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12月31日 月  寝大晦日

 寝正月があるなら、寝大晦日があってもおかしくない。その証拠に、起きてから30分ほどで日が暮れてしまった。「あーうー」などと呻きながら、風呂に入って就寝、じゃねーや、覚醒して年越し蕎麦を湯がき、何年ぶりかのリアルタイム紅白視聴に挑む。
 嵐はあいかわらず好感度高しとか、パヒュームがなかなかかわいいとか、AKB48はどんなに装ってもひと山いくらの個性の量り売りだなとか、か、かわいいじゃねーかおいきゃりーぱみゅぱみゅとか、上を向いて歩こうの過去最良のカバー歌唱を聴かせていただきましたありがとうございますありがとうございます徳永英明さんとか、人の声も至高の楽器なのですね由紀さおりさんとか、やっぱハンパじゃねーわすげーぜ氷川きよしとか、ううむ気負いすぎて浮いてしまいましたね美輪明宏先生や石川さゆりさんとか、もはや無敵のロック大明神矢沢兄ィとか、かなり楽しませていただいた。
 ところで、敬愛する美輪明宏先生がみごとにスベってしまった件だが、あの方の歌、と言うより『たったひとりの劇場』は、やっぱりアルバムとかワンマンショーとか、美輪ワールドずっぷしの環境でないと、濃すぎて浮いてしまうのですね。名歌『天城越え』をスベらせてしまった石川さゆりさんの場合は、演歌歌手にとっての紅白を意識しすぎ、単純にオーバーアクション。あの名歌のキモは、しっとりと歌い秘めてナンボの情念だろう。
 にしても、さして狸がファンではない徳永英明さんに、坂本九さんとは完全なタイプ違いの、しかし完璧な『上を向いて歩こう』を聴かせてもらえるとは。やはりなんのかんの言いつつ、紅白は面白い。
 そして――夢の中で若返った狸の嫁は堀北真希さんに決定。あれほど真摯にトチれる若い娘は今どき絶滅危惧種。狸もあと20〜30年は生きて、円熟した彼女の姿を拝まねば。

 で、おこたみかん状態で『ゆく年くる年』も見終わり、とっくに年は明けているわけだが――それでは皆様、良いお年を!


12月30日 日  仕事納め

 まあ大晦日も元旦も、探せばなんらかの仕事はあるのだが、加齢のせいかやたらくたびれたので、今年は行きつけの現場の仕事納めに同調してしまう。仕事始めは4日の予定。つまり今回は、狸も人並みに、年末年始4連休なのである。
 本日はいちおう夜8時までの契約だったのだが、6時頃には全作業終了。「定時までなんかがんばろう!」などとおっしゃる社員さんは、所長さんを含めてひとりもおらず(当たり前ですね)、即行で解散。
 で、狸は勇躍、大雨の中を『かっぱ寿司』へと進軍しました。こないだ新聞の折り込みチラシに、『210円割引』などという太っ腹なクーポン券が、何枚も印刷されていたのである。腹いっぱい10皿食っても840円。もとよりアンキモもエンガワも生海老もオール100円。すげえぜカーくん。ちなみに『かっぱ寿司』のすぐ近所に『くら寿司』も出店しており、メニューのバラエティーはそっちが上なのだが、狸は酢飯そのものが舌に合うので『かっぱ寿司』専門である。
 帰途、ドンキとローソン100をハシゴし、年越し蕎麦用の天ぷらや雑煮用の鶏肉と三つ葉、そして最低限のおせちを調達。たいがいの物件を100円で売ってくれるローソン100も、近頃はデフレ脱却を目ざしているのか200円以上のアイテムが増え、カズノコなどは300円近い。しかしカズノコは、あらかじめ『かっぱ寿司』で先行摂取しておいたので無問題。
 そして帰宅後は、風呂を涌かしながら、いきなり洗濯開始。大した量ではないのでコインランドリーはパス、節約のために盥でゴシゴシ。外は雨だから当然室内干し。下手すりゃ正月まで狸穴中にシャツやパンツがぶら下がっているわけだが、今さらパンツの森を厭うほどウブな狸ではない。

