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07月30日 土  吉野家の片隅で

 当方、常々言うようにけして吉野家の回し者ではないのだが、やっぱり牛丼と鰻丼だけは、他の追随を許さないように思う。
 月中あたりにここにも記した古典エロゲー売却により、夜勤一回分に相当する不労所得が振り込まれたので、昨夜は吉野家で鰻丼2枚盛を食った。やはりきちんと鰻の味がする。中国産の冷凍物なのに、焼きたての風味の幾許かは、不思議に残っている。以前食ったファミレスやホカ弁の鰻のような、いかにも「冷凍パック物をガーっと湯がきました!」的ベトベト感が、かなり少ない。冷凍解凍再加熱で失われがちな、外側の炙られた香ばしさと内側のトロりとした柔らかさの対比が、他の安物よりも感じられるのだな。
 そして今夜は、割引キャンペーン中の牛丼、それも特盛を食った。割引キャンペーン価格でも松屋の通常価格と同じだし、ボリュームも松屋の推定2割引程度ではある。しかし、やはりこの甘ったるくない大人の味は、吉野家でしか味わえない。

 つまりこの2日、ちょっと前まで無為徒食状態だった日雇い野郎としては、身に余る贅沢を享受しつつ――。

 ――ああ、ウン10年前の店長会議の帰りに、清水の舞台から飛び下りる覚悟で仲間と寄った赤坂の『重箱』なんぞには、もう生涯上がり込めんのだろうなあ。昼飯食うだけで諭吉さんひとり、ほとんど消えちまうもんなあ。座敷で晩飯食ってちょっと飲んだら、諭吉さん3人でも足んないからなあ。
 ああ、昔は良かったなあ。ぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶつ……。

          ◇          ◇

 ここんとこ(ずうっと?)おちぶれ爺いの繰り言ばかりで申し訳ないが、まあ、それこそが狸の創作意欲に繋がっていることは、もうとっくにバレてますね。夢はなんぼ食ってもタダだ。

 ところで、首都圏に住んでちゃんと定職もあるお若い創作愛好者の方がここを覗いていらっしゃったら、ボーナスが出るうちに、いっぺん赤坂あたりの高級料亭に上がりこんでみてください。確実に、ある種の描写の説得力が増すはずです。
 んなとこもうとっくに行ってるよ、とおっしゃる自信満々の方には――ふっふっふ、人生、一瞬先は奈落の底だぞ。堕ちてしまえ堕ちてしまえ。そこには狸が待っている。

          ◇          ◇

 ……せめて行きたや山形七日町の『染太』。


07月28日 木  曇天の下で

 陽射しがないから気温はかろうじて30度を割っているのだろうが、湿度が95を越えれば、冷房のない倉庫はサウナと同じである。しかしこんだけいちんち大汗かいても、背中の特大バンドエイドっぽい物件が流れ落ちないというのは、前世紀の感覚しか持たない狸にとって、もはや驚異。一見ウン10年前と同じ材質に見えて、実はとんでもねーハイパー・テクノロジーによる粘着材が使用してあるのだろう。これならゆっくりお湯に浸かっても平気と思われるのだが、老医師は「……まあたぶん大丈夫のはずだけど、やめといたほうがいいんじゃないの」とおっしゃるし、どうもこの医師の施術においては理屈より勘が多く働いているような気がするので、いまだに軽い水浴びしかできない狸です。看護婦さんの話だと、さらにひとまわり大きな防水シート(?)を貼れば海水浴だろうが温泉だろうが平気らしいのだが、そこまでやってもらったら280円じゃ済まないだろうし、背中のことゆえ自力でぺたぺたするわけにもいかない。
 しかし、いつも思うのだが、なぜ人間や狸には、もう一対の腕や手指がないのか。そしてなぜ、頭の後ろにも目玉がふたつないのか。百足のようにワサワサ欲しいとは思わないし、妖怪百目のように全周イッキ視認したいとは思わないが、せめてもうふたつずつあったら、あらゆる作業が超効率化するはずだ。生物学的にも社会学的にも、もっと加速的に進化できたはずだ。……余分にとっちらかるだけ、という可能性もあるが。

          ◇          ◇

 菅さんの政治資金管理団体が、北朝鮮拉致実行犯夫婦の長男が関係する極左団体に多額の献金をした件で、国会で野党の追及を受けながら、菅さんは「私は知りませんでした」の一言のみ。そしてマスコミでも、なぜかほとんど報道されない。それが今月中頃の話。ちゃんと領収書があるから、確かに犯罪でもなんでもないわけだが――知らなきゃいいってもんでもないだろうオイ。
 そして先日、菅さんの密命を受けた元拉致問題相が北朝鮮側の担当相と秘密会談、などというセンセーショナルなスッパ抜き記事が現れたが、いつの間にやら菅総理とは無関係ということになり、今は会談そのものが成立しなかったことになっている。
 いろいろあるさ、左翼政権だもの。
 しかし、どうも後記の件に関しては、延命策の一環として密使を飛ばしたものの、もはやあっちも菅政権など相手にする気はなかった、というのが真相なのではないか。どうも狸には、そう思われる。
 北朝鮮にシカトされる左翼政権ってのも、なかなか希少価値がありますね。まあ月中にドジふんだばっかりだもんなあ。

          ◇          ◇

 巨星、墜つ。
 小松左京先生が亡くなられた。ここ何年か老衰が著しいご様子ではあったが、享年80歳、今の老人ならまだまだお元気な方も多い歳である。やはり育ち盛りを戦中に飢えて過ごしたせいか。さらに壮年期に八面六臂の活躍をしすぎたせいか。しかしあれだけの業績を残された上での80年、知的にも動的にも常人の10倍は濃い生涯、あえて悲しむまいと思う。ほんとうにご苦労様でした、小松先生。
 ……と言いつつ、やっぱり狸の緩い目頭は、落涙を禁じ得ない。
 しかし小松先生は、亡くなる直前、東日本大震災に関連して、こうおっしゃったそうである。
「今は大変な時期かもしれないけれど、この危機は必ず乗り越えられる。この先、日本は必ずユートピアを実現できると思う。日本と日本人を信じている」
 そうですか、先生。
 ならば狸も、それを信じます。


07月27日 水  仲良きことは美しき哉

 ブチのほうが狸穴の内側まで足を踏み入れたのは、今日が初めてではなかろうか。おまけにミケ女王様とツーショット。

          

 さて、ここに至る経緯を説明すると、実はまずブチのほうが久々に単身で来訪、ようやく狸穴の中にも警戒が解けたのか、それともよほど空腹だったのか台所まで上がりこんで、「なんかくれ。くれなきゃ泣くぞ」と、奥のパソ部屋にいる狸に、にゃあにゃあ要求したのである。しかし本日はドライフードが切れていたので、このブチが食うかどうか怪しかったが、備蓄の猫缶(ミケ女王様用の特売ササミ系)を与えてみた。するとこれが嗜好に合ったらしく、うにゃうにゃと歓食しはじめた。
 しかし好事魔多しとやら、いつものミケ女王様がたちまち来臨して、「あんた下僕の分際でなんであたしのおやつ食べてるのよキーッ」と叫び、いや、まあそんな感じでぐいぐいとブチを押しのけ、ブチはたちまち「ああっすみませんすみませんけして悪気はなかったのです許して下さい許して下さいお願いですからすみません」などと許しを乞い、いや、まあそんな感じでいつものようにドアの外まで退却したのである。
 で、老狸としてはさすがに哀れに思い、「これこれブチよ、いかに下僕といえども、今日はそなたが先着ではないか。そこまで卑屈にへりくだっていては、この先ずっとミケ女王に虐げられるまま一生を終えてしまうぞ」と諭し、またミケ女王様にも、狸穴の主として、毅然と諭したわけである。「ああっすみませんすみませんこいつもほんと決して悪気はなかったと思うんでどうか今日んとこは合い席してやってくださいぺこぺこぺこ」

 でもまあ、ちゃんとふたつの皿に平等に分けてやったら、そこはそれ共棲して久しい元野良同士、きっちり納得してくれたようです。
 めでたしめでたし。


07月25日 月  猿でもできる貼り絵教室

 追突したほうの先頭車両を現場で即スクラップにして埋めてしまうと言う、御本家・中国の悠久の大ビジョンには比すべくもないが、不詳の弟子・北国のほうも、なかなか想像を絶する大らかさで、過度の合理主義に毒された民主主義国家による世知辛いアラ探しを、日々戒めてくれる。

          

 彼の国の大水害に際して他国の援助をあおぐべく、世界に向けて発信した画像とのことだが――この合成は、すごい。水写りも歩行時の水面の乱れも、歩行者のズボンの濡れ具合も、ほとんど無視してベタ貼りしている。
 以前、拉致した日本人の存命中の写真、とか言って送りつけてきた写真の中にも、あるべき影がない素人合成が何枚か混じっていたが、なんぼ頭のあったかい首領様の国だって、国家レベルで『事実』と称する写真を、まさか素人が処理したりチェックしたりしているはずはない。
 結論はひとつ。
 些細な不合理を根掘り葉掘りツッコんでくるような、人情を忘れた資本主義国家を、言外に嗜めているのである。
 いや、もしや韜晦しているのか。「我が国は貴国が思うほど巧妙な情報操作などできない素朴な国なので、どうか何事も大目に見てやってください」――。
 まさか、ほんとに、どっかが『足りない』わけじゃ……。


