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04月26日 日  やっぱりほとんど他粛な日々

 ……すみません。
 狸は、例の岡村隆史さんのラジオでの発言に、ああなるほどそうだよね、と、うなずけてしまうタイプの汚れたオス狸です。
 もしも、かつて狸のでんぐりがえりを評価してくださった方の中に、それを不快だと思われる方がいらっしゃいましたら、たぶん無邪気なラスカルを装った邪悪な狸のでんぐりがえりに、化かされてしまっただけだと思います。

 男として性欲はある、しかし恋愛が不得手なので結婚も困難、とはいえ痴漢行為やレイプに走るほど既知外ではない――そうした惰弱な男にとって、いわゆる風俗という世界は、トンデモな表現かも知れませんが、いわば肉欲における聖地です。
 無論、あくまで買う側にとっての聖地であって、買われる側にとっては、地獄の場合もあるのでしょう。それでも狸にとって、かつて一夜限りの、あるいは何夜かの極楽を共にしてくださった異性の方々は、やっぱり聖女でした。まして、その種の聖地には稀なほど美しい方だったりしたら、もはや聖母様でした。
 そして聖母様は、岡村さんが分析したように、大恐慌の後とか敗戦後とかバブル崩壊後とか、国難の直後に多く降臨します。それは可不可の問題ではなく、経済的な必然です。生ゴミを漁って橋の下で暮らせるほど強靱な人間は、なかなかおりません。聖女またしかり。いわんや聖母様においてをや。
 ぶっちゃけキリスト様やお釈迦様だって、お布施がなければ布教前に死んでるはずです。

 ……などと言いつつ、知命あたりからここ十何年、狸は聖地巡礼も聖母捜しもできておりませんが、それは単に肉体的な衰えと、経済的困窮の結果にすぎません。

 ああ、明日を見失って、ついつい炎上発言に走ってしまったような気がする。
 でも、こんな穴の奥で何を発言したって、炎上するほどの火種も酸素もないのである。
 まあ、落語の廓噺が大好きで、芸人さんには修身を求めない狸のこと、窮屈な他粛の中、あえて本音をぽこぽこと。

          ◇          ◇

 ところで、他粛メインに入った今月、必然的に猫耳物件の続きも増えて、量的には更新できるくらい溜まっているのだが……。
 なぜだ。
 最終回なのに、なぜちっとも話が進まない。

 ……狸が自分で進めてないからですね。困ったもんだ。


04月22日 水  続・他粛だけでもない日々

 狸の周囲で、予想外のことは、このところ何ひとつ起きていない。
 依然として週に5〜6日はアブレるし、たまに乗る電車は確かに他人と接触しない程度に空いているが、2メートルも離れるのは不可能だ。
 そして案の定、新型コロナの感染者は順調に増えているし、新型肺炎による死亡者も増えている。
 そりゃ狸らは働き口が激減したから他人と接触する機会もずいぶん減ったが、たまに外に出てみれば、あいかわらず道には車がガンガン走っているし電車もガンガン動いてるのだから、世間全体で人の接触を7割だの8割だの減らせるはずがない。
 お国のほうでも、あいかわらず「家にいろ」「他人との接触を減らせ」と口だけ動かすばかりで、テレビの政府広報を真に受けてあっちこっちの窓口に相談しても回線はパンパンだし、いざ繋がっても、窓口で実際に申し込めるのはさらに先の話だ。当然、外でしか稼げない連中は外に出るしかないし、他人と接触することで稼ぐ人は、いやでも接触するしかない。稼ぎたくともほとんど口のない狸などは、ウィルスに感染する確率が減って、まだ幸運かもしれないのである。
 ともあれ、この国のお偉い方々が、感染を収束させるために積極的に動くのではなく、感染爆発や医療崩壊をちまちまちまちまと先延ばしにしながら神風の到来を待つ、つまり自然の摂理による感染収束を待つ道を選んだ以上、国民はいっしょに神風を待つか、自らが神風と化すしかないわけである。

