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09月27日 日  GoToできないメアリー・セレスト号

 でかすぎる惨禍の前には二度と戻れない――とゆーわけでは必ずしもないと、狸は思っている。
 今は右往左往するだけの新型コロナ対策だって、いずれはまともなワクチンができるだろうし、まあ人間社会がどうあれ、地球はまだまだ何億年と存在し続けるのだから、人間じゃない生物が平和で豊かな地球文明を築けるチャンスは、なんぼでもあろうと思われる。
 しかし10年や20年の単位で、いや100年200年かけたって、傷痕を消せない惨禍は確実にあるし、そーゆー惨禍はたいがい人間がいなければおこらない惨禍なので、月並みな話だが、起こった惨禍を冷静に記録し、粛々と次代に伝えていくのが人間の義務である。

 で、とりあえず、こんな写真と記事が目についたので、リンクしておきます。
 あくまで2015年10月の記事ですが、事故から4年半たっても、こんなもんだったのですね。
 その後のNHK特集などを見ても、原発の近隣はあいかわらずですし、周辺の方々のガン発生率には、他の地方に比較して明らかな有意差が生じつつあります。風評ではなく、現実のデータとして。

          ◇          ◇

 歴史歪曲やら公式記録の改竄やらフェイク・ニュースやら、個人から国家まで、異世界転生を夢見がちな人間世界ではあるが、夢だけで何億年も食っていけるほど地球は甘くないので、狸は明後日も日雇いに出ます。
「明後日? じゃあ明日はどーすんだ。平日だぞ。働く日だぞ」と勤勉な方々にツッコまれた場合、「すみませんすみません。アブレたんで徘徊したり猫耳と遊んだりします。すみませんすみません」と頭を下げるしかない。
 でもまあ全世界には、歴史歪曲や公式記録の改竄やフェイク・ニュースの流布に、日々勤勉に励んでおられる方々も多数いらっしゃることですし……。
 ふん。勤勉なんて、バカの言い訳にはならんもんね。


09月24日 木  青空を久しく見ない

 ようやく気温が下がったと思えば、湿度MAX、じとじとした日ばかり続く。
 今日はなんとか降らないようだな、と思っても必ず降って、湿度を100%近くまで上げてくる。

          ◇          ◇

 月7万ポッキリあれば日本人は生きて行ける、などと公言するエラい人がいるらしい。
 タケナカさんちのお爺さんである。
 さすが、生まれつき金に困らない星の下で生きている方は、夢さえ及ばぬファンタジーの中にいらっしゃるらしいのである。
 まあ「無産階級なんて滅びても金持ちの俺には痛くも痒くもない」と感じていらっしゃるだけなのかもしれないが、もしそうだとしたら、狸は日本のお金持ちの方々の未来が、心配でならない。
 ここでなんべんも言っているが、現在の奴隷が飢えて死に絶えたら、現在の中流の方々が自動的に奴隷に下って、現在お金持ちの方々も多くは自動的に中流に下って、それが延々と繰り返されるわけである。ふと気がついたら、立派なお金持ちは日本に数人、全世界でも百人足らず――そんな危機的状況になり、天然記念物として保護しなければならなくなる。自然繁殖が不可能なら、我々奴隷の力で雌雄を娶せ、繁殖させねばならぬ。
 まあ、タケナカさんちのお爺さんの場合、「今の俺の遺産があれば、曾孫くらいまでは余裕で金持ちのはず」、そんな御一族の輝かしい未来しか、見えていないのかもしれない。あるいは意識的に、見ていないのかもしれない。
 しかし、老狸よりもずいぶん年長の方だから、認知症の線も、大いに考えられるのではないか。
 そういえば、いきなり孫娘を刺し殺してしまった例のお祖父さんの事件も、どうやら認知症が原因のひとつらしい。
 近頃の巷では、認知症のマイナス・イメージを和らげようとする記事や番組が増えているが、実際にアルツハイマー病の母と長く接した狸から見れば、あれはそんなに甘い疾患ではない。最悪の時期には、ちょっと目を離すと何をしでかすかわからない明らかな狂人と化し、比較的能天気な狸でさえ、いやでも実母を精神病院に入れざるを得なかった。
 タケナカさんちのお爺さんの場合、そこまで悪化はしていないにしろ、今どき月7万で日本の国民が生きて行けるなどという妄想を本気で信じているのなら、脳に重大な損傷があると考えるのが妥当である。

