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11月30日 月  合掌

 水木しげる先生が亡くなられたそうだ。実際100歳まで生きると信じていた方だけに、「……7年も早いじゃないですか」と抗議したくなったが、抗議しようにも、彼岸まで追うわけにもいかず、貸本以来の画業を顧みるばかりである。貸本以前の紙芝居も、一度観てみたかったなあ。山形までは、流れてこなかったからなあ。

 それにしても、会ったこともない著名人の訃報を聞いて、実際に涙ぐんでしまうのは、生まれて初めての気がする。
 手塚先生とも石ノ森先生とも藤子F先生とも違うタイプの、『作品=御本人』、そんなタイプの方だったからだろう。

 つげ義春先生は、いつまで此岸にいてくださるか。


11月28日 土  雑想

 ありゃ、第一作『犬神家』だけでなく、なぜか第四作『女王蜂』も、やけに黄色っぽい。空の雲が、昼間でもやっぱり黄色い。しかし『犬神家』ほど気にならなかったのは、秋のシーンが多かったからか。特に京都の鮮やかな錦秋は、かなり黄色に寄っても、ほれぼれするほど立派な紅葉なのであった。
 意外だったのが、劇場公開で観たときはシリーズ中で最も不出来と思われた『女王蜂』、歳くってから観ると、これがなんじゃやらウルウルの感涙物なのであった。当時は違和感のあった仲代達矢さんの学生服姿とか、ちょっと大根っぽいと思われたデビュー当時の中井貴惠さんとか、そこいらが、今となってはほとんど気にならない。今の狸に比べれば、当時の仲代さんだって遙かに若いし、今どきハタチの新人で、当時の中井嬢ほど存在自体に説得力のある女優さんなど皆無である。それに物語自体のテーマが、何十年にも渡って秘めに秘めまくったズブドロの思慕だったりするので、やっぱり何十年も生きた今だからこそ、涙腺を直撃されるのである。
 この四作目、よほど撮影スケジュールがタイトだったらしく、ロケのかなりの部分を、市川監督でなく、松林宗恵監督が撮ったのだそうだ。そのせいか、当時から「いつもの市川監督らしいキレがない」と盛んに批評されたが、松林監督ファンの狸にとっては、今も昔も無問題である。いいじゃないですか、ズブドロさえスタイリッシュにキメてしまう市川ワールドに、たまにはお坊さん(松林監督は浄土真宗の僧侶でもある)が撮った生真面目なズブドロが混入しても。
 しかし――やっぱりちょっと黄色すぎる。『犬神家』と『女王蜂』は、今度DVDを借りて観てみよう。

          ◇          ◇

  
<盗撮>清水寺で3人逮捕 雑踏に紛れ実行、京都府警警戒 【2015年11月28日 02:49 毎日新聞】

 
国内外の観光客でごった返す世界遺産・清水寺(京都市東山区)で、女性の観光客を狙った盗撮行為が相次いでいる。京都府警は10月末以降、盗撮しようとした容疑で男3人を逮捕した。寺の前の石段で雑踏に紛れて実行する事案が目立ち、ネット上では「盗撮の名所」として取り上げる不謹慎な書き込みもある。京都府警は約10人体制でほぼ連日警戒し、検挙や警告に力を入れている。
 今月22日、清水寺前の石段にスカート姿で座る女子大学生(19)の前で、不審な男を私服で警戒中の女性警察官が発見。デジタルカメラを首にぶらさげ、手で構えることなくシャッターボタンを押した。画像データに下着が写っていた。府迷惑行為防止条例違反容疑で現行犯逮捕された兵庫県尼崎市の会社員の男(52)は「盗撮しやすいとネットで見た」と供述したという。
 前日の21日には、清水寺の舞台の上で修学旅行中の女子高校生(17)への盗撮行為で、京都府亀岡市の介護福祉士の男(33)が現行犯逮捕された。
 ネット上の掲示板には、清水寺を盗撮の「お勧めスポット」と紹介する書き込みが複数ある。観光地でカメラを所持しても怪しまれず、人が密集して気づかれにくい。
 寺近くの土産店から「盗撮目的らしい男がいる」と指摘があり、府警は9月末から警戒を強化。10月25日に男(51)を盗撮の容疑で逮捕し、他に男3人を書類送検する方針だ。同条例に基づく指導・警告も5人。寺の石段で記念撮影するカメラマンの男性は「遠くから望遠レンズを構える不審者を何度も見た。お寺で盗撮とは罰当たりだ」と憤る。
 府警東山署の森治清春・生活安全課長は「盗撮の被害者は旅行が嫌な思い出になり、京都のイメージも悪化する。盗撮の撲滅を目指したい」、清水寺の広報担当者は「お参りに来られる方に対し許されることではない。被害が減ることを願いたい」と話している。【鈴木理之】