 とまあ、なんで今晩中に、こんなに全てを片づけてしまうかというと――。
 寝るのだ寝るのだ。
 これで明日の大晦日は、夕方まで寝ようが夜まで寝ようが無問題。元旦も完全フリー。
 残る問題は、日帰り帰省予定の2日、山形方向に続く道がどうなっているかだが――正月の予報は、連日雪マークのようだ。しかしさすがにこればかりは、人智や狸智の及ぶところではない。
 どうか小降りにしといてください気象さん。


12月28日 金  狸走

 師走、というくらいで、師が走るくらいだから、狸もそれなりにとたぱたと駆けまわり、ふと気づくと、今年もあと3日で終わりである。しかし今さら時の流れの超加速に驚けるほどウブでもないので、ただ黙々と駆けまわるのみ。

 このところ親しくしていた若い衆が、年の瀬にきて他の現場に鞍替えしてしてしまい、ちょっと寂しい。
 まだ二十代初期の、長髪をほぼ頭頂でちょんまげにまとめた、ややホンキーな若者で、見かけはアレだが気立ての良い、骨惜しみをしない好青年だった。
 以前、派遣会社から、ガテン系でなくとも日給1万になるという食品製造系現場の紹介があり、彼に「狸さんもいっしょにどうですか?」と誘われたのだが、狸は集団行動が苦手で、かつ汗っかきの小動物ゆえ、ああした全身白ずくめの完全殺菌環境で長時間ライン作業をすると、全身白々とフヤけるは、脳味噌と手足の動きがとっちらかるはで、しまいにゃ発狂しそうになる。そもそも取扱物件に、一滴の汗も垂らさないのは不可能である。で、「俺はちょっと無理」とお断りしたわけだが、彼は「でも週5でひと月、20万ですよ。20万あったら、なんでもできるじゃないですか」と、夢見るような瞳で力説していた。
 20万――うん、ほんとに『なんでもできる』よね。この世の栄耀栄華を極められるかもしれない。冗談抜きで、今の狸にはうなずける。しかし、純ガテン系も食品製造ラインも、今の狸にはちょっと無理。
 ちなみにその現場では昼飯も無料で出るそうで、彼が「夢のようだ」と喜んでいると、今日、別の親しい若い衆から聞いた。良かったね。あの骨惜しみをしない性格だから、ラインにも、小うるさいおばちゃんたちにも適応できるのだろう。汗っかきじゃなかったし。
 願わくば、その派遣現場が、正月が過ぎても多忙でありますように。

     


12月24日 月  イブ雑想

 本日は祝日のためか遅番がなく、いつもより少々早く(と言っても8時過ぎだが)ヨレヨレで家路につき、街を彩る聖夜関係の電飾にももはやさしたる情動は覚えず、「ああ俺も完全に摩耗してしまったなあ」などと虚しく呟いたそばから、駅中の高級スーパーにクリスマス恒例の『ロブスター・テルミドール』を見つけ、すでに処分価格になっているのを確認し、とたんに顔を輝かせていそいそとレジに運ぶ。2180円の商品が1580円、それも最後の1個をGET。確か去年のイブ近くにも、まったく同じ買い物をした。ふだんの夕飯予算に比べればとんでもねー出費だが、実際3000円級の旨さなのだから文句はない。これもまたどなたかの、年に一度のハレの日らしい思し召しなのだろう。
 帰穴後、姉からの年末年始援助物資がとどく。これで年越し蕎麦も雑煮もカレーも具だくさんのラーメンも食える。ありがたやありがたや。
 さっそくお礼の電話を入れ、正月に郷里の施設の母を見舞う話が出たが、お互い懐がサミしく、今回は義兄の車で日帰り強行軍の予定。となれば問題は行き帰りの降雪具合、それに尽きる。
 思い出としては懐かしい雪国も、そこに住んだり行き来したりする身には、けっこうしんどい。