07月24日 日  イケイケ

 うわあ、かの国では、高速鉄道大追突。ニュース映像を見るかぎり、もはやパニック映画。落雷による停止→後続列車即追突などという事態は、今どきの高速鉄道網ではありえない事態だ。運行システム検証のための試運転をあまりやらないで、あわてて開通しちまったんだろうなあ。その点、あの懐かしい『夢の超特急・ひかり号』の東海道新幹線が開通するまで、東京オリンピックに間に合わせるための突貫工事のみならず、しつこくしつこく試運転もくり返した当時の国鉄は、やはり大したもんだった。

 さて一方、我が国でもあまり後先考えないイケイケの地デジ完全移行が、一部の被災地域を除いて、本日敢行されるらしい。
 狸穴のTV関連機器(録画再生機器含む)は、新しいものでも数年前の製造、つまり全品アナログ物件である。大家さんが建物丸ごと地デジ対応してくれたおかげで、ちっこいチューナーから引き出したアナログケーブルがあるから、まあなんとか今後も地上波は視聴できる。ただし、当然ながら録画できるのはチューナーで選択した一局のみ。以前のような、HDDレコーダーと古いビデオによる他局同時録画は不可能になった。
 まあ世の中の『経済効果』ってやつは、ほとんど最底辺をシカトして効率化を図ることなので、今さら動じませんけどね。
 しかし、年末年始はサミしくなるよなあ。『年忘れにっぽんの歌』と『紅白』の、片方しか録画できない。


07月23日 土  しつこい

 あるいは、そう、80作全部とは言わないから、たとえば48作を選抜して、新聞みたいな安価大容量印刷媒体に全作まとめて刷って、アキバや渋谷あたりで着飾った作者たちが踊りながら道行く人々に配りまくって、読者投票で受賞作を決定する――名づけて『NFN48 23ndハードカバー選抜総選挙』! ……だめ?

          ◇          ◇

 などといつまで未練を引きずっていても鬱屈するだけなので、本日は通院の後、久しぶりに神保町に出張って徘徊する。500万円も100万円ももらえなかったので、当然稀覯本は見つけて楽しむだけ。しかし定価2000円もするピカピカの『最新駅弁450』(1991・山と渓谷社)が200円、狸が生まれた年(1957)に発行された山下清画伯の『日本ぶらりぶらり』(文芸春秋社)がヨレヨレとはいえ250円で手に入ったので、まずは豊かな気分である。
 20年前の駅弁調べてどーすんのよ、などと今さらおっしゃる方は、ここをご覧になっている方々にはいらっしゃらないですね?
 狸は昭和30年代から現在にいたるまでの駅弁本を、数冊所有している。どんな古本屋でも10円単位の値しかつけてくれないので、売り払わなかったからだ。中には中学時代に買って「いつか俺も大人になって自由に旅行できるようになったら、これらの駅弁を残らず食いまくるのだ」などと大望を抱きながら、数年眺め続けた本もある。
 無論、今となっては、せいぜい十数種の駅弁を除いて、すでに発売を終えたものは永遠の幻、まだ販売中のものも儚い夢となりそうな気配が濃厚なわけだが、実際に食えた弁当の大半は、写真を眺めて垂涎していた想像の味より劣っていたわけで、ならば写真だけ眺めていたほうが、総体的には幸福なはずである。

 ……なんか負け惜しみに必死こいてるな狸。


07月22日 金  心象


          

          ◇          ◇

 NHKラジオ、9時のニュースをお伝えします。
 本日午後7時30分頃、千葉県市川駅前のタワーウェスト45階展望デッキから、ぶよんとしてしまりのない男性が投身するという事件がありました。
 ぶよんとしてしまりのない労務者風の男性は、その10分ほど前に、隣接する市川シャポー地下の書店で突然「嘘だ! 嘘だ!」と絶叫しながら小説新潮8月号を引き裂き、書店員の制止をふりきってタワーウェストに逃走、警備員の隙を縫って展望デッキの防護ガラスを這い上がり、そのまま投身した模様です。
 しかしタワーウェスト付近に人が落下した形跡はいっさい見られず、同タワーのマンション部26階の住人から「上からぶよんとしてしまりのない人影が落下してきたが、窓の前で突如モモンガに姿を変え、里見公園方向に飛び去った」との目撃情報があり、市川署では「モモンガが人に化けた事例は、過去一件も確認されていない。おそらく、ぶよんとしてしまりのない人間に化けていた狸が、文芸誌がらみのなんらかのストレスで自暴自棄に陥り投身自殺を図ったものの、落下途中で気が変わり、モモンガに化けなおして逃亡したのだろう。小心で気まぐれな狸には、ありがちなことだ」との見解を発表しました。
 なお、さきほど里見公園の近隣の方から、「狸だかモモンガだかムササビだかなんだかよくわからない小動物が一升瓶片手にヤケクソで『明日があるさ』を歌っている」との連絡が当局に寄せられ、現在記者が確認に向かっております。続報が届きしだい、お知らせいたします。

          ◇          ◇

 ……えーと、念のため。あそこの展望デッキのガラスはちょっと高すぎて這い上がれませんし、仮に這い上がって力いっぱい跳んだとしても、一階下のテラスに落っこちるだけです。
 しかし、前回最終候補まで行かれた方が、今回は、狸同様一次通過のみだったり……。年々歳々、応募作に比例して一次通過作も増えて行くのに、最終候補は変わらず4作……。うう、そのガラスは高すぎる厚すぎる。
 こんだけ応募作も増えたんですから、せめて80作から4作の間にもう1段階置いてくださいませんか。おねげえですだおねげえですだお代官様。


07月21日 木  どきどき、のち、うみゅみゅみゅみゅう

 おお、さすがは2チャン。NFNスレで、明日発売号で発表予定の途中経過が、すでにレスされている。個人経営の本屋だと、前日入荷したとたんに並べたりするからなあ。ちなみに狸の応募作は、一次を通過したようだ。しかし、全応募作695本→1次通過80本、最終候補4本なのは判ったが、第1次通過作品名だけカキコするのはおかしいぞ。そのうちのどれが最終候補なのだ。なんで判ってるのに教えてくんないのよう、しくしくしく。
 まあどのみち695分の80には残れても、さらに80分の4に残れるってこたあ、まずないだろうが……いやいや、口では「まずないだろう」などと言いつつ、内心「でももし万が一」に後ろ髪を引かれて一生を誤るのが、狸や人の業。これで明日の仕事は、上の空必至。せいぜいドジって怪我の上塗りしないように気をつけましょう。

 などと記しつつ、さらに2チャンを探っていたら、最終候補に残ると早ければ6月中、遅くとも7月中旬までには直接連絡が来るんだそうだ。なあんだ、連絡が来ない=落ちました、なのだ。それで皆さん『一次選考通過』だけを問題にしてたのか。あれだけは誌上発表でしか判りませんもんね。
 しかし……うみゅみゅみゅみゅう……うみゅみゅみゅみゅう…………。


07月20日 水  夢と現実

 隠居したいのは山々だが、霞を食っては生きられない。そもそも狸穴界隈は、霞などという風流な自然現象に縁がない。
 と、ゆーわけで倉庫作業復帰。実質6時間程度だったが、正直、へろへろ。体がなまったためでもあろうが、とにかくこの湿気がこたえる。気温30度に湿度90超が荷担すれば滝汗は避けられない。でもまだ生きているし背中のアレも剥がれる気配はないので無問題。そのうちまた慣れるだろう。あの医院の診療時間にカブらない現場がなけりゃ、どうせ1日おきに休みだしな。

          ◇          ◇

 これだけなんかいろいろ煮詰まった状況にありながら、休憩時間、「賞金500万もらえたら何に使おうかな」などと、片方の肩の上で現実逃避している黒い狸がいる。「借金全部返して、自分へのご褒美に高画質デジカメと、ブルーレイやHDD内臓の大型テレビ買って、今の生活レベルなら残った金で当分打鍵三昧」とか。もちろん反対側の肩の上では、白い狸が「……死ぬまで夢見てろ馬鹿」などと呟いているわけだが、まあこの手の夢想は、「棚ぼたで大金持ちになる」とか「絶世の美女と結婚する」とかと同じで、広義のファンタジーの創作意欲に繋がるのですね。「年末ジャンボで3億円当たった狸の栄枯盛衰」とか、「なぜか戦前の京都にタイムスリップして数え年14歳つまり実年齢12歳そこそこの可憐な舞妓さんにぞっこん惚れ込まれてしまった高血圧の狸が驚喜と昂奮のあまり脳溢血で突然死する最後の夜」とか。

 夢は、かなった瞬間に現実と化してしまう。そりゃかなってしばらくは嬉しくてたまらんだろうが、かつて夢であったときの光輝が果たしていつまで続くか、保証の限りではない。しかしかなわない夢は、生ある限り輝いているだろう。でもまあ死ぬ直前、イッキにドツボにはまるのはご愛敬。

