[戻る]


11月29日 月  コピペ

 文学や詩のコンクールなどで盗作が相次ぐ中、インターネット上の文章をそのまま写し取る「コピペ」(コピー&ペースト)が小中学生の間で広がっている。パソコンや携帯電話をパーソナルメディアとして使いこなすティーンエージャーにとって、コピペの罪悪感はうかがえない。読書感想文の“模範例”を紹介するサイトも登場しており、盗作チェックはいたちごっこの様相だ。(日出間和貴)【産経新聞 11月29日(月)7時56分配信】

 インターネットに掲載された詩に酷似した作品で「詩と思想」新人賞が取り消しになった中学生が、福岡県柳川市と前橋市のコンクールで受賞した詩でも盗作をしていたとして、両市は19日、賞を取り消したと発表した。
 受賞者は秋田市の中学3年の少女(15)。柳川市教育委員会によると、昨年度の同市主催のコンクール「白秋献詩」で最優秀賞「文部科学大臣賞」を受賞したが、家族から15日夜、辞退したいとの連絡があり、調査の結果、盗作と判断した。
 少女は本年度も応募し「福岡県知事賞」に決定していたが、家族の申し出を受け該当者なしとした。
 前橋市によると、少女の作品は今年9月発表した市主催の「第14回詩のまち前橋若い芽のポエム」中学生の部で金賞に決まっていた。16日に父親から「酷似している作品があるので辞退したい」とメールがあった。市は本人に、自作で未発表かどうか確認したが、見抜けなかったという。【産経新聞 2010/10/19 20:42】


 はい、今日見かけた記事の一部と、その関連過去記事をコピペ、ぽち、ぽち、と。
 ……とまあ、本当にお手軽で便利至極なのが、デジタル情報のコピペですね。
 おそらくその少女は、ネットなどという検索一発即バレの場所からコピペしたために発覚してしまったわけで、せめてマイナーな同人誌や個人誌を漁るとか、「偶然でしょ」とツッパれる程度に改作するとか、盗作に必要な姑息さが端っからない。つまり罪悪感がまったくないという点で、狸も在職中に多数見聞し、やむにやまれず警備室送りにしたこともある、あっけらかんのスキだらけ万引娘たち同様、想像力欠落症なのだろう。
 とはいえ、ぶっちゃけ今も昔も、凡百の人間はあくまで凡百の共同幻想に収まるしかない。たとえば狸が子供時代に読んだ、公的な児童読書感想文コンクールの受賞作など、ほとんどあっちやそっちの子供向け解説書や参考書を巧みにまとめたレポートに過ぎず、それが堂々と県知事賞だの文部大臣賞だのに輝いてしまうのである。その秋田の女の子も、ほんとうに、なんでバレない程度に工夫をこらしてくれなかったんでしょうね。狸は哀しくてしかたがない。
 狸の愛する大デュマなど、多作に紛れてずいぶん他人のアイデアやストーリーを無断借用したらしいが、たとえ世間に指摘されても「確かに盗作した。しかし私の小説のほうがずっと面白い」と胸を張って言えるほど、大デュマ印の力業を加味してくれている。

 つまり盗作にしろ万引きにしろ、バレないように、バレても居直れるように誠心誠意工夫をこらす、それが大切なのである。……そうか?


11月28日 日  雑想

 2001年の9.11のときにも、ニュースを聞いた瞬間「あ、また派手な国際的泥沼戦争が始まった」と確信し、そしてそれは現在へと続く事実となっているわけだが、どうも今回の北朝鮮砲撃は、長期にわたる派手な国際的冷戦を確信させる。狸世代のリアルタイム歴史記憶の大半を占める、ある意味最終核戦争と紙一重だった東西冷戦よりも、より国際経済的に複雑化した、いじいじいじいじと姑息にイジメ合うような冷戦が、これからは未来永劫に近い長期に渡って続くと思われる。でもまあ昔のキューバ危機やら、核爆弾一発最終戦争というような派手な状況は、なんらかのシステム・エラーや狂人の錯乱で起こる心配はあるにしろ、知性の集合体同士が引き起こす心配は当分なさそうで、ならば姑息にいじいじとイジメ合いながらも末永く続く人類の歴史のほうが、まだマシなのだろう。
 まあ狸としては、みんな仲良くニコニコ笑いながら、ゆるやかにゆるやかに滅びて行く歴史ほうが、ずっと人類の進化形だと思うのだけれど、それはたぶん見果てぬ夢である。