          ◇          ◇

 しかし近頃、世界のいわゆる権力者の方々が、賤しくてあさましい言動を次々と繰り出すのを見ていると、自分は奴隷の道を選んで良かったと、負け惜しみ抜きで安堵したりもする。
 まあ、それは日本という豊かな国に生まれ育った奴隷ゆえの余裕であり、自分もまたどこかの貧困国の奴隷の方々の生き血を啜って生きていることは厳然たる事実なのだが、少なくとも、世界のおエライ方々のように賤しくてあさましい姿を、全世界に晒さずに死んでいけそうなのも確かである。

          ◇          ◇

 カクヨムに投稿された猫村まぬる様の『東京虫』、すでに4〜5回ほど読んでいるが、本当に恐い。
 読み始めから中盤までは、手堅いストーリーテリングを備えた手堅い心理怪談なのかと思っていると、最後の最後で、十数年前に狸が耐えられなくなってついに放棄した「一般社会でつつがなく生きるための正しかるべき社会認識」の深奥を、研ぎすまされたカミソリのように、問答無用で眼前に突きつけてくる。
 怪奇幻想系の創作物で、これほど恐いドンデンをかまされたのは、それこそ十数年ぶりである。
 正味の話、ここ20年くらいの間に読んだ新しい作家(エンタメ・純文学問わず)の怪奇短編の、どの作品よりも「うわあ」と逃げ出したくなった。

 こんな臆病な狸が、まともに人に化けられないのも、独身のまま死んでいくのも、けだし当然なのである。


09月19日 土  狸をどこかに連れてって

 ネットの小説板に投稿されている無名な方々の無名な作品にしろ、書店の最新刊コーナーでどーんと同じ表紙を一面に並べられているベストセラー作家の新作にしろ、狸にとっては、まったく同じ興味の対象でしかない。
 狸を、どこか知らない興味深い世界にちゃんと連れてってくれるかどうか、それだけである。
 累計何百万部突破! と書店がイチオシしている国民的作家さんのミステリー・シリーズとやらも、最初の十数ページを立ち読みし、「ああ、またそーゆーありがちな意外性に充ち満ちた世界で、そこそこ面白く遊ばせてくれる話なのね」と感じてしまえば、その続きを読んで、残り少ない爺いの余生を縮めようとは思わない。ウスラボケッと徘徊しながら、自分の脳味噌の中で遊んでいるほうが、まだ有意義な気がする。

          ◇          ◇

 ネットの小説板で、ホラー系の着想を一話一行ぽっきりにまとめ、次々と十話ほど披露している作者さんがいた。
 いつもは、冗談のような軽いコントを臆面もなく投稿すると思えば、驚くほどシュールな話を深々と語りこんだりもできる作者さんだったので、その一行作品、というか着想の覚え書きも、計十話、興味深く目を通した。
 なるほど、奇抜で面白い着想ばかりである。これまでのその方の創作物を見れば、自力でポンポンとそうした着想ができる、オリジナリティーに溢れた方なのだろう。
 が、しかし――。
 ただ一作のアイデアを除き、他のアイデアは、すでにどこかで老理が目にしている。そのアマチュア作家さんが凡庸というわけではない。古今東西、どれだけ無慮数の作者が無慮数の怪談話を語ってきたか――それだけの話である。

