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08月31日 土  やがて愛の日が

 先週の土曜ただ一日だけが、今月の、天からのお目こぼしだったらしい。
 その後も徹底的に、微塵の揺るぎなく、いっときの容赦もなく、湿気ムンムンの日々が続いている。
 正味の話、生きているのがキツい。
 鬱る。
 それでなくとも巷のニュースで、女児の受難をたびたび耳にし、頭を垂れる日々であるのに。

 そんな狸に同調するように、パソのバックアップ用外付けHDDが、寿命を迎えつつある。
 まあ、もともと中古で買った後期高齢ドライブだし、とくに今年は50度超えの警告をたびたび発していたので、アルツ化しても当然なのだけれど。
 ともあれ、谷口先生の新作目当てに夏コミの同人誌を二冊も注文してしまった直後の狸としては、ややフトコロに不安を感じる。
 ――いやいや、大丈夫。今月もみっちり稼いだからな。
 まあ最下級国民レベルでの『みっちり』なんだけども。

 後期高齢といえば、ブチ老僕も気にかかる。
 彼の名誉のために、ここには記さずにいたが、実は夏前からあっちこっちハゲちょろけになり、夏毛が生えそろわずにいたのである。
 それでも、以前に気になった目脂や涎は再発せず、かえって涼しそうにしていたし、このところ、ようやくハゲた部分に短毛が生えそろってきたので、この夏もなんとか越してくれそうに思われる。
 しかし気になるのは、その鳴き声である。
 自己主張の激しいミケ女王様とは対照的に、ほとんど鳴かなかったブチ老僕が、近頃、やたら鳴きながら狸の足元に懐いてくる。空腹時など、みゃーみゃーなーなーぴゃーぴゃーと、ほとんど生まれて間もない小猫のように、切実な声で鳴きまくる。
 これはやっぱり、老化による退行現象なのではないか。
 いや、ものすごくかわいいんですけどね、やっぱり先が心配なのです。

          ◇          ◇

 ムンさんもアベさんちの坊ちゃんもトラちゃんも、なんか、もういいや。
 それぞれ、それなりの見果てぬ夢は抱いているのだろうが、一市民としての良識などは、きれいさっぱり閑却しているのだ。おまけに美意識まで欠如している。
 どうせ理屈抜きの夢を見るなら、夢への階梯において、せめて美意識にだけはこだわってほしい。
 気にくわん奴をナニするときだって、美意識がなければ、ただの既知外である。

     


08月24日 土  ちょっと復活の日

 本日も、気温はしっかり30度を超えていた。日差しもキツかった。しかし風だけは乾いていた。
 昨日まで倦怠感と厭世に囚われきっていたのが嘘のように、江戸川の土手に這い上がって、思うさま徘徊する。
 スチーム機能のないレンジなら、なんぼ焼かれても狸はへっちゃらなのである。
 半月ぶりで湿度が50パーを下回る――ただそれだけのことが、こんなにもシヤワセであったとは。

 もっとも、江戸川を渡ってくる風は、正直、あまり芳しい香りではない。このところ、上流地域で、けっこう降ったからだろう。
 ご存知の方も多かろうが、江戸川や荒川は、ちょっと水嵩が増すと、下水がまんま流れこむ仕組みになっている。当然、河口に近づくほど、ドブの匂いがきつくなる。確かオリンピックやパラリンピックがらみでも、海浜公園周辺のスイムコースが問題になってましたよね。実際、狸の労働現場から瞥見する東京湾岸の水は、日によって様子が違う。上流地域で豪雨があった翌日など、かなり匂っている。
 それでも前の東京オリンピックの頃に比べたら、別の海のように綺麗なんですけどね。あの頃の東京湾、しかも河口付近に飛びこめなんぞと言われたら、狸はリヤカーに蒲団と箪笥を乗せて夜逃げします。

          ◇          ◇

 古本屋の百均で、旺文社文庫の『つげ義春旅日記』、立風書房の『高座奇人伝』(小島貞二著)をGET。前者は既読の単行本を再編集した内容だが、文庫自体は未読だったのでラッキー。後者は初読なので、なおラッキー。

 夜、ケーブルで、ジョン・ウー監督の『マンハント』(2017・中国)を観る。高倉健さんの『君よ憤怒の河を渡れ』の再映画化と言いつつ、実はまったく別物の怪作と聞いていたので、かなりビビりながら観始めたのだが――おおおおお、生粋のジョン・ウー節ではないか。もう20年も昔、ヴァン・ダムの『ハード・ターゲット』とかで、ドンパチの限りを尽くしていた頃のヤンチャっぷりが全開ではないか。70歳過ぎて、この脂っこい満艦飾は驚異である。やっぱり中華料理食ってるからか。
 狸も冷や奴ばっかり食って萎びてるバヤイじゃないぞ――などと、あわてて自前の猫耳物件を突っついたりするが、ここひと月で30行くらいしか進んでいない夏バテ脳味噌は、そう簡単には復活してくれない。
 ここはひとまず他力本願、とゆーことで、天野様やエテナ様が営々と書き継いでいらっしゃる作品を、あっちこっちでチェックする。
 ……ああ、お若い方々は、がんばっていらっしゃるなあ。

