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08月28日 金  復元不能

 昼間にトロけた狸体が、夜中になっても復元しない。
 全裸で飯を食っていると、全身から汗がとめどなく流れる。
 エアコンは隣の寝室兼パソ部屋にしかない。じゃあそっちで飯食えばいいじゃん、とおっしゃる方もあろうが、テレビやHDDレコーダーは、こっちの部屋にしかない。

 ブチ下僕も、長い猛暑でおかしくなったか、老体ヨレヨレの幼猫へと退化して、ぴゃーぴゃー啼きながら茶卓によじ登り、真っ正面から「なんかくれなんかくれ」と訴えてくる。なんべん追い払っても、台所で好物のポリポリを与えても、やっぱり茶卓の真正面に戻ってきて、ぴゃーぴゃーぴゃーぴゃー啼いている。阿倍さんちのお坊ちゃんが延々としゃべっているニュース画面と、晩飯の冷や奴や発泡酒の間で、常にブチ下僕がぴゃーぴゃー啼いているのである。しょーがねーなあ、と、食いかけの豆腐を与えてやっても、嘗めるくらいで、ちっとも食いはしない。これはやはり幼猫化ではなく、老猫性のアルツなのだろうか。

 潰瘍性大腸炎といえば、ウン十年前の店長仲間にも、同じ病気を患っている奴がいた。大層うっとうしい病らしかった。しかし、彼は最初の入院のとき世話になった看護婦さんとくっついて、子供ふたりをもうけ、幸せな家庭を築いた。それでも当時の社畜仲間のこと、狸が辞めるまで十年近く、彼の潰瘍性大腸炎は完治しなかった。
 彼は今も潰瘍性大腸炎なのだろうか。それとも大腸癌かなにかに悪化し、家族を残して先だってしまったろうか。しかし、あの優しい奥さんに看取られて逝ったなら、阿倍さんちのお坊ちゃんよりは、ずっとシヤワセな人生だったと思われる。まだ生きてたらすまんすまん。

          ◇          ◇

 などと言いつつ、まだまだ真夏日猛暑日と、トロけそうな日々が続くらしい週間予報の中、週明けには意地でも復元せねばならない。
 ここは懐かしの昭和歌謡曲で気合いを入れるしかない。

     

     


08月24日 月  真夏は続くよどこまでも

 おお、やっと暑さが和らぐか、と期待できたのは昨日一日だけで、まだまだ真夏日が続くらしい。
 週間予報によれば、このあたりは猛暑日こそ終わったようだが、最高34度が続く限り、鉄筋コンクリのロジ内は、35度以下になりっこない。
 まあ、例年9月半ばまでは確実に真夏、10月初旬も何回か真夏日、そう覚悟してますけどね。

 今夜もBSの海外ニュースで、あちこちで最高気温が摂氏50度を超えて自然火災が連日発生、などというニュースを見聞し、日本は多湿だから恵まれているのだなあ、とも思う。無論、ゲリラ豪雨でガンガン流されてしまう恐れは増えたが、焼け死ぬよりは溺れ死ぬほうが、まだマシな気がする。
「いや俺は溺れ死んだんだけど、あれは死ぬほど苦しかった。まだ焼け死ぬほうがいい」と反論される幽霊の方がいらっしゃったら、すみません。心からご冥福をお祈りいたしますので、どうか成仏してください。

          ◇          ◇

 図書館で借りてきた、内藤ルネ氏の自伝(聞き書き)『すべてを失くして』(2005年・小学館)を、しみじみと興味深く読んでいる。
 クール・ジャパンな『カワイイ』の元祖として、晩年ギリギリで再評価され、その栄光の中で他界できたことを、神に感謝したくなるような人生である。
 もうちょっと再評価が遅れていたら、詐欺で全財産を失ったまま、失意の内に人生を終えるところだったのだ。
 また生粋の薔薇族である氏にとって、性的少数者への偏見が緩んだ時代(まあ表向きだけだが)なのも幸いした。この自伝では、その部分もごく自然に語っておられるので、とても微笑ましく、また今後の参考文献としても、狸には純粋にありがたい。

 ちなみに狸はノンケである。
 一方で、もう小学校の頃から美輪明宏さんのファンだったし、青年時代には、若き日の坂東玉三郎さんにも、ぞっこんであった。
 また狸はロリコンである。
 しかし20代後半の女性も、30代の女性も、マジで口説いたことがある。
 ……実は、なんでもいいのかもしれない。

          ◇          ◇

 ともあれ、まだ夏です。

     