          ◇          ◇

 だいぶ冬らしい気候になって、寒冷適応型狸としては過ごしやすい。巷で見かけるある種の女子高生さんなども、寒冷適応型なのか繁殖意欲表出なのかそれとも単なる付和雷同や孤立恐怖なのか、おみ足の大半を尻近くまで露出させたまま闊歩している。しかし狸としては、露出させているという行為よりも、露出させている物品そのものの品質が問題なので、離郷以来長く続く関東地方での生活は、あまり眼福に恵まれない。
 望郷の念や贔屓意識を極力排し、あくまで客観的に鑑みても、帰郷時に瞥見する山形の女子高生さんのほうが、関東より圧倒的に美脚率は高い。無論、地方柄、都会ではごく少数派となってしまった野暮ったい制服の女子高生さんのほうが多く、ナマ脚を尻近くまで露出させてくれるような繁殖意欲を隠さない女子高はあまり多くないのだが、そうした高校の登下校風景をじっくりご覧あれ。首から下だけは即デビュー級の娘さんたちが、群れを成して歩いている。最近は、首から上も馬鹿にならないほど化粧技術が上達したお嬢さんも多い。ただし、これは都会も田舎も同じだろうが、滑舌や会話内容には、成熟も知性もいっさい期待してはいけない。しかし、アーパーにこれだけ美脚が多い以上、野暮ったい制服組のしっかりしたお嬢さんだって、その中身はきっと――。
 ――なまねこなまねこ。どうも狸は近頃、アブラ中年的な話をしたがる。これは明らかに精神的にも肉体的にも、そっち系がとみに衰えてきていることの反動に違いないのである。


11月24日 水  雑想

 北朝鮮がなんじゃやらトンガリの絶頂に達しつつあるようだ。いやはや、爺さんの代は、まだ『俺が全宇宙で一番エラいと、せめてこの国の中でだけは欺き尽くしたい』、そんなノリだったが、息子や孫は、もはや自ら信じきって、とゆーか、実感しながら育っているのかもしれない。はいはい、馬鹿には見えない王様のお着物、なんて綺麗でいらっしゃいますこと。

          ◇          ◇

 で、文科省は、さっそく朝鮮学校の高校授業料無償化の動きを、なんじゃやら一時停止するそうだ。あっちもあっちなら、こっちもこっちである。もともと、そーゆー生臭い政治問題など知らぬげに「教育は平等平等」と格好つけておいて、なぜこうした『事変』でいきなり差別化せにゃならんのか。この程度のことでビビるくらいなら、始めっから歯の浮くような綺麗事など掲げなきゃいいのである。
 ちなみに狸には、そもそも高校無償化自体が、子供それぞれの資質を無視した悪平等としか思えないが。奨学金制度や飛び級制度でも徹底化したほうが、よほど世のため人のためである。

          ◇          ◇

 とまあ、そうした苛立たしい記事ばかり躍る新聞の紙面、そーゆーときに限って、いしいひさいち先生の『ののちゃん』が、ひさびさに爆笑物のギャグをかましてくれたりする。朝日新聞社ウォッチングにもいいかげん倦いた狸が、今もって朝日を購読し続ける由縁である。

