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07月30日 土  夏想

 日々、恵まれた生活を送っている。
 なにより猫に不自由しない。ミケ女王様は、相変わらず夜ごと狸穴を訪れて高飛車にナマモノを要求する。ブチ下僕も、やや夏痩せぎみながらしっかりポリポリしており、なんとか今年の夏を越せそうだ。
 また、ゴジラにも恵まれている。新作がらみで、CSもBSも地上波も、連日ゴジラ映画の旧作を垂れ流しにしてくれる。
 さらに、このところ太陽も復活し、連日真夏日に恵まれている。かてて加えて湿度にも、あいかわらず恵まれている。当然、汗などは湯水のごとく垂れ流しほうだいである。

 ただし、不足しがちなものもある。
 仕事に出る気力、ありがとうという感謝の心、口座残高などである。
 しつこいようだが、古典的怪談話も足りない。

          ◇          ◇

 本日は自主アブレ。
 不足しがちな古典的怪異を求め、両国の江戸東京博物館へ。開催中の特別展『大妖怪展』を覗くためでもあるが、この時期は常設展示場でも土曜の夕方になると、定期的に開催している『えどはく寄席』に加え、怪談話を一席、じっくり聞かせてくれるのである。
 本日は、三代目神田松鯉師匠の『お岩誕生』。新劇や歌舞伎の素養のある松鯉師匠は、同世代の大御所・一龍斎貞水師匠のようなクドさやケレン味(あくまで褒めてます)はないのだが、そのぶん自然な説得力があり、今回も、持ち時間45分の長丁場の半分近くを占めるマクラの部分が、実に結構だった。自身の幼時の心霊体験や、業界の怪異談――四谷怪談を演じる前に田宮稲荷にお参りしないで色々祟られた講談界や梨園の方々の実話など、落ち着いたいい声で、しみじみと語ってくれた。

 両国駅界隈は、行きも帰りも、浴衣姿を交えた老若男女で大混雑。本日は隅田川花火大会だったのである。
 余力があったら、そっちのほうまで徘徊したかったところだが、正直バテ気味なので駅に直行、上がり始めた花火の音を土産に帰穴する。
 そのうち近所の江戸川でも、派手に尺玉が上がるはずだ。そのときゆっくり見ればいい。

          ◇          ◇

 本日は、土用の丑の日でもある。
 しかし博物館の入館料と交通費を合わせて、1日2千円も散財してしまった貧者に、高価な鰻の蒲焼きは許されない。
 などと言いつつ、まあ吉野家やすき家で中国産の鰻を食うくらいの余力はあるのだが、あれらは、いつだって食える。それよりも、近頃噂の鰻モドキを食ってみたいと、関西発の鰻味のナマズを探してスーパーをハシゴする。残念ながら御近所には、置いている店がない。しかし、ネリモノの鰻モドキや、豆腐と海苔を使った鰻モドキが見つかった。いずれも初見の総菜で、今夏デビューと覚しい。とくに後者は、よほど売れなかったのか、半額処分シールの貼られた期限切迫品が山積みになっている。300円でお釣りが来るのだ。数メートル離れて見れば、大きさも姿も隣の鰻と同様のシロモノが、である。
 当然のごとく狸は後者を選び、狸穴に持ち帰って焼き直し、勇んでハグハグとかぶりついたのだが――わはははは、豆腐の味と、海苔の味しかしませんがな。
 いや、原料に鰻エキスが含まれている(とラベルに記してある)ぶん、かえって脱力感にとらわれてしまうような味でした。ちなみにミケ女王様もブチ下僕も、一顧だにしないタイプの風味。そりゃ、元は大豆と海藻だもんな。これならいっそ、甘辛いタレなんぞまぶさないで、鰻の白焼き風にして、わさび醤油で食ったほうが――。
 でもまあ、さほど失望はしなかった狸なのである。つらつら鑑みるに、豆腐と海苔を使った鰻の蒲焼きモドキといえば、実は江戸時代の文献にも見られる伝統的料理、好奇心だけは大いに満たされたわけで。
 今度はネリモノ鰻に挑戦してみようと思う。豆腐類より長持ちしそうだが、いずれ半額処分必至と見た。

