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03月29日 土  ぐったり

 ……金・土・日と、三連休になってしまった。

 明日の日曜日は、横浜で姪の結婚式があるので、もとより自主アブレの予定だった。そこでの祝儀(新婦も新郎も一流大卒のバリバリ公務員なので、実質経済上、こっちがアゴアシ代をいただきたいところなのだが、なんぼなんでも姪っ子の結婚式に、交通費を請求してタダ飯かっくらうわけにはいかないもんなあ)などのためにも、日銭で生きる貧民が何日も休んでいるバヤイではないのだが――昨日の朝、目覚めれば、扁桃腺がどーんと腫れ上がっていたのである。当然、39度近い発熱。よりによって、ようやく春らしくなったこんな時期に。
 今年の冬は持病の扁桃腺が一度も腫れなかったので、いいあんばいだと思っていたのだが、きっと扁桃腺の奴は、腫れ上がるタイミングを虎視眈々と見計らっていたのだろう。ギリギリまで油断させといて、さあ今だ!! ――ことほどさように狸の扁桃腺は、昔から狸を嫌っているのである。そんなに嫌いなら出て行けばいいものを、そこはそれ狸と肉続き、愛と憎しみが複雑に絡み合っているのですね。

 ともあれ、いつもの病院でもらった薬と一日半の寝たきり生活で、だいぶ腫れは引き、熱も37度代半ばまで下がった。
 今回かかった若い医者は、対症療法が嫌いなたちなのか解熱鎮痛剤系は処方してくれず、抗生剤と、抗炎症系のトラネキサム酸という処方。無理矢理痛みをごまかして熱だけ下げても無益という考え方は、この齢になると納得できる。若い頃は、苦痛だけごまかして普通に活動している間にいつのまにか治癒してしまう体力があったが、今となっては死ぬかもしんない。
 一日半、たまに起きてなんか食って薬を飲む以外、あとは布団の中で過ごす。無論ただ眠りっぱなしではなく、音楽や落語や朗読、時間帯によってはNHKラジオなどを朦朧と聞き流しながら横たわっているわけだが――ああ、久々に、いい感じだ。いかにも『病への逃避』を満喫している感じだ。

 問題は、まあ明日は結婚式で飲み食いするだけだからいいとして、明後日もまだ3月、現場では消費税増税前の大騒ぎが続いている勘定だが――あ、大丈夫かも。翌日はもう4月なのだから、出荷はそれほど忙しくないかもしれませんね。


03月26日 水  雑想

 で、『食べられる虫ハンドブック』により、ゴキブリでも立派におかずになると小躍りした狸であったが、やっぱり食ってうまいのは野菜で育てた清潔な養殖物(アジア各国ではけっこう養殖されているそうだ)や、森林で樹液を餌にしている個体なのであって、おだいどこに出没するヤマトゴキや、お向かいの肉料理屋から飛来するとおぼしいチャバネゴキは、残念ながらヤバいらしい。よっくと火を通して殺菌しても、そもそも雑食の個体は、味そのものがエグいらしいのである。
 なあんだ、がっかり。わざわざ森林に出向いて、わざわざヤマトゴキを採集するのは難儀だわなあ。夏場の蝉なら都会産でも食えそうだが、ゴキほどには見かけないしなあ。

          ◇          ◇

 暖かくなったとたん、ミケ女王もブチ下僕も、いきなりスリム化しはじめた。とくにミケ女王は、何年か前の、野良上がりの真夏の細さに戻りつつあるように思われ、もしや猫エイズ、などと心配してしまうが、いつもいっしょのブチ下僕がまだ丸みを保っている以上、ミケ女王だけエイズということもなかろう。
 今夜はナマモノを切らしており、ポリポリだけおやつに与えてみたが、やはりミケ女王様は失望の色を隠さない。狸の食っている油揚げの焼いた奴をしきりに気にしているので、まさか豆製品は好まないだろうと思いつつ、ためしに一切れさしあげたところ――おお、かなりのイキオイで召し上がるではないか。
 まてよ。
 昔、年寄りに聞いたことがあるぞ。猫に油揚げ食わせると化けるとか、狐と交わると油揚げが好きになるとか。
 もしや、妙にスリム化しつつあるのも、狐化の前兆とか。
 近頃、ブチ下僕の目を盗んで、狐と交際してるとか。