          ◇          ◇

 ころりと話は変わり、近頃の日本ファンタジーノベル大賞の応募規定が、以前応募した(二次落ちした)3年前よりも、かなり細かくなっているのに気づいた。確か以前は『原稿用紙300枚から500枚程度』といった大らかな枚数規定だったはずだが、去年の応募要項では、『原稿用紙300〜500枚』『ワープロ原稿は100枚から165枚』などと、きっちり規定されている。
 試しに『茉莉花館』の決定稿初号を換算してみたら、原稿用紙で550枚。おお、1割近く削らなければと嘆きつつ、さらに規定のワープロ書式になおしてみたら……ぬぬぬわぁんと、227枚! 
 な、なぜにいきなり1.38倍!? などと絶叫するまでもなく、1行の文字数が増えれば増えるほど、短文改行によって、枚数は加速度的に増える道理。ところが応募規定は、単に「400字×500枚=200000字」と「1200字×165枚=198000字」でだいたい同じだろう、そんな単純計算になっているらしい。
 ……ち、違うぞ。エンタメ系小説の場合、会話部分や、テンポを狙った短文改行部分の割合を考えれば、「400字詰め原稿用紙500枚」は、「40字×30行」なら200枚くらいが妥当なのである。いや、たとえば夢枕貘式改行量なら、300枚を越すかもしれないぞ。
 まあ来年も4月末日が締め切りだとすれば、時間だけはまだまだあるのだが……マジに4割を削らねばならないとしたら、ストーリー自体を変えるしかないのではないか。なまねこなまねこ。
 いや、いっそ1割だけ削って肉筆で清書……それもいいかも。学生時代はみんな手書きだったんだしな。


11月21日 日  在りし日の(モスラの)歌

 おおおおおおおお。――いや、世の特撮おたくの皆様には周知の事実なのかもしれないが、ここ10年ほどモスラおたくとしての情熱を沈静させてしまっていた狸にとっては、大いなる新事実が判明した。
 いや、ザ・ピーナツに続く2代目小美人(モスラと意思疎通のできる双子のちっこい妖精さんですね)として、ただ『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(昭和41年、1966)一作にのみ出演した、謎の双子歌手『ペア・バンビ』さんの正体が判明したのである。
 ネットなき時代にも知っている人は知っていたのだろうが、書籍でしかおたく情報を広められないその時代、あの双子さんの正体は、田舎の若い特撮おたくたち(なんて、高校時代の狸の周囲には、仮面ライダー系マニアがたったひとりしか見当たらなかったが)にとって長らく謎であった。科白の少なさから、東南アジアの芸人さんではないかなどという話もあった。
 ともあれ狸が大学入学と共に上京し、花の大東京の情報の大海に飛びこんでからも、あいかわらずネットなどというとんでもねー情報の網は存在しなかったため、一部では『モスラ命』を公言していた狸にしてからが、ペア・バンビに関して入手できた新情報は、せいぜい渋谷の輸入レコード店を漁って発見したアメリカのファンタジー映画音楽集に収められていたペア・バンビ版『モスラの歌』や、『南海の大決闘』で1コーラスのみ流れた『飛んでこいモスラ』のフルコーラス音源くらいで、肝腎のペア・バンビの正体は、爾来ウン10年、謎のままだったのである。
 そ、それが――なんと、謎でもなんでもない、浅草レビュー出身の芸人姉妹だったのですね。当時、すでにザ・ピーナツよりもキャリアがあったのである。ただ、テレビやラジオでの露出が少なかったため、田舎の子供は知らなかっただけなのだ。
 しかし、当時の代表的ヤング雑誌『明星』で、これだけの記事になりながら、後の『南海の大決闘』公開当時、ちびっこたちに一切情報が伝わらなかったのはなぜか――そう、その頃、怪獣映画だの漫画だのに熱を上げる若者など、一般世間にはほぼ皆無だったのである。みんな大人になるのに忙しく、数年も前の遙かな過去を、愛翫的に懐かしむ余裕などなかったのである。そりゃそーだ。大阪万博の前の時代だもの。