          ◇          ◇

 あ、ところで天野様、あそこの感想に記した『主人公にボケが足りない』云々は、まったくの冗談です。正しい男として、梯子を登るミニスカ嬢を真下から直視してもいけません。それでは狸の品性になってしまいます。


12月22日 土  滅びませんなあ

 思うに人類というものは、そのうちなんとなく減りだして、「あ、こりゃちょっとサミしくなってきたなあ」などと嘆きながらもやっぱり減る一方で、そのうち「うわ、こんなに減っちゃっちゃ、もうしょうがないわなあ」と諦めて、出現したとき同様、誰も自分が最後の人類であることを自覚できないまま種の存続を終える、そんなとこじゃないでしょうか。つまり世の中、全人類がきれいさっぱり一緒に終われるほど甘くはないのであって、各種のハデハデな終末論は、満たされた者も満たされない者もなぜだか心の底に飼っている終末願望を掻き回しガス抜きするための、劇場的な大ネタなんでしょうね。

          ◇          ◇

 オウム真理教(の残党)に再び入信者が増えている、そんな記事の見出しに驚いて、詳しく読んでみたら、この一年で、たったの二百何十人だった。セコセコと欲の皮の突っ張った詐欺的宗教法人のほうが、セコセコと欲の皮の突っ張った信者を、遙かに多く抱えている勘定である。
 ハルマゲドンへの道遠し。

          ◇          ◇

 その後、こむらがえりは再発しないようだ。腕の痛みも順調に薄れつつある。これはサロンパスやドンキ・ドリンクの効力なのか、それとも狸自前の回復力によるものか。サロンパスやドリンクの瓶や腕の筋肉に問い質しても、いっさい答えてくれない。まあ無口なほうが信用できるから、いいか。


12月19日 水  つるつる

 いきなり禿げたのではない。狸は半白髪だが、まだ地肌は露出していない。
 午前中に左のふくらはぎがつってしまい、これはいわゆるこむらがえり、つまり何度も経験があるので慌てず騒がず落ち着かず、ゆるゆると揉み伸ばしていたら数分で治まった。で、作業を続けていたら、こんどは午後になって左下腕の内側が似たような症状を呈してしまった。こちらはかつて経験がなかったので大いにビビり、一応こむらがえりと同じように対処、とりあえず動きは復活したが、ふくらはぎと違い、夜になっても動かし方によってはズキリと疼く。寒さのためか、栄養が足りていないのか、それとも単に加齢のためか。いずれにせよ、貧しい爺いの冬の倉庫作業では、身体の内外問わず、思わぬトラップが待ちかまえているのである。
 最寄り駅近くのドンキの薬品売り場には、日によって、夜中近くでも薬剤師さんが詰めている。高い薬など買う金はないが、相談は無料である。結局、お勧めのインドメタシン製剤などは、やはり高価すぎてパス。よくあるサロンパスと、ドンキお勧め栄養ドリンクを購入。10本数百円の安ドリンクに、リポビタンDと同等のビタミンや、3倍のタウリンがぶっこんであるそうだ。いかにも老い疲れた筋肉に良さげで、飲む前から効いたような気になれる。マジに効くかどうかは、明日以降のお楽しみ。

 湯上がりに貼るサロンパスの、久々の爽快感に、思わず「あーうー」などと唸りながら、録画しておいた小林旭兄ィの『都会の空の用心棒』(昭和35年・1960)に胸を躍らせる。ヘリコプター・パイロットの旭兄ィが、空から広告ビラをまいたり、悪漢輩をやっつけたりする。おいおいチラシ撒きのアンちゃんかよ、と笑うなかれ。当時は最先端の広告手法だったのである――たぶん、きっと。少なくとも、地べたでわいわいとチラシを拾う小狸たちにとって、あの金魚鉢に鉄骨の尻尾を生やしたような民間ヘリは、まさに天空を駈る夢だったのだな。