 ……期待していいですか女王様。


03月23日 日  ある日突然

 午後も遅く仮死から蘇生して、「あーうー」などとうめきながら、図書館へ買い物に、じゃねーや、図書館で買い物に、違うって、図書館や買い物に出かける。
 お年玉では結局買えなかった、澁澤龍彦訳の河出文庫『幻想怪奇短編集』や『暗黒怪奇短編集』を借りてくる。
 それだけだと、ドンヨリと仄暗い現在の狸の頭にさらなる闇の帳をおろしたりしそうなので、現実との精神的接点を保つため、『食べられる虫ハンドブック』(自由国民社)などとゆー、カラー写真がふんだんに配された、ポケット図鑑も借りてくる。食用として広く知られるイナゴ等のみならず、チョウチョもガもトンボもバッタもゴキブリもムカデも、たいがいの虫はちゃんと食えるのである。で、それらが、ちゃんと解説付きのカラー写真で載っている。
 これで、逼迫時のご飯のおかずのバリエーションが、格段に増えますね。じゅるり。

          ◇          ◇

 帰宅してパソを立ち上げると、昨夜まできちんと表示されていた、エクスプローラの動画や画像のサムネイルが、いきなり歯抜けのようにアイコン表示に変わっていた。表示設定だけの問題ではないらしく、フォルダによっては同じJPEG画像でもサムネイルが出たりアイコンのまんまだったり、さっぱわやや状態。
 なぜだ! 狸は何もしとらんぞ! などと今さら絶叫するほど狸もウブではないのであって、Windows7がいかに安定性において優れていようと、各種アプリケーションといっしょになって昼夜を問わず水面下でなんかいろいろ外部と繋がってごにょごにょしている限り、悪意の有無にかかわらず、ある日突然設定は変わり、しまいにゃレジストリまで勝手に書きかわってしまうのである。
 あっちこっちごにょごにょといじくり直して、たいがいのサムネイルは復活したが、昨夜まで表示されていた『JPEG画像のショートカットのサムネイル』だけは、ついに復活しない。まあVIXでは相変わらず表示できるので無問題――いや、実害些少でとりあえず落着とする。またある日突然復活するかもしれないしな。
 そもそもマイクロソフトのページを検索したって、そうしたイレギュラーな現象は、とりあえずの対処法(それも直ったら儲け)くらいしか記載されていないわけで、なぜそうなってしまうかなど、もはや誰にも判断できない状態なのである。
 科学って奴もトンがればトンがるほど、漠然と悩んだり、曖昧に病んだりしてしまうのですね。


03月22日 土  へとへと

 あっちこっちで国際情勢がワヤワヤになっており、こっちもあっちも煮る前のインスタントラーメンのように根が絡み合い固まってしまっているので、そう簡単に決着はつかない。米日韓の会談だって、下手すりゃさらに拗れる可能性もある。

 さすがにロシアや東欧の方々といっしょに働いたことはないけれど、米中日韓なら『労働貧民みな家族』みたいなものであることは、生活レベルで実感している。いちいち喧嘩してたら明日の飯に困るので、本音と建前のバランスを、いやでもうまくとらねばならない。己の本音などに拘泥していては、それこそ乞食かヤクザになるしかないのである。
 そんな無力な貧民の立場で言わせてもらえれば――前世紀末から今世紀にかけて、世の『持てる者』たちの、本音と建前のバランス感覚が、なんと劣化してしまったことか。食うに困らない支配階級の方々にこそ、老獪な腹芸と偽善をもって世を治めていただかなければ、狸ら奴隷だって、おちおち奴隷やってられませんがな。乞食やヤクザの根性で、ブルジョア張ってどーすんのよ。

 いつか世界中の人々が、立派な偽善者になれますように――などと天に祈りつつ、狸はこれから風呂に浸かってヤキソバ食って安らかに永眠、じゃねーや、仮死状態に入ります。
 ああ、明日は自主アブレだ。いちんち死んでてもいいんだお。


03月19日 水  どたばた

 ああぐだびれだぐだびれだ。あじだもあざっでもぐだぐだにぐだびれるよでいだおう。
 いや、消費税増税前の消費動向が、マジにハンパではないのである。流通拠点はどこもフル回転。残業し放題状態。
 いささか気になるのは、販売店側が、販売見込を遙かに超えた発注をかけてきていると推測できる点である。つまり、消費税5パーのうちに仕入れといて、8パーになってから売るっぽい。まあ販売店としては「そのぶん特売するんだい。事実上の値引きになるんだい」と胸を張るのだろうが、たとえば全国規模の量販店だと何億何十億といったケタの商いになるわけだし、そもそも種々の商品の中には、常時ほぼ定価販売のアイテムだって少なくない。来月になっても時給なんぞ変わらない日雇い狸としては、この機に乗じてせっせと残業代を稼ぎつつも、その3パーの差額のどんだけが正直な増税になるのか、やっぱりジト目で疑ってしまう今日この頃である。

