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04月27日 土  平成暮色

 明日が冬なのか夏なのか見当がつかないような今年の春であるが、お茶の水女子大付属中の教室に刃物を持った不審者が真っ昼間から堂々と入り込めるこの日本は、まさに脳味噌が平らに成った、とてもおめでたい国なのであろう。来月から脳味噌がいきなり凸凹になったりしないよう、狸としては祈るばかりである。

          ◇          ◇

 買い物に出た駅前で、ちょっとヘコんでしまう光景を見た。
 明らかに精神疾患、あるいは知的障害を持つと思われる中年女性が、いきなり一窒フ鳩を蹴り跳ばしたのである。そう強いケリではなかったから、鳩はすかさず宙に逃れる。するとその女性は別の鳩を見繕い、足早に近寄って再びケリを入れる。そこまでいくと、駅前にいた数羽の鳩すべてが異変を察して空に逃れ、迫害する相手を失った中年女性は、ウツロな眼差しを彷徨わせながら、その場に佇んでいた。
 すぐ横には交番があり、中のお巡りさんたちにその奇行が見えないわけはないのだが、いわゆる人権侵害やらナンタラを意識してか、誰も交番から出てこない。お巡りさんが無視するくらいだから、小心な狸などは、物陰に隠れてプルプル震えるばかりであった。
 いやもちろん子供や猫を蹴ってたんなら狸だって行動を起こしますけどね、鳩を庇って刺されたりするのは御免である。
 しかし、お巡りさんが知らんぷりは困る。動物愛護法だってあるんだし。

          ◇          ◇

 令和への改元を10連休の内に迎える一般世間とは別状、今年の狸はGWなし。いつもと同じくダラダラと、週休2日ペースで日銭を稼ぐ予定。
 時給で生きる下級国民にとっては、それがラッキーなのである。
 まあ狸には上級も下級もないけどな。


04月21日 日  今日もあんまし元気じゃないけど煙がうまい

 喫煙者を求人から排除する企業や団体、全校禁煙を企てる大学――もはやケム嫌いの方々は分煙でも我慢できないらしい。なんだかすっかりヒトラー政権下のドイツみたいになりつつありますね、いやマジで。
 ならば、泥酔による暴力や殺人なども一向に減らないこの社会、冗談ぬきでアルコール摂取を禁止するのが筋であろう。
 酒は百薬の長、などという非科学的俗説を否定する研究論文が、学会ではなんぼでも発表されている。アルコールは意思と理性を狂わせ堕落させる毒水だ、そんなヒトラーの主張は科学的にも正しかったのである。まあ論文なんて、学会で発表するだけなら、どんな世迷い言でも可能なわけだが。
 ――と、ゆーよーなことは、以前にも何度か記した。巷でも同じ意見は多いようだ。
 しかしまあ、狸も必要以上に日和見であるから、ヒトラーのようにキンキン声で全国民に禁酒を強要したりはしない。分酒で充分だと思う。
 泥酔者専用の歩道を設けてもらえば、うっかりゲロを踏んづける恐れがない。酔っ払いに絡まれるのも鬱陶しいから、泥酔者専用の鉄道車両は必要だし、さらに、泥酔専用酒場とチョイ飲み専用酒場をきっちり分ければ、完璧だ。
 あと、泥酔運転専用の車道も欲しいところである。歩道橋の上から見物する連続横転事故や車両大爆発は、さぞ見応えがあるだろう。

          ◇          ◇

 ……なんだか心が乱れているなあ。
 ここんとこの乱読が祟ったのだろうか。
 実は現在、狸の持ち歩く頭陀袋には、『統合失調症あるいは精神分裂病』(計見一雄・講談社学術文庫)と『中谷宇吉郎随筆集』(岩波文庫)と『ムーミン谷の冬』(中身は普通の講談社文庫だがカバーデザインがスエーデン語版っぽくていい感じの限定版)、以上3冊の文庫本が入っている。こないだ図書館でたまたまいっしょに借り出し、気分次第で適当に引っ張り出しては、それぞれちまちまと読み進めているわけである。どれも大層面白い。しかし面白さの質は、みごとにテンデンバラバラである。
 でもまあ、どうせ人も狸も世間もテンデンバラバラ、昨夜も記したように、狸は偽善に徹するばかり。