 ……しかし逮捕されても、たかだか書類送検で済んでしまうわけで。
 こーゆー輩は、毎年の大晦日、柱か何かに縛り付けて除夜の鐘の内部に立たせ、そのまんま108回、鐘の音を体感させると吉なのではないか。たぶん元日の朝までにすべての煩悩を滅し、見違えるような澄んだ瞳になっているはずだ。その後の人生があるかどうかは、当人の根性しだいである。


11月25日 水  おかあさ〜〜ん

 ケーブルテレビで、市川崑監督の金田一耕助物をイッキに全作放流してくれ、どれもこれも山田洋次監督の寅さんシリーズ同様、毎回同じようでありながら実はそのつど練りに練った脚本・演出の傑作佳作ばかりなので、全部録画した狸は当分映像娯楽に不自由しない状態なわけだが――第一作の『犬神家の一族』、なんであんなに色が黄色っぽいのだろう。それ以降の作品も毎年続けて撮られており、まあ初期の作はどれもそれなりに退色が見られるのだが、『犬神家の一族』の黄色っぽさは常軌を逸している。なにせ背景の白い雲がはっきりと黄色いのだ。
 どうも野村芳太郎監督『砂の器』同様の、リマスターするごとに解像や階調や音質は向上し、色調だけが黄色く濁ってゆくパターンに思われる。なんのためのデジタル・リマスターなのだろう。オリジナル・ネガの退色まで忠実に再現するというポリシーでも、一部の業者にあるのだろうか。あるならやめてほしい。こっちは初公開のときに劇場で観ているのだ。あの湖の上の雲は白いのである。公開時に白かったものをきちんと白くするための、デジタル・リマスターだと思うのだが。

 で、今日のタイトルは、なぜ『おかあさ〜〜ん』であるのか。
 まあ金田一耕助物でも、隠された母と子の血の絆がネバネバと発酵して因縁の糸を引いたりしがちなわけだが、実は、ついでに録画しておいたホラー映画『マザー』、あの漫画家・楳図かずお先生が自らメガホンをとったという去年の作品を観てしまい、ズブドロの戦慄と狂気(驚喜でもある)にわなないてしまったのである。
 久々に見る熟年美女・真行寺君枝さんが母親役を演じ、ちょいと不気味な病床姿から、想像を絶するモンスター級の幽霊まで、怪演の限りを尽くしてくれる。あの恐ろしさは、若い観客には到底感知できまい。ネットでの評価が『楳図かずおファン限定BC級ホラー』的に偏るのは、そのためと思われる。実際にアルツ化した老母と長くつきあった狸など、最悪期の異常な言動が真行寺さんの幽霊にダブってしまい、もうかんべんしてほしいほど恐かった。でも一方では、『マザー』の主役(虚構の楳図先生)同様、やっぱり実の母親にはトドメさせないのね。

 楳図先生は、もう貸本時代から、恐怖漫画も少女向けコメディーも、ハイテンションでしかも破綻しない、あるいは破綻すらハイテンションで読ませてしまう方である。『ミイラ先生』のクライマックスなど、当時から狸の頭の中で完全に実写化され、精神不安定な少年時代、たびたび夢でうなされたこともある。
 さすがに低予算の『マザー』では、その悪夢ほどのド迫力は見られなかったが、一部、それに近いハイテンションを実現してくれていた。シナリオ全体の「……おい」「……おいおい!」「……おいおいおいおいおい!!」と思うさまぶっ飛んでいく流れも、楳図作品らしく手堅かった。まあ、ぶっ飛ぶことにすら手堅さ(小理屈ではない)が不可欠という概念は、昨今のハリウッド・ホラーやJホラーからはほぼ失われてしまっているので、これも『マザー』が『楳図かずおファン限定BC級ホラー』と思われてしまった所以なのだろう。

