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07月28日 日  雑想

「やあやあ待たせちゃったな! なんかうっかり寝過ごしちゃってな! お詫びの印に、これからシャカリキで突っ走るぜえ!!」
 と、絶叫しながら夏が現れた。
 ……正直、眠り薬を盛ってやりたい。

          ◇          ◇

 先週の選挙、狸が投票した方は、例によって当選しなかった。LGBTの権利や同性婚に、大声で賛意を表明してしまうと、ここいらの選挙では、まず当選できないのである。
『寄らば大樹の陰』を絵に描いたような親爺ばかり国会に送って何が面白いのか、とも思うが、それは、大樹の枝葉になり損ねた野良狸の僻みであろう。

          ◇          ◇

 ところで、おとつい久々にシネコンに行ったら、すでに券売窓口や券売嬢などは消滅し、全自動券売機が並んでいるばかりであった。
 そして、近頃めっきり白髪の増えた狸は、誰はばかることなくシニア料金のボタンをポチっとし、新作ゴジラを1200円ポッキリで観られたのであった。
 ああ、光陰、矢のごとし。
 まあ『光陰』というくらいだから、いずれ、矢の速度も光速に達するはずである。
 遙か彼方の何処かに飛び去ってしまう光陰を悄然と見送りつつ「ありゃりゃ」とか呟くとき、狸自身が立っているのは那辺なりや。

          ◇          ◇

 こんだけシラス鰻の漁獲が激減しているのに、今年も、土用の巷のスーパーには、旨くもない機械焼きの鰻が山積みになっていた。
 どんどん売れているようだが、狸は買わない。
 臍曲がりの狸としては、あえて、死ぬ前にもう一度、天然鰻を食ってやろうと画策している。無論、熟練の職人が焼いた天然物でなければ意味がない。人並みに稼いでいた大昔、時価で1万ちょっと払った記憶があるから、今は2万を超えるだろう。いや老舗だと3万か。
 どのみち土用時分は天然物も高騰するに決まっているので、狙いは秋冬になる。その時期のほうが、野性の鰻自体も旬である。これから小金を貯めるとすると、来年の冬か再来年の秋か。
 それまでは豆腐と納豆と玉子で我慢――いや『うな次郎』とか『うな蒲ちゃん』くらいなら、たまには奢ってもいいよな。
 ちなみに狸は『うな蒲ちゃん』を押します。


07月26日 金  怪獣総進撃

 日雇いにアブれたので、炎天を避け、例によって図書館でのたくったのち、近所のシネコンに進軍。
 どでかいスクリーン上で怪獣映画を楽しむのは、十何年ぶりである。
 で、噂のハリウッド版『怪獣王ゴジラ』、噂どおりファミリー映画パートのアレコレ、とくにキレ気味のママさんには少々困ってしまったが、なんといっても主役が女児なので文句はない。あまつさえその女児が、昔から狸が愛好するモスラと、情を交わしたりもする。おまけにモスラは東宝モスラをも凌ぐ健気な奮闘っぷりで、命がけでゴジラを救おうとするあたり、昔からゴジラよりモスラ派だった狸には、もはや感涙モノであった。いやゴジラもラドンも大好きなんですけどね。ちなみに悪の総大将キングギドラが、ちゃんと宇宙怪獣なのも良かった。

 ところで、ここんとこのハリウッド版ゴジラ、なんか表情がワンコっぽいと思いませんか。あの頼もしい鼻息は、明らかにやる気まんまんのボス犬である。狸が子供の頃の東宝ゴジラ――とくに『怪獣大戦争』から『メカゴジラの逆襲』にかけては、なんじゃやら猫っぽい感じであった。いやアレはガマガエルっぽいぞ、という朋輩も当時は多かったが、なぜか狸には、猫っぽく見えていた。
 ともあれ、次回はいよいよハリウッド版『キングコング対ゴジラ』である。犬猿の仲らしく壮絶に戦い、でもしまいにゃ、なあなあに引き分けてほしいものである。同じ地球産の怪獣同士だものね。

          ◇          ◇

 狸が気をもんでも仕方がないが、お隣のムンさん、ほんとに大丈夫なのだろうか。慕っていた左巻き諸国には総スカンを食らい、といって今さら親米親日に走るのも思想的に不可能だ。他人事ながら、あの方の老後が心配でならない。
 それにしても現在の世界情勢、ほとんどトランプさんやアベさんのイケイケ路線を、全力でサポートしているとしか思えない。あのシニカルな英国さえ、イケイケのイロモノをトップに据えようとしている。
 今こそ、かつてのモンティ・パイソンのように、世界中の全勢力も全階級も全宗教も無差別に嘲笑し、全人類をコケにできる、クールな喜劇人の登場が待たれてならない。


07月20日 土  夏は来ぬ

 今週は、雲間から青空が覗く時間があった。てきめんに気温も上がった。ただし梅雨どきの湿気は小揺るぎもせず、ちょっと空気が乾きそうになると、すかさず天からシャワーが注がれ、地べた付近をじっくり蒸らしてくる。当然、狸は連日、午前中から汗まみれである。毎晩プチ洗濯に励まないと、衣類がクサヤになってしまう。
 しかしまあ、それもまた夏の狸穴の恒例、つまり今年もきっちり夏が訪れたわけで、まずはめでたい。やたらどにょにょりとした夏だけども。

          ◇          ◇

 隣国のムンさんが、例の京都アニメの放火犯となにかしら類似しているように見えるのは、狸の僻目だろうか。一国の大統領に対して失礼すぎるだろうか。
 ともあれ、自己実現の道を失った孤独な人間は、しばしばトチ狂って他人を道連れに無理心中を計る。選ばれてしまった心中相手にとって、災難としか言いようがない。一般国民にしろ、アニメ会社の社員さんたちにしろ、相手が先に成仏しないかぎり、自分も成仏してしまう。