           ◇          ◇

 久しぶりに自前の猫耳物件の進行具合を確認すると、前回更新時から三ヶ月以上経過したにも関わらず、原稿用紙換算で三十枚ちょっとしか増えていない。
 週に一段落くらいしか進めていないから当然なのだが、正直、話の終わりが近づいているのに、内心では終わらせたくない気分もある。
 それでも夏までには終わってしまうような気がする。
 実は同じ気分で何年も進められずにいる『ゆうこちゃんと星ねこさん』――あれも、死ぬまでには語り尽くさないとなあ。


04月20日 土  雑想

 近頃ちょいちょい仕事先でいっしょになる同年配の非正規仲間に、いささか辟易している。
 ちゃんと仕事はするし会話も成立するし、一見、人間性に問題のない方ではあるのだが、時を共にすればするほど、同じラインで仕事をするのが苦痛になってゆくのである。
 なんといいますか、「自分がされたくないことは他人にもしてはいけない」という道徳を大切にするあまり「自分がしてほしいことは他人にもしてあげるべきである」という信念に囚われてしまい、あまつさえ無意識の内に「自分がしてあげることは他人もしてくれるはずである」みたいな感じの挙動をしばしば見せるものだから、周囲の人間は、とにかく疲れてしまうのである。まあ、そーゆー性格の方は、けして世間に少なくないのであるが、いいかげんな狸でさえ疲れるくらいだから、他の気の短い非正規仲間などは、明らかに「余計なお世話だ」、逆に「んなこたしてやる義理ねーよ」と言いたげな、つっけんどんな対応に走ったりもする。しかしつっけんどんにされた当人は、なんでつっけんどんにされているのか、もーまったく理解していない。
 青少年ならともかく、六十過ぎてそれだと、さすがに往生する。

 そもそも、巷に流布する、ちょっと見まっとうな道徳的規範――「自分がされたくないことは他人にもしてはいけない」――これがそもそもクセモノなのですね。自分と他人の区別がついていない。
 当たり前の話だけれど、自分がされたくないことをされたがる他人はなんぼでもいるし、自分がされたいことをされたくない他人だってなんぼでもいるわけで、「自分がされたくないことは他人にもしてはいけない」とか「自分のしてほしいことを他人にもしてあげよう」なんてのは、五分五分で道徳的でも良心的でもなんでもない、むしろ世界平和の実現を阻む要因になってしまう。
 だから狸は偽善が好きだ。善意なんて相手しだいで悪意に変わりかねない。むしろ最大公約数的な偽善こそが、世界平和への道なのである。

 まあ世界平和の最大の敵が「自分がされたくないことを他人にしてやるとキショクいい」タイプの人類であることは確かだが、そこまでの方々を見かけたら、正しい偽善に従って、こっそり踏みつぶすなり吊すなりすればいいのである。

          ◇          ◇

 明日は、市議会議員選挙の投票日である。
 県や国の選挙とは違い、あくまで日常生活感に基づく選択をするのが、市町村選挙における狸の選択基準である。
 結果、今回は、無所属で政党推薦も無縁の、お爺ちゃんに投票することにした。ここいらでずっと小学校の先生をしていた方だが、日●組や全●ともつるんでいないようだし、平教師から教頭・校長まで大過なく勤め上げているし、イジメ問題などでミソをつけたこともない。たぶん小学生に優しい方と思われる。
 狸としては女子小学生さえ大事にしてくれればいいのだが、まあ、男児もそこそこに扱わないと、今どきいろいろ問題あるしな。


04月13日 土  雑想

 こないだ県議選で狸が投票させていただいた候補者の方は――ああ、落選してしまった。なんの選挙であれ、狸が投票した候補者は四分六、いや二分八くらいの割合で落選してしまう。投票者が人間ではなく狸であることが、なんらかの悪因縁を呼んでしまうのだろうか。
 ……まあ、単に所属政党の問題かもしれないが。