 なんて、貸本時代の昔から、漫画も映画も小説も、大半は『手堅さ』なんぞ無視したトンデモばっかりだったんですけどね。


11月21日 土  雑想

 なんのかんの言いつつ人間の歴史などというものは、半分ほどがギブ・アンド・テイク、残り半分は当座の状況によって略奪する側に回るか略奪される側に回るか、言い換えればブチ殺すかブチ殺されるか、それで動いているわけである。紀元前から現在まで、その点では、もーまったく変わっていないと思われる。いわゆる大自然の諸相すべてがそんなもんなわけであるが、狸が望むのは、略奪あるいは殺害するにしろされるにしろ、人間も大自然の諸相と同程度に、みっともない部分を相殺できるほど美しい部分もしっかり保ってほしいもんだよなあ、ただそれだけである。どうせ食うか食われるかなんだもの、どう食うか、どう食われるか、そのどちらにおいても、この宇宙に存在するすべてのアレコレの一部として『醜』と同量の『美』を意識しないと、人類だけが馬鹿みたいになってしまう。
 ギブ・アンド・テイクを保てなくなった時点で、「正しくあろう」などと思っても無駄なのである。略奪や捕食が「正しい」かどうかなんて、するほうとされるほうでは意見が違うに決まっている。無差別テロ集団にしろ空爆する側にしろ、どっちも「自分が正しい」と胸を張って、他人を派手に肉塊化したりミンチにしたりする。「正しくあろう」などと下手にアツくなってしまうと、そーゆーことになってしまう。
 しかしそーゆーキサマ自身ちっとも正しくも美しくもないではないか、ぶよんとしてしまりのない図体に貧相なツラを乗っけてジタバタしているだけではないか、と言われてしまうと困ってしまうのだが、まあ、そこはそれキモチ、「美しくあろう」と思うだけでもいいと思うのですよ。自分で「美しくあろう」と思っていれば、他人だって「まあなんとか美しくなくもないかもしんない」、そんな感じで食ったり食われたりしてくれるはずである。
 まあ、他人が派手に肉塊化したりミンチになったりすることそのものを「美しい」と思う奴だっているのかもしれないが、少なくとも全人類の半分以上は「……ヤだなあ」と思っているはずだ。じゃなかったら泣くぞ狸は。

          ◇          ◇

 結局、木馬物件の今回更新分は、クリフハンガーでなく『起承転結』に増量することにした。今後も、そんなカタマリで更新しようと思う。四日前に記したばかりのことを、もーきれいさっぱり卓袱台返しにしてしまうわけである。
 いや、なんか、思い出してしまったのですよ。「あとは明日のお楽しみ」のはずが、それっきり来なくなってしまった紙芝居屋のおっちゃんとか。
 確か狸が小学二年の冬、あの日『連続空想科学探偵物語〈赤い目青い目〉第一回』のラストで、悪漢に囚われ両眼にブッスリ注射されて片目が赤目、片目は青目になってしまった不幸な兄妹は、その後いったいどんな運命をたどったのか――せめて赤目青目化の目的くらいは知りたかったよ知りたかったよ。でも、それっきり、ひとりも見かけなくなっちゃったんだよなあ、山形の街頭紙芝居屋さん。
 と、ゆーわけで、自前の紙芝居では、毎回、明確なオチを投入しようと思います。でもオチの後で突然またクリフハンガー、それはアリかもしれない。狸が未だにあの紙芝居のおっちゃんを懐かしく覚えているのだって、永遠に「あとは明日のお楽しみ」だからだ。


11月17日 火  前言撤回

 で、試しに、打鍵中の木馬物件を日割り構成にしてみたら――あかん。なんか味気ない。しかし、前回更新ぶんの欠陥にも気づいた。
 あれは、大半が緩やかな進行だからこそ、クリフハンガーで〈続く〉に引っ張るべき章だったのだ。そのほうが、読者様には親切だったのだ。
 狸にとって連続長編物語の原体験であった、毎日近所の四つ角の電柱の下に自転車を停めて「あとは明日のお楽しみ」を繰り返していた紙芝居のおっちゃん。あるいは、少年サンデーも少年マガジンも高くて買ってもらえない時代、かろうじて月に一種類だけ購読を許されていた月刊少年漫画誌の連載漫画――あれらはほとんどがクリフハンガーだったからこそ、明日へと続く長い時間や、来月へと続く長い長い日々が、先への期待で満たされていたのだ。話に区切りがつくのは、年に何度か、たまのハレの日っぽいアクセント、あるいはラストの大団円、それでよかったのだ。