          ◇          ◇

 双子ではない普通のタレントさんを小美人に据え、平成にもモスラ・シリーズが作られたが、あれらが昭和ガメラシリーズの後半にも似た、完全な『お子様向き』として作られていたのは、なかなか興味深いことである。すでに平成に入ると、ゴジラもガメラも、明らかにヤング以上のおたくを観客層に想定して作劇されていた。ただ平成モスラだけが、童心以外のものをいっさい受け入れようとしなかったことは、今となっては極めて象徴的なことだったようにも思える。
 やはり狸は『モスラ命』の刺青を、『生涯偽善者』そして『ろり命』と併彫し、なかば白髪となった毛皮の下に潜めて生き続けねばならない。


11月19日 金  フツーだろう

 仙谷官房長官の自衛隊に関する発言中に出た『暴力装置』とかが、やたら問題になっているようだが、まあ全共闘あがりの旧社会党バリバリが官房長官になった時点でその程度の発言は頻出して当然で、それを当然と思わない国民のほうが無知なのである。政権が変わるということは、そういうことだ。

          ◇          ◇

 なんじゃやら近頃『男の娘』という言葉や、キュートな映像が流行っているようだが、これは太古からあるお稚児さん趣味と、もーまったく大差ないような気がする。もともとやっている当人がホモかノンケかより、それを愛好する側の萌え心ひとつで、萌えてもらえるか社会的に排他されるかが決まるわけだし。
 狸はユニセックス歓迎派なので、キュートな、あるいは楚々とした、また妖艶な女装の男性は大好きである。スッピンでいっしょに風呂に入ろうなどという野暮は言わない。いや、実は、ネットで見かけたタイのキュートな某少年と、マジでいっしょに風呂に入りたいと思ったこともある。しかしいっぽう凛々しく逞しい女性も好きだし、宝塚の男役さんなどには胸が躍る。どちらも老若男女を問わず、こちらの審美眼の許容範囲に納まってくれればいい。
 まあ何時の世もマスコミは、人間の本性に根ざした、つまり太古から話題としては手垢の付いた事物に、そのときそのときの新奇な名称を冠して、稼ぎ続けているわけですね。

          ◇          ◇

 以下、シモネタぎらいの女性などは、絶対に反転しないでいただきたい。
 また、この野良狸に清純可憐や清廉潔白や貞操観念を求める方(いねーよ)も、反転しないほうがシヤワセだと思われます。

 日雇いの倉庫の昼休み、人生に敗北しつつ死ぬまで生臭さを捨てられないおっさんや青少年が、パチスロの話にも不景気の愚痴にも飽きて、いわゆる猥談に興じていたと思ってください。狸は、ふだんそうした話題にはあまり加わらないが、社会勉強のために黙って聞くだけ聞いているヤな奴である。
 で、本日、狸と同年輩のあるおっさんが青少年相手に披露していた、女性生殖器に関するある種の分類評価に、激しく疑問を抱いてしまったのである。
 ……女性の方、反転してませんね。
 まあ世の中には昔から『カズノコ天井』だの『キンチャク』だのといった、まあなんというか、ある種の行為時に男性が感じる一方的な『名器』やら、実に種々のカンショク分類があるそうで、それらの体験を誇らしげに解説してくださるアブラっこいおっさんが、ときどきいたりするのだが――正直、それってフカシですよね。まあ面白いので、あえて嘘とは言いませんが、99パーセントまでは創作エンタメですよね。どうも狸としては、そう思わざるを得ないのである。
 もっとも半世紀以上生きておきながら、狸の実体験したそれらのモノのカンショクは、素人女性ならほんの3種、処女に至ってはただ1種にすぎない。あとの何十種かは、ある種の聖地におけるある種の聖女さんたちのモチモノである。だから、そーゆー話題に参加する資格はないと言われてしまえばそれまでなのだが、聖女さんたちの過去だって千差万別だし、キャリアウン十年のベテランの方から、今なら下手すりゃ現行犯逮捕されかねない方もいたわけで、まあそれら聖女さんたちを例に個人差について私感を語っても、あながち的外れではないと思われる。
 で、結論から言ってしまうと――処女(あるいは10回以内くらいの若葉マーク時代)を除けば、挿入感そのものは大同小異、有り体にいえば『気の持ちよう』である。むしろかなりベテランの聖女さんのほうが、こちらの突き具合で得られるカンショクが左右でき、物理的快感を得やすい。太古から現在まで、ソノ手のメディアに頻出する「ううっ! やっぱりこの初モノのしめつけがなんとも……」などという表現は、正直、物理的快感とは無関係、精神的な『男のファンタジー』にすぎないのではないか。もっとも行為開始から徐々に感触は変化するし、あちらのクライマックスに伴ってある程度痙攣収縮するのも事実である。しかしそれは、どうも個人差より状況差が大きいように、狸には思われる。数少ない素人女性を思い起こしてもそんな感じだし、すべての男に平等な(まあキモチは様々でも一定のアレさえ捧げればとりあえず脚だけは開いてくれる)聖女たちの場合も、一限の狸、あるいはせいぜい数度目の客にすぎない狸が挿入を許されるソレと、たとえばその聖女のマブが許されるソレは、精神的のみならず物理的にも、ずいぶん違ったソレなのではないか。
 もちろん世の中には、アソコの力で自由自在にバナナを切断したり蝋燭の炎を吹き消したりする聖女も実在するので、多数のバリエーションがあるのは否定しない。しかし並の人生で男が体験できるモノに限れば、相手のソレのグアイは、やっぱり『気の持ちよう』、極論すれば『似たようなもん』ではないかと思われる。