          ◇          ◇

 ここしばらく話題にしなかったが、ミケ女王様は日々お元気に狸を使役している。それはそれでたいへん光栄なことなのだが、たとえばネットで拾った古い猫写真を懐かしく眺めるとき、今の現実と過去の憧憬に、ひゃくまん倍の差異を感じたりするのも確かである。

          

 1970年代の中頃、コダックが販促に採用していた有名な猫写真。狸は高校時代、写真屋でもらったこのポスターを、ずっと机の前に貼ってました。


07月19日 火  どこまで続くぬかるみぞ

 菅が国会で、なでしこのお嬢様方を引き合いに出し、「私もやるべきことがある限りは、諦めないで頑張らなければならないと感じた」などと発言している。わっはっは、しっかり意思疎通のできる仲間を11人揃えて、対戦相手もしっかり見極めてから、あらためて頑張ってください。今は潔く諦めるのが、世のため人のため。

          ◇          ◇

 ところで、なでしこのお嬢様方にくらべて近頃の日本男児は情けない、といった意見が、ネットや新聞で散見される。しかし正味のところ、なでしこメンバーのような良い意味でのバーバリズムを失ってしまった、大多数のフニャフニャ言葉のお嬢様方や、曲解フェミニズムのおばさまがたが、旧来の不言実行熟慮断行型頑固親爺タイプの日本男児を疎んじるからこそ、生物学的に、雌に選ばれないことには繁殖不可能な大多数の雄としては、そっちの好みに合わせてソフィスティケート方向に走るしかないのではないか。
 男対男の世界では、優しい奴が負ける。でも、どっちがモテるかは女性しだい。

          ◇          ◇

 中2日をおいた背中の穴からは、先週のように血や体液が流れ出すこともなく、消毒後に貼ってくれるバンドエイドの親方みたいなのも、ずいぶん小さくなった。耐水性があるので、剥がれてしまわないかぎり、上からシャワーがかかるくいらいなら大丈夫だそうだ。しかし切開してからもうひと月近いのに、穴の奥の肉はまだ赤裸で、1日おきには消毒に通院するようにとのこと。やっぱり初めっから、上を縫っておしまいという訳にゃいかなかったのね。そりゃそーだ。学生時代に背中をザックリやったときだって、夜中に切って翌日の昼に病院に行ったら「こんなに間があいちゃ縫ってもしょうがない」とか言われ、自然回復待ちだったもんなあ。
 教訓。日雇いで生きる狸や人間は、コブができたら良性でもなんでも即刻もぎってもらいましょう。膿んでなければ、切ってほじってすぐ縫うだけで、全治1週間。しかしいったん膿んでしまうと、歳食えば食うほど後が長い。医者は儲かるだろうが、こっちは都合のいい日雇い現場探しが容易ではありません。
 でもまあ、1日おきなら倉庫作業もOKになったし、医者が儲かると言ってもあの老医師の場合、投薬がないと1回280円しか請求しないんですけどね。3割負担として、あっちに行くのは933円。日雇いの時給と大差なし。
 外科医院の後、月一で血圧の薬をもらっている内科病院へ。このひと月で2〜3キロ太ってしまったが、血圧は正常値。今日の女医さんはなかなか美形だった。
 しかし病院のハシゴって、なんかもうすっかり隠居気分ですね。


07月18日 月  なんかいろいろ

 再起動2日目、脚はそれほど疲れなかった。うん、脚だけは、狸もまだまだ大丈夫だ。腕や頭や懐は、保証の限りではないが。
 明日はまた医者に行く。世間様のお休みと、みごとにズレてますね。まあ業種によっては一般の方が休む日ほど、日雇いが増えるわけである。

          ◇          ◇

「ステップ1」ほぼ達成――福島原発事故処理関係の見出し。「ほぼ」ってのがミソですね。また「ステップ1」そのものの内容も、当初からずいぶん減っているような。まあ今さら大本営発表を鵜呑みにする国民は少ないだろうが。どのみち「ウソだ!」と絶叫したところで、太平洋戦争も原発事故も、今さら無かったことにはできない。
 ところでセシウム牛肉、まだ販売されていないぶんを貧乏人に配給してくれまいか。輸入肉より安いなら、売ってくれてもいい。日本育ちの牛さんなんて、貧民はめったに食えないもんで。「人体への影響は出ない」レベルの肉を、捨ててしまうのは非合理的だ。非国民だ。もし「ほんとは先々ちょっと影響が出るかもしんない」レベルだとしても、狸は愛国者なので、あえて食います。……すみません、ウソです。ただ、たまにはマジウマの牛肉を、ガフガフ食らってみたいだけ。

          ◇          ◇

 昨日も記したNFNの発表間近に際し、ゆんべの夜から、送付物件を久しぶりに再読しているのだが――「うん、やっぱりすっげーオモロイわ、これ。けっこうあちこちブンガク的だし」などと浮かれる黒い狸と、「いやいや、なんぼ伝奇狙いの『広義のファンタジー』でも、非論理的で強引で荒唐無稽すぎ。ところどころの純文学調や美文調も、古臭くて浮きまくり」などと突き放す白い狸が、モニターの前で、熱帯夜の気怠さの中、カラフルなかき氷をしゃくしゃくしながらダベっている。そして本来の狸は、その2匹の後ろ姿を曖昧な視線で見比べつつ、「……ああ、もうなんでもいいから、俺もかき氷食いてー」。
 ともあれ種々の意味でギリギリの狸としては、活気も運気も溢れんばかりのなでしこジャパンのお嬢様方に、ちょっと嘗めるだけでいいから、お流れ頂戴したいものである。

          ◇          ◇

 被災地の避難所や仮設住宅は、どうも暑さ対策が不充分のようだ。
 東北も、高地以外はけっこう暑い。狸の故郷山形市が昭和8年に記録した最高気温(40.8度)は、何年か前に埼玉の熊谷や岐阜の多治見(40.9度)に抜かれてしまったが、現代の都市熱を抜いて考えれば、いまだにダントツ日本最高気温だ。
 被災地の皆様、熱中症や食中毒には、ほんとに気をつけてくださいね。

 この狸穴や表の創作内でも何度か引用したが、郷土出身の大歌人・斉藤茂吉の作をば、また紹介。

 ――
ものみなの饐《す》ゆるがごとき空恋ひて鳴かねばならぬ蝉のこゑ聞《きこ》――


07月17日 日  緊急再起動

 唐突に、日雇い派遣再起動。今日明日と医者は休みだし、大汗かかないで済みそうな現場に欠員ができたので。何度かやったDVDのネットレンタル会社である。時給は安いが、冷房もあれば力も必要ない。こんな現場が年中あれば、倉庫作業の骨休めにいいのだが、いつもはたいがいレギュラーさんで埋まっているし、臨時増員や欠員補充の募集電話が前日の夜9時過ぎに来たりするので、なかなかタイミングが合わないわけである。
 涼しい現場とはいえ、今回は封入の座り仕事ではなく、1日動き回るピッキングなので、さすがに脚にコタえた。考えてみりゃひと月近く、本格的根性歩きをしてなかったんだもんなあ。最初の勝負から10日ほどを除けば、それは必ずしも背中の穴のせいではなく、むしろ猛暑のためだったのだが、やはり例年のように大汗だらだらでも歩き回らないと、暑さへの適応が遅いようだ。今年はろくに動いていないのに、もうバテそうである。しかし探食も徘徊も、これからが本番なのだ。

          ◇          ◇

 ふと気付けば、もう7月も後半である。4月に送ったNFNの審査途中経過が、例年と同じなら週末発行の8月号に載るはずだ。今回は1次落ちか、それとも2次落ちか。あそこは2次通過が即最終候補だ。前回のように1次通過だけだと、あるひとりの業界関係者=下読みさんは「まずまず面白かった」と思ってくれたが、編集部の総意としては「商業出版レベルではない」と判断したことになる。しかし2次さえ通過できれば最終候補、つまり編集部の総意として「出版レベル」ということになり、審査員の錚々たるプロ作家の方々すべてに、じっくり読み込んでもらえる。結果、大賞や優秀賞は逃したとしても、出版してもらえる可能性は残る。
 正直、賞が欲しいのは山々だ。金も欲しいし、本屋にも並べて欲しい。しかしそれを期待するには、狸も疲れ過ぎた。せめて他の多くの公募のように3次選考過程を設けて、「編集部員の中に支持者もいたが結局不支持が上回った」とか、その逆とか、応募者に客観的状況判断可能な段階が欲しいものである。


07月16日 土  限界

 まあどうせ具体的な施策などなーんも考えとらんのだろうが、確かに『脱原発』を表看板に掲げれば、狸だって悪口が言いにくくなる。世評上も、菅おろし勢力を悪役に見立てる度合いが増すだろう。最後っ屁にしてはなかなか食えない腹芸をカマしてきたなあ、と、やや感心していたのだが――わっはっは、そう言った翌日には、トルコの総選挙で勝利したエルドアン首相への祝電で、原発の受注交渉の継続を希望していたそうだ。つまり、国外への原発輸出は継続したい、ということですね。なんぼなーんも考えていないとはいえ、まさか重度の健忘症とも思えないから、大方、ろくに会話もない部下に文面まで任せた祝電を、自分では目を通さないまま発信させてしまったのだろう。
 やっぱりダメですアレは。人としてどうかは知らないが、総理として。

