、表のカウンターが40000に近づいているようだ。たぶん、ほとんど同じ、推定十数名の方々が、日々加算してくれているのだろう。もし、いわゆるキリ番を踏まれた方がいらっしゃったら、絢爛豪華な記念品を進呈――したいよなあ、うん。
 ……とまあ、気持ちだけは、そーゆーことなのである。


10月19日 火  ドドメ色の自由

 伝言板にもカキコをいただいて恐縮したのだが、畏れ多くもマイミク登録させていただいていた古参ろり絵師の谷口敬氏が、ミクシィを強制退会させられてしまった。別に氏が非常識な文言を繰り返したわけでは、まったくない。こまめに日記にアップされていたイラストだって、ごく軽いエロチシズムを含んだユーモア主体のものであり、そもそも現代日本で『削除』などという概念にあてはまるものでは、ちっともない。おそらくは、ネタそのもの(ろり関係とか、朝ドラ『ゲゲゲの女房』関係とか)がなんらかの機械的チェックに引っかかり、ただ機械的に削除を繰り返され、それがたび重なったので機械的に『悪質会員』に振り分けられ、機械的にアカウント削除されたのだろう。いわゆるひとつのミクシィ名物『魔女狩り』ですね。
 同じ日記とイラストがアップされていても、ご本家HP『水の戯れ』は、当然ながら平穏無事に継続されている。そこいらが、大規模なコミュと個々のHPの違いである。たとえば狸が、ここの表にアップしている学生時代のイラストのある一葉、または裏に置いているM君以前(実は以後もあるけど)の街角少女写真の一部など、もしミクシィのほうにアップしたら、即刻削除の強制退会は確実である。機械に人の心根など気にする能力はないし、機械的チェック担当の非正規労働者には人の心根など気にしている暇がない。

 まあこの頃の大中国の反日騒動など見ていても判るように、際立って強欲な存在ほど、弱者には管理しやすい均一を望むものである。無論、それは精神的乖離を前提とした即物的支配にすぎないので、まあ最末端弱者としては、せいぜい乖離していないそぶりで「へいへい、わーりましたわーりました」などと言いながら、いざとなったら投石する相手を間違えない程度には理性的でいたい、そんな気のする今日この頃なのであった。

          


10月17日 日  夜の逃亡者

 さて、このところほぼ毎晩、その猫が夕飯を食いにくる。たいがいチクワやチーカマといった狸のツマミのお裾分けであり、特に奮発しても50円弱のペットフードだから、まあ大した負担ではないのだが――いまだに触覚による交歓を許してくれないのは、いわゆる『やらずぶったくり』ではないのか。
 本質が野良ゆえ警戒心が強いのは解る。しかし、餌を要求する段階では「な〜〜」などとしおらしく鳴いておいて、食後も部屋できっちりくつろぎながら、ちょっと遊ぼうとするときっぱり拒否して逃亡するってのはなあ。
 まあ、いい歳こいたオス同士、黙ってクールに飯食っとけってことか。


10月14日 木  夜の訪問者

 帰宅時、例の地域猫に玄関口で餌(本日はチクワ)を出したあと、奥の六畳でパソを立ち上げてメールチェックなどしていたら、隣の四畳半から、ばりばりばり、などと不穏な響きが聞こえてきた。猫が畳で爪をといでいるのである。上がりこむのはかまわないが、借間の畳を荒らされるのは困る。こらこらと立ち上がると、猫は素早く台所まで待避したが、まだ外に出て行く気配はない。そっちでひとしきりくつろぎ、やがて狸が四畳半で夕飯のヤキソバを食い始めると、興味深げに寄ってきて観察している。ちなみにヤキソバは好きではないようだ。
 狸穴猫にする気は今のところないが、試しに玄関のドアを閉めようとしたら、さすがに慌てて逃げ出して行った。今のところ特定の家に居付く気はなさそうだ。そりゃ地域猫として不特定多数のシンパから気ままに餌をもらって暮らすほうが、元野良が生きるには快適だろう。
 狸も人間に化けるのはやめて、いっそ野生に帰ったら、きっと餌付けしてくれる優しい人間も――いるわきゃねーだろ、おい。