 まあアベさんちのお坊ちゃんだってけっこうヤバげなわけだが、少なくとも勝ち負けに固執する時点で、まだ客観性や相対性を残している。
 しかしアベさん、仕事先の駅のロータリーを群衆でギチギチにして応援演説し、疲れた狸に遠回りを強いるのは勘弁してくれ。人間の票は増えるかもしれんが、狸の票は確実に自民から逃げたぞ。

          ◇          ◇

 ところでスエテナター様、井伏鱒二先生の『大空の鷲』に出てくるグリコの立看板は、たぶんあのグリコだと思います。一粒で300メートル走っちゃうお兄さんの。
 クロが御坂峠あたりを飛んでた頃は、もうグリコにオマケもついて、あのランニングのお兄さんが、日本中あっちこっちにゴールしてたはずです。


07月13日 土  どにょりとした日々

 近頃、狸の打鍵時、『どんより』と入力しようとして『どにょり』と変換してしまう癖が生じてしまい、いよいよ無意識レベルの反射的行動にまでアルツのケが出てきたかと怯えてしまう。
 しかしまあ実際に空を見上げてみれば、いかにも『どにょり』とした雲が今日も天を覆いつくしている。「これはもう『どにょり』を超えて『どにょにょり』級なのではないか」――そんな粘着性の曇天&雨天が続いているのである。
 正味の話、ここ半月以上、ただの一度も青空を見ていない。
 ラジオのニュースを聞いていたら、狸の暮らす東京湾岸あたりは1993年以来の日照不足だそうで、「なるほど確かに、あの年はほとんど夏がなかったよなあ」と、しみじみ思い出したりもする。記憶によれば、まともに米が育たず日本中が大飢饉に見舞われ、田舎の路傍には餓死した農民の死体が累々と横たわり――すみません。ウソです。しかし極端な米不足になったのは間違いなく、いっとき、巷にタイ米が幅を利かせていた。粘りけがなく、独特の匂いがあるので不評だったようだが、狸はあんがい喜んで食っていた。カレーやチャーハンに好適なのである。
 ともあれ、今年の東京湾岸の夏は久々に雨天順延、中止の可能性もあるらしい。
 暑さの苦手な、しかも夏休みという概念のない日銭頼みの狸には、それもまた良し。
 ……なんて言ってると、ナイアガラ系の皆さんや、お百姓さんに怒られますかね。

          ◇          ◇

 NHKの旧作DVD『漢詩紀行』シリーズを図書館から借り出し、しみじみとハマっている。
 江守徹さんの朗読する書き下し文もいいが、ネイティブの方による中国語そのものの音律、とくに女性の朗読が、なんでだか今の狸の耳に、尋常ならざる快感をもたらす。
 ただし残念ながらこの番組は、女性詩人の作品でないと女性が朗読してくれない。
 YOUTUBEあたりには、大量の女性による朗読がありそうなので、コマヌルともども、しばらく追っかけてみようと思う。

     


07月07日 日  雑想

 青空を久しく見ない。
 笹の葉さらさらの本日も、しとしとと小雨が降り続いている。
 しかしまあ、そんなのはあくまで大気圏内の問題、てゆーか東京湾岸上空の問題でしかないので、天の川の水位には、なんら影響を及ぼさないはずである。
 つまり織り姫さんと彦星君は年に一度の今夜、狸の目に遠慮することなく、ここを先途と情痴の限りを尽くしているに違いないのである。
 どうか末長く爆発し続けてほしいものである。

          ◇          ◇

 天上ならぬこの星に垂れこめがちな鬱勃たる世情の諸々についてはちょっとこっちに置いといて、今回の参院選挙、狸はもう立候補者の年齢も性別も履歴も所属も、いっさい顧みないことにした。その公約内に、女児と猫に対するなんらかの優位性を認められる人材、それのみで選ぼうと思う。
 もちろん公的発言において「男児より女児が偉い」とか「犬より猫が偉い」などと言いだす候補者がいたら、狸と同じただの馬鹿なので投票できない。あくまで狸なりの深慮遠謀が眼目である。

          ◇          ◇

 ところで、狸はこのところYOUTUBEで、このチャンネルをチェックするのが日課になっている。

     

 野性のマヌルネコはなかなか凶暴で狷介なイキモノらしいが、それでも狸はあえて蒙古の原野に赴き、親マヌルに勝負を挑んで噛み殺されて巣穴に引きずりこまれ、こーゆー元気な子供たちの餌になる自分の姿を想いながら、今夜も安らかに寝に就きたい。


07月01日 月  なまねこタマちゃん

タマ 「はいそれでは皆さん御一緒に―― ♪ なまねこなまねこ〜〜 ♪ なまねこなまねこなまねこ〜〜〜〜」
暎子ちゃん 「♪ なまねこなまねこなまねこ〜〜〜」
マトリョーナ 「……でも宮沢賢治の童話にでてくる『山猫大明神のなまねこ念仏』って、明らかに他力本願的な宗教に対する皮肉でしょ?」
丹下さん 「まあ宗教的な意味での『他力本願』は、けして仏様に何もかも丸投げしようってわけじゃないんだけど、宮沢さんちの賢ちゃんは、親代々の浄土真宗に背いて自ら法華の道を選んだ人だから、どうしても念仏系にはキビしいのよねえ」
タマ 「はいはいはいはい凡愚の皆さん、小賢しい理屈は忘れましょうね。どのみち世界でいちばん尊いのは女児っぽい猫、つまり、このわたくしただ一人。―― ♪ なまねこなまねこ〜〜 ♪ なまねこなまねこなまねこ〜〜〜〜」