          ◇          ◇

 テレビの『水戸黄門』が、ついに終了するそうだ。
 東野英治郎、西村晃、佐野浅夫――このお三方が主演しているうちは時々観ていたが、石坂浩二さんや里見浩太朗さんになってからは、ほとんど観ていない。元二枚目の黄門様は、花はあるのだが、やはり重厚さに欠ける。そして助さんも格さんも、あのあたりから、あまり時代劇の似合わない役者さんになってしまった。
 江戸時代以前に材を取る限り『時代劇』というジャンルは、今後もずっと続くだろうが、いにしえの東映時代劇の風合いを保つのは、すでに無理だろう。主役級はなんとか確保できても、脇役全部にまで人材が行き渡らない。

          ◇          ◇

 まだ3年しか使っていないカシオの腕時計の、ウレタンベルトが切れてしまった。いかにケツから2番目の安物デジタル(1480円だった)とはいえ、たった3年でベルトがちょん切れるというのは情けない。本体はまだ元気なので、ベルトだけ替えれば済むかと思ったら、ベルトだけでも数百円するのですね。おまけにベルトだけ立派すぎて、デザインが調和しない。ならば時計そのものを、たとえばケツの奴(980円)を買ったほうが得か。
 ――いやいや、慌てるな。確か昔、ダイソーで腕時計や交換ベルトを見かけたことがあるぞ。
 とゆーわけで、メガ・ドンキの時計売り場から、最上階のダイソーに移動すると、残念なことに交換ベルトは見当たらず、腕時計そのものだけ、ダイソーらしい100円物件が何種類か品揃えしてあった。昔は100円のみならず300円や500円の腕時計もあったはずだが、今は扱っていないらしい。その代わり100円物件のほうに、1メートルも離れて見れば普通のダイバーウォッチと間違えるような、立派な見てくれのものがあった。

          

 これがベルトも付いて税込105円ですよ。迷わず買ってしまいました。
 しかし、当然ながら完全非防水。2メートル先から見ればアクリルかガラスに見えるカバーも、ただの透明プラスチック。おまけに周囲にある4つのボタンのうち右2つは、押してもなんら反応がない。4ボタンの量産ケースを流用しているだけで、中身は月日と時分と秒を切り替えるだけの回路なのですね。そう、たとえば昔の職場で、特売のフィルムセットにオマケでつけてた子供向けのオモチャっぽいデジタル時計、あんなのと同レベルの中身。
 しかし、この立派なケースとバンドだけでも、すばらしくお買い得なのではないか。だって、たとえば狸の幼時、駄菓子屋や縁日で売っていた玩具の腕時計は、自分で竜頭を回さないと針さえ動かず、ベルトも幅広の色ゴム紐だったのに、確か20円はしてたぞ。
 残る問題は、これを着けて仕事した場合、この時期いつまで保つか。狸は汗っかきである。滝汗で軍手がぐっちょりになる。
 ――等々思惑するうち、ふと気付き、カシオのほうとベルト幅を合わせてみたら――ぴんぽ〜〜ん! まったく同じ幅だった。素っ気ないウレタンベルトなので、かえって安カシオ本体との違和感もない。
 うん、こりゃ得したわ。あらためて大中国の国威を知る。


07月15日 金  過去からの福音

 さて、背中に穴を開けてから、当初の老医師の予想「全治3週間」はとうに超えてしまったわけであるが、「膿が止まるのに結構かかった」と言われてしまえば「そーですか」とうなずくしかなく、まああのときは確かに疲労が蓄積していたから、狸体そのものの免疫機能や快復力が衰えていたのだろう。歳なのさ。
 ともあれ、ようやく穴も塞がりつつあるようで、来週には日雇い復帰の予定なのだが、現時点の貧窮(まあここ何年かはずーっと貧民ですけど)はいかんともしがたく、「あー、鰻食いてー」とか、日増しに精神的飢餓感が募るわけである。肉体的飢餓ではない。働いてないくせに米とか蕎麦は充分食っているから、狸の目方は日々増えている。しかし、スーパーの中国産でも1日の予定食費を越えてしまう鰻には、なかなか手が出せない。
 いや、かっぱ寿司や松屋の定食のように「こりゃ旨い!」という保証があれば、清水の舞台あるいは新小岩のホームから飛翔する覚悟であえて散財するにやぶさかではないが、どうもスーパーの鰻というやつは、どこの産でも、バクチに近いものがある。運がよければ中国産でもトロけるような個体に出会えるが、運が悪いと、国産品を極力注意深く再加熱しても、鍛え抜かれた筋肉のシコシコとした歯応えを味わうことになったりしがちである。そして今の狸は、こと『運』に関してだけは、「最低です!」と力の限り自信をもって断言できる。
(注・紀文の半レトルト鰻、およびその類似品は、缶詰と同じ性質の煮こまれた柔らかさなので選択肢外)

 しかし――捨てるナニあれば拾うアレあり。
 本日、ふと、PC88時代に非力なワープロソフトで打ったシナリオもどきの中に何か現在の萎えた脳味噌を鼓舞できるネタがないかと思って、天袋の奥の段ボール箱を引っぱり出したら、とんでもねー物件が、変色したプリントアウトの下から出てきた。――あの頃のエロゲーが2箱ばかり。
 何年か前に、その手の物件はまとめて売り払ってしまったはずだが、なぜ、そんな所に残存していたのか。過去のたび重なる引越の際、おまかせ引越便のあんちゃんやおばちゃんたちに絶対見られまいと、箱の奥深く埋没させていたのか。いずれにせよ推定20ウン年ぶりに、『アリスたちの午後』の1と2が、陽の光を浴びたわけである。あ、念のため、題名から想像しがちなロリ物件ではありません。一流企業のOLさんを口説いたりナニしたりするゲームです。しかし原画がロリずっぷしで有名な内山亜紀先生なのに、なんでOLだったんだろうな。
 ともあれ狸は歓喜しましたね。あのとき売った問題作『マイ・ロリータ』や『ロリータ姫の伝説』のような万単位ということはなかろうが、同じ内山先生原画だった『東京女子高制服を脱いだ図鑑』より下でもないだろうから、少なくともそれぞれ2000円くらいは――わくわくと皮算用しつつ、某ネットショップのHPを覗いて買取価格をチェックいたしますと――ガッチャ! 1が4000円の、2が4500円。すげえぜ。箱も5インチフロッピーもピカピカだし欠品もないから、あの良心的な店なら、まんまの値で引き取ってくれるはずだ。
 なんだ、狸にもけっこう『運』が残っているではないか――と楽観するのは早計だろう。それはたぶん今の運ではなく、あの頃に使ってしまった運の残像にすぎない。ここで気をよくしてスーパーの鰻を購ったとしても、シコシコやパサパサに当たる確率は高い。ならばいっそ隣駅の吉野家まで歩いて、あの季節限定鰻丼、それも豪華2枚盛りを――。

 こーゆー惰弱な精神だから、神にも仏にも見放されるのだろう。
 しかし鰻という魚、中でも育ちのいい個体は、この歌に匹敵する福音であると思うが、どうか。

          


07月14日 木  千年少女

 ほんとだ。眼鏡かけてたんだ、真琴ちゃん。N村様のブログ見るまで知らなんだ。

          

          

          

  ずいぶんしっとりしてきたけど、やっぱり少女。


07月13日 水  霞食志願

 さて、先月来、実質ひと月近くを、老医師との勝負以外は無為徒食で過ごしてしまったイキモノのクズに等しい狸であるが、その間の家賃と生活費と自身の医療費と母親関係のアレを、そのとき所有していた2万ちょっとと、6月末払いの給与約2万(つまり狸が現在登録しているふたつの派遣会社は、片方が週払い、もう片方は日銭の85%までが日払いで残り端数から月々の源泉徴収等を引いたぶんが月末振込、そんな仕組みなのである)を除けば丸々姉に頼らざるを得ない狸としては、クズの自覚が痛いほどあるわけで、せめて生活費を極限まで切りつめねばと、日々努力している。とはいえ能天気な狸のことなので、ついついかっぱ寿司やら舞茸弁当やらすき家やら、身分不相応の外食に走ったりもしてしまうわけだが、週に一度くらいはどうかかんべんしてくだせえお願えですだお願えですだお代官様お〜いおいおいおい。

 で、とどのつまり、ここひと月でかかった食費が、およそ12000円。1日平均、約400円の勘定だ。これが果たして、無為徒食の言い訳になるほど安上がりなのかどうか――気になって、ちょいと検索してみたら、このところの日本人の平均的食費は、どうやら月に20000円前後らしい。とすれば狸は、その6割。
 人並みの半分以下を目指していた狸としては、残念な結果である。しょせん孤独死候補の惰弱な牡狸、できあいの総菜にもついつい頼ってしまうし、自炊でも、たとえばメガ・ドンキの食品売り場でど〜〜んと安売りされているキロ単位数百円の輸入肉などは利用できないし、肉より高価な魚もたまには食いたいし、雑食性なので野菜も食わんと体壊すし、晩酌の89円発泡酒まで断ってしまうほどの克己心もないのである。