 明日の日曜も純アブレである。
 徘徊する気力や体力や資力は残っていない。
 いちんち図書館で涼んでよう、うん。


07月26日 火  雑想

「世のため人のため、重度障碍者は皆殺しにする」と公言する。どう見ても公言する奴のほうが、重度の人格障碍者である。関わり合いになりたくないお巡りさんたちは、緊急措置入院で精神病院に丸投げする。しかし今のところ人格障碍は精神医学上『病気』に分類されないし、自分たちも関わり合いになりたくないしで、困った医者は適当に病名をくっつけ、すぐに治ったことにしてオサラバする。そして当人は、公言していたとおり大量殺人に走る――。
 もとより犯人自身に病識はない。正邪の基準は俺印、文字どおりの確信犯である。
 ISなんぞも同じ穴の狢か。生死も世界も神意も、俺印フィルターでラクラク正邪変換。

          ◇          ◇

 東京湾岸あたりは、なぜか夏日ではない夏が続いている。しかし狸は連日汗まみれである。ようやく温度計が30以下を示しても、湿度はきっちり90パーに届いているのだ。熱帯の密林でワニに下半身を呑まれ、ドンヨリ濁った沼の底に引きずりこまれつつある野豚のような気分である。まだ生きているのかもしれないが、とりあえず、ああなんか、もうどうでもいいや――。
 ねとねとのまんまの帰路、すれ違うサワヤカ系のOLさんたちが「なんか今日は肌寒かったね」などと言い合っているのを聞き、ああ、このヒトたちと狸は本当に同じ国で生きている動物なのだろうか、などと消沈したりもするが、まあ老いたとはいえ彼女らに比べればまだまだ腕も太く腹も立派な狸だし、ねとねとできるかぎりは、せいぜいねとねとしていようと思う。
 でも、いずれ寝たきりになったからといって、若くて元気な既知外が夜中に切りつけてきたりしたら、七生祟ってやるからな。そりゃもうねとねとねとねとと、少なく見積もって五世紀くらい。


07月22日 金  雑想

 アブレ日。
 曇天のためか気温が下がり、久々に、ほぼ発汗なしの一日。
 一般世間は昨日も涼しかったらしいのだが、こっちは鉄筋コンクリのロジ内でとたぱたしていたので、やはり汗まみれであった。例年しつこく愚痴っているように、外壁内壁のみならず、みっちり詰まった在庫物までいったん30度以上に加熱された鉄筋コンクリのロジは、空調のある事務室や休憩室を除き、夏が終わるまで30度以上なのである。
 まあ冷蔵や冷凍のロジは、一年中冬だけどな。

 一之江境川親水公園沿いに、ろりやしょたを求めて徘徊する。
 ああしたお散歩コースには、要所要所にお子様向けの水遊びスペースが設けてあるのだ。
 いや、見るだけよ見るだけ。
 今を去ることウン十年前、昭和のいわゆる『宮崎以前』ならば、狸のようなぶよんとしてしまりのない胡乱なイキモノが、現在の最大級デジカメを凌ぐサイズの35ミリ一眼レフカメラにワインダーやらモードラやらをごてごてとくっつけて、あまつさえ今の大口径超望遠ズームに匹敵するであろう巨大なサイズの、しかし数倍程度しか拡大できない望遠レンズを振り回し、そんなナリと倍率ではいわゆる『盗撮』なんぞ不可能なので、「すみませんすみませんワタシはただの子ども好きの写真愛好家であってけして変態オヤジではありませんお願いですから通報しないでくださいお母様お父様」みたいな卑屈な笑顔で己の醜い本心を糊塗しながら暗躍、いや明躍していたわけであるが、すでに平成も四半世紀を越えた今となっては、保護者以外のおっさんが下手に携帯やスマホを取り出しただけで、警備のヒトに駆除されてしまう。
 ともあれ、さほど暑くもない曇天の下、夏休みのちみっこたちは、元気いっぱいにはしゃいでいるのであった。

 いっぽう、相変わらず世界のあっちこっちでは、飢えた子供たちが日々彼岸に旅立ってゆく。
 なんじゃやらポケモンとその狩人たちが、世界のあっちこっちで大増殖しているらしいが、一匹見つけたら自動的に発展途上国の児童福祉団体になんぼか送金、そんなシステムにしてはどうか。
 お裾分けだって、経済効果の一部だと思うが。