 とはいえ他国に比し、日本の新型肺炎での死亡率が異常に低いのは確かで、これに関しては、確かに神風が吹いているのだろうなあ、と狸も思う。
 いえ、別に、神がかりの奇跡が起きている、というわけではありません。個人より集団を重んじるという国民性自体が神風、そんな意味である。
 それは単なる民俗上の傾向だから、蒙古軍の大船団を薙ぎはらう暴風雨など、呼べるはずもない。それでも、帰途の燃料を持たずに出撃して片っ端から敵艦に突っこむなどというアッパラパーな作戦なら、確かに実現できたのである。そしてドンパチが終わった後も、自分より世間の目を重視しつづけ、半世紀前に比すれば滄桑の変に等しい市井の衛生環境をも、国土にもたらしたのである。もし令和の今も、狸の幼時のようにドブだらけで蝿ぶんぶんで未舗装道路に土埃が舞う衛生環境だったら、今頃は故郷の町にだって、何十人もの新型肺炎による死者が出ているはずだ。

 ただし、その国民性を過信するのは禁物なので、くれぐれも、まだ自粛していないパチンコ店や飲食店を名指しでマスコミにさらしあげる、などという愚行はやめていただきたいものである。
 政治家や官憲にしてみれば、自分たちも常々往生しているSNSとかを刺激して、カオナシたちからの誹謗中傷によって店を他粛させようというハラなのだろうが、カオアリのカミカゼ市民をなめてはいけない。そもそも、大勢がやっていることならどんなにアレなことでも恥ずかしがらずに参加できる、それがカミカゼ精神の本質である。このご時世でも堂々と営業し、しかも満員のパチンコ屋や飲食店があれば、そこはすでに行っても恥ずかしくない場所なのである。店名を公表すれば、それまで知らなかった客まで集まってくる。だって罰則があるわけじゃなし、政府の方針で道も通ってるし電車も動いてるし、ならばアッパラパーで特攻したほうがキショクいいものね。

 ちなみに、こないだ記した狸穴近くのラーメン屋には、平日の今日も行列ができてました。クチコミだけでこれですから、新聞にでも載せた日には、行列が5倍に伸びるでしょう。

          ◇          ◇

 ともあれ、めっきり明日が見えなくなってきた狸穴にも、ひと筋の光はある。
 福岡の、幼い姉妹を人質に立てこもったウスラバカが、鬼畜に堕ちる前に投降してくれた。
 そしてその記事の中に、こんな一節があった。

 
捜査関係者によると、男は立てこもっている間、タバコや姉妹のための飲み物も要求。男と捜査員との間で、姉を先に解放する話も出たが、姉は「妹が残っている」などとして拒んだという。

 とりあえず狸は、この姉妹を末長く寿ぐためにも、死ぬまで生きていようと思う。


04月17日 金  粛だけでもない日々

 危機感の高まりにつれて、世間様にもずいぶん自粛感が出てきたなあ、と思う一方、狸穴近辺では、平日の住宅街はかえって人通りが増え、江戸川土手で散歩する方々や、えっほえっほとランニングに励む健康志向の方々も増え、ああなるほど東京に通えない人がこれだけ増えたんだなあ、と納得しつつ、東京周辺の各県はかえって『密』かもしれんなあ、と心配する。
 それとは別の話であるが――。
 狸穴の近くの街道で、100メートルほどの間に個人経営の小さなラーメン屋が3軒あり、それぞれそこそこ賑わっていた。で、そのうち2軒が、緊急事態宣言を受けてか、あるいは客足自体の減少を見てか、完全営業自粛に入った。そして結果は御想像のとおり、残り1軒が客でパンパンになっている。『2密』くらいが3軒減って、立派な『3密』が1軒仕上がったわけである。
 まあ、自粛要請に従わなくても罰則はないのだから、あとはそれぞれの事情しだい。

 さて、そんな世間で狸はいかに生きているかと申しますと、「ああ俺は自粛してない悪い狸」と大いに萎縮しつつ、流通関係現場の単日派遣で、週に1度か2度ですが、電車に乗って働きに出ています。
 激減したとはいえ物流が全く途絶えたわけではないし、主婦のパートさんなどは子供の世話で仕事に出にくいらしいから、狸ら高齢奴隷にも、たまには口がかかるわけですね。半分は東京都内の仕事だったりもします。すみませんすみません。ちゃんとマスクしてますから許してください。
 とはいえコンスタントに口がかかるのは、やはりガテン系の若い衆である。全体的に仕事量が減ったロジ内では、軽作業も重労働も両方こなせる奴隷が求められている。主婦や高齢者は、ピッキングや梱包の要領はいいのだが、重量物の荷下ろしや荷積みには回せない。老狸もしかり。ならば多少は時給が増えても、活きのいい若い衆を、数を絞ってフル活用したほうが合理的なわけである。