          ◇          ◇

 某所でのアラシさんの狸に対するカキコに、狸に代わって抗弁してくれた狐ママンや鋏屋様、ならびにゲストブックにカキコくださった天野様、どうもありがとうございました。肝腎の狸自身がのらりくらりと日和ってしまい、申し訳ありません。
 しかし、こーゆー生活を送っている中高年の精神は、面の皮同様とっても肥厚してしまっており、見知らぬ方から安全カミソリなどいただいても、髭を剃るくらいしか使い道がないのですね。


12月16日 日  雑想

 有権者としての義務を鑑み、きちんと投票してきた。
 もっとも、そのうち2枚は、『今回の衆院選挙に際しましては、当方、支持すべき政党も候補者も見出せなかったため、無効票にて失礼いたします。』、そんな走り書きだが、それでも投票に変わりはない。
 各政党や各候補者は、部分的に『狸の望むこと』を主張している場合もあるのだが、いずれも『狸の望まないこと』まで、きっぱり『やります!』と明言している以上、拒否するしかない。
 ちなみに最高裁裁判官審査のほうは、×印をひとつ。冤罪はいやだ。しかし過去、この×の集積で罷免に至った最高裁裁判官は、ひとりもいないそうだ。

          ◇          ◇

 今回の選挙では、投票所の派遣仕事がなかったのが残念だった。
 まあ、例のやくたいもない派遣法改正で、私企業なら抜け道を通ることもできようが、さすがにお役所としては、スポット派遣を依頼するわけにはいかなかったのだろう。
 その代わり、各マスコミによる投票所出口調査やら、開票状況のリアルタイム連絡といったスポット派遣、じゃねーや、スポット紹介依頼は多々あり、けっこうな時給が提示されていたのだが、性に合わないのでパス。たとえ低時給で、おまけに今月いっぱいは正午から夜間までの遅番に回されそうでも、狸には、大量のリカちゃんを担ぎ回っているほうが精神的に楽である。人形は余計なことをしゃべらない。
 しかし玩具業界って、不況に強いよなあ。無論、青息吐息のメーカーもあるのだろうけれど、すくなくともリカちゃん一家および住居・家具調度等は、よくまあこんだけ大量に日本全国津々浦々まで毎日毎日旅立って行くもんだ、そんなイキオイです。

          ◇          ◇

 HPを改装するとすれば、新しい表札は『狸穴幻燈館』、あるいは『狸式幻燈機』にしようと思い、古い映画劇場や紙芝居道具や幻灯機の写真を求め、図書館へ。
 江戸時代の木製『写し絵』箱や、明治時代の『のぞき眼鏡』の写真が気に入ったのだが、これって、ほとんどの方々には、なんの道具やら判らないだろうなあ。


12月14日 金  ワケあり狸

 えーと、なにがワケアリなのかご存知の方には、大変心配をおかけしました。
 また、ここを覗くのが久しぶりで、なにがワケアリやらご存知でない方は、とくに気にしないでくださいね。
 ともあれ、『お手数ですが、ガイドラインを見直していただき、早急にページの修正をお願いいたします。』『再度違反が確認された場合は、すべてのファイルを削除させていただく場合がございます。何卒ご了承ください。』との、大家さんのお達しによりまして、とりあえず前月までの『狸穴雑想』と、『寝室』のデータを、まるまる削除いたしました。ヤバげなデータのみ選択削除する暇がなかったもので。
 これを機会に、マジにHP全体を廃墟っぽく模様替えしようかなあ、などと、隠遁願望の高まりつつある、今日この頃の狸です。

          ◇          ◇

 ところで本日の午後4時過ぎ頃、東京湾岸から眺めた茜色の空に、かなり明瞭な『幻日』が出現していた。
 本来の夕陽からやや離れた左方の雲間に、光量およびサイズ当社比5割引、そんな朧気な夕陽が、右縁に虹色の分光を宿しながら、しばらくの間、浮かんでいたのである。
 ああ、あれはきっと、どこかにいる狸の仲間。