 つまり、あの行為において男の快感を左右するのは、女性生殖器そのものの個人差ではない。
 ならば、どんな要素がソノ行為のキショクを左右するのか。
 第一の要素は最後に語るとして、第二の要素はズバリ『顔』、それが正直なところだろう。顔が見えないほど巨大な女性や、もともと首のない女性を相手にしているのでない限り、それが行為中もっとも長時間、視界のメインを占めている気がするからである。
 そして第三に『胸』が来るか、それとも『尻』が来るか、そのあたりに関しては、狸としては双手を挙げて『尻』なのだけれど、『いや絶対に胸だ』と言い張る方も多かろうし、正常位か後背位かなど、体位によっても条件は変化する。

 しかしまあ、第一の要素は、どのみち『愛』のはずである。


11月15日 月  冬花火

 4千円を取り返すために、残業可能な現場では可能な限り残業しなければならない。しかし世の中不景気続き、近頃は短時間しかスポット派遣を入れないところが多い。幸い今週はけっこう仕事の詰まった現場で連チャンできそうで、今日もさっそく2時間ほど残業してきた。以前も何度か世話になった、舞浜の倉庫である。あの、ディズニーランドの観光客と湾岸倉庫作業員が交錯する、なかなかに微妙な駅ですね。
 夕方から雨が降り始め、定時で上がる仲間はどしゃ降りの冷たい雨を嘆きながら帰っていったが、狸が残業を終えて帰る頃は、ちょうど雨上がり。バス代は出るのだが節約のため徒歩で舞浜駅に向かっていると、雨上がり直後のため人通りが少なく、ディズニーランドのモノレールが見え始める頃、ちょうど花火が上がり始めた。土日祝日だけのイベントかと思っていたら、月曜でも上がるのですね。たまたま狸以外の通行人がほとんどいないタイミングで次々と行く手の夜空に大輪の花が開き、なんといいますか、ただ狸一匹のために華麗な花火が上がっているような錯覚を覚え、なかなかに玄妙な孤独感を味わった。もっとも駅に近づけば、平日だろうが雨だろうがいつもの賑わいで、それらの花火も、その方々を含む遊興客のために上がっていたのだけれど。

          ◇          ◇

 外が冷え込んできたせいか、例の猫が、帰穴後かなり長く遊んで行くようになった。だいぶ狸に慣れてきたようで、食事中にチーカマなどをうりうりと見せびらかすと、さかんに前足で奪い取ろうとする。間が悪いと手を引っ掻かれそうになる。いよいよ貧しい餌を奪い合う仲になってきた。猫は例外なくパスツレラ菌まみれだそうだから、狸も注意せねばなるまい。