          ◇          ◇

 ニューヨークあたりでは、貧乏人から先に、どんどん土に埋められているらしい。あの街で極貧層が医者にかかるのは、医療システム上、ほぼ不可能らしいのである。そもそも個人で救急車呼んだって、金がなきゃ乗せてくれないそうな。そんな所だと、トランプさんが早々に配った現金も、無保険で病院に一泊すれば消えてしまうだろう。いや、足りないかもしれない。
 そんなニュースを見ると、ああ日本に生まれてよかった、と狸は心から思う。ホームレスだって、ぶっ倒れればとりあえず救急車に乗れる。新型コロナっぽい症状があれば、よほどの上級国民でない限り、正社員でも日雇いでも平等にたらい回しにされる。そして日雇いでも、そのうちどこかには受け入れられ、国保にさえ加入しとけば、3割負担で入院できる。それもあんまり嵩んだら、高額医療費の還付だって受けられる。
 ねえ。
 オバマ・ケアはぶっ壊します、と豪語する大統領候補が当選し、公約どおりぶっ壊して喝采を受ける国じゃないだけ、まだマシでしょう。
 などと言いつつ、日本でも、そろそろ国民保険も介護保険も年金もヤバい気配があるが、そうなったらそうなったで、狸が子供の頃のように、日本全国の日常風景に浮浪者やオモライさんが溶けこむだけだ。
 ぼぼぼくはおなかがすいたのでおむすびをください。

 平等といえば、新型コロナがらみの現金給付10万、やっと無条件でくれることになったらしい。まあシブりにシブった末だとしても、くれないよりはマシである。
 でも、考えてみりゃ狸の場合、方針転換前の超難関30万でも、今のペースだと、確実に支給条件を満たせそうな月収なのよなあ。早急な10万より、先の30万のほうがよかったかなあ。
 ――いやいや、欲はかくまい。夏になれば年金の支給も始まるし。

 なにはともあれ、この国のすべての女児に現金が給付されるのは、とてもめでたい。
 むしろ大人や男児は除外して、中学生以下の女児に一律100万支給、それでいいのではないか。
 あ、あと、日本中の猫にも、ちゅ〜る10本、無条件で支給するとか。もちろん野良にも。


04月13日 月  続・他粛な日々

「『補償なしの休業要請』などというフェイク・ニュースは信じるな! 国としてちゃんとやることはやっている!!」
 と、厚生労働省さんがツイッターで怒りの叫びを上げたらしいので、そのHPを、じっくり拝見してきた。
 はいはい、なるほど。
 でも、これなら、すでにNHKニュースや新聞で、ちゃんと何度も見ていたような――。
 そう思って、再び外のツイッター界隈を覗いて回ったら、どうもネット上のニュースで『補償なしの休業要請』という文言ばかりが渦を巻き、それを鵜呑みにした感情的なユーザー・コメントが乱立するのに業を煮やし、念のため叫んでみたらしい。
 でもまあ、新型コロナがらみの特例で、種々の助成金請求手続きや審査期間のハードルをなんぼ下げてくれても、たとえば雇用調整助成金の請求手続きなんぞはやっぱり面倒きわまりないし、いつもより早い審査の結果、いつもより早く「こんな書類じゃダメ」とか「やっぱり対象外」とかNGくらう可能性もあるわけだし、そもそも雇用調整助成金の金額自体、めいっぱいもらえたとしても、狸ら日雇い奴隷の最低賃金にすぎないのである。自宅待機の社員さんにそれでがまんしてもらうか、会社が自腹を切って上乗せするか――。
 いやいや、他の融資制度や貸付制度も、色々ハードルをガン下げしてやったではないか、と、お国のほうでは叫ぶのだろうが、自転車操業の弱小企業はそのハードルにチャリで突進するのだから、乗り越える前にハードルごと引っくり返る恐れがある。だいたいNHKニュースによれば、相談窓口の予約はすでにパンクしている。
 やはり東京都のように、たとえ少額でも、新たな感染拡大防止協力金を早急に配るのが筋であろう。