 人生だって、そうだよね。先に希望が持てなくなるのは、先が見えないからばかりとは限らない。今日日、食いきれないほど多様なメニューや楽しみきれないほどの娯楽が世に溢れていればこそ、早々と人生そのものに飽きてしまう人だって多い。
 と、ゆーわけで、残り少なくなった自分の狸生や、最終局面に入った木馬物件、今後は、あざといクリフハンガーに走りたいと思う。
 いつ狸は生活保護状態に陥るか、いつ橋の下で寝るようになるか、いつヨイヨイの行き倒れになって最低限の施設に押し込まれ糞便にまみれるか――おお、なんとハラハラドキドキの未来。

 ……ちょっと違うような気もするが、いいのである。
 金も嫁も子も孫もないが、まだ2〜3人の読者様が残っている。

     


11月15日 日  僕たち男の子、ヘイ、ヘイ

 歳末(ちょっと早いけど)恒例、今年もつつがなくユニセフ・ジャパンから振込用紙が届き、たった5000円ポッキリですが送らせていただいたところ、ご丁寧に領収書が届いた。稼ぎが良くて年に何十万とか寄付する方なら、年末調整や確定申告で必要になるのだろうが、もともと非正規雇用で最低限の源泉徴収しか縁の無い狸には不必要である。こんな郵便物の経費はなるべく節約して、1円でも多く、発展途上国のちみっこに送っていただきたいものである。
 あ、待てよ、今年からプラン・ジャパンのマンスリーもやってるんだよな。あれは1年で3万6千円になる勘定だな。ユニセフと合わせれば、年5万近くになるはずだよな。これだとけっこう、お得が生じるのかな。
 ……わかんねーや。来春、税務署さんにお任せしましょう。

 そのプラン・ジャパンからも、毎月毎月律儀に色刷り表紙の冊子が届く。まあ「送っていただいたぶんはきちんと活動してますよ」と報告する義務はあるのだろうが、狸には、パソのメールで充分である。それじゃあんまりだと思うなら、ガリ版のチラシ1枚とか――いや、当節はガリ版を切る人件費のほうが物入りか。いやいや、それもボランティアで誰かにやってもらえばいいんだよな。
 ともあれ、今夜届いたそのメールに、『
【プラン・ジャパン最新情報】男の子だからという偏見に屈せず、地域を変える若者ハーリー』などという見出しがあって、「ん? 『男の子だからという偏見』ってなんのこっちゃ」と思いリンクをつっついてみたら、こんな記事なのであった。

   
地域を変える若者リーダーたち 〜ニカラグア〜

 
ニカラグアの北大西洋自治区では、貧困や暴力が絶えず、麻薬密売に手を染める人も少なくありません。しかし、そうした環境に流されずに、地域を変えようと行動を起こす若者たちもいます。

   
女の子の権利を守る少年、ハーリー

 
プランは、未来に夢をもてるよう若者の支援に力を入れていています。教育を奨励し、子どもや若者たちを対象にした、性暴力をなくすための地域での啓発活動を続けています。
 19歳のハーリーは、教会での活動を通してリーダーとして地域の改善に取り組むようになりました。「麻薬に手を染める大きな原因のひとつは、よりよい人生のイメージがないことです。このことは暴力の横行とも関係があります。私は別の生き方が可能だと思っています」。
 プランが女の子に対する暴力をなくす活動に参加するメンバーを募集していることを知ると、ハーリーはメンバーの大半が女の子であることも気にせずに応募しました。活動をはじめた彼を待っていたのは、仲間からのいじめでした。さらに地域の人々からも、どうして女の子を応援する活動を行うのか、どこかおかしいのではないかと言われました。
 ハーリーはそうした偏見にも負けることなく、地域の若者たち対象の研修会を通して、暴力は許されることではなく、悪いことだと訴えかけています。「なぜ活動に関わるのかと聞かれたら、男性たちを助けるためにやっていると答えるようにしています。話を続けることが大きな変化をもたらすと分かってきました」。
 ハーリーは地域に変化をもたらす役割にやりがいを感じているといい、他の人にも暴力と麻薬が答えではないことを分かって欲しいと願っています。この地域で生きていくことは大変で、仕事先も多くはありません。ハーリーは、この状況から抜け出すことを心に誓っています。「私は高校を卒業しましたが、父の農場を手伝って貯金をし、勉強を続けて、医者になりたいと思っています」。