07月17日 日  続・むじあづうい日々

 本日自主アブレ、プラス明日は純アブレ、つまり狸も世間様なみに連休である。

 咽の痛みは連日の大汗で流れ去ったようだが、体力もいっしょに流れ去ってしまい、もはや徘徊どころではない。江戸川の土手を隣駅まで歩いただけで、もはやヨレヨレである。とにかく湿度がハンパではない。昨夜洗って干したジーパンが、丸一日たっても乾いていないほどである。
 次の東京オリンピック、ほんとに真夏にやって大丈夫なのだろうか。前の時代とは気候が違うぞ。南米のジャングルと大差ない気温や湿度の中で、ヤケクソに動きまくるのだぞ。屋内競技なら冷房も効こうが、屋外競技だと、北方亜種の白っぽい方々などは、下手すりゃ死ぬぞ。

          ◇          ◇

 日本の夏の暑気払いには、やっぱり納涼怪談大会でしょ――。
 そう信じて疑わない世代の狸にとって、今年の日本映画専門チャンネルや時代劇専門チャンネルは、信じがたいプログラムである。怪談映画がない。貞子や伽耶子の仲間は出るのかもしれないが、お岩さんやお露さんやお菊さんが一本も出ない。猫も化けない。
 お岩さんの憤怒やお露さんの純情を忘れた現世など、ただ脳味噌が饐えるだけだ。

     


07月14日 水  むじあづうい日々

 咽が痛い。
 夏風邪かとも思ったが、どうも痛みの質が違う。
 もしやゴールデンバットの変質で、咽への刺激が増したのではないか。JTではフィルターを付けてタールを減らしたと言うが、そのぶんの味の不足を補うためか、明らかに別種の刺激が増えている。煙自体の味は、以前よりもいがらっぽくなってしまった。
 まあ、単なる夏風邪かもしれないが、もしそうでなかった場合、いよいよ本格的な節煙を考えねばなるまい。

 ともあれ明日は自主アブレ、徘徊は控えてバテバテの老体を休めようと思う。そろそろ降圧剤と入眠剤も、追加もらいに行かんとな。

          ◇          ◇

 え!? 何々!? あの浩宮様がもう天皇陛下に!? 平成の次はどんな元号になるの!?
 などとまあ、今夜は大いにはしゃいでしまった狸なのである。平成天皇がご健在なうちに次の改元を祝えるなんて、歴史的にも自分史的にも、まるで大当たりラッキー賞が出たような気分であった。
 しかし、どうやらそのニュース、NHKのフライング――ぶっちゃけ今のところ『誤報』扱いのようである。

 まことに失礼ながら近頃めっきり老けこまれた今上天皇と美智子皇后のお体の苦労を考えれば、狸としては、生前退位も結構だと思う。
 などと言いつつ実はなにより、老狸がボケる前に、あの愛らしかったナルちゃんの即位姿を拝みたい。
 雅子様のご体調も近年は回復傾向みたいだし、あのナルちゃんなら、きっと愛する妻子の心身を、生涯慈しみきれるはずだ。

 などと打っていると、狸穴のドアに、早くも朝日新聞の朝刊が届いた。
 一面トップで『天皇陛下 生前退位の意向』――ただし宮内庁では否定。
 ……ネットのまんまやん。近頃キレが悪いぞ、朝日。


07月10日 日  雑想

 例年この時期、代わり映えしない愚痴ながら――生きるってカユい。

          ◇          ◇

 本日は自主アブレ日。
 昼過ぎに起きて、ご近所の小学校で参院選の投票。
 今回は投票に行ったというより、あくまでファンタジーの世界にプチ逃避しただけ、そんな気がする。つまり、子も孫もない老狸が合法的に現代のリアル小学校に潜りこんで、ウロチョロしながらなんかいろいろ妄想できた。あまつさえ、人間世界において彼らの理念は永遠に見果てぬ夢であろう、そんな政党に投票できた。
 えーと、ハッピーサイエンス関係に投票したわけではありませんよ、念のため。あれは設定も展開も手前勝手なご都合主義、ファンタジー以前のシロモノだ。