 ともあれ、『補償なしの休業要請』という見出しばかりで、他の付帯情報をほとんど伝えないネット大手のニュースも、確かにセコいのである。とにかく最小限の情報切り出しで派手に煽って、その弾みで広告をポチっとしてもらうのが商売とはいえ、記事自体に最低限の良心がなければ、悪意のフェイクと大差ない。
 狸も前世紀の末頃までは、ネットがあればテレビや新聞なんぞいらなくなると思っていたのだが、ここまで無慮数のタカリやウスラバカがストレートに繋がってしまうと、全世界規模の粗忽長屋の井戸端会議のようで、井土の水を汲むのにかえって邪魔になる。
 だから狸はNHKの受信料も払うし、新聞もとっている。両方合わせるとけっこうな出費になるが、ただでさえ傷みつつある頭をこれ以上悪くして、廃狸化してしまうのが恐い。

          ◇          ◇

 などともっともらしいことを言いつつ、今日の冷たい雨に濡れる心配もなく、姉から送られた援助物資をはぐはぐしながら、優雅な外出他粛(アブレとも言う)にフヤけている、すでに廃狸同様の狸なのであった。
 郵便屋さんは他粛しないから、各種の請求書などはきちんとポストに届く。しかし阿倍さん印の布マスク2枚は、今日も届かない。
 まあ、別に来月でも夏でも来年でもかまわんのですけどね。
 姉印のカラフル布マスクがあるから、買い出しにも、突然の日雇い紹介にも困らない。


04月11日 土  他粛な日々

 などと言いつつ、昨日は臨時の日雇いで働いてきた。
 たまたま受注が嵩んだときなど、後腐れのない日替わりの奴隷は、やはり便利なのである。週に一度でも月に一度でも、呼べばホイホイ飛んでくる。
 その奴隷を扱う方々も、長期契約とはいえ非正規社員なので、何かあったら、すぐに他粛を強いられるだろう。
 事務所の正社員の方々も、いきなり切られる心配がないかわり、会社から出てこいと言われれば、出ないわけにはいかない。見えない新型コロナちゃんといっしょに電車に乗る可能性は、狸らよりも高い。

 山手線の朝のラッシュがどうのこうの、乗客数が40%でどうのこうの――そんなニュースが、昨夜ラジオから聞こえてきたので、「へえ、あんなザルみたいな緊急事態宣言で、そこまで電車の客が減ったのか」と感嘆し、その後、テレビのニュースで確認したら、あくまで山手線外回りの上野−御徒町間で、朝のラッシュ時の乗客数が、先月の10日頃に比べて約40%減った、ということらしい。
 あの区間で、先月の60%の客が詰まっていたなら、それは依然として立派な満員電車である。いわゆる保安定員(それ以上乗せるとマジに人死にが出そう)ではなくなったにしろ、サービス定員(まあなんとか身動きはできる)くらいは保っているはずだ。

 当然ながら、首都圏の日々の感染者など減るはずもなく、本日、阿倍さんちのお坊ちゃまは、7都府県の全事業者に対して、出勤者を最低7割減にする要請を行ったそうである。
 あいかわらず、ただ声高に要請しただけで、それによって社会の何がどうなるかに関しては、「感染者が減る」くらいしか口にしてくれない。まさか、感染者が減るまで非感染者はそこらへんの草でも食って生きてなさい、とゆーわけでもあるまいから、そこはそれ一国の総理、狸ら衆愚の想像を絶する高邁なビジョンをお持ちなのだろう。ただ、とてもお育ちがおよろしくて恥ずかしがり屋のお坊ちゃまだから、そうした輝かしいビジョンは、黙って墓の中まで持ってゆくつもりなのだろう。
 ……愚痴ってないよな。ちゃんと褒めてるよな。
 狸としては、猫耳物件にもちょっと記したが、新大久保−新宿間の山手線内回りが気になる。
 あの人間バッテラは、せめて江戸前寿司くらいまで、ほぐれただろうか。