11月12日 金  ありゃりゃ

 今週は日勤夜勤が交互に入り乱れ、正直、昼夜の感覚も日数の感覚もなんじゃやらよくわからないうちに、金曜になっていた。ともあれ本日午前中に帰穴。明日は夜勤が決まっていたのだが、なんじゃやら派遣会社からドタキャンの連絡。あくまであっちの都合なので、出勤しなくとも予定賃金の6割は出る。働いて1万円GETするのがいいか、寝ていて6千円もらうのがいいか――これが微妙。極貧の人間にとって、差額4千円は大金なのである。今日明日の話だと、他の派遣会社でちゃっかり都合のいい現場を探すのも困難だ。ここは素直に寝かしてもらおう。

          ◇          ◇

 しかし例の海保流出映像、事実上は機密でもなんでもなく、海保の人間ならペエペエでもGETできるところに、堂々と転がっていたのですね。色々想像して損した。いや、けっこう愉しんだからいいか。その堂々と転がっていた事実自体に、なんか裏があるのかも知れませんしね。
 でもまあ、特になんにも考えず放置していた可能性が高そうで、ただただ「……アホや」の上塗りという気もするが。

          ◇          ◇

『茉莉花館』の推敲ついでに『月下美人』も再チェックしたりしていると、とにかく狸の愛用する日本語テキストエディタでは、あまりに漢字の使用制限が多すぎる。エディタが悪いわけではない。完璧な仮想書籍的縦書き表示のままで、軽快かつ自由自在に文章作成できる『O's Editor』は、それゆえにユニコードとかには対応しておらず、シフトJISに頼るしかないのである。中国語でしか使われない漢字とかなら我慢もできる。しかし「おいおい、この程度の日本語もシカトかよ」レベルなのですね、シフトJISという規格は。「じゃあユニコード対応のエディタやワープロを使えばいいじゃないか」と言われるかもしれないが、『O's Editor』の完璧なアンチエイリアスによる文学的表示環境に慣れてしまうと、日記やレポートならいざ知らず、創作において今さら浮気するのは困難である。 
 せめて空海の『九相詩』くらい扱えろよシフトJIS。


11月08日 月  ヤマトに死す

 西崎義展氏、不審死。
 事故死にしろ自殺にしろ他殺にしろ、あちこちの見出しに躍る『波瀾万丈』という言葉を、最後の最後まで身をもって体現した方であった。
 高校時代の狸は『アルプスの少女ハイジ』に萌え狂っていたので、裏番組の『宇宙戦艦ヤマト』に対する愛着は深くない。リアルタイムでヤマトを愛したロートルのアニメおたくは、ごく少数派のはずである。例の大ヒット劇場版第一作は、SFファンとして当然フォローしたが、テレビ版のセルの汚れ(作品の大部分はテレビの再編集フィルム)などがまんま大画面に拡大され、ちょっと困ってしまった記憶がある。感激したのは音楽くらいか。
 ともあれ、その後しばらくの西崎&松本(当時すでに犬猿の仲だったらしいが)の人気は最高潮の阿波踊りに近いものがあり、狸が教育実習で山形の中学のアニメ研に出入りした頃など、西崎氏は松本氏に劣らぬ熱い支持を、田舎の中学生からさえ得ていたのである。

          ◇          ◇

 たいへん不謹慎な話になるが――近頃は車椅子で移動するほど老いていたという西崎氏、事故死にしろ自殺にしろ他殺にしろ、そのヤマトから飛びこむ瞬間には、どうか思うさまシャブでもキメてバブリーな光の海へ身を躍らせてくれたことを、狸はひそかに望んでいたりもする。