          ◇          ◇

 快晴の空の下、しばし江戸川の土手や河川敷を散策する。
 休日の河川敷はシヤワセそうな老若男女がいっぱいなので、精神衛生のためにすこぶる良い。
 女子中学生のトリオが、トランペットやら何やら、おのおのの管楽器をたどたどしく練習している。ブラスバンドの仲間たちだろうか。とてもかわいい。思わず言葉巧みに狸穴に誘いこんで拉致監禁保育してみたくなったりもするが、狸穴にこれ以上ヒトの棲むスペースはないし、そもそも狸にはヒトに餌を与え続けるほどの甲斐性がない。むしろ自分が人に化けるのをやめ、ちっぽけな狸に戻ってきゅうんきゅうんと愛想を振りまき、三人のうちの誰かに拾ってもらうのが現実的か。
 とゆーよーな、冗談にしてはあまりにサミしい話はちょっとこっちに置いといて――休日の河川敷には、見えない誰かと声高に言い争っている一人ぼっちのおっさんなんぞも、しっかり腰を下ろしたりしている。駅前やスーパーで見かけると、とてつもなく鬱陶しいタイプのヒトであるが、広々とした河川敷なら、オールOKである。一日中なんぼでもエア大喧嘩に励んでほしい。相手は狸でも他のヒトでもなく、あくまで大気なのである。テレビや街頭で恥知らずなトークをやったり、間が悪いとこっちに目線を送ってきたりする白痴ども――ヘイト関係のクソ爺いや『支持政党なし党』のバカガキどもなんぞより、よほど無害だ。

          ◇          ◇

 例によって同伴帰穴したミケ女王様やブチ下僕としばし戯れたのち、先刻、二匹ともとっくに帰ったと思って玄関のドアを締め切り風呂に入っていたら、なんじゃやら横の台所から「みぎゃーみぎゃー」と、常にない猫声が響いてきた。慌てて台所を覗くと、めったに騒がないブチ下僕がドアにすり寄り、ひどく興奮して鳴きまくっている。つまり、ブチ下僕がどこかの陰で寝こんでいたのに狸が気づかず、狸穴に閉じ込めてしまったわけである。
「……そんな声出すなよ、すぐ出してやるから」
 狸が裸のまんまブチ下僕の後ろからドアに近寄ると、ブチ下僕は何を勘違いしたものやら「みぎゃー!」と絶叫して狸の足元をすりぬけ、奥のパソ部屋に駆けこんで行った。そっちのサッシからベランダに逃げるつもりだったらしい。しかしこの真夏、一見開きっぱなしになっているベランダのサッシも、網戸だけはしっかり閉じている。野良育ちで現在も外飼いのブチ下僕は、そもそも網戸という物体を知らなかったのか、べん、と網にぶちあたって、ずりずりばりばりと焦りまくったのち、横のカーテンの陰に潜りこんで、ぷるぷるぷるぷる。
「……俺だよ俺」
 狸は脱力しながら、もがきまくるブチ下僕を抱え上げ、玄関のドアから逃がしてやったのだが――小一時間後、外に不燃ゴミ出しに行ったら、しっかりまたついてくるのね、何事もなかったかのように。
 ことほどさように猫は面白い。
 しかし、これは相手が猫だからこそ許される出来事であって、もし女子中学生をうっかり閉じ込めて夜中に「みぎゃーみぎゃー」と叫ばれたりしたら、狸はたちどころに捕縛断罪されるであろう。
 狸から見れば、どっちも同程度にかわいいんだけどな。


07月06日 水  水の味

 アブレ日。
 上野の国際子ども図書館へ。

 数年前、地元の図書館で借りた『コーネル・ウールリッチ幻想小説集 今夜の私は危険よ』に収録されていた『ジェーン・ブラウンの体』を読んで、死美人と美青年が恋仲になるという典型的伝奇パターンが、10年以上前に自分で打った長編第二作『月下美人』とみごとにカブっているのに気づき、ちょっと慌てたことがある。今、自分で検索してみたら、2011年5月2日の雑想に詳しく記してあったので、物好きな方は突っついてみてください。
 で、その『ジェーン・ブラウンの体』を、本邦SF界の大御所である矢野徹先生が児童向けにリライトした『歌う白骨』(1968年・ポプラ社)――これの現物を、本日、確認した。
 うあああああああ。
 や、やっぱり狸は読んでたよ、子供の頃。
 数十ページ読み進めるまでは、「ああ良かった、やっぱり読んでなかった、盗作してなかった」などと、余裕こいていたのである。
 しかし、やがて死美人の体が腐敗しはじめ、手袋の中から骨が露出したお手々を出してみせるあたりにさしかかると、元ネタの哀愁をひゃくまん倍に増幅したような矢野先生の煽りっぷりが、狸の幼時記憶の中からざばざばざばざばと浮上し、それを契機に、その『歌う白骨』を狸に貸してくれた小学校の同級生S君の顔やら、彼が住んでいた国鉄官舎(木造二階建て集合住宅)の興味深い内部構造やら、国鉄の車掌さんだったお父さんの顔やらが、アルツっぽい狸脳の奥底から、それはもーずるずるずるずると芋蔓式に……。
 しかしまあ、これを盗作行為とは言えまい。パターン自体は、それこそゴシック・ロマンの昔から定番みたいなもんだし、ラスト一発のお耽美なビジュアルや情動には、ちゃんと狸穴謹製のハンコが押せたはずである。