 狸が首を傾げてしまうのは、『
活動をはじめた彼を待っていたのは、仲間からのいじめでした。さらに地域の人々からも、どうして女の子を応援する活動を行うのか、どこかおかしいのではないかと言われました』、ここんとこですね。
 まあニカラグアという国には行ったことがないのでよく解らないけれど、いわゆる発展途上国にありがちな、男尊女卑的風土なのだろうか。
 いずれにせよ、我が日本の過去の歴史などをひっくるめて考えても、『男尊女卑』なら『男のほうが強くなきゃなんない』わけだから、必然的に『弱い女は守ってやらなきゃなんない』でないと、間尺に合わない気がするのである。そもそも『卑』も守れない『尊』なんて、尊でもなんでもないわけで。

 つまるところ狸としては、男女同権のほうが、すっげー男にとってラクでいいと思ったりする。
 狸はラクがしたい。だから女性にもがんばってほしい。なんなら『女尊男卑』でもいい。どのみち奴隷やるんなら、正直、狸は女王様の奴隷がいいです。14歳以下の王女様にお仕えするのは、もっといいですね。

          ◇          ◇

 打鍵中の木馬物件を、思いきって模様替えしようと思う。いや別に全面改稿するわけではない。章の区切りと数を変えるだけ。
 今までは、板で更新するたんびに章を分けていたのだが、そろそろ話も終盤、つまりラスト1日の様々な出来事が(エピローグを除けば)いわゆる『お団子串刺し構造』(これってよっぽど根性入ってないと不成功に終わる構造なのよなあ)でだらだらと続く予定なわけで、これを機械的に分量で章分けすると、今までの更新、つまり章ごとに『起承転結』あるいは『結起承転』があるのと、まったく違った印象になってしまう。今回更新分が、読者の皆様(と言ってもまだお二方にしかご感想をいただいていないが)に多大な違和感を与えてしまったのは、狸の語りの未熟に加え、そのせいもあったのではないか。
 と、ゆーわけで、今までの展開を、一日ごとの章分けに変更しようと思います。そうすると、話の都合でやたらバカ長い章ができたりするのだが、今後、プロローグから続けて読んでくださる方には、それでなんの問題もないわけですしね。まあ、そんな奇特な方は、ほとんどいらっしゃらないとは思いますが。

 ……って、昔の長編でも、けっこうやってたんだよな。いきなり途中で構成替え。


11月12日 木  限りなき走路(でもカタツムリ)

 自主アブレ日。
 ようやく、木馬物件の続きに区切りがつき(全体的には区切りも何もなく延々と続くのだが)某投稿板のほうを更新した。いつもの更新より、かなり増量してしまった。まあ終盤はアクションが多く改行だらけだから、テキスト量だけ見れば、以前の年寄りが独演会状態だった回と、大差ないかもしれない。
 実は、いつもと同じ数十枚でいったん切ろうかとも思ったのだが、現在の遅々とした更新ペースを思うと、ミエミエのクリフハンガーで切って次回までひと月以上もお待たせするのは、数少ない読者様に対して、あまりに不親切な気がする。
 しかし、確実に、あと2回は続く感じだわなあ。
 できれば大晦日までに完結し、ゆったり気分で紅白見ながら、年越し蕎麦をすすりたいものである。
 ……無理か。
 まあ、せめて次回で打ち止めとかいう噂のある『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の新春特別時間延長版は、脳味噌をカラッポにして楽しみたいものである。

 ……すでにカラッポみたいなもんなんですけどね、人間としては。
 カタツムリに化けた狸として、遠からず生涯を終えそうな気もする今日この頃、皆様方におかれましては、いかがお過ごしのことでございましょうや否や。


11月08日 日  カタツムリに化けてしまった狸は速いヒトたちの夢を見るか

 ……は、速い。

     

 こちらも速い。

     

 茶々丸さんも、指、速い。しかも美形!