 そんなこんなで、売れるプロ作家の作品は、どうしても「ありがちな意外性に充ち満ちた世界で、そこそこ面白く遊ばせてくれる話」に、ならざるを得ないのだろう。どんな着想も先例があると覚悟の上で、語り口で勝負するしかない。

          ◇          ◇

 じゃあおまえはどうなんだ、と言われてしまうと、語り口にも充分こだわっているつもりなのだが、どうしても人語より狸語に傾いてしまう。
 そしてストーリー自体、狸っぽくでんぐりがえらないと気がすまない。とくに近頃は、人に化けても、わざわざ尻尾を隠さないほどである。
 いきおい、他の方の作品を評価するときも、プロ・アマ問わず「あ、これは人ではなく狸の所業だな」と感じられるかどうかがキモになってしまい、なにか大変申し訳ないことをしている気がしないでもないわけだが――狸のことゆえ御勘弁。


09月14日 月  真相

 な、なぜバレる……しかも腹の中まで……

     

 ところで、『無の人』って、どんな方なんでしょうね。



09月11日 金  身悶える狸

 あの香港警察のトンがったあんちゃんが女児に馬乗りになる仕事っぷりを見ても、平然と「現場の判断には口出ししない」とうそぶく糞婆あが、香港行政長官なのだそうだ。
 もはや中国政府は完全に腐ったな、と判断して、さしつかえなかろう。

 アメリカの白人警官が、なんぼ黒人を撃ち殺しがちだといっても、同じ白人の女児に、白昼堂々いきなり馬乗りになったりはしない。
 ペドフィリアによる児童迫害などは大変に多いアメリカだが、だからこそ一般社会でも、一般的犯罪者(?)の世界でも、児童虐待は徹底的に忌み嫌われる。
 それが単に、まだ若いピューリタニズム国家の慣習のひとつに過ぎないとしても、狸としては、そちらに与したい。

  しかし狸の疑問は、習近平が何をそこまで焦りまくっているか、である。現在の経済状態や外交問題が、なんぼギリギリの瀬戸際であるにしろ、現在の強権発動っぷりは、正気の沙汰とは思えない。
 たぶん習近平にとっては、全てを失いかねない何かが、言論統制の奥で、刻一刻と膨らんでいるのだろう。

          ◇          ◇

 このところ、微塵の緩みもなく真夏日が続いている。おまけに湿度がMAXだ。
 今週は奇跡的に3日連続で仕事にありついたが、そのとたんに、今年は免れたかと思っていた全身の汗疹や股ずれや赤ベソや襟首のヒリヒリにまとめて襲われ、いつもなら至福の入浴さえ、今夜は痛痒くて辛い。

 明日は一日雨で気温も上がらない、と、気象予報のおねいさんが優しく頬笑んでいる。
 信じていいんだよね、おねいさん。
 ハズれたら、おねいさんの夢に、大入道に化けた狸が出現し、一晩中メソメソ泣きじゃくるぞ。


09月06日 日  月光仮面狸

 元祖の『月光仮面』がテレビ放送されたとき、狸はまだ1〜2才だったし、そもそも狸の実家にまだ白黒テレビが存在していなかったので、数年後、かの有名な「憎むな、殺すな、赦しましょう」というフレーズを漫画本で知った頃には、「いや、世の中には、憎くもない相手を面白半分に殺し続ける奴もいるから、そーゆーのはちゃんと憎んで、赦さないで、ちゃっちゃと吊したほうがいいと思うぞ」などと思う程度に、ひねこびてしまっていた。
 原作者の川内康範先生も、その後、さすがになんでもかんでも赦していたら、悪人ばっかり生き残って世界が滅びてしまうと悟ったのか、「憎むな、殺すな、糺《ただ》せよ」と書き換え、最晩年の復刻本では「憎むな、殺すな、真贋《まこと》糺《ただ》すべし」になっているそうである。
 なるほど、最後まで仏教的ヒーローにこだわっていた川内先生らしい表現だが、そんな先生でさえ「赦しましょう」と言いきれないくらい、ここ半世紀ほどで社会自体が変わってしまったのも確かなのであった。