 ……光あれ。


12月11日 火  裏表不謹慎狸

 十八代目・中村勘三郎さんが亡くなったかと思えば、今度は小沢昭一さんの訃報。
 片や歴史的表芸(?)である歌舞伎の花形、方や新劇出身ながら常に寄席演芸や土俗的放浪芸を慈しみ研究に励んでいた個性派脇役、そんな立場の違いはあるが、おふたりとも狸にとって、化けっぷり上、もとい芸能史上、甲乙つけがたい大きな存在だった。
 しかし困ったものである。
 まだまだ活躍して欲しい方々ばかり、陸続と彼岸に旅立ってゆく。
 火急に消滅していただきたいような方々は、身罷る気配もない。

          ◇          ◇

 などと言いつつ、不謹慎にも、下ネタに走る狸。
 先だっての後頭部強打ほどインパクトはなかったが、おとつい、作業を抜けての慌ただしい排尿後、息子の先をチャックに挟んでしまった。
 幸い最先端部ではなく、いわゆる『もどり』部分の小傷だったため、近頃寝たきり、あるいはぶら下がりっきりの息子にとっては、常に丸まった余剰皮の内側にあたり、風呂で洗って消毒するとき以外は、なんの不便も感じなかったのだが――今朝方、「あだだだだだだだ」などと呻きながら、目を覚ますことになった。
 ここ何ヶ月、寝たきりだとばかり思っていた息子が、起きていたのである。
 ご存知のとおり、あの不肖の息子というものは、起きてしまうと、寝たきり時の倍近くに膨脹する。当然、余っていた皮も倍、いや、円周状だと3倍に張りつめることになる。つまり縮んだ状態で修復されつつあった傷の薄皮が、膨脹によって、ぴ、と裂けてしまったのですね。せいぜい5ミリ程度の傷とはいえ、ぴ、とくると、そりゃ痛い。
 これまでも父親の知らないうちに立ち上がっていたのか、それとも傷の刺激によって久方ぶりに立ち上がったのかは定かでないが、「この息子はもー死ぬまで寝たきりかもしんない」と諦念しつつあった父親としては、困ったような嬉しいような、なかなかに微妙な心境ではある。


12月08日 土  安全第一

 尾てい骨(しかしこのみっともない平仮名『てい』は、なんとかならんかJISさん)の痛みも、たんこぶの痛みも、だいぶ治まった。中身の脳味噌も無事だったらしく、特にバカになった自覚はないし、白日夢も見ない。
 その後、親しい派遣仲間に「なんで後ろに手をついてショックを避けなかったのだ」と訊かれたが、「『リカちゃんハウス・グランドドリーム』を抱えていたからだ」と答えると、サミしげな顔で納得していた。この豪邸を破損させたら、卸値でも日給の大半が消える。無論、転んだ瞬間に、そこまで計算したわけではない。かわいいリカちゃんのお家を抱いていると、ろりの狸親爺としては、どーしても守ってしまうらしい。

 ことほどさように、たかが倉庫内軽作業といえど、非力な小動物にとっては、なかなか危険である。
 それでも先日の震度4に際しては、「なんか船酔いしそうだなあ」などと、皆で脳天気につぶやき合っていた。最新の免震構造なので、横揺れなら、どんな激震も、ゆったりとした動きに変換される。湾岸ゆえ津波は避けられないが、5階建て(一般のビルなら10階なみの高さ)だから、溺れる心配もないだろう。
 今後、関東大震災が再来するときは、狸穴より、このロジにいたいものである。