11月06日 土  獅子身中の虫

 ほほう、どうやら流出犯は海保の人間か。そして世論は明らかに流出犯を支持っぽい。こりゃマジで怖い。どのような義憤にかられての行為にせよ――まあ狸の推測では、現民主党政権に対するアメリカ側の思惑も絡んでいるとしか思えないが――とにかく由々しき情報漏洩である。犯罪なのである。情報クーデターと言ってもいい。でもまあ226の時だって、国民は感情的には決起将校たちを支持したわけだしな。問題は、あれらの青年将校たちとは違い、結果的に利する相手を間違えて――いや、あの青年将校たちの決起も結局は敵に利する結果となってしまったわけだけれど、どうも今回の決起犯は、本当に純粋な義憤によって動いたとは思えない。
 しかし事態がここまでに至ると、いっそ小沢政権を早めに成立させといたほうが、この国の歴史は、良きにつけ悪しきにつけ確実にアメリカ傘下国家から『方向を変えて』いたはずに思える。それを忌避した狸が言えた義理ではないのだが――小沢さん、せめてもうちょっと、腹芸や足腰の強さを発揮できなかったものか。そしてオバマ政権誕生時に狸が夢見た彼の国の変質も、どうやら短夜の夢に終わりそうで、なんのことはない、狸の愛する弧状列島は、これからも大国間の大海に揺れる木の葉で在り続けるしかないのだろう。いや、そこもまた、ほんとは頬ずりしたいほど愛しいんですけどね。

          ◇          ◇

 扁桃腺の腫れはほとんど引いたが、症状が鼻水や咳に移行し、寝こむ口実にもならず、ただうっちゃーしい。
 そして夜ごと狸穴を訪う猫は、あいかわらず食うだけ食ってくつろぎながらも、「それ以上近寄ったらバックレるかんな」、そんな陰険な目線を、しばしば狸に走らせてくる。

    

 以下、ジト目の拡大図。

                

 ことほどさように、信頼と疑惑、愛と憎悪は日々紙一重である。


11月04日 木  うわあ

 ついに例の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の現場映像がYouTubeに流出したとのことで、さっそく覗いてきたのだが――うわあ、ここまで露骨に特攻されても、こっちで謝っちゃったのね。こりゃ国際間の微妙な問題だのレアアースだの人質だの言ってる前に――アホや。
 さあて民主党、アメリカでもどうやら政権はガラリと保守反動のタカ派に戻りそうだし、ニュータイプ・オバマさんみたいに優しく様子見してはくれないぞ。『あっちもこっちも頭下げ続けてりゃ時間が解決』は、もう限界だぞ。どうするどうする。
 なんて、仮にも与党なんだから、正しいと思うところに従って粛々と事を進めればいいのだが――『あっちもこっちも頭下げ続けてりゃ時間が解決』とかマジに思っていそうで、なかなか怖い今日この頃。


11月02日 火  フェイント扁桃腺

 なんじゃやら夜中に異様な渇きを覚え、起き出して流しで水を飲んだら、いきなり喉が擦り剥けたような激痛を感じた。いつもの単なる扁桃腺の腫れなのだが、予兆なしにいきなりドカンというのはかつてなく、昨年の夏以来つくづく体質が変わったと、あらためて実感する。単なる加齢もあるのだろうが、それ以上に、長年しっかり身にまとい続けた皮下脂肪を10キロ近くも脱ぎ捨てたことによる、デメリットばかり感じてしまうのである。ズバリ、狸の燃費と保温性が落ちた。こまめに食わないとバテるし、暑さ寒さがストレートに体内まで染み通ってくる。
 本日は幸か不幸かアブレていたので、いつもの医者に行く。血圧も体温も、当然ながら高め。狸の喉を覗いた医師は、例によって一瞬の迷いも無く抗生剤を処方してくれた。とにかく真っ赤っ赤なので、なかなか見栄えがいいのである。ついでに、血圧の薬ももらってくる。
 生死に関わる病気を持ちながら懸命に社会活動をされている方々には申し訳ないが、迷わず明日の倉庫作業もパスさせていただく。1日分の日銭を惜しんで何日もダウンするよりは、初めから寝ていたほうがいい。生死に関わる病気を持ちながら懸命に社会活動をされている方々には重ね重ね申し訳ないが、社会よりお布団の好きな狸です。