          ◇          ◇

 神奈川の姉から、援助物資が届いた。
 レトルト食品や米や麺類や缶詰に加え、手造りのマスクも2枚入っていた。
 表の生地にカラフルな模様があったりするが、孫たちのために何枚もマスクを縫ったあと、余った布で大人用を作ったらしいので、若草色のチェック柄くらいは仕方がない。いや、かえって気が晴れていい。最小サイズの使い捨てマスクしか入手できず、それすらヨレヨレになるまで洗って使っている狸としては、ありがたいかぎりである。
 やはり、いざというときに頼りになるのは、人智を超えた高邁なビジョンをお持ちの名宰相よりも、孫や子供や旦那の次くらいには独り身の愚弟を思い出してくれる、平凡な姉なのであった。

          ◇          ◇

 で、猫好きの方々には何を今さらでしょうが、こんくらい安らかに自粛していたい、そんな狸の夢でございます。

     


04月08日 水  緊急事態なので自力でよろしく

 はいはい。
 大都市圏で感染爆発しても、大半を占める軽症者は、民間施設を接収して無尽蔵に収容できるようにしましたから安心です、と。
 それ以外は今までと同じです、と。
 企業や個人への経済的支援は、できるかぎりハードルを高くして、手続きも面倒にしましたので潔く諦め、どうしても諦められない方は、感染拡大が治まるまで大人しくお待ちください、と。
 了解しました。もう愚痴はこぼしません。来年のオリンピックのために、せいぜい節約に励んでください。

 とまあ、阿倍さんちのお坊ちゃまなどは力いっぱい棚の上に放置して、残るは地べた、狸個狸の問題である。
 明日の年金オフィス再訪に向けて、必要書類はきっちり揃えた。
 あとは時の流れに身を任せるのみ。

 あ、でも布マスク2枚は、感染拡大が治まる前に欲しいなあ。
 でも布マスクって、日本全国の全世帯ぶん、テレワークで封筒に入れたりできるのかなあ。
 あ、そうか。きっと日雇い派遣を湾岸ロジあたりに大量に集めて、緊急雇用対策にするんだ。これは応募せねば。わくわく。


04月05日 日  カネオクレタノム

 ダレガクレタノムナ。
 などという明治時代以来の電報ギャグは、ちょっとこっちに置いといて――。

          ◇          ◇

 最寄りの年金オフィスの話によりますと、請求可能になった当日に請求したとしても、支給開始は、あくまで書類一式が元締めである日本年金機構に届いてから、あれやこれやとつっつき回したあとになるので、何月から振りこまれるかは明言できないそうである。ただ、おそらく6月は無理だろうとのこと。年金が年6回に分けて偶数月に支給されるのは知っていたので、まさか8月になるのかと聞いてみたら、請求時期によって、初回は奇数月でも振り込まれるのだそうだ。
 どのみち、使えるのは夏になってからである。それでも衣食住の内、住くらいは賄える。つまり、毎日同じ下着と同じ上着で狸穴に引きこもり、毎日のんびり風呂に入り、毎日好きなだけネットで遊び、あとはぐっすり眠っていればいい。それで優雅に餓死できる。水だけあれば1ヶ月は生きられるからね。

 って、餓死したくねーよ。
 飢えない程度に食いたいよ。週に一度は吉野家で牛丼かっこみたいよ。月に一度は回転寿司に行きたいよ。たまにはオベベも変えたいよ。百均の古本も読みたいよ。
 と、ゆーわけで、最底辺なりに文明国の贅沢に慣れきってしまった狸としては、死なないための探食活動が、死ぬまで必須である。爺いなりに足腰と脳味噌が動くかぎり、生活保護の世話にはなりたくない。
 にもかかわらず、日雇いはおろか長期派遣だってバンバン切られ始めている昨今、阿倍さんちのお坊ちゃまへの愚痴は、嵩むいっぽうなのだが――。

 ――もういい! やめた!!
 これでは愚痴ってる狸が、阿倍さんちのお坊ちゃまと同じくらい、ケツの穴のコマい小動物になってしまう。
 狸一匹、生ゴミ食ってりゃ化けられる!
 もうすぐ年金でるだけで超勝ち組!