          ◇          ◇

 ところで、お隣のK国の近頃の動向を、さらに北のK国に憧れる現大統領の思想背景に絡めて、むしろ現在の民主主義体制を意図的に崩壊させて社会主義に導こうとしているという見方もあるようだが、実は狸も、ここまできたらマジにそうなんじゃないか、と思いつつある。
 まあ、それはそれで、南のK国ならではのアツい心をもって半生を左翼運動に捧げてきた現大統領のキモチとしては理解できる気もするが、問題は、北のK国が、ちっともマルクス主義なんぞ尊重せず、他の社会主義国家を標榜する帝政国家同様に、プロレタリアなんてどーでもいいからとにかく支配者一族さえ栄えればオールOK、そんな実像を隠そうともしない点なのであり、南のK国大統領だっていい歳こいてるのだからそれが見えないはずもなく、実は半島全体の実質ナンバー2になりたがってるだけなんじゃないかと、疑わざるをえないわけである。
 もしそうだったら、まあ、いい。いやちっともよくないのだが、個人の欲望としてはアリである。しかし狸のマルクス主義に対する憧憬は、あくまでプロレタリア独裁を正しく実現して、さらにその先に真の無階級共同社会を実現する――そんな美しいファンタジーに対する憧憬なのであって、俗臭ムンムンの支配者一族ばっかり好き勝手できるような自称社会主義国家とは真逆なのである。
 で、そのマルクス主義も、今となっては人間そのものに対する根本的な誤謬の上に築かれた机上の空論であることは明白なわけだが、それでもやっぱり、政治的な哲学よりも宗教的な世界観として、とんでもなく美しいのは確かである。
 話は違うかもしれないが、狸は、高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』を、美しい夢の実現がこの人間社会では不可能であることを悟ってしまったコテコテの老左翼が、断腸の思いで現世に残した美しい遺言――そんなふうに捉えて、観る都度に涙してしまうのである。

          ◇          ◇

 コロリと話は変わって、アメリカ映画『フライト・リミット』(2018、イェスペル・ガンスラント監督)を、主演のダニエル・ラドクリフ目当てにケーブルで録画し、本日アブレ日、じっくりと観賞した。これが、なかなかの佳作であった。
 今はしがない麻薬密輸請負人に身を落としている元米軍パイロットが、難病で莫大な医療費を要する愛妻のために、麻薬密輸そのものと、政府組織による密輸組織掃討のための証拠運びをいっぺんに引き受けてしまい、てんてこまいする航空サスペンス映画である。ただし、派手なアクションやSFXなどはほとんどない。そもそも映画の大半が、陰鬱な夜の雲の中を飛行するセスナみたいな小型機のコクピットで、ダニエル・ラドクリフが、えんえんと一人芝居を展開するだけなのである。
 密輸組織と政府組織の双方からリアルタイムで種々の指示を受け、そのうち双方に疑心を抱かれてハチャメチャな混乱をきたし、あまつさえ下界の奥さん本人とのスマホ通話でもなんかいろいろしらばっくれねばならず、しまいにゃ奥さんが麻薬組織に拉致されてしまう――ことほどさようにストーリー展開は波瀾万丈だが、絵面としては、雲の境目も判然としないような悪天候の夜空を飛んでる小型機と、狭くて薄暗いコクピットで奮闘するラドクリフばっかり。そもそも、なんでラドクリフがそんなにどたばたしているのか、ストーリーの背景が完全に飲みこめるまで一時間以上かかる。見栄えのするシーンは、政府組織が飛ばしてきた小型無人機をラドクリフが鉄砲で撃ち落としたり、ラスト数分、麻薬組織から奥さんを救うため地上でどたばたするシーンくらいで、いずれも暗い夜間のことだから、ハデハデのハリウッド・アクションにはほど遠い。
 とまあ、ほとんどビデオ・スルーの低予算映画のようなシナリオ構成とビジュアルにも拘わらず、ダニエル・ラドクリフのいかにも凡人的でリアルな焦り具合を見ていると、すっかり感情移入して、最後までハラハラドキドキしてしまう。ラストがちゃんとハッピーエンド、しかもあくまで平凡な夫婦の地味なシヤワセふうに、サラリと見せてくれるのがいい。
 実はハリポタのラドクリフはまともに観たことのない狸なのだが、その後の『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』あたりでは大いに感情移入できたし、たまたま異常な状況に陥ってしまった生真面目な旦那を演じたら、当節ピカ一の男優さんなのではないかと思う。
 とまあ、個狸的には大いに堪能したあとで、ネット上のレビューなど検索してみたら――おお、なんとゆーことだ。ほとんどスカ扱いされているではないか。褒めているのはラドクリフのファンだけ、そんな按配だ。いやいや映画作品としても、狸は佳作だと思うぞ。
 どうも、絵面が徹底的に地味なのと、話の背景がなかなか判明しない構成、そこいらで大半の観客はメゲてしまうらしい。
 まあ、いいんですけどね。狸にとって面白ければ。
 どうやらラドクリフさんは、すでにハリポタ関係で一生食うに困らない財を築いたらしいから、今後も妙なハデハデ大作の主役など目ざさず、説得力勝負の几帳面な演技に徹してもらいたいものである。