 とはいえ、狸も道元禅師の大ファンだったりするから、半日以上も車内に放置されて熱中症で死んでしまったふたりの女児のニュースなどを聞くと、テレビの前で身も世もあらず七転八倒しながらも、その飲んだくれの不倫母を、一方的に罵る気にはなれない。すべては、まず事態の背景をしっかり「糺《ただ》して」から――それくらいの悟性は、生臭い狸にもある。いったんは嘘で塗り固めようとした母親が、狸の目の前でふてくされていたとしても、いきなり罵倒打擲しようとは思わない。
 人も狸も、神や仏ではない。
 生きとし生けるものすべて、心の色は白でも黒でもなく、常に無限のグラデーションを伴ったグレーゾーンである。

 が、しかし――。
 どこぞの無職の30男が、女児に猥褻行為をはたらいて下着を持ち去った、などというニュースを聞くと、これはもう、まったく別の話になる。
 心底、憎い。
 目の前にいたら、迷わず殺す。
 そいつの死骸すら赦さない。ミンチにして動物園のハイエナに食ってもらう。
 本心から、そうするべきだと思う。
 狸は神でも仏でもないから、鬼畜生を赦すいわれはない。

          ◇          ◇

 そうした巷の痛々しいニュースの後、天気予報で台風10号の衛星視点映像を見ると、狸はその巨大な白い渦が下界にもたらす被害を心配する一方、ローランド・エメリッヒ監督の『デイ・アフター・トゥモロー』あたりのCG映像を思い出し、あまりにも立派で、絵に描いたように美しい天然現象、とも思ってしまうのである。

 ああしたトンデモ映画級の大災害が、必ずしもトンデモではなくなりつつある昨今、やはり神仏に頼ってばかりでは、埒が明かない。
 そもそも神仏そのものが、人間よりも、大自然に与する存在なのである。
 ならば人や狸としては、せいぜいエコな生活に励むなり、始末すべき鬼畜生はこまめに吊すなり、人や狸でも可能な下界のことを、ちまちまとやり続けるしかないのである。


09月01日 火  復元失敗

 おお、今日はちょっと涼しいかもしんない、などと楽観して巣穴を出ても、帰穴時には、やっぱり原型を失ってドロドロになっている。
 明日からも順調に残暑が続くらしい。

 ブチ下僕は今夜も狸穴に遊びに来たが、すでにたっぷり飲み食いした後らしく、茶卓の上で丸くなったまま、ぴくりとも動かない。
 冬場に熟睡するときは、かすかに腹が上下するのでまだ死んでいないとわかるのだが、今夜はほとんど動かない。とうとう死んだか、と思って恐る恐る突っついてみると、物憂げに目を開けて寝返りを打つのだが、それっきり、また死んだように丸くなる。腹もやっぱり動かない。
 でもまあ、トロけて原型を失った狸同様、むしろこれが猛暑における正しい生の有りようとも思える。

 テレビでがあがあぴいぴい大声をあげている活気に満ちた人々や、ネットでなんだかよくわからない言葉をアツく叩きつけあっている元気な方々を見ていると、ああ、あれらは暑くて発狂したわけではなく、むしろ好きなときに冷房の効いた環境に逃げ込める勝ち組の方々なのだろうなあ、と、トロけた頭で羨んだりもする。
 その証拠に、マジに頭が煮えて発狂した方々は、ちゃんとドツいたり殺したりしている。
 どこぞの商業施設で見ず知らずの女性を刺し殺した少年なども、保護施設や少年院にちゃんと冷房があったら、脳味噌はあそこまで煮えなかったのかもしれない。

 ともあれ、脳味噌が煮える前に、全身がトロけてドツキも殺しもできなくなってしまう自分やブチ下僕が、とても愛しい今日この頃である。