 こーゆー狸は今の日本には必要ないので、昨日今日と連発した新小岩駅ダイブ祭のように、最寄り駅を通過する成田エキスプレスめがけて潔くアレするべきなのかもしれない。しかしアレはアレで、残された親族には余計な掛かりになったりもしがちである。ならさっさと働けよクズ、とおっしゃる方も多かろうが、背中の穴が塞がるにはもうちょっとかかりそうだ。ちょくちょく派遣会社に訊ねてみても、今日日、背中に穴のあいた半白髪の狸がこっちの時間指定で働ける現場は、さすがにない。大汗現場なら、けっこうあるんですけどね。

 とうぶん発泡酒も断って、水出し麦茶で我慢する――うん、これでいこう。


07月12日 火  時事雑想

 政府の地震調査委員会は11日、東日本大震災の大地震の影響が続いており、神奈川県の三浦半島断層群でも地震の発生確率が高まった可能性があると発表した。同断層群が活動した場合、地震の規模は最大マグニチュード(M)6.7以上、横須賀市や横浜市などで最大震度7と予想され、従来は今後30年以内の発生確率が最大11%と評価されていた。この数字が具体的にどの程度高くなったかは不明だが、断層が動きやすくなったと考えられるという。
 大震災の影響で地震発生確率が高まった可能性があるのは、6月9日に発表された宮城・福島の双葉断層、埼玉・東京の立川断層帯、長野の牛伏寺(ごふくじ)断層に続き4カ所目。
 牛伏寺断層近くでは6月30日にM5.4、最大震度5強の地震が発生。国土地理院によると、長野県松本市の全地球測位システム(GPS)観測点が北東へ1.3センチ動く地殻変動があったが、牛伏寺断層との関係ははっきりしていない。
 大震災の余震は減少傾向にあるが、M6.0〜6.9の余震は5月が1回に対し、6月は4回発生。M7級は5、6月はなかったが、今月10日に三陸沖でM7.3、最大震度4の地震が起き、岩手と福島で最大10センチの津波が観測された。
 阿部勝征委員長(東大名誉教授)は記者会見で「余震活動はだんだん弱まっているが、むらやぶり返しがあり、今後もM7クラスが起きることがある」と注意を呼び掛けた。 【時事通信社 - 07月11日 21:05】


 うわ。最大震度7って、それ以上の震度が設定されてない最強モードではないか。かつて阪神間や淡路島の一部が晒された震度。昔の定義で言えば『激震=家屋の30%以上が倒壊』。
 ……姉一家は、横浜に住んでるのよなあ。狸穴のような安アパートではないが、大丈夫かなあ、あのマンション。敷地も丘陵状ででこぼこしてるし……ぶつぶつぶつ。

         ◇          ◇

「やらせメール」問題で、九電の内部調査が行われている最中も、同社幹部やOBからは「文面がまずかっただけ」「『やらせ』と言われるほどのものなのか」といった発言が聞かれる。
 信頼回復に努める立場にもかかわらず、問題意識の低さが浮き彫りとなった形だ。
 真部利応社長は6日の記者会見で、「やらせメール」が誰の指示だったのか報道陣に質問され、「それが誰かというのは、大きな問題ですか」と、逆に聞き返した。
 九電内には、メール問題を悪質だと認識していない空気がある。役員の一人は、「やらせメールが小さな問題とは言わないが、電力会社としては夏場の安定した電力供給の方が比べものにならないくらい大問題」と言い切る。
 10日、賛成メールの2割が「やらせ」だったと報じられると、執行役員は「過半数だったら大問題だけど、2割というのは多いのかなぁ」と話した。
 11日の鹿児島県議会に出席した幹部は「部下の課長が安易に呼びかけた」と責任逃れとも受け取れる発言をした。 【2011年7月12日14時55分 読売新聞】


 わっはっは、やっぱり南国の方々は脳味噌あったかいわ。良く言えば正直、悪く言えば●●。
 なんて、一概に決めつけてはいけませんね。実は、狸の義兄(姉の旦那)も九州男児なのである。しかし早くに両親を失って苦労したからか、性格はきちんと屈折している。けして馬鹿にしているわけではない。仮想世界のヒーローじゃあるまいし、現実世界の人間は、ひねこびてナンボなのである。

          ◇          ◇

 谷口敬先生のブログは、3日以降更新がない。その日の内容から察するに、以降の更新がないということはそのまま入院に至ったということなので、あとは回復を待つばかりだ。病気が病気だけに、やはり長期戦になるのだろうが。
 ところで、その3日の記事に、こんなコメントを入れた、通りすがりらしい馬鹿がいる。

どうして何故、自分が精神病になったのか原因をさぐる、追究してみては?
私がうつ病だった時は動物霊に祟られていたからです。庭や畑の蛇やねずみを駆除して祟られ体調を悪くした親戚の人がいる。もう一人の親戚は体調が悪化してお寺にお祓いしてもらった直後に庭から蛇が出てきて、それを寺で拝んだら病が治ったそうだ。


 一読して電波系かとも思ったが、よく見りゃ『私がうつ病だった時は』という記述から、虚偽だと判った。実際にモノホンの鬱病を患った経験があるなら、鬱病の人間に対して『どうして何故、自分が精神病になったのか原因をさぐる、追究してみては?』などと無神経に発言するはずはないのである。『さぐる』だの『追求する』だの、そんな積極性がいっさい抱けなくなる、そしてそのことをただ徒に懊悩する、それが鬱病だ。
 虚偽でなければ妄想だろう。蛇さんも鼠さんも、死んだ後までアホに祟っているほど暇ではない。


07月11日 月  水漏れ狸

 また体液が溜まると、ぴゅ〜、とか吹き出したりせんのかな、とか、何日か前の雑想に記した。これがあながち冗談でもなかったようだ。ぴゅ〜、というほどのイキオイではないが、本日、老医師が絆創膏はがして患部を押すと、生暖かい液体がだらだらと背中に伝わる感触があった。すかさずガーゼで押さえる新米の看護婦さん(いつもはベテランらしい看護婦さんがいるのだが、今日は非番なのだろう)に、老医師は「……血と体液」などと、ぶっきらぼうに説明している。ああ、やっぱり。しかし先週までは、日曜休診をはさんで一日おくと、中まで詰めこまれたガーゼや、外に当てられたさらにでかくてぶ厚いガーゼでも吸収しきれず、血と体液がシャツまで漏れだしていたわけだから、詰め物もなくちっこいガーゼだけで堰き止められる今は、確実に回復したのだろう。
 そもそも今回の長期戦の原因となってしまったハンパない化膿、これが完全に治まったらしいのは慶賀の至りで、まあどんな近代的医療技術を駆使する小綺麗な医院とて、膿が止まらなきゃどうしようもないのである。今日からは抗生物質の処方なし。痛みももうほとんどないので、別件の降圧剤以外、ヤクとは縁が切れた。狸の完全復活近し。

 残る問題は――この猛暑、そして風呂への飢餓感。
 あの初日の超絶あだだだ勝負以来、狸は一度も風呂に入っていない。いや、胸から下は毎日洗っているし、ガーゼと絆創膏の部分以外はきっちり清拭している。しかし、ふだんは年中毎日温かい風呂に鼻の下まで浸からないと安眠できない狸が、もう3週間も入浴していないのである。禁断症状が出そうだ。一昨年の手術のときだって、入浴中断は2週間程度だった。今回は背中の傷さえ濡らさなければいいのだから、その下までは湯に浸かれるわけだが、そんな中途半端は欲求不満が募るだけだ。また、ただでさえ日中汗でぎとぎとのところを、さらに夜間、裸で大汗かきまくる覚悟はない。その汗もまた傷から下しか洗い流せないのである。

 傷が塞がったら是が非でも温泉へ――そんな金はないぞ――じゃあ銭湯でもいいか。
 いや、銭湯だって贅沢だ。今日日の銭湯代があれば、2日食いつなげる。東北には、まだまだ満足に風呂に入れない方々も多数いらっしゃるのである。狸穴の極小風呂で、充分シヤワセだ。
 ……しかしこの感覚、あんがいちっとも萎縮感がないのですね。
 なんとなれば、幼い頃に家族で逗留した真夏の蔵王高湯の涼風、社員旅行で訪ねた箱根の山々や嬬恋の星空、ソニーの8ミリハンディカム売りまくって他店のベストセールスマン仲間といっしょに工場見学及び研修という名の接待を受けた三河の渥美のフィリピーナさんたち(おい)、店長時代に五十嵐夫妻や他の女流漫画家さんたちとちょいと贅沢な一夜を過ごした熱川の海岸露天風呂、辞職してもまだそっち関係のフリー仕事があった頃に五十嵐氏と男二人で訪れた伊豆の迷路っぽいゴキブリ宿――それら過去の温泉記憶たちが、狸の脳内では、日々果てしなく光を増してゆくのです。
 ――って、結局、爺いの「昔は良かったなあ」かよオイ。