04月07日 日  狸流投票

 狸穴のある地方では、本日、まず県議選の投票日。
 最寄りの投票所は、例によって小学校の図書室である。休日だから女子小学生はひとりもいないと知りつつ、残り香を求めて、狸も這いこむ。
 今回はさほど悩むことなく、共産党のお若い方に投票。といっても、老狸から見れば若いだけのオヤジさんなんだが。

 常日頃、感情右翼・心情右翼っぽいイキモノであることを自認している狸が、こと選挙になると四分六、いや三分七くらいの割合で共産党の方に肩入れしてしまうのは、単に選挙演説など当人の所信表明の内容と、巷の情報から窺い知れるかぎりの人柄を優先しているからである。あと、ときおりここでも吐露している、科学的社会主義という未だかつてただの一度も実現したことのない、そして未来永劫実現しないであろう純粋なファンタジー世界への、憧憬からでもある。

 などといいつつ、今回の投票理由は、しごく単純。右も左も当たり障りのない所信表明を垂れ流す中で、そのお若い方が、男女格差問題とLGBT差別問題を、同じ土俵の上で語っておられたからである。ジェンダーフリー方向のアレコレは、今どき右も左もそれらしく語るが、ことLGBT問題となると、ここいらの選挙地盤では下手につっつくと票が逃げると思うのか、右も左もあまり口に出さない。
 狸も、社会的な権利に関わるアレコレにおいては、股間に凸があろうが凹があろうが、まぜこぜにしていいと思う。凸凹不詳も無問題。他人に迷惑かけなきゃオールOKである。好悪と優劣、嫌悪と迷惑は別物ですもんね。

 話は違うが、ぶっちゃけロリコンだって、実在のロリに迷惑かけなきゃ、なんら問題ない。
 まあ、いざというときに――たとえば直下型地震に襲われ倒壊しつつある小学校で、女児の命ばっかり優先して男児をケトばす男性教師がいたら、社会的には大問題だろうが、真っ先に自分だけ逃げ出すよりは、まだマシである。


04月01日 月  寒桜

 なんかキリのいい日にアブれたので、プチ花見でもしようと外に出たら、冬のような寒風が吹きまくっていた。
 前日の天気予報でも、冬用の上着で出かけたほうがいいと言っていたので、まあ凍えない程度に厚着はしていたのだが、むしろ真冬のモコモコダウンが欲しいくらい風が冷たかった。明日はもっと寒くなるらしいので、モコモコで出勤せねば。

 それでも真間川沿いの桜並木は(気温さえ度外視すれば)春たけなわであった。
 途中、京成線の踏切を渡っていたら、チャリのお婆ちゃんが車輪を横に踏み外して線路に転倒、あわてて駆け寄ろうとしたら、3人ほどの男子高校生が先を越し、お婆ちゃんに手を添えて怪我がないか訊ねたり、倒れた自転車を踏切の外まで運んであげたり、すっかり道徳や修身の教科書状態なのであった。
 うんうん、人心も、ちゃんと春たけなわだ。

          ◇          ◇

 ほう、来月から『令和』の時代になるのか。
 令、という漢字の意味合いからして、賛否両論渦巻きそうだ。
 命令とか指令とか、上からの指示にしっかり和すように――そんな感じで反発する方々も多かろう。
「『令』は『零』に通じるから、そりゃ『和』がゼロってことか?」などというツッコミが中国から入った――そんな噂話もあるが、日本だと同音異義語はあくまで異議でしか扱われないから問題ない。まあ駄洒落のネタにはなろうが。

 で、本日、初めて『令和』の字面を見た狸が、どう反応したか――。
 冗談のようだが、まず『令』→『令嬢』、そんな連想をしてしまったわけですよ。
 次に『和』→『和合』。
 ――うわあ、鉄砲で撃たれるぞ俺。
 えーと、念のため。その連想において、令嬢はけして未成年ではありません。いやあくまで念のため。

          ◇          ◇

 さて、新元号騒ぎにすっかり掻き消されてしまった感のあるエイプリル・フールであるが、狸はしっかり騙されました。
 こ、これはすごい。
 発表された日付に気づいた今でも、その『小ギアナ高地』への、大いなる憧憬をこらえきれない狸です。