 ところで狸の場合、我ながら自分に同情してしまうほど極貧ながらも、それはあくまで自分で使える金がないだけの話で、収入自体は生意気に課税対象を越えているから、残念ながら臨時給付等の対象にはならない。だから来月以降は、自分に使える金が、純粋に3パーセント減るだけの勘定だ。
 本当に福祉に回るんだろうな、阿倍さんちのお坊ちゃん。この上、母親関係の掛かりまで増えたりしたら、原子炉と一緒に段ボールで梱包して発展途上国に輸出するぞ坊ちゃん。

          ◇          ◇

 話変わって、小保方さんや雅子妃をあんまりイジメないでやってくれまいか、電車の中吊り広告の、大手週刊誌の方々。
 金のために他人のケツの毛までむしって生きるのも、それはそれで大出版社の編集者や記者として充分人間的な生き方なんだろうが、はっきり言って、物言わぬ狸以下だと思うぞ根性。


03月16日 日  ぽかぽか

 自主アブレ日。

 ようやく春――なのか? いやいや、油断してはいけない。なにしろ地球がすでに滅びている可能性がある。
 ともあれ今日はポカポカだし、地球が滅びたとしても人や狸はまだ滅びていないので、散歩とプリンター調達を兼ね、久々に上野から秋葉原に出る。
 しかし上野の駅周辺も、この数年で激変してしまいましたねえ。駅のあっちやこっちがなんかいろいろ空中の広場や通路で繋がれ、便利で機能的になったのは間違いないが、たとえば上野公園の下の道でぐちゃぐちゃになっていた自称『デパート』が、隣接するぐちゃぐちゃな映画館群やぐちゃぐちゃな古本屋と共に、跡形もなくなってしまったのは寂しい。小心な狸の隠れやすい昭和的物陰が、それはもうがっつんがっつんとツブされてゆく。まあアメヤ横町方面はあいかわらずぐちゃぐちゃだし、クラウンエースのカツカレーもほぼ昔のまんまなので、そこいらは、さすが『♪上野は〜〜オイラの〜〜心〜の駅〜〜だ〜〜〜〜♪』なのだけれど。

     

 ソフマップの中古には良さげな(ぶっちゃけ最安価な)出物がなかったので、結局、ヨドバシでキャノンの最安価新品を購入。4080円なり。しかしそのうち800円近くは以前のポイントが使えたし、さらにまたちゃんと408ポイント残るので、実質的には2000円台なのである。パソ本体とは違い、交通費をかけても、ネットオークションよりお得で確実。
 問題は、本体はタダ同然でも、インクカートリッジがヘッドと一体になっている機種なので、今後のランニング・コストが心配な点だが、それもまた、大昔、けっこう大枚はたいたプリンターのヘッドが一年ちょっとでイカれてエラい目に合ったことなどを考えると、必ずしも欠点とは言えないのである。

 帰宅後、自作の野薔薇物件の最新稿を、ようやくプリントアウトの形で保存。これで地球上のすべてのデジタル物件が太陽の巨大フレアによるナンタラ等で使用不能になっても、廃墟の穴の中でごにょごにょと自己満足に浸るネタが残るわけです。


