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05月29日 日  夏は来ぬ

 さあ、いよいよ今年も夏本番だ!
 忘れずに、こいつをプレイせねば!

     

 ……だから何故?
 そもそも、大量の古エロゲを詰めたまんま放置していたXPのタワーパソコン、1年ぶりに電源入れたら起動せんし。

 起動せんしガンダム!!

 ……すみません。真夏が2日続いただけで、すでに頭が煮えてます。


05月22日 日  自問自答

 自問。
 もし自分の口座に突然4000万円振り込まれたら、どうするか。

 自答。
 可能性その3――即刻全額引き出して国外逃亡する。
 可能性その2――400万円だけ引き出して、返せと言われたら「落とし物と同じだから1割もらえると思った」と泣きじゃくる。
 可能性その1――せめて今月分の自動引落が全部終わるまでは誰も気づかないでくれ、と、天に祈る。
 以上。

 まあ数十年つきあってきた自分の肝っ玉を思えば、9分9厘、可能性その1が関の山であろう。
 しかし『電子計算機使用詐欺で逮捕』は、どう考えてもおかしい。事情の如何に関わらず、素性の確かな相手が、あくまで自発的に、こちらの口座に振り込んだ金なのだから、単純詐欺とも特殊詐欺とも話は別だ。刑事事件ではなく、民事訴訟の案件に思える。

          ◇          ◇

 仕事先で、久々に陰謀論大好きおっさんと、いっしょに働いた。
 最初に会ったのは、何年前だったか。確か、小保方さんのSMAP細胞、いやSTAP細胞研究は、ディープステートにハメられて横取りされたという、どこぞのマイナー週刊誌のガセ記事を、まんま聞かされた記憶がある。いや、その記事ではディープステートという言葉ではなく、アメリカの医学界のなんじゃらアヤしいアレな勢力、そんな感じのヨタ話だったか。
 その後も何度か、同じおっさんと顔を合わせた結果、ディープステートという謎の組織は、昭和の山村の万屋のように、売れそうな品物ならなんでもかんでも商うマメな世界的チェーンであると、狸は認識したわけである。
 当然、おっさんによれば今回のロシアVSウクライナは、ディープステートにハメられたロシアが被害者である。新型コロナのワクチンもディープステートが広めた危険物だが、派遣会社によっては接種記録がないと出禁になるので、おっさんも3回目まで打っている。そこいらは、ディープステートに叛逆する偉大なトランプ元大統領さえ、社会性を考慮して危険を顧みずに接種しているので、ディープステートに負けたことにはならないらしい。少なくともそのおっさんは、そう自己判断している。
 ちなみにおっさんは、あいかわらず僅かな日銭をパチスロに突っこみ続けているようで、こないだも駅前のパチスロで大いに儲けたとおっしゃった。そこで狸が「あのパチスロ・チェーンは北●鮮の資金源らしいですよ」と、陰謀論ではない方向の裏話を告げたら、おっさんは「いやそれは嘘だろう。本当だとしても、自分はあそこで、使った金の何倍も取り返しているから、北●鮮に痛手を与えているはずだ」と反論した。
 ならば、なぜ何年も前から今日に至るまで、奴隷に混じって僅かな日銭を稼ぎ続けねばならないのか。パチプロとして、なんぼでも楽に暮らせるではないか――。
 そこまで問いつめて、辛い現実から幻想に逃避する奴隷仲間を悩ませるほど、狸も鬼ではない。狸自身、嘘八百を垂れ流すのを、日々の慰めにしている。あらかじめ「これは嘘八百ですよ」と公言している点だけが、そのおっさんと違うところである。

          ◇          ◇

 ところで近頃、ネットニュースやユーチューブを覗いていると、明らかな詐欺広告が派手に出まくり状態なのだが、いつのまにWEB上の詐欺は合法化したのだろう。それこそ電子計算機使用詐欺ではないのか。
 まあ、誰が見ても虚言症のオヤジが元総理大臣だったり大統領だったりする国も多々あるわけだから、逮捕する側も都合しだいなのだろう。
 小心な狸だって、いつ詐欺師に鞍替えし、4000万円を即刻全額引き出して、国外逃亡しないとも限らない。
 しかし毎晩のようにネットバンキングで残高確認しても、去年から、ほとんど5桁以上に増えたことがない。稀に6桁になっても、頭の数字が2以上だったのは、年金と特別給付金が重なった月の中旬だけだ。
 それでも、この豊かな国に生まれた幸運な狸、やろうと思えば、国外逃亡は可能である。

 で、また自問してみる。
 もし国外逃亡するなら、どこに逃げて何をしたいか。

 希望その3――ニューヨークのホームレスになり、教会で食わせてもらう。
 希望その2――カナダに飛んで山河に遊び、ハイイログマに食われる。
 希望その1――フィンランドでオーロラ見物した後、ムーミンパークの裏で凍死する。