          ◇          ◇

 と、ゆーわけで、阿倍さんちの皺だらけのお坊ちゃん、新型コロナがらみの現金給付は、子育て中の家庭に100万よろ!
 シングル・マザーには200万よろ!
 お願いだからそれくらいの侠気は見せろよ、なあ。
 お前だって昭和の妖怪の血い引いてんだからさあ、なあ。


     


04月01日 水  四月馬鹿だと言ってくれ

「いやきっとそのうち神風が吹いて、この国から新型コロナなど吹き飛ばしてくれるから俺の政権は安泰」
「もし神風が吹かなくても国民が自ら神風と化して、死んで護国の礎となってくれるから俺の政権は安泰」
 ――と、ゆーよーなことを阿倍さんちのお坊ちゃまが本気で思っているなら、まだマシな気がする。

「非常事態宣言なんぞ、出したとたんに一律現金給付が必須になって、せっかく集めた税金また返さなきゃなんないから絶対出さない。代わりにマスク2枚あげるから、それでがまんしなさい。あ、マスク配るときウィルスちょっと広げちゃうかもしんないけど、満員電車ほどじゃないから気にしないように」
 ――と、ゆーよーなことをうっかり発言したとしても、「ごめん。エイプリルフールでした。てへ」とか舌を出してくれれば、許しはしないが、なんとか笑えないこともない。

「もう考えるの面倒くさいから、考えてるふりして適当に流しとこう。歴史的に、終わらなかったパンデミックは存在しないしな。まあ俺もこの歳だから、残りの任期だけ総理やってられれば上出来だし」
 ――などと本気で思っているように見えてしまうところが阿倍さんちのお坊ちゃまの底力なんだよなあ、などと本気で思いそうになっている狸を、誰でもいいから「おいおい四月馬鹿のネタだろう、そりゃ」と本気で嘲ってください。お願いです。

          ◇          ◇

 ともあれ、とりあえず他粛に追いこまれながらも、口座残高や冷蔵庫の中や食料戸棚をちまちまとチェックして「まあ働かない日は1日1食半で済むから当分はもつな」などと呑気につぶやいている狸なのであるが、「あ、でも納豆とピーマンとタマネギとキャベツは生命線だから補充しとかんとな」と思って、雨の中を近所のスーパーに出かけ、買い物の後に休憩コーナーで『仁義なき日本沈没 東宝VS東映の戦後サバイバル』(例によって古本屋の100均棚で見つけた新潮新書)など開こうとすると、平日はいつも爺さん婆さんばかりのコーナーに、自粛中なのかリーマンや大学生らしい世代もちらほら混じっており、マスクも着けずにスマホをつるつるしながら、なんの緊張感もなく、くしゃみしたり咳払いしたりしているわけである。
 まあ、いつもなら狸だって気にしない程度のくしゃみや咳払いなのだが、さすがに当節は気になる。のみならずスマホ野郎の方々は、横並びの席に座っていながら、わざわざ顔を斜め横に向けて、ハクションケホケホやっている。ハンカチも使わず、手で口を覆いもしない。付近の爺さん婆さんが、あわてて逃げたりする。
 ――おや、もしやこれが噂の、人生を捨てたコロナ・テロリストたちか?
 などと狸が身構え、その凶顔を見定めれば、これがもーまったくいつもどおりの、フヌけたスマホ野郎顔なのであった。この世には自分自身とスマホの中のお花畑しかない、そんな御尊顔ですね。当然、くしゃみをするときは、無意識の内にスマホから顔をそむけます。大事なスマホにツバ飛ばしたくないのでしょう。それ以外の方向は、異世界なので関係ないし。

 ちょっと先の江戸川を越えれば東京都で、学生や勤め人の過半が東京に通っている街でも、まあ、こんな感じでした。
 と、ゆーわけで、なにがあろうと阿倍さんちのお坊ちゃまの支持率は、今後も安泰です。
 たぶんアメリカのトランプさんも大丈夫ですね。
 ルイはトムを呼ぶ。

 なお、マスク着用に関しては、お年寄りのほうが薬局の開店時間に並びやすいので、独身リーマンや宵っ張りの学生は、入手できないのかもしれません。
 でもハンカチくらい使えよな、大人なんだから。