12月05日 水  ホワイトアウト

 ロジ内作業中、ハンドフォーク(ハンドリフトとも言いますね。パレット積みした荷物を引っぱるアレです)に足をとられ、思いっきり後ろに転倒した。小心ゆえに用心深い狸としては、異例のドジと言えよう。
 ロジの床は、たいへん強固なコンクリである。固さにおいては、頭蓋骨といい勝負だろう。よって、まともに後頭部から着地したら、相打ちでダウン必至なのだが、幸い狸は猫背である。後方に転倒しても、軌道はやや丸い。ぶよんとしてしまりのない尻っぺたから着地すればベストだったのだが、ずるりとすべる形で転倒したため、そのやや上方、尾てい骨に近い辺りからまず着地、次いで後頭部が「すこ〜〜〜ん」とコンクリに激突した。
 はい、視界全体がスパークいたしました。
 失神は免れたのだが、全身にびよよよんと痺れが走り、しばらくは立ち上がれなかった。四肢がびよんびよんと痺れて、どーやっても立てないのである。視界のスパークはすぐに治まったが、こんどは世界中が揺れたり回ったり歪んだり。「あーうー」などと呻きながら床で蠢くこと、推定3分程度だったか。つまり軽度の脳震盪ですね。
 いや、倒れた当初は、マジにこのまま逝くかと思いました。
 幸か不幸か、だだっ広いロジの奥までピッキングに入っていたため、周囲では狸以外の誰も働いておらず、じきに復活した狸にとっては「ああ、みっともない姿を見られないで良かった良かった」という意味での幸だが、もしそのまんま失神(あるいはオダブツ)の場合は、何時間か後に発見する関係者にとって、大いなる不幸だったろう。まあ狸自身は、ぐんにゃりと横たわったり、つっぱらかって冷たくなっているだけだから、幸も不幸も感じないだろうけれど。
 尾てい骨は、帰穴した今も、ズキズキと疼いている。しかしヒビは入っていないようだ。後頭部には、当然たんこぶが生じたが、意外に痛みは少なく、風呂で洗髪しながら「ぐぬぬぬぬう」などと呻く程度。今になって首筋がちょいと突っ張る気がするのは、軽いムチウチ的な負荷のためか。

 まだ幼稚園の頃、どんどん焼きの屋台の金属部分に後ろ頭を強打して、ハデな脳震盪をやらかしたことがあった。
 衝突したのは午後のおやつどき、目が覚めたら晩飯どきだった。
 それ以来、多少夢見がちな子供になった気もするのだが、今回は、いかに。
 乞うご期待。


12月02日 日  祝・ケーブル再開通

 あ、そうか。ロハで観られるのは『ヒストリーチャンネル』ではなく『ディスカバリーチャンネル』だったか。
 ともあれ洋画も日本映画も内外のドラマもアニメも、複数チャンネルがロハ。おお、さっそく今週は、旭兄ィの『都会の空の用心棒』が。森谷司郎監督の『赤頭巾ちゃん気をつけて』が。あ、刑事コロンボも全話連続放送中だ。何十週か後には、未見の最後期作品もチェックできる。わーいわーい。

 さて問題は、今の狸にどんだけ録画物件を観る暇があるのか。そもそも狸穴の骨董級HDDレコーダーは、SPモードでも27時間しかHDD録画できない。映画だと、せいぜい13〜15本。あっという間に満杯になるのは目に見えておりますね。DVDに待避させようにも、2時間ぶんのコピーに正味2時間かかるシロモノだ。

 いやいや、今さらそんな不満を言ってはバチがあたります。
 過去の不払いをチャラにしてくれたケーブル会社に幸あれ!
 そして全戸ケーブル導入を決断してくれた大家さんに幸あれ!
 ……高いビルだらけのこの街で、築40年を越えた低層集合住宅の全戸を地デジ化する手段は、それしかなかった気もするが。


12月01日 土  まだ

くにこ 「んむ。このさむさで、たぬきは冬眠している。これはもー、春まで、まだだな」
たかこ 「くーくー」
くにこ 「おいおい、たかこ、おまいまで冬眠してどーする」
たかこ 「……うみゅ? ……くーくー」
ゆうこ 「……すやすや」」
くにこ 「なんとゆーことだ。おきているのは、おれだけじゃあないか。
     しかたがない。くりすますけーきも、おせちも、みーんなおれひとりで、くってやらずばなるまい。……ぐびり」