08月19日 水  真夏の夜は全裸

 うぶぶぶぶぶう――。
 ごれはあづずぎでぼうなじもいえばぜん――。

 などと言いつつ、近場の観測点では35度でも、連日の炎天で蓄熱しきった鉄筋コンクリのロジ内はほぼ40度、それでも誰一人熱中症でぶっ倒れることもなく、一時間に一本ペットボトルを飲み干したり、三十分ごとに「あーうー」などと立ち止まったりしながら、粛々とピッキングや仕分けを続けるわけである。
 唯一の希望は、数メートルごとに1台、いつもより増量された作業現場用大型首振り扇風機。それがこっちに向かって首を振れば束の間の天国、それ以外は地獄。
 
 帰穴後、狂ったように全衣服を脱ぎ捨てて、ブチ下僕を押さえつけ、白黒ブチの鬱陶しい毛皮をめりめりと剥いでやり――嘘です猫はいじめません。
 その代わり、テレビのニュースに出てくるナントカ大臣さんとかを、脳内で無理矢理押し倒して狸と同じ全裸に剥いてやり――嘘です男は脱がせません。

 しかし、同じニュース画面に登場する、ちょっと前の水害被災地で炎天下の清掃活動に励んでいる若いボランティア女性のインタビューなどを見ていると、思わず惰弱な己を恥じて、あれらの方々になんで政府は『着るクーラー』くらい支給してやれないのかと立腹してしまう。
 でもまあ、40度のロジだろうが45度のガラス用品加工現場だろうが、最下層奴隷に与えられるのは水と塩飴くらいなのだから、なおのこと無給のボランティアになど、国家という徴税装置が何ひとつ与えようとしないのは当然なのである。

 かくして今夜も、狸は全裸でのたくる。

          ◇          ◇

 時代劇専門チャンネルで録画しておいた、化け猫がらみの古いテレビ用長編作品を、2本続けて見る。『怪猫佐賀騒動』(昭和56年・1981)と『怪猫有馬御殿』(昭和58年・1983)。

 ああ、化け猫は、いい。悪人をもれなく囓り殺してくれる。
 とくに『怪猫佐賀騒動』に脇役で出ていた絵沢萠子さんの化け猫っぷりが圧巻で、思わず、うちのタマ(?)を弟子入りさせたくなった。

 平成の特撮映画『さくや妖怪伝』(2000)で、化け猫の老婆役をやった絵沢萠子さんが、撮影所に嬉々として『マイ牙』持参でやってきたと、監督の原口智生さんがエッセイに書いていたのを、ふと思い出した。もしかして20年近く前に演じた、この『怪猫佐賀騒動』で使用した付け牙だったりするのだろうか。確かに後世に残すべき見事な化け猫演技であり、御本人も自負していらっしゃったに違いない。
 そういえば『さくや妖怪伝』では、まだ太る前の松坂慶子さんが、美女モードのまま嬉々として巨大化し、宿場町のミニチュアをゴジラのごとくノリノリで破壊していたと記憶している。
 美女も化け物も、それぞれマジに演じてこその、実力派女優なのである。


08月14日 金  日々粛々

 ラジオ深夜便あたりで連日のように原爆関係のインタビュー類を聞いていると、同じ悲惨な体験が、話者によっていかに違った印象になってしまうか、つくづく実感できる。怒りや悲憤を露わに語ったのでは、かえって事実の凄さが『その話者の私事』にまとまってしまう。一方、客観的に淡々と語れる方の話からは、広島や長崎で本当に地獄の釜の蓋が開いてしまったことが、赤の他人である戦後生まれの狸にも、実感レベルで伝わってくる。本当に胸が痛くなり、慟哭しそうになるのである。

 自分の怒りや悲憤だけでは、他の誰をも説得できない。なるほどそれは大変でしたねえ、と同情してはくれるだろうが、同調してくれたわけではない。
 怒りや悲憤、あるいは幸福感や充実感、どちらでも同じことだ。話者の客観性こそが、聴衆の想像力に繋がる。
 ギャグまたしかり。昔から言われるが、笑われるのではなく、笑わせるのがコメディアンの仕事なのである。
 そうした意味で、やはりヒトラーなどは希代の三文役者に過ぎず、グレタちゃんも同次元の三文子役である。

 などと言いつつ、それはあくまで、まともな想像力を持った聴衆相手の話であって、馬鹿を煽ってウケたいだけなら、同程度の馬鹿な真似を、より派手にやって見せればいいのだろうが。

          ◇          ◇

 で、ついに狸にも、年金支給が開始された。
 やったあ、これで余生は、散歩と猫いじりの日々――んなわきゃねーだろう、おい。
 以前にも記したが、賄えるのは、せいぜい衣食住の『住』まで。衣食ならびに医者代薬代、それに趣味嗜好関係の出費は、死ぬまで自前でなんとかしなければならない。
 冠婚葬祭や交際費もまたしかり。新型コロナ騒動の中で巡りくる亡母の七回忌、今回は帰省せずリモートで済ませるため、故郷の菩提寺に、いきなり数万も送金することになった。
 でもまあ、やっぱり、ありがたい。今の稼ぎでも、なんとか今後の生計が立つ。