          


07月10日 日  旅の記

 どうも今日あたりが最後のチャンスになりそうな気がして、ついに群馬行きを決行。なんて眥を決さなくとも、単に往復5時間以上電車の中で本読んで過ごし、舞茸弁当食って帰ってきただけなんですけどね。ホームも駅構内もクソ暑いので、運動不足解消のため、涼しい電車の中を何度か端から端まで往復してみたり。わざわざ行って肝腎の弁当が構内売店で売り切れだったりすると目も当てられないので、事前にお弁当屋さんに連絡入れとくとこなんか、狸もまんざら馬鹿ではないでしょう。行為全体はアホかもしれませんが。

 高崎まで行くとなれば、かつて勤めていた藤岡店のある群馬藤岡駅も見ておこうと、八高線にもロハ(?)で乗ってしまう。高崎駅の近代的変貌は、もともとが立派なターミナル駅なのでさほど驚かなかったが、かつてはヨレヨレの木造駅舎だった藤岡駅が、どーんと今風のベッドタウン駅のようになっていたのには、事前情報があったとはいえ、さすがに呆然とした。滄桑の変、というと大袈裟かもしれないが、なにせ昔は駅舎内にトイレもなく、別棟の木造汲み取り式男女兼用便所だったのである。で、その大の方に入ると、板壁に「あつしくん、きたよ」とか、ピンクのハートマーク添えて落書きしてあんの。当時大人気だったロックバンド(今もやってますが)『BUCK−TICK』の、ボーカルさんですね。実はそのド田舎(失礼)の藤岡高校というところは、氷室京介だのBUCK−TICKだの、なんかアレな人材を多数輩出していたのである。そのファンの子たちがわざわざ故郷を詣でて、駅のトイレに落書きを残したわけだ。あのスタイリッシュなロッカー君たちの名を、木造汲み取り式男女兼用便所に記して、ハートマークまで添える――これはなかなか並の神経ではできないことだと思うが、どうか。

 氷室もBUCK−TICKも無縁の方には、あの昭和60年の日航ジャンボ墜落事故で遺体安置所となった藤岡市民体育館があり、マスコミの拠点にもなっていた町、といえば、なんとなく想像していただけるだろうか。狸が着任したのは、その1年ちょっと後だったが、前任店長は「あのときは店中のフィルムが全部売り切れちゃって」などと、当時の喧噪を語っていた。35ミリとブローニーは、それこそモノクロからリバーサルからネガまで、さらにはレンズ付きフィルム(使い捨てカメラの業界正式名称)まで、いっさいがっさいそっち系の人に買い占められたそうである。きっとフリーランスのライターさんやカメラマンさんが、電話一本で前準備もなく現地に急行したんでしょうね。
 なお、藤岡に勤めて翌年の晩夏、台風の豪雨で八高線が停まってしまい、狸は地元のタクシーを拾って高崎のアパートまで帰ったのだが、その運転手さんに「……お客さん、足、ありますよね」などと思わせぶりに訊ねられ、あのジャンボ事故と御巣鷹の尾根の慰霊碑と、まさにその晩のそのタクシーにまつわる興味深い話を伺うことになったのだが、それはまた別の話である。……なんて、まあよっぽど語りに工夫しないと味の出ない、怪談かどうかも判然としない、静かで地味な話なんですが。

 ちなみに上州舞茸弁当は、ウン10年前とちっとも変わらず、たいへん美味でした。しかしアレの材料も栽培物のはずなのに、添え物の天麩羅ひとつにしてからが、スーパーのものより数倍美味なのは、ほんとになんでなんでしょうね。


07月09日 土  哄笑する太陽

 はっはっは! は〜っはっはっは!! あ〜っはっはっはっは!!! 「明日の午前中は曇りです」なんて言っちゃった遠い昔の過ちなんて、忘れちゃえばいいのさ気象庁くん。朝から晴れて昨日の予報より3度くらい高くなったって、ボクのこの明るい笑顔がお空で燦々と輝いていれば、だあれも文句なんか言いやしないさ! そんな根暗な奴は、薄暗い穴の中でイジけてるビンボな狸くらいなもんさ!

          ◇          ◇

 とゆーよーなアレはちょっとこっちに置いといて、狸の予想どおり、『あだだだ勝負』は昨日で終わったようだ。本日以降は、せいぜい『いつつつ』程度の勝負らしい。朝の目覚めも熟睡感があった。ガーゼの詰まったコブさえなくなれば、寝返りをうってもほとんど痛くないのである。
 まあ、それらの開放感がなければ、7月初旬にしてこの大暑、午後にはほとんど死んでたかもしんない。部屋で最強モードの扇風機にあたっていても、たらたらと顔に汗が流れるのである。入眠時以外はエアコン禁止、という今年の決意を、早くも放棄してしまった。この時期、穴の中で死にたくないもん。
 外で死んだら「何これ。でっけー狸が餓死してる。これ生ゴミでいいのかな」とか、ぼやきながらも誰かがすぐに片づけてくれようが、ご存知のとおり狸は独居中年、狸穴内で死んだらエラいことになる。発見までに1週間はかかるだろうから……●●して●●で赤黒くパンパンに脹らんで、そのあと●●液が●や●や●の穴や●●からじゅくじゅくと漏れだして蒲団から畳から床板までぐちょぐちょぬとぬとと染み広がって……夏は蛆や蠅だけじゃなくゴキも活溌な時期だから…………以下略。

          ◇          ◇

 平常心平常心平常心。

          


07月08日 金  こぶなし狸

 本日の勝負、前半戦のガーゼ取り出しは昨日までと変わらない痛感だったが、後半は楽だった。昨日までは、穴の奥のなんか肉っぽいものを千切りだしたり血液体液を拭ったり消毒したりした後で、再びガーゼを詰めこんでいたわけだが、今日からは詰めこみが省略されている。といって穴は開いたままで、なんじゃやら入念に体液を押し出したあとに、例のぶ厚いバンドエイドの親玉みたいなのを貼られ、絆創膏で補強されたのだが、病院を出た後で触ってみたら、昨日までよりひとまわり小さく、出っ張りも少ない。それどころか下の背中そのものは、明らかにへこんでいるのがわかる。なあるほど、この窪みが、全治してもとうぶん残るのか。しかし表の穴は、いつ塞いでくれるのかな。ほっときゃ自然にくっつくのかな。それとも足のマメをつぶしたときみたいに、自然に新しい皮ができるまで保護しとくのかな。んなわきゃねーだろとも思うが、まあどっちにしろ、寝床での寝返り刺激は大幅に軽減されそう。
 さあ、あとは探食活動再開の算段しながら、菅総理が●●●するのを祈るだけだ。
 しかしこんだけ大変な時節に、事実上総理大臣も一部の大臣も抜きで、曲がりなりにも国政が動いてるってのは、なにかと悪者扱いされがちなキャリア組官僚の中にも、きっちり骨身を削って働いている方々が多数存在するってことですね。そりゃそーだ。少なくとも東大卒、馬鹿よりは利口が多い。

 ところで、谷垣禎一自民党総裁が、どうもマスコミに「なんか民主の揚げ足ばかりとってヤな奴」的キャラとして扱われがちで、狸の姉なども「アレ性格悪そうで嫌い」などと言っている。しかし狸としては、確かに大物感には欠けるかもしれないが、現時点では、あの方に総理をやってもらうのが一番だと思っている。少なくとも谷垣氏は冷静な現実家だ。菅総理に延々とオムニバス作品『夢十夜』を語り続けてもらうよりはいい。

          


07月07日 木  笹の葉さらさら

 さらさらどころか笹全体が海の彼方に吹っ飛ぶほどの突風なのだが、久々に太陽さんより雲さんが元気で、真夏日は回避されたようだ。なんだ、やればできるんじゃないか、おめでとう天気予報の皆様。
 雲はどんどん元気になっているから、天の川も、彦星君と織姫嬢のにゃんにゃんも見られそうにないが、まあ大気圏外はずーっと晴れているはずなので無問題。人類の目の届かないところで、年に一度のパツイチを、思うさまキメてください彦星君。

          ◇          ◇

 背中のあだだだ勝負もついに終盤を迎えたらしく、「まだ出てるけど、そろそろ塞ごうか」と、老医師の簡略なお言葉。体液は出続けているが、肉の穴の内側は綺麗になったということらしい。塞ぐの歓迎。塞ぎましょう塞ぎましょう。もう背中に開口部いらない。でも今日はまだ、ガーゼ入り穴あき続行。
 しかし、穴を塞ぐって、縫うのかな。こんだけ長期間ばっくり開いていた皮膚組織って、くっつくのかな。また体液が溜まると、ぴゅ〜、とか吹き出したりせんのかな。……まあ医者ならぬ身の狸が考えても解るはずはないので、おまかせおまかせ。