          ◇          ◇

 コロリと話は変わって、お隣のムンさん、順調に我が道を歩んでいるようだ。
 日韓GSOMIA破棄、これはまあ当然の話で、元々大反対していた政党のバリバリ大統領だもの、この機に乗じて「ラッキー!」とばかり始末したわけである。アメリカの顔なんぞ立てる義理はない。元々反米政党のエリートですよムンさんは。
 さあ、あとは残り少ない政権期間を無駄にせず、資本主義に毒された韓国経済をイッキに崩壊させ、共産主義革命の前段階として不可欠な無政府状態に――。

 と、ゆーよーな狸の戯れ言は、ちょっとこっちに置いといて――。
 なんのことはない、すべては日韓首脳の思惑どおりに動いてるような気がする、今日この頃の狸です。


08月16日 金  厭戦厭労狸

 本日も探食活動の予定だったのだが、ドタキャンでアブレ。
 昨夜、いつものびしょびしょヨレヨレ状態でその報を受けたときには、心の底から天に感謝した。遅れてきた盆休みである。
 正直、このところの、一日たりとも緩みのない高温多湿に疲れ果て、盆が終わったら御先祖様にくっついて彼岸に渡ってしまうのではないかと本気で危惧していた。「あーうー」などと呻く気力すら失われつつあった。そこに予期せぬ三連休の到来である。それもこっちの落ち度ではないから、本日ぶんの日銭の6割は寝ていても入る。
 思わず漏れる呻き声も、やや明るい「あーうー」なのであった。

          ◇          ◇

 この時期になるとNHK界隈で集中する敗戦記念日がらみのドキュメント、例によって片っ端から録画している。
 今年のNHKは、なんじゃやら海軍関係の極秘文書が新たに発掘されたとかで、ガダルカナルがらみの番組も226がらみも、視線が新鮮であった。
 かつての狸は、帝国海軍は帝国陸軍に比してややリベラルで垢抜けているような印象を(あくまで野次馬レベルで)抱いていたわけだが、その実態は、確かに西欧的で垢抜けている代わりに、実は目いっぱい功利的で姑息な側面も、てんこもりであったらしい。
 まあ、どのみち軍人さんのやることだものね。綺麗事で殺し合いなどできる道理がない。

 それにしても今年のNHKの815関連、ちょっとハラハラするほど左に巻いている気がする。
 まあ、靖国あたりでは兵隊さんコスプレのミリオタ連中が頭を沸かせる一方だから、水を差すのも必要と考えたのか。
 だいたい近頃の靖国関係者、心情右翼の狸から見たって、国辱、国賊級である。上皇様や今上陛下のお気持ちを考えれば、もはや逆賊の巣窟と言っても過言ではない。

          ◇          ◇

 などと言いつつ、しょせん狸の盆休み、やることのメインは金のかからない図書館通い、それも『夏休みお化け大会』方向である。
 本日掘り出した諸々の内、イチオシは『怪談四代記 八雲のいたずら』(小泉凡著・2014・講談社)
 昔から小泉八雲=ラフカディオ・ハーンのファンで、その作品も評伝も多数読んできた狸にとって、八雲の曾孫である民俗学者・凡氏のルーツ愛あふれるエッセイは、たいそう新鮮で、目から鱗のエピソードが多い。なにより氏の筆致に、曾お祖父さん譲りの、民俗に対する詩心が感じられる。
 まだ四半分しか読んでいないが、これは所有すべき書物と見た。幸い文庫化もされているようだ。


08月11日 日  天然スチーム・レンジ

 そーゆーものの中で日々蒸し上げられ、夜までにはホカホカの蒸し狸に仕上がり、人間の方々には添加物を廃した狸本来のミネラル豊かな肉汁を思う存分味わって頂きたいと切に願いながら息絶える狸なのであるが、不思議なことに風呂に浸かると、いつのまにか息を吹き返して「あーうー」とか呻きだす。
 そんなのが、この半月の狸の日課である。
 無論、週に2日はきっちり休んでいるわけだが、息を引き取りっぱなしにならないよう、休日はひたすらたれ狸と化して、「あーうー」とか呻き続けるだけである。
 つまり、死なないために、ただ生きている。
 今年はコミケのスチーム・レンジで大量の蒸しおたくが仕上がったとか、来年のオリンピック選手はスチーム・レンジの中で泳いだり走ったりするらしいとか、そーした話題は、むしろ羨ましい。みんな好きなことをやるために、わざわざレンジ入りするのだ。ただ生きるために、嫌々蒸し上がるわけではない。