  

 しかし夜の猫の目って、マジ光りますね。
 実は狸の目も、昔、群馬で写真屋やってた頃にお客さんが見せてくれた餌付け狸のスナップによれば、すばらしく光るはずなのだけれど。


10月11日 月  生き残る

 先日、ふと新聞の番組表に米良美一さんの名前を見つけ、ふだんなら一瞥もしないようなカラオケ特番を録画してみた。堺正章さんの司会で、ベテラン歌手本人の持ち歌の歌唱と、違うタレントさんの歌唱を、カラオケ機による評価得点で競わせるという、なかなか楽しめる番組だった。
 挑戦するほうのタレントさんは、ほとんど狸の知らない若手が多いが、中には米良さんのようなジャンル違いのプロ歌手も含まれており、またカラオケ機による評価という奴はあくまで公式的な音響分析なので、つのだひろさんだの水木一郎さんだの尾藤イサオさんだのの年季の入った熱唱が、あんがい得点に結びつかなかったりもする。あんまりスイングしちゃいけないし、魂レベルで叫んでしまってもいけないのですね。
 で、米良さんは『愛のままで…』を歌い、本家の秋元順子さんと対決したのだが――これは、実にいい勝負であった。両者、魂のこもった美事な歌いっぷりでありながら、カラオケ機による教条的評価でも高得点。つまり、教科書的な技工を押さえた上で、そこに魂や個性を上積みしている。さすがはクラシック系のテクニシャンと、老練の歌姫である。
 狸的には、往年の米良さんの美声が、かなりのところまで復活していたのが嬉しかった。クラシック時代から『もののけ姫』あたりを頂点とする、もはや人声を超越した禍々しいまでの美声は、残念ながら長続きしないようだ。若き天才としての魂そのものの肉体的表出は、長いスランプや体質の変化を経て、やはり失われてしまったのかもしれない。しかし、聴衆と相対したコミュニケーション・ツールとしての歌声は、さらに磨きがかかっている。番組中、ご当人が冗談交じりに言っていた言葉――「カウンターテナーとしてのレッテルでは、これからの長い人生を食っていけないので、芸能界で生き残るため、他にも色々できるところを見せたい」――それが偽らざる本音なのだろう。そして、それを完璧に見せてしまうところが、やっぱり天才というか、天声なのですね。
 以前の、超絶のファルセットでぶっ続けに繰り出す高域音楽世界は、確かに芸能史上の至宝だったが、現在の、地声の低音域からファルセットまでを縦横無尽に操る歌唱のほうが、表現できる世界は明らかに広い。
 数枚の至宝を残し伝説として消えるか、良貨として長く広範に流通するか――狸が一ファンとして望むのは、当然ながら後者の道である。