          ◇          ◇

 富士フイルムから、ついにAPSフィルム販売終了の告知が出た。今さら惜しむ者も少ないと思うが、古くはインスタマチック・フィルム、それからポケットカメラの110フィルム、また短命に終わったディスク・フィルム等、一般初心者向きの「カートリッジをポンと入れるだけ」銀塩写真システムは、愛すべき面白カメラも多数輩出しただけに、やはり寂しい。特にAPSは、狸が在職中に開発されて、せっせと売り飛ばしたフォーマットなだけに、かなり寂しい。でも、さすがに35ミリやブローニーは、狸の生きている間くらいは消えそうにないので、良しとしよう。
 しかし、ふと思う。
 もう10年以上も前に、長い栄光の歴史の幕を閉じた外式リバーサル・フィルム、KM(コダクローム25)――。ISO感度25という低感度ながら、拡大すればするほど映像の細部が際限なく見えてくるような粒状性、色彩の女神に祝福されたとしか思えない艶やかな発色、銀塩フィルムでありながらマジに変色知らずの信頼性――。
 あんな至高感を伴うデジタルカメラ、もとい撮像素子は、狸の生きている内に出現するのだろうか。それもKM同様、ビンボな狸でも捻出できる程度の価格設定で。

          ◇          ◇

 菅首相は、つまるところ『居直る』ことにしたらしい。
 4月以降の日本の自殺者数が、史上最高ペースになっているそうだ。
 そして狸は、総理になったことも死んだこともないので、ローソン100の袋野菜と西友の100グラム89円の豚肉を、じゅうじゅうと炒める。
 今夜もミケ女王様が、いちばんシヤワセそうだ。

          


07月06日 水  徒然なるままに

 昨夜までは「明日明後日は暑さも落ち着き真夏日復活は週末」と言われていた狸穴近辺、今朝の予報は案の定「今日も真夏日」にしっかり変わっており、実際、午後には30度を越えた。まあ狸の予想通りというか、今年の天気予報基本パターンに従っているので、かえって安心してしまう。「明日は最高気温29度」と予報しているから、当然30度を越えるのだろう。

          ◇          ◇

 最近の国会中継をラジオで聴いていると、自民党の議員は、表面はともかく内心、野党であることを満喫し楽しんでいるようだ。そりゃそーだ。与党時代は何をやっても野党筋からピーピーガーガーつっつかれ、居直るなり白を切るなり面倒だったのに、今はヌケをヌケと言い立てるだけで、なんの苦労もない。おまけに相手が実際にヌケなので居直りもバックレも子供の言い訳なみだから、ツッコミどころの種が尽きず、面倒な論戦に発展する恐れもない。一部の自民党議員は、間違いなく「このまま野党やってたほうが楽かも」と思ってますね、アレは。
 ちなみに松本龍は当然ながら復興相を降り、一部には「あれはマスコミや官僚に嵌められたのではないか」などというクールな意見が出ていたが、まあ必要以上にクールな論客というのはえてして脳味噌もクールに冷凍されている場合が多いので、必要以上にホットな論客の脳味噌がしばしば煮詰まっているのと同様、客観性を失いがちである。あれはやっぱり南国でふんぞりかえっている土建屋のオーナーの器をいかなる場所でも露呈するにやぶさかでない、つまり心身共に身の程知らずのエバリである。
 かつて同じ土建屋出身の大政商に、田中角栄という怪物がいたが、あちらは雪深い新潟県の生まれで、おまけに貧乏家庭からの成り上がりだから、さすがに駆け引きが上手かった。低頭と恫喝が巧みに混淆するような腹芸ができた。人情話も自然に語れた。あの人がアメちゃんに嵌められず首相を続けていたら、日本の地方インフラなどは、ずいぶん整っていただろう。当然、過疎問題などもずいぶん違っていただろう。「しかし『日本列島改造論』など土建屋の利権目当てにすぎず、闇雲な自然破壊に繋がっただけだ」とおっしゃる方々もあろうが、なんの、角栄さんが失脚したあとも、ご存知のとおり日本列島は党派を問わず小粒な土建屋さんたちに無節操に食い散らされまくって、自然破壊されまくりだったのである。全国を俯瞰するビジョンがあったほうが、総体的にはバランスがとれたはずだ。

          ◇          ◇

 和田慎二さんがお亡くなりになられたそうだ。合掌。
 巷の多くの方々にとっては、『スケバン刑事』の作者として惜しまれるのだろうが、実は氏のアクション物にあまり深みを見いだせない少女趣味の狸にとっては、なんであの方は『クマさんの四季』みたいな路線を早くに封印してしまったかなあ、そんな感慨のほうがひとしおである。あの『別冊マーガレット』にちょっとだけ連載された、愛すべきメルヘンですね。思えば少女漫画出身の男性漫画家さんたちには、リリカルな作風からハード方向に衣替えする方が少なくない。たとえば中城健太郎氏や立原あゆみ氏。
 あの梶原一騎の臭くて嫌らしい男汁だけを煮こんでしまったような劇画『カラテ地獄変』やら何やら、あれの作画を延々と続けた中城健(中城健太郎)氏も、デビュー当時は、たしか『リボン』だったか、愛らしい少女漫画を発表していたはずだ。噂では梶原一騎も一目置くほど豪快な巨漢だったそうだから、そっちのほうが本来テリトリー外だったのかもしれないが、えてして臭い男汁の底にこそ、無垢な少女が密やかに忍んでいたりするものである。
 立原あゆみ氏は、任侠物だけでなく少女漫画もずっと続けておられるが、『のらねこ教室』のような純メルヘンは、80年代中頃以降、描いておられないのではないか。狸みたいな猫のイチクミ、大好きだったんだがなあ。
 ……まあプロ漫画家の世界ですから、需要が少なければ供給も続けられないわけですけど。

          ◇          ◇

 話はますます爺いの昔話にシフトします。
 YouTubeで、こんな懐かしいアニソンのフルコーラスを見つけてしまった。

          

 どうでしょう。『海底少年マリン』。なんか爽やかな夏っぽい軽快なイントロで始まるSF海洋少年アニメ、いいと思いませんか?

          

 もともと海外輸出向けに作られたそうで、キャラクター・デザインもあっちふうのクセがあり、当時の狸仲間でも好悪の別れる番組だったが、狸はけっこう好きだった。P1−0号のプラモデルも作ったよなあ。
 そもそもこのシリーズの前身である、パイロット版っぽく3話だけ製作されたという日本初のテレビ用カラーアニメ『ドルフィン王子』、アニメ史上では『
本作品は、制作会社がカラーアニメの制作が初めてであったために試験的に製作された作品。海外販売用のパイロットフィルムとして使用されたと思われ、ほとんど一般視聴者の記憶に残っていない作品である。主人公は後のマリンそのままの外見だが、キャラ名は「ドルフィン王子」となっている。』などと解説されているが、なぜか狸はしっかり記憶していたりする。1965年当時、民放が唯一『山形放送』ただひとつしか受信できなかった山形において、そんなマイナーなアレが、リアルタイムで放送されたはずもない。何年か後、子供の日の特別番組として、日中、まとめて3本放送されたのを、たまたま観たのである。ちょうど狸の生家に、カラーテレビがやってきた頃であったと記憶している。そのせいで、特別印象に残ったのかもしれませんね。
 ともあれ、国内ではあくまでマイナーな作品だったせいか、今では著作権すら判然とせず、劣化した放送用ポジフィルムしか現存せず、最新のDVDでもCSでも、昔っぽい粗々画像なのだそうだ。前身の『ドルフィン王子』にいたっては、フィルムの所在すら不明とのこと。
 しかし――。
 もとが海外向け製作だけあって、欧米では、『マッハGO!GO!GO!』ほどではないにしろ、けっこうメジャーらしいのですね。昔のビデオ画質のみならず、あきらかに最新デジタル・リマスター画質でも、多数YouTubeにアップされている。
 ただし、例によって主題歌などは、当時のかの国のアニメ同様、刺激の少ない童謡っぽい歌に変えられているのが残念。

          

 しかし思えばあの頃から、狸は小原乃梨子さんのお世話になっていたのですねえ。


07月05日 火  夏のデスクトップ

 やっぱり盛夏に涼味を求めるなら、これしかないでしょう。

          

 ……すみません。ウソです。ほんとはこんなんです。

          


07月04日 月  イキオイは無神経の言い訳にならない

 おーおーおー、あったかい南国でぬくぬくと育った、土方とヤクザの親玉風情が、何様のつもりだ。おい松本龍、お前のことだぞ。まあがむしゃらにハッパかけてイキオイで恫喝するのも、確かに復興には繋がるかもしれない。しかし維新の志士の時代じゃあるまいし、復興相やるなら東北の地図くらい眺めて来いよな。ちなみに古い山形県人や福島県人は、外面でこそ三島通庸を偉人扱いしているが、陰ではいまだにハイでラリパッパな南国無神経野郎だと思っているぞ。北の人間は寡黙で口数が少ないだけ、とことん根に持つからな。月夜だけだと思うなよ。
 それにつけても民主党、政権とって以来、皆様ハイなラリパッパ状態なのではないか。