 などと無気力に頬を引きつらせつつ、『忘れられた“ひろしま”〜8万8千人が演じた“あの日”〜』などというドキュメンタリーをNHKのETV特集で観てしまい、理不尽な超巨大レンジで突然焼かれることもなく、ただ生きていられることの幸運に、改めて思い至ったりもする。再放送もあるようなので、未見の方には、ぜひご覧頂きたい。
 その『ひろしま』という幻の映画そのものも、今週中に放送予定である。
 監督の資質や資本の出所からして、本編内にかなり左巻きの視線もあろうと、心情右翼の狸は推測する。ドキュメンタリー内でも、それを匂わせる要素はある。だからと言って、その労作が閑却されねばならぬいわれはない。

 で、原爆に関するアレコレはちょっとこっちに置いといて――いや、そっちに置いといちゃいかんのだが――このドキュメンタリー中、その『ひろしま』という映画に直接関わった被爆者の少女たちが、その後、無事に生き延びて、現在、老婆として過去を語る姿に、狸は、なんとも言われぬありがたさを覚える。
 そうなのである。
 なにがそうなんだ、と問われると困ってしまうのだが、とにかく、そうなのである。
 すべてのロリが、ちゃんと老婆になれる世界――そんな世界を夢見るために、狸は死ぬまで生きている。


08月04日 日  雑想

 表現の自由というシロモノの定義が、まず解らない。狸のちっこい脳味噌では、そんなもの人類の歴史上に一度も存在しなかったのではないか、と首を傾げるしかない。

 あれは高校2年のときだったか、全校生徒が講堂に集まって文化祭がナンタラカンタラと話し合っている最中、なんでだか話を振られてしまったアホな狸が「まあタテマエは自由ってことなんだから、法に触れる表現だって、処罰コミの覚悟で自由にやればいいんじゃないの」などと口を滑らせたら、真面目な上級生に「お前は無政府主義者か!」とか怒鳴られ、30分ばかり説教をくらったことがある。
 でもねえ。その政府や社会通念自体が、勝手にコロコロコロコロと変わっちゃうわけだしなあ。

 などと、紅顔の少年時代に思いを馳せつつ――あの頃は、学校の職員室も、狸らの巣くう文芸部室も、煙草の煙でモクモクしていた。狸が聖典と崇める『12歳の神話』だって、古本屋の芸術系写真集コーナーに堂々と並んでいた。
 あれから半世紀弱、アホな狸を置き去りにして、この国自体は案の定、自由奔放に不自由化しまくってしまったのだなあ。

          ◇          ◇

 隣のムンさん、順調に見果てぬ夢を追っているようだ。
 もはや周さんもプーさんも「わはははは。もっとやれもっとやれ。どうせ俺たち損しないもんね」とか面白がっているとしか思えないし、金さんとこの坊ちゃんなんぞは「こいつホント俺とはもう関係ないかんね。もう赤の他人だもんね」とか呆れているとしか思えないし、トラさんに至っては「ぶっちゃけ今どき我が国の最先端兵器があれば、朝鮮半島の基地なんて、もういらんのだよなあ。グァムに基地があれば、あっち方面の戦争には勝てるのよなあ。ホンネを言えば在日米軍だっていらんのよなあ。でも日本のオゼゼや技術はまだまだ使い勝手がいいから手放せんしなあ。まあ、シンゾーも利に聡い奴だから、何か姑息に考えとるだろう。どのみちムンは長持ちせんだろうし」――。

 などとゆー与太話はちょっとこっちに置いといて、狸が気になるのは、ムンさんとこの一般国民の方々に他ならない。早いとこムンさんをなんとかしないと、みんなで出稼ぎするしかなくなるぞ。3K難民になってしまうぞ。怨千年で食える時代は終わってしまったのだ。


08月01日 木  暑中お見舞い申しねこまた

 タマ 「ぐぬぬぬう……あづい……あづうううい……連日の炎天、そして熱帯夜……こうとあっては、もはや三毛猫としての美学など無益……」
 太郎 「うおっ! タマの全身の毛がいきなり抜け落ちて、なんじゃやらブキミなネコモドキ生物にっ!!」
 暎子ちゃん 「違いますよ、太郎さん。これも立派な猫の品種、スフィンクスですよ。なでなで、すべすべ」
 マトリョーナ 「確かに血統書モノだわね。なかなかクールでいいじゃない。ブリーダーの相場ならウン十万かしら」
 タマ 「……でも、まだ、あづい。……こうとあっては、もはや、脱げる物ぜんぶ脱いでみるしか……」
 太郎 「うわあ!! タマがいきなり生皮を剥いで、理科室の人体模型状態にっ!!!」
 暎子ちゃん 「ひえええええええ!」
 マトリョーナ 「正確には猫体模型でしょ?」
 タマ 「……ハラワタに風があたって、ちょっと涼しい」