05月15日 日  ウイルス君がやってきた

 連休明けに、いっぺん仕事にありついた際、どうやらウイルスをもらってしまった。
 新型コロナではない。医者の言によれば、たぶんノロ君。つまりウイルス性胃腸炎らしい。
 これは、以前の流行期にも、いっぺんもらったことがある。狸の場合、嘔吐や腹痛はほとんど起こらない。熱もふだんより1度くらいしか上がらない。代わりに、とにかく腹が下る。それはもう、このまま一生ケツからの液体噴出力で前進しなければならないのではないかと、余生を危ぶむほどに下るのである。
 なんとか金曜には快方に向かったのだが、その前の2日間くらいは、ろくに寝ていられないほど下り続けた。脱水対策と栄養補給のため、湯冷ましやカロリーメイト類は、しっかり摂取しなければならない。するとそれらが、ほとんどそのまんまトイレに流れる。とくに発症した火曜の夜から水曜にかけては、寝床よりトイレですごす時間が長かった。

 それでも、狸って、けっこう丈夫なイキモノですね。
 すでに、ウドンや半熟卵やトマトを食っても、まったく下らない。
 しかしそれらの食材は、なんぼ神に祈っても、空から降ってこない。ロハで薬をくれる医者もいない。今月ありついた仕事の金は、月末締めなので当分入らない。年金は来月の半ばである。
 情けないとは思いつつ、例によって、姉に電話で泣きつくことになった。
 これで天涯孤独の身の上だったら、何ヶ月か後に糞尿まみれの腐乱死体が発見され、狸穴は立派な事故物件に仕上がっただろう。

          ◇          ◇

 などと言いつつ、永六輔さんの『深紅の琥珀』は、やっぱり傑作であった。
 これが当時も今もさほど話題になっていないのは、徹頭徹尾、日本近代史のパロに徹したからだろう。
 せめて大阪万博の前に発表されていれば、同調力のある読者層が多く残っており、何十倍も売れて、東宝あたりで映画化されたに違いない。
 でもまあ、1989年から1990年という、リアルタイムな世相あってこその作品世界だからなあ。

 話変わって、ケーブルの録画で、久々にセルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(1968)を観たのだが、これが観るたびに興趣が高まる傑作なのである。
 元々、映画としてのコクがハンパではない上、狸が観るたびに、画質が美しくなってゆく。
 最初に観たのは、高校時代、山形の宝塚小劇場(古い洋画専門の名画座)のちっぽけなスクリーンで、上映環境は、かなりお粗末だった。それでも若い狸は、充分以上に感激した。
 次に観たのはテレビの洋画劇場で、当然内容も画面もカットされまくりだったが、それでもけっこう感激した。
 そしてレンタルビデオ、それからレンタルDVD――どっちも画質はイマイチだったが、やっぱり感動した。
 そして今回のケーブル放映は、たぶん最新リマスターである。4Kリマスターとは謳っていないが、少なくともブルーレイ用のマスターと思われる。
 これがもう、美しいのなんの。
 モノホンのモニュメント・バレーでロケしたロングショトなんぞ、往年のハリウッド西部劇を遙かに凌ぐスケール感で、エンニオ・モリコーネの叙情的な名曲も加担し、狸など暫時恍惚として我を忘れる有り様である。
 ああ、初公開の時代に戻り、山形ならシネマ旭、東京なら新宿プラザあたりの、どでかいスクリーンで観賞できたら――。

          ◇          ◇

 ところで、狸穴の球面ブラウン管テレビには、当然ながらHDMI端子なんぞ存在しない。
 ケーブルテレビのチューナーBOXから古いAVケーブルで映像出力し、わざわざ古いブルーレイレコーダーを経由して、それのS端子からテレビのS端子に繋げてある。
 そうしてやると、チューナーBOXから直でテレビのAV端子に繋ぐより、格段に精細度が増す。
 元々限界のあるアナログ信号ゆえに、古い機械のアナログ信号処理は、シャカリキで最善をめざしているのである。

 いやいや、初めっから4Kテレビ買えば最高ですよ、とおっしゃる紳士もあろう。
 金がないならハイビジョンの中古液晶テレビでも買えばいいじゃん、とおっしゃる若者もあろう。
 狸もそう思う。異論はない。
 異論はないので、ただちに狸穴に現金書留を送りなさい。


05月08日 日  雑想

 永六輔さんの『深紅の琥珀』(1994)という文庫本を古書店の百均棚で見つけ、なんと氏の著作としては唯一の小説らしいので、さっそく購って読み始めたのだが――。
 いやはや、面白い面白い。こんな面白い話が、当時、なんで大した話題にならなかったのだろう。
 確かに文体は小説としては微妙なところもあるし、帯のキャッチコピーもズバリと煽りにくいジャンル(強いて言えば、現代を舞台にした歴史パロディ+歴史ファンタジー?)だし、「いったい今どんな物語が展開しているのか」自体、かなり読み進めるまで把握できない。狸のように永六輔さんの話芸や随筆にずっぷりイレコんでいるファンでないと、とっつきにくいかもしれない。
 それでも、読み続けるうちにどんどんどんどん面白くなり、半分まで読み進めた今となっては、読み終えるまでは死ねない気分である。やはり希代のストーリーテラーなのだ。
 電子書籍でも出ているから、お若い方にもお勧めしたいところだが、日本を中心にした激動の近代史をパロディで楽しませる芸風なので、やっぱり年寄り向きか。でも主要登場人物である中年男性の家族関係などは、シリアス方向の機微をきっちり描いて、文学としても秀逸である。