10月09日 土  転々するものすべては空

 叔父の葬儀に参列するため、昨日、日帰りで帰省した。
 葬儀の場所は、山形駅から西へ徒歩で30分ほど。昔狸が毎日通っていた小学校の通学路の途上に、いつのまにか立派な葬祭ホールが出現していた。
 駅のそちら方向は、狸の実家近辺も含めてすっかり再開発の進んだ馴染みのない道筋に変わってしまっている。ただ、小学校時代に見学した豆菓子メーカーの全国区大手『でん六』の工場だけは、今も昭和のままの場所に昭和のままの姿で存在しており、かえって名状しがたい違和感を覚えた。懐かいというより、ただそこだけが時代の変遷から隔絶し、しかし製品だけがタイムワープして平成の日本中の店頭にしっかり送られているような感覚である。
 亡くなった叔父は、婿養子に出て姓が変わっていたので、参列した親類筋も、狸の血筋よりそちらの一族のほうが多かった。しかし狸にとっては、幼時に同じ家で暮らしたこともあり、プラモデルの組み立てや写真関係の趣味でかなり薫陶を受けた、懐かしい『若き叔父』である。ここ数年、狸の母親同様アルツハイマーを患っていたとは聞いていたが、どうやら症状はずっと重かったらしく、その最期は食物を喉に詰めての窒息死とのこと。
 喪主をつとめた従弟も、大昔、怪獣映画のソノシートを譲ったりして親しんだ仲だが、狸の父の葬儀以来何十年かぶりで会ったその顔や体躯は、昔日の面影をすっかり失った立派な膨張ぶりであった。狸自身もすっかり膨張しているのだから文句は言えないが。
 叔父が婿養子に入った家は浄土真宗で、狸一族の曹洞宗とは葬儀時のお経関係が著しく異なる。木魚の代わりに拍子木のような音が響くのも馴染みがない。「なーまんだーぶー」だけでなく「おんあぼきゃあ」も欲しいところだ。物足りないので声には出さずに「おんあぼきゃあべえろしゃのうまかぼだらーまにはんどまじんばらとらばりたやうーん」などと、自給自足で叔父の往生を祈る。
 帰途、再び『でん六』の工場前を通り、「そういえばここの脇道からちょっと東に行くと邦子ちゃんの家があったのだなあ」などと回想したが、無論、昭和30〜40年代の街がそこに残っているはずはなく、細々とした脇道自体がすでにない。南方向の貴ちゃんの家も、西方向の優子ちゃんの家も、すでに道筋ごと刻の彼方に消滅している。木造家屋の流れや、その果てに辿り着くはずの狸の生家も存在しない。『香澄町南追手前』というゆかしい地名自体、とうの昔に消えているのである。
『染太』の鰻を食う暇も金もなく、それでも正月に食えなかった米沢鯉の甘煮だけはなんとか確保、駅ビルで買った『でん六豆』をかじりながら新幹線で帰穴。
 本日は休んだが、明日からは仕事である。

 ――叔父さん、あのぴかぴかのポルシェのプラモや、蛇腹式カメラや引き伸ばし機、どうしたんでせうね。


10月05日 火  復活

 元来暑がりの狸なので、今年の夏はやはり疲労がとことん蓄積していたらしく、昨日今日と二日間、ほぼ寝たきりで過ごしてしまった。それとも先週の根性歩きが無茶だっただけか、どこが痛いとか苦しいとかではなく、ただ怠惰にうつらうつらと蒲団中心の生活を送ってしまった。まあ正直、このまま死ぬまで蒲団と仲良くしていたほうがよほど安らかに余生を送れそうな気もするのだが、それだと余生そのものが今後数日で尽きる恐れがあるので、やっぱり明日は仕事に出るわけなのだけれど。
 そういえば、土日と続けて働いた舞浜の倉庫からの帰途、湾岸の倉庫街をぞろぞろ歩いていると、遠くディズニーランド方向から、賑やかに花火の音が響いていた。そして駅に着く頃は、楽しそうなファミリーやアベックたちでごったがえす中、我々明日無き末端労働者仲間たちも、なんじゃやらシヤワセの余滴をちょっとだけ分けてもらったような気分になり、虚しい微笑を浮かべていたりもした。
 フヤけた一般世間を憎悪できるような覇気ある人材に、末端労働者は勤まらない。独り寝の蒲団の中でも、夢の花火は美しい。

          


10月03日 日  続・まだ

 たかこ 「おう、たぬきさん、ぐったし。……つんつん、つん。……へんじが、ない。まるで、しかばねのようだ」
 くにこ 「んむ。これはもー、ながくないな。こんやあたりが、とうげだろう。なまんだぶなまんだぶなまんだぶ」
 ゆうこ 「おろおろおろおろ」
 たぬき 「…………きゅー」(単に加齢のため、心に体がついて行けないだけらしい)

               


10月01日 金  まだ

 たかこ 「やっほー! まーだだよー!」
 くにこ 「んむ。これは、まだだな」
 ゆうこ 「ごめんね、ごめんね」