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 などと、思わず不機嫌に悪態を吐き散らしてしまうのは、言うまでもなく、暑いからである。のみならず本日はヤケクソのような湾岸熱突風が吹き荒れている。ベランダに干した狸の洗濯物は無事だったが、どこぞの部屋ではでっけー敷蒲団を地べたまで吹き飛ばされていた。で、地べたにはしっかり打ち水なんかしてあるのね。他人事ながら冗談じゃねえぞまったく。背中の穴は、まだなんかいろいろ嚢片やら千切り出しが続いてるしよう、体液血液じゅくじゅくだしよう、痩せ我慢して歯あ食いしばってると汗がだらだらだらだら下半身まで流れてくるしよう、ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ。
 ……失礼しました。もちつけ狸。まだ餌と医者代は残っている。居直って座禅でも組んでろ。

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 平常心平常心平常心。

          


07月03日 日  時の過ぎゆくままに

 前の前の月曜にデキモノをほじくり出してもらってちょうど2週間、日に一度のあだだだ勝負と睡眠不足と猛暑とありあまる余暇という、もーなんだかよくわからない狸の夏休みも早半月に達しつつあるわけだが、日曜はつらい。病院が休みなのであだだだ勝負ができず、傷の中の消毒ガーゼを変えてもらえないので、どうしても血液や体液が外まで滲み出てしまう。てゆーか、たぶん大量の汗に溶け出しているのかも。何より不快なのは、下着の汚れより、その汚れの放つ臭気だ。
 たとえば大汗かきながら買い物に出て、おや、今日の街はなんだかときどきそこはかとなくホームレスさんのような発酵臭を感じるなあ、などと思っていると、これが狸自身の背中の臭いなのである。狸は他人の放つ臭気には比較的鷹揚だが、自分の放つ臭気は看過できない。帰ってチェックすると、さすがにポロシャツまでは汚れていないものの、下着にはしっかり染みができている。もちろん毎日背中は清拭しているが、背中の穴に詰めてもらったガーゼや、それを被っているでっかいバンドエイドっぽい何かや、汗で剥がれないよう四方に張りまくられた絆創膏まで自力で交換するほど、狸も器用ではない。
 それにしても毎週毎週、週初めには「この猛暑も週の中頃から週末にかけては落ち着くでしょう」などと予報しといて、律儀に外し続ける気象予報士の方々、いっそ「暑いのが夏とゆーものなので今年も夏が終わるまではとにかくもーずーっと暑い夏でしょう」とか断言してくれまいか。そのほうが、稀に訪れるハズレの日、つまり最高気温30度未満の日を、かえって大喜びできそうな気がする。

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 そんな真夏日なのだから狸穴で孤独に臭っていればいいものを、今日は朝から狸穴内の一週間分の汚れ物を自力で洗濯し、「よーし、これでコインランドリーと乾燥機代が1000円は浮いたな」などと気を大きくして、午後からは発作的に上野公園に出かけてしまう狸。いや、あそこの『下町風俗資料館』で、街頭紙芝居の実演をやると聞いたので。資料館には二度ばかり入ったことがあり、古狸などにはたいそうくつろげる所なのだが、紙芝居の再現はまだ見たことがなかった。
 今でもときどきマスコミ等で再現される街頭紙芝居、大半好事家の趣味かボランティアなので、昔、現役の街頭紙芝居を見て育った狸から見ると、どうにも芸が甘い。「ひとりでも多くの子供に5円の駄菓子を買ってもらえば、今日の晩酌は肴が1品増えるかもしんない」、そんな気迫が足りないのである。そして案の定、本日の実演も、まさに趣味的ボランティア、旦那芸であった。それでも最前列の子供衆などは、けっこう食い入るように見入っていたから、『一期一会』というフォーマットのエンターテインメントは、やはり訴求力があるらしい。
 ちなみに下の映像は、かなりプロっぽいですね。

          

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 谷口先生のブログで、入院に向けて動いておられると知り、ひと安心。精神病院に縁の深い(自分で入院したわけではないが)狸から見ると、やはりそこでの治療が、鬱病全快への早道なのである。傷ついた翼を飛びながら治せるのは、生活に余裕のある幸運な鳥だけだ。
 過去の原稿は、某記念館に保管してもらう手はずになったそうで、病の渦中にある先生ご自身は、『私の半生は私の管理から離れた。もう会えない気がする。』『漫画家「谷口敬」は終わってしまった。』などと嘆いておられるが、大丈夫です。まさに鬱病であるがゆえにそう感じているだけであって、治ってしまえば別の話です。
 ともあれ、狸の知っている精神病院の入院病棟は、すこぶる哲学的な場所でした。快癒のみならず、クリエイターとして得るものも大きかろうと思われます。


07月01日 金  続・フヤける日々

 まあいちいちくどくど記しても仕方がないが、背中に痛みの元があっておまけにでっぱっている状態だと、とにかく安眠できない。
 震災後しばらく『揺れ恐怖症』で安眠できず、ようやくそれが治まったと思ったら、こんどは物理的に安眠できなくなってしまった。
 入眠時は問題ないのである。狸は中年以降、出腹が重くて仰向けでは入眠できず、横向きに縮こまって寝に就く。しかし睡眠中は、しばしば寝返りを打つし、仰向けになることもある。そのたんびに背中の痛覚スイッチが作動して、小心な小動物のこと、「びく」などと目を開けてしまう。試しに痛み止めももらってみたが、駄目ですね。あれはどうやら継続的な頭痛や歯痛は和らげるようだが、突発的な刺激には対処できないようだ。
 と、ゆーよーなわけで、有り余る暇を与えられながら、睡眠不足(と言うより安眠不足)と日中の猛暑で、ついついウスラボケーっと時を過ごしてしまいがちなわけだが、本日の目覚めは久々に「びく」ではなく「ふわあああ」と充実していた。ようやくデキモノ跡が回復してきたのか、それとも熟睡欲(?)が痛覚を凌駕したのか。ちなみに穴はまだ開いたままだし、老医師との勝負も「あだだだだ」が続いている。

          ◇          ◇

 ともあれ久々に寝覚めが良かったので、午前中に勝負を済ませ、遠出することにした。群馬の高崎まで『上州舞茸弁当』を食いに行くには遅すぎるので、いっぺん行こう行こうと思っていた、都内北区の旧古河庭園をめざす。旧古河庭園に行きたかった理由は、前作長編打鍵時にその資料を参考にした、ジョサイア・コンドル設計の有名な洋館が建っているからだ。高崎弁当計画とは違い、どうしても駒込か上中里で駅を出なければならないから、往復の電車賃はかかってしまう。しかし行程中の食物を持参すれば、往復760円の出費と120円の入園料で済む。狸の肉球のある掌でも、なんとかおむすびは握れるのである。水は駅のホームや公園で飲める。
 最初は土地鑑のある駒込から歩こうと思ったが、老医師との勝負ですでに滝汗、それから最寄り駅に至るまでに大滝汗で、結局、少しでも歩行距離の短い上中里駅で降りる。正解であった。庭園の水場がなかったら、脱水症状で死んだかもしんない。まあ金さえ払えば、途中、路傍の自販機でなんぼでもキンキンに冷えた飲料を買えるわけだが、今の狸は、そーゆー部分での出費は却下なのである。などと言いつつ、事前調査では一週間も前に予約しとかないと不可のはずの洋館内部見学が、ちょうど本日午後2時半から臨時で行われると聴き、大枚525円を追加して、参加してしまった。かっぱ寿司とかキティちゃんとか舞茸弁当とか古河邸は、一種の精神財なので、自販機飲料とは別扱いなのである。
 残念ながら館内撮影は禁止なので、ここに写真は載せられないが、とにかく他に類を見ない『繊細な細部』を宿す洋館である。あの古河財閥3代目当主が建てただけあって、『ありあまるオゼゼの正しい使い方の見本』みたいな洋館である。そのオゼゼが、例の鉱毒事件で名高い足尾銅山などの利益によっているにせよ、あの館の細部にまで見られる『西洋建築にずっぷしと入れこまれた和の渋みと気配り』は、ひとつの『モノ』として、抗しがたい魅力がある。
 この館が今のように完全に修復されたのは昭和57年から平成元年にかけてと知っていたが、戦後の昭和26年、接収していた連合軍から返還されて以来、実に30年以上、マジに土足でお出入り自由の『空き家』として放置されていたとは知らなかった。しまいにゃ全館蔦に被われ雨水は屋内まで溜まり壁は落ち、高価な調度は朽ちるに任され、ご近所では『幽霊屋敷』と呼ばれていたそうである。
 うわあ、なんとゆーことだ。狸は昭和52年に上京したのである。そんな面白い物件があると知っていたら、絶対、夏場に忍び込んで探検したのに――。
 まあ都市伝説や実話怪談が全盛の今なら、とっくにネットあたりで噂が広まって、やくたいもない似非プロダクションのロケや、節操のない若者たちの侵入で修復不能になっていたかもしれないから、館としてはラッキーなのでしょうね。

 美麗な本館や庭園の写真はどこでも見られるので、ここでは、裏の使用人関係部分の画像をちょこっと。どうやら部外者は入るべきでない部分だったらしいのだが、狸のことゆえご勘弁。だって、ちょっと裏の垣根くぐったら、入れたんだもん。