03月13日 木  なんかいろいろ

 以下、コピペ。

【さすがライカ、被災地のカメラ女子に最高級機】 最終更新:3月13日(木)15時49分 読売新聞
 
東日本大震災直後に入学し、復興の道のりとともに3年間を送った被災地の高校生に、ドイツのカメラメーカー「ライカ」の社主から最高級機が贈られた。「写真を続けたい」という熱意を後押しするプレゼントに、春から社会人になる高校生は「夢のよう」と喜んだ。
 「このカメラでどんどん写真を撮ってください。楽しんで」。東京・銀座のライカ直営店で12日に行われた贈呈式で、アンドレアス・カウフマン社主から英語で励まされた宮城県白石市の女子高生(18)は「イエス、アイ、ウィル」とはにかみながら答えた。
 カメラはレンズを合わせて約120万円もするモノクロ専用のMモノクロームだ。
 女子高生は県立工業高写真部の一員として、被災地で「ファインダーを通して被災者と心を通わせよう」と写真を撮り続けてきた。
 大震災では同校でも卒業したばかりの生徒が津波の犠牲になり、校舎に亀裂が入るなどの被害を受けた。
 家庭の事情で大学の写真学科への進学は諦めたが、写真を続ける証しとして、あこがれのMモノクロームを手に入れようと決心。被災地の写真でカレンダーを作って、売り上げを義援金に充てるプロジェクトで知り合った写真家ハービー・山口さん(64)に「就職したらお金をためて買います」と伝えた。
 話を聞いたカウフマン社主が「そのお金で将来、学校で学ぶ機会を得られれば」とプレゼントを申し出たという。
 来月、親元を離れて福島県内のメーカーに就職する女子高生は「最初の1枚は家族を」と話す。ハービーさんは「世界で愛されているライカでぬくもりのある写真に挑戦して」とエールを送った。


 以上、コピペ。しつこいか。
 でもやっぱり、雑想でも創作物でも論文でも、引用出典明記は必要ですね小保方さん。
 閑話休題。

 ああ、うらやましいうらやましいうらやましい。この女子高校生さんがうらやましい。お前はそんなに被災者さんがうらやましいのか狸、と世間の顰蹙をかいそうだが、心底うらやましいのだから仕方がない。
 しかし、見出しどおりに、さすがライカである。広告料と思えば安いもんだろう、などと醒めた視線でとらえるむきもあろうが、たとえばニコンやキャノンが、同じような状況下で、一個人相手に同じような寄贈をするだろうか。それに現在のライカ社は、言っちゃあなんだが経済的には、日本ならとうの昔に倒産消滅している規模の中小企業である。
 きっとカウフマン社主は、ジャーナリズムの骨が、ある状況下でのジャーナリスト自身にあることを理解しているのだ。そのジャーナリスト個人のための最高のアイテムとして、誇りを持ってライカ・ブランドを存続させているのだ。職人対職人の世界である。

 大切なのは世間体より『ある状況下でのあなた自身』なのですよ小保方さん。

          ◇          ◇

 ついおとついまで、手のかじかむような寒気に震えていたのに、今日の湾岸は台風じみた生暖かい暴風雨である。
 いいかげんにしろ地球。あんまし図に乗ってると、いつか滅ぼしてやるぞ。
 ……もしかして、もう滅びたのか?

 ともあれ本日、仕事が終わってヨレヨレの足を引きずりつつ、ロッカー室の傘立てに手を伸ばすと、おお、なんとゆーことだ。狸の傘がない。こないだ大枚200円を奮発したばかりの、ダイソー特大透明ビニール傘がない。代わりに残っているのは、100円でも買えるちっこい透明ビニール傘、それもヨレヨレの物件だけだ。
 以前にもこうした不埒な無断交換に遭ったので、今回はわざわざマジックで取っ手にイニシャルまで記しておいたのだが、まあ、現場には狸のような古参ばかりでなく一回こっきり後腐れなしの日雇い参加者も多いわけだし、傘一本がどれほど貴重な財産であるかピンとこない、フヤけた非正規労働者も多いわけである。
 ちなみに本日の現場には、外国の方々はいらっしゃいませんでした。
 ぶっちゃけ日本人の民度なんてこんなもんです、ヘイト・スピーチに酔いしれる国粋主義者の皆様方。

 あ、でも、もしかして狸より切羽詰まった子狸が、ついつい出来心で取り替えてしまった、という可能性もあるな。
 それならやるよ。大事に使ってくれ。ライカの傘じゃなくてごめんな。


03月09日 日  ぐちぐち

 さて、新パソ環境構築も、ようやく一段落するかに思われたところで、こんどはプリンターが絶命した。と言っても突然死ではない。前々から老衰で気息奄々だったのを、脅したり賺したり、果ては殴る蹴るの暴行を加えたりしながら、無惨に働かせていたのである。享年8歳。いっときは何百枚ものナニを何度も何度も印字させていたのだから、再安価のインクジェットとしては、得難い奴隷だったのだろう。
 さて、それではネットで、使えそうなフリーのプリンターを検索――あるわきゃねーだろ、おい。
 あー、なんか、もーどーでもいいや。
 などとダレているバヤイでもないので、とにかく1円でも安い印字機を求め、狸はあてどないさすらいの旅に出ます。
 でもその前に、録画しておいたゴジラをチェック。