 正直、この歳になると、この狂気じみた炎熱の中で働くのは週に二度でも願い下げなのだが、まあ、動ける限りは動くのが小動物の本態なのでしかたがない。
 しかし――秋、そして冬、仕事は増えてくれるのだろうか。
 たとえば歳末、例年なみに稼げたなら、プラス年金で正月にプチ温泉旅行、なんて贅沢も可能になるわけだが――。
 たぶん、捕らぬ狸の皮算用なのだろうなあ。
 せめてクリスマスには、どでかいロブスターを食いたいものである。


08月09日 日  前言撤回

 PVはあまり気にしていない、などと記したくせに、カクヨムの桃色物件が完結して1週間もたってから、全話イッキに1日で1PVずつ増えたりすると、これはやっぱり1日でイッキ読みしてくれた新しい読者様がいらっしゃるらしく思われ、どこのどなたか存じませんがありがとうございますありがとうございますと、モニターに向かって平伏したりもする。今まで5PV以上に増えなかった第五章の出だしまで6に増えているから、たぶん、まんべんなく突っついて下さったに違いない。
 あの話を最後まで読んでいただいた方には、偉大なるラスボスの言霊によって、何があろうと100才まで生きねばならぬという呪いが自動的にかかるので、狸としても、今後の御多幸を祈るばかりである。
 不幸な人生が100年続いてしまったら、ごめんなさい。

     


08月07日 金  液状化狸

「災害級の暑さです!」とスーツ姿のお若い大臣さんにサワヤカな顔で言われたり、「なるべく外出を避けてエアコンを使いましょう」と気象予報士の綺麗なおねいさんに優しく言われたりすると、摂氏40度近い現場ですっかり溶解し原型をとどめていない狸などは、テレビの前で無気力に「……そーですか。災害級の暑さですか。でもそこは涼しそうですね、小泉さんとこのお坊ちゃん」とか「私もできれば外出を避けたいので、食材そっちもちで狸穴に来て晩飯作ってくれませんか綺麗なおねいさん」などと力なくつぶやくのみなのであるが、溶解するのは相変わらず週に1〜2日程度なので、再凝固する暇は、実はなんぼでもあるのである。
 ああ、新型コロナさん、ありがとうありがとう。
 思えば去年は、同様の環境で週に5日もドタバタしていたのだから、我ながら、よく死ななかったものだと感心する。
 まあ、大災害の渦中でも、たいがい死ぬよりは死なない確率のほうが高い。人も狸も、なかなかにしぶといのである。

          ◇          ◇

 カクヨム仕様の桃色物件は、クリスマス物件同様、いつもの方々に加え、ひとりだけ新しい方にもお気に召していただけたようで、めでたしめでたし。最後までついてきて下さる新規の方は、たぶんあの方だけだろうと思っていた。ズブドロのおたくは、方向性が多少違っても、同じおたくとして確かに相通じるものがあるのである。
 ちなみにPV数は、狸はあまり気にしていない。狸自身、あちこち突っついて、「……これはちょっと」と首をひねって逃げてしまうケースが多く、それもあちらのPVには入っているからだ。やっぱりハートがほしい。お星様なら、もっといい。

 その後もちょこちょこ手を入れた、小分けする前の桃色物件を、猫耳物件やクリスマス物件(小分け前の)と同じところに置いておくことにする。あくまで書庫の意味合いなので、あえてあちらの掲示板には記さない。

 長いこと積んどく状態だった天野様の潮降り物件完結バージョン、ようやく愛用のエディタ兼テキスト・リーダーに移して、通読しはじめたところである。
 あの作品は、みっちり文庫一冊分の長さがあるから、どうもスマホで通読する気になれない。なにせ爺いのこと、スマホ導入当初こそ、電車で青空文庫だの星空文庫だの開いていたが、やっぱりスマホ読書は気が散って無理だと気づいてしまった。ましてスマホ創作など爺いには不可能、せいぜいメモをとるくらいである。
 実はカクヨムの皆様の投稿作も、カクヨム自体の縦書き表示には今一歩なじめず、パソコンで使えるWEB上の『えあ草紙リーダー』を介して、紙媒体に似せて読んでいたりする。


08月02日 日  脳内リゾート

 桃色物件が、ようやく完結した。
 脳内エンディング・ソングも、無事にコレでおかしくない話に仕上がったと思う。

     

 ……ふう。
 次は、ラスト・バトルを残すのみの猫耳物件に、シマツをつけねばなあ。
 しかし、最終回だけで、立派に中編の分量になるはず。しかも中身はユルユルでダレダレのオチャラケばかり――。
 まあいいか。
 戯れせむとや生まれけむ。