 それにしても、高木彬光先生の『フランケンシュタイン』超訳といい、昔の児童向けリライト文芸は、つくづく情が濃い。

          ◇          ◇

 で、水の味の話である。
 どこそこの湧き水がどうのこうの、そんな高尚な話ではない。公園の水場で飲める、ただの水道水の話である。

 夕方5時に子ども図書館を追い出され、まだ陽も高いし、せかっく東京に出たのだからと、日比谷公園から宮城を拝んだり、別の自作のために何度かロケハンした青山・麻布・白金あたりをプチ徘徊したりしたのだが――公園の水の味が、なんじゃやら、どんどん旨くなる。
 まあ狸のビンボ舌による比較、それも全部一度に並べて試飲したわけではないから、客観的に断言はしかねるのだが、上野公園の水より日比谷公園の水が旨く、日比谷公園の水より青山公園の水のほうが、確かに旨く感じるのだ。
 浄水設備の縄張りが違うとか、水道管自体のナンタラとか、まあ物理的には微々たる差なのかもしれない。
 しかし似たような価格の水道水の味が、狸穴近辺では実にエグいことを思うと、自販機の有料飲料など気楽に奢れない狸としては、この夏場、やはり釈然としないのである。


07月02日 土  雑想

 自主アブレ日。
 快晴。お天道様かんかんで気温30度突破、かつ湿度もしっかり80〜90パーを維持。
 よしよし予想どおりだ――などと喜んでいるバヤイではない。ついに狸穴でもエアコンを解禁してしまった。徘徊どころではない。洗濯と買い物以外、ただひたすらウスラボケっと『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』などを眺めてすごす。

 ああ、太川&蛭子コンビは、いい。マンネリでもなんでもいいから、死ぬまでガチでバスを乗り継ぎ続けてほしい。
 たとえば20年後、大方の商業的地方路線が廃止されてしまったこの国で、県境やら市境やら、コミュニティーバスすら繋がっていない停留所の間を、高齢太川&後期高齢蛭子コンビが、マドンナに励まされながら40キロも50キロも歩く。下手すりゃ4日間のルートの半分が徒歩である。当然その頃のマドンナは、ゲストというより介護のために選抜されるわけである。東南アジアやブラジルのタレントさん、あるいはアフリカ美人なども活躍する。
 冗談でもなんでもない。それが、この国のリアルなのだ。

          ◇          ◇

 ゴールデンバットが、いつのまにやらフィルター付きに変貌していた。
 以前の両切りとは味がまったく変わってしまい、しかもフィルターの長さのぶんだけ煙草葉部分が縮んだから、実質、ケムを吸える部分は3分の2に激減してしまった。
 これはもはやJT自体、煙草商売を捨ててしまったのか。ゴールデンバットにフィルターを付けたら販売量が増える、などと考える社員がいるとしたら、それは煙草を吸わない社員だけである。あるいは煙草を吸うサルかもしれないが、どのみちサルに企画を任せたということは、会社自体が投げてしまっている。
 いや、あるいは他の煙草の生産量が落ちたぶん、バットに回す余剰葉も減ってしまい、フィルターで水増しするしかなくなった、とか。
 いずれにせよ、慌てた狸は、旧製品を探して近所の煙草専門店を回ってみたのだが、売れ残りの7箱しか入手できなかった。

 ――後悔先に立たず。
 もっとも敬愛するフーテンの寅さんなどは、「航海先に発ったら船が沈んで死んじゃった」と遺言されている。
 ここはもう生暖かく、時の流れに身を任せるしかないのだろう。


07月01日 金  まだ

 たかこ 「やっほー! まーだだよー!」
 くにこ 「んむ。これは、まだだな」
 ゆうこ 「ごめんね、ごめんね」