          ◇          ◇

 ケーブルの日本映画専門チャンネルで、全ゴジラ映画の連続放送が始まったのだが、全作HDリマスターと謳うわりに、第一週の元祖『ゴジラ』と『ゴジラの逆襲』は、期待したほど画質が向上していなかった。古いDVDに比べ、コントラストが控えめで、やや見やすくなったくらいか。
 この2作品は、狸が生まれる前のモノクロ映画だから、まともな原版自体が残っていないのかもしれない。しかし一齣ごとに厳密にデジタル修復すれば、円谷プロの『ウルトラQ』のごとくツヤツヤのモノクロにリマスターしたり、疑似カラー化することさえ可能なのであって、ここはやはり、制作会社の熱意と算盤勘定の問題なのだろう。
 しかし、去年入手した英語版DVD『THE BERMUDA DEPTHS』の本編前に収録されていた、戦前のアメリカ映画のツヤツヤ予告編群を思うと、やっぱり今も昔も、国力において彼我の差は大きいと痛感する。かの大特撮モンスター映画の元祖『キングコング』だって、戦前の原版なのに正規盤の映像はツヤツヤだ。でもまあ『THE BERMUDA DEPTHS』本編にはかなり画質のムラがあったことを思うと、やっぱり後発で突然変異した極東の恐竜だの、出自不詳のマイナー巨大亀などは、なかなかでかい算盤には乗せてもらえないのだろう。
 もっともゴジラは、またハリウッドでリメイクされるそうだが、どうせCG生物だしな。


03月06日 木  寒い

 ああ、サミいサミい。
 サミー・デイビス・ジュニア。
 ……わかってるよ。はずしたよ。寒くて悪かったな、ふん。

 などという寒い戯言はちょっとこっちに置いといて、北国育ちゆえ、大概の寒気には耐えられる狸であり、暖房皆無の倉庫内でもちょっと動けば発汗するくらいなのだけれど、今日も昨日と同じ現場だから昨日と同じ在庫品のロケ移動作業と思ったら、本日はその結果をハンディ・ターミナルで入力するだけだったりして、つまりただ立ちっぱなしで指以外はほとんど動かさず、トラック・バースから吹きまくる真冬なみの北風に、日がなびゅーびゅーとさらされるのである。殺す気か。また指にヒビワレ入るし。
 しかしまあ、非正規労働者が贅沢を言ってはいけませんね。今日もこうして無事に帰穴し、今、風呂を沸かしている。凍えた体なんぞ、まもなく一気にほぐれる。その快感は、温暖な季節に比べ、推定ひゃくまん倍(当狸比)のはずである。そして、その後は電気敷布でぬくぬくの寝床が待っている。

 思い起こせば乳離れした幼児の頃、冬の寝床という奴は、自分の体温で布団が暖まるまでの10分やそこいら、たいへんに冷やっこい物であった。それでも文明の利器・湯湯婆《ゆたんぽ》の力で、足先が暖かいだけ極楽だったのである。その湯湯婆が、小学校入学あたりには保ちのいい豆炭行火《まめたんあんか》に替わり、さらに高学年あたり、朝までぬくぬくの電気行火になった。寝床全体が、電気毛布や電気敷布で初めから暖かくなったのは、成人式以降の話ではないか。
 おお、そうだ。思い出した。電気毛布や電気敷布は、それ以前から、ちゃんと世間に存在していたのだ。高校時代あたりには、それほど贅沢なものでもなくなっていた気がする。ならば、なぜ狸は、そんな極楽物件を自分の巣穴に導入しなかったのか――。
 思い出した思い出した。
 嫌いだったのだ。
 自分の体温だけで、適度に暖まった布団が好きだったのだ。
 というか、初めは震えるほど冷たい寝床が、じわじわじわじわ極楽に変わっていく、その過程が、冬場の入眠儀式そのものになっていたのだ。