          ◇          ◇

 しかし連日ニュースで伝えられるロシアVSウクライナ、もはやロシア軍や政府中枢の動向は、便所コオロギというより、重度のアルツハイマーを思わせる。
 ときどきニュースに映し出されるロシア市民の「プーちんエライ! ロシア万歳!」的な発言も、洗脳というより、伝染性のアルツか何かに見える。
 まあ、そう言っとかないと、何かと後がヤバいのかもしれないが、アルツ進行中の患者を介護していると介護者までおかしくなってくるのは自分の経験として身にしみているので、患者の妄言はクールに受け止めないと大凶、それだけを、介護者には留意してほしいものである。
 それにしても、バッタバッタと口封じに始末されてゆく大富豪たちの件などは、一般市民に秘匿しているのだろうか。もし、それを知りながら「偉大なプーちんが、いけすかない金持ちの奸賊をシマツしてくれた! プーちんエライ! ロシア万歳!」とか市民が思っているとしたら、明らかに市民のアルツも末期である。
 ……まあ、ロシアに限った話じゃありませんけどね。

          ◇          ◇

 ロシアに限らず、いわゆる『民主主義』への懐疑が西側諸国でも広がりつつある気がするのだけれど、そもそも『民主主義』と『資本主義』をセットで考えるからワヤワヤになるわけで、『社会主義』と『共産主義』をセットにするのも、同じワヤワヤである。
 ただ悲しいことに、『民主主義』と『共産主義』を両立するほど、今の人類は賢くない。『社会主義』と『資本主義』の両立も、同じ事である。
 人類の過半が釈迦の涅槃に傾倒し、『民主主義』と『共産主義』を両立させる社会――隣人関係と金勘定はあくまで別物――そんな世界を、狸は夢見る。
 あ、北の金ちゃん一家が標榜する、名ばかりの『民主主義人民共和国』なんぞは、もちろん論外です。


05月01日 日  時代

 NHKスペシャルの『東京ブラックホールIII 1989−1990 魅惑と罪のバブルの宮殿』を観て、たいそう懐かしがりも、しんみりしたりもしたのだけれど、前回『II』で描かれた1963年の東京オリンピック前後と同様、その頃すでにこの世に生まれていた狸としては、なるほどそんな方々もいたのだろうなあ、と、あくまで日本社会の一断面として捉えるしかないわけである。当然、前々回の『I』で描かれた終戦直後の東京の市井も、狸は生まれていなかったので断言は出来ないが、あくまでひとつの見方と捉えた方が良かろう。
 とはいえ、どの回も、現代の青年がその時代にタイムスリップして市井の人々に関わるという趣向の、近年NHKが得意とするドラマとドキュメンタリーを融合させた番組であり、重い社会性を保ちながら、ラストはいかにもタイムスリップ青春ドラマらしく、しんみりとまとめてくれるのが好ましい。

 さて、そのバブルの頃、狸は群馬や埼玉や茨城の田舎を転々としており、東京のマジなイケイケ状態は、テレビ等で見る以外、月に一度の店長会議で本部に出たときしか実見できなかった。
 自身はあくまで一介の雇われ店長、それも下っ端の店長に過ぎないから、月給は諸手当コミで手取り30万に届かなかったが、それでもボーナスは年間合わせて5〜6ヶ月ぶん出たと記憶する。小売業なので、夏冬2回の他に、決算ボーナスがあったのだ。
 他にバブルらしい話といえば、さらに下っ端の店長が、実家の土地を元手にうまく株で当てて、自前のラボを構えたくらいか。あ、社員旅行にディスコ衣裳を持ってきて、踊り狂った新入社員もいたな。

 それでも、狸が月イチで瞥見する都心には、今よりも大量のホームレスが溢れていた。
 ある秋の台風の夜に電車が止まって、風雨の中、上野駅界隈をうろうろしていると、痩せてみすぼらしい身なりの、しかし目つきだけは妙に鋭い老婆にいきなり腕をとられ、「お兄さん、ウチに泊まらない? いい娘いるよ」などと耳打ちされたこともある。つまり私娼の客引きである。俺はいつのまに永井荷風の時代にタイムスリップしてしまったのかと、思わず焦ってしまったものだが、今にして思えば、あっちのほうが『東京ブラックホールIII』に紛れこんだ、『I』や『II』の住人だったのかもしれない。

 まあ、今日の『III』でも描かれたように、どんな好景気な時代も、しょせん世間はピンキリである。いわんや不景気においてをや。
 しかし現在キリのキリの自分が、あながち惨めだとは思わない。
 有り余る富と権力を持ちながら、便所虫に退化したのでは、ビンボな狸にさえ「ケッ」とか唾を吐かれるものね。