     

          ◇          ◇

 ふう、やっと、全体的な物語の『転』における、最初の山場に入った。
 しかし、まだまだ、これからだ。


11月05日 木  乗り継ぎの旅

 アブレ日。
 ふう、やっと峰館から仙代(今後の展開上、仙台を架空の地名に変更)を経て、尾名川駅(女川に似ていますが、やっぱり架空の地名です)に着いた。
 ここまで約50枚、しかも最初の山場っぽいシーンは、まだこれからである。もはや最終回の一部ではない。章として独立させるしかなかろう。
 と、ゆーわけで、年内完結すらアヤしくなってきましたが、まあ狸の長編だと、延長に次ぐ延長はいつものことなので無問題……そうか?
 ともあれ見守り続け、語り続けるしかないのである。もはや自分や読者より、産んでしまったキャラが大事だ。

          ◇          ◇

 BSテレビ東京で、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の旧作を、毎月のように再放送してくれる。今日も放送してくれた。DVDなど買えない狸としては、大変ありがたい。ただ第5弾や第6弾、つまり東日本大震災の被災地を含む路線の旅は、永久欠番になりそうなあんばいだ。
 確かに、被災した方々の気持ちを慮れば、そうせざるを得ないのかもしれない。道筋で一行に親切にしてくれた方々の一部も、確実に被災したわけだし、道筋自体、過去の姿が失われた路線も多かろう。
 しかし――言うまでもなく現在は過去の未来であり、未来の過去である。歴史上のあらゆる瞬間が、過去&現在&未来なのである。できれば狸が生きているうちに、良好な画像で再放送してほしいものだ。よしんば、バスの中に津波で流されてしまった方々がおられようと、その方々は、残された悼む側の方々とはまた別に、確実に生きていたのだ。
 狸が昔、録画保存した旅番組、たとえば『いい旅・夢気分』の中には、福島の旅も残っている。まだ若い片岡鶴太郎さんや、初々しいさかなクンが、楽しそうに福島沿岸を旅し、海の幸を食べまくっている。そのとき食べられちゃったお魚だって、釣られる前には元気に福島沖を泳いでいた。貝だって、元気に(動かないししゃべらないので断言はしかねるが)磯にへばりついていた。そのこともまた、さらなる過去の未来だったのである。
 悼んでばかりでは先がない。


11月01日 日  高速と低速

 あり? このHPも、専用のファイルマネージャーも、まだ生きている。ヤフーBBを解約したら、いったん月末でアクセスできなくなって、三か月以内に何百円だかの契約をすると、またアクセスできるとか聞いてたのに。
 不思議に思って、ヤフーのメールをよっくと見直しますと――おう、解約が月末近かったので、しっかり今月分も請求されるのね。もうモデムも外して、返送準備しちゃったのに。
 まあ、いいか。ひと月ぶん、ダブるだけだからな。
 ちなみに、ケーブル会社のモデムに切り替えたとたん、このところしょっちゅうフリーズしまくっていたグーグル・クロームが、一度もフリーズしなくなりました。受信側の通信速度が、100倍以上に上がったためらしい。昨今のネットはどこを突っついても山のような広告が表示され、おまけに重たい動画仕立ての広告が増えているので、狸穴の非力なパソと低速ADSLモデムでは、なかなかキツかったのである。それがスルスル開くようになった。フリーズしないのも、そのあたりが関係しているのだろう。

          ◇          ◇

 自主アブレ日。
 木馬物件の続きが、順調に難航している。おおむね四百字詰め換算で数十枚ごとに更新しているのだが、現在やっと40枚。ストーリーにも、イマイチ明瞭な区切りがついていない。
 いよいよ最終回2時間スペシャルに突入したので、下手は打てない。1シーンごとに、とことん吟味しないといけない。いや、いつも吟味はしてるつもりなんですけどね。
 しかし、このぶんだと、2時間スペシャルどころか3時間スペシャル、最終章だけで中編の分量になってしまいそうだ。前編・後編に分けるか、それとも前・中・後の3分割で更新するか、あるいは別個の章として分割してしまうか。いずれにせよ、今まで打った話の中で、未だ宙ぶらりんの『ゆうこちゃんと星ねこさん』に次ぐ、大増量になること必定である。

 ……人も狸も、老いるほど、話がクドくなるんですねえ。