 ……いやあ、齢ですねえ。
 今では電気敷布のない冬など、考えられない狸です。
 体温調節機能の劣化だけでなく、煎餅布団の万年床が問題なのかもしれないが。

          ◇          ◇

 録画しておいた『なんでも鑑定団』を観ていたら、またエロゲーのBGMが流れた。今夜は『_summer』(アンダーバー サマー)の曲。
 しかしこの番組の音効さんは、前に気づいた『風ノ唄』のBGMのときもそうだったが、エロゲーの中でも、まったり系の日常生活などに流れる、さりげないメロディーを好んで使うようだ。つまり、そのエロゲーを『やりこんでいる』としか思えない。
 お前もな、と言われると、えっへっへ、と笑ってごまかすしかないのだが、狸の遊んだそのテのゲームなど、マニアに比べれば推定ひゃくまん分の1程度なのであって、もしかしたらこの番組では、そのテのBGMが使用されまくりなのかもしれない。

 などと言いつつ、ふと思いついて、今ネット検索してみたら――やっぱり、あっちこっちでネタになっている。
 他のクイズ番組やバラエティー番組でも、音効さんはゲーマーやアニオタばっかりのような。
 まあ正味の話、単に同じ音効会社が、雰囲気別にストックしたBGMを使い回しているだけか。


03月02日 日  雑想

 自主アブレ日。
 じとじと、あるいは結構な雨。
 昨夜手洗いした下着や仕事用のジーパンやフリースのシャツが、夜になってもまだ乾かない。特にフリースは絞らずに干すため、未だに水が滴りそうだ。下着とジーパンはコインランドリーの乾燥機に放り込めばいいが、じとじとのフリースでそれをやると、乾燥機も衣類も共に壊滅する危険がある。しかし、そのうち一着は、明日どうしても着込まねばならない。今宵ひと晩扇風機に当てておけば、なんとかなるだろうか。
 それにしても、すべての下着のタグに『乾燥機は使用しないでください』などという文言があるのは、いったいどーゆーつもりか。まともな物干しも、乾燥機能付きユニット・バスもない兎小屋に巣くう貧しいチョンガーは、濡れた下着をそのまま着用して、体温で乾かせとでもいうのか。

          ◇          ◇

 ミケ女王様の挙動が、近頃ちょっとおかしい。ブチ下僕を従えて来臨されても、ナマモノにちょっと口を付けただけで、「あ、いけないいけない。こんなセコい狸の穴でアブラ売ってる場合じゃないのだわ」と言うように、そそくさと退出あそばされてしまう。残ったブチ下僕は、なんじゃやら安堵したように、その後も狸穴でのんびりとくつろいでゆく。
 ミケ女王様は、新しい領土を侵略、じゃねーや、新しい領土に進出しつつあられるのだろうか。お人好しのブチ下僕は、戦いの足手まといなのだろうか。

          ◇          ◇

 新しいインターネット・エクスプローラーとグーグル・クロームは、それぞれセキュリティーの設定が格段にやかましくなり、JAVAひとつとっても、なんじゃやらやかましく設定しなおさなければならない。それぞれにクセがあるため、あっちが動けばこっちは立たず、といったあんばいで、とりあえず今はページによって使い分けている。アヤしげなアドレスには初めから繋ぐなという良心的・優等生的設計なのだろうが、今どき珍奇で希少でマニアックなナニなど、アヤしげな場所にしか転がっていないのである。歌舞伎町や池袋の裏道と同じことだ。
 無論、それらのツールを通して他人様の家の中に上がり込もうとする輩のほうが悪いのは理解できるのだが、ネットに繋いだ初期、ブラウザのセキュリティー設定などほとんどいじくる必要はなく、デジタル指向の少女漫画家さんのHPで「気軽にジャバジャバ」などと言いながら、着せ替え遊びを楽しませていただいた頃が、つくづく懐かしい。


03月01日 土  まだ

 たかこ 「やっほー! まーだだよー!」
 くにこ 「んむ。これは、まだだな」
 ゆうこ 「ごめんね、ごめんね」

 たかこ 「おう、たぬきさんが、ぱそこんのまえで、たぬきねいりしている」
 くにこ 「いんや、これは、もはやせいもこんもつきはて、しっしんしているのだ」
 ゆうこ 「……なでなで」
 くにこ 「んむ。このまちは、せんじょーだから、おとこはみんな、きずをおったせんしなのだなあ」
 たかこ 「♪ さあ〜〜ねむりなさい〜〜つかれきった〜〜からだを〜なげだし〜て〜〜〜 ♪」
 ゆうこ 「♪ ちいさな〜こどもの〜むかしに〜かえって〜 あついむねに〜〜あまえて〜〜〜〜 ♪」
 くにこ 「――やめとけ。おれたちのだれにも、あまえられるほどでかいちちは、ない」