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11月26日 日  兵隊さんのおかげですか

 ガザ地区の戦闘中断と、ハマス側の人質解放と、イスラエル側の拘束者解放の様子をニュースで見ていた。
 身内が釈放されたガザ地区の女性が、涙ながらに「これもハマスのおかげです」と口にしていた。
 確かに、それはそうなんだが――。
 同じく身内が戻ってきたイスラエルの男性が、「全部の人質が戻るまで、喜びを露わにしたくない」と口にしていた。
 確かに、それもそうなんだが――。

 ――いや、もう何も言うまい。
 どのみち、じきにまた戦闘や空爆が始まる。
 死んだ人間は、兵隊さんにしろ、兵隊さんがシマツした交戦国の市民にしろ、どのみち一人も戻ってこない。

     

 今回は、泣くに泣けない話であった。


11月19日 日  いろはにほへと

 今回は、泣いた話ではないのだが、ずいぶん感慨深い番組を、立て続けに視聴した。

          ◇          ◇

 ひとつめは、NHK・BSPの『よみがえる新日本紀行 〜最初のニュータウン 大阪・千里〜』。

 昭和54年に放送された新日本紀行の本編 つまり狸がまだ学生時代の番組と、今現在の同地の様子を紹介しているのだが、どちらも漫才トリオ『かしまし娘』の、正司照枝さんがリポートしている。現在のパートには、三軒先に住んでいるという、妹の花江さんまで登場する。
 長女の歌江さんもご存命のはずだが、ご近所さんではないからか、あるいは、もう94歳になっておられるはずなので体調が万全ではないのか、残念ながら、お姿は見られなかった。
 それにしても、90歳の照枝さんはまだまだお元気だし、87歳の花江さんに至っては、67歳と年齢詐称しても通用しそうなイキオイで、いまだに『かしまし娘』なのであった。
 狸もあやかりたいものだが、住宅事情も食料事情も雲泥の差ゆえ、あまり先は長くない気もする。

 ともあれ、そんな番組に興味のある高齢な方は、来週も再放送するそうなので、しみじみとご覧いただきたい。
 あ、でも、BS契約していないと無理か。

          ◇          ◇

 さて、ふたつめは、Eテレの『SWITCHインタビュー 達人達』。
 こちらの番組は2021年に放送された回の再放送で、先だって夭折されたBUCK−TICKの櫻井敦司さんと、芸人ヒロシさんの対談という、極めてレアな回である。内容も、お二人の胸中の奥底が触れあうような、なかなか濃い対談であった。
 お二人の間には、その後、猫関係の交友もあったはずなのだが、残念ながらこの対談の時点では、ヒロシさんは保護猫のアツシ君も櫻ちゃんも、まだお迎えしていない。

 この番組はEテレだから、地上波契約だけの人でも観られたはずだが、もともと再放送なので、地上波での再々放送は予定がないようだ。
 ああ、録画しておいて良かった良かった。
 まあ、広大なネットのどこかには、無断でまるまるアップされているかもしれないが――「ダメ。ゼッタイ。」とゆーことで。

          ◇          ◇

 後期高齢者になっても元気な老嬢たち――。
 まだ若いのに旅立ってしまうロックシンガー――。

 狸自身の明日は知れないが、まあ、死ぬまでは生きていようと思う。

     


11月12日 日  復活途上

 週はじめの夜半から、トイレ生活が始まった。
 確か去年も、この時期にウイルス性腸炎でトイレ住まいになったが、今年は細菌による出血性大腸炎である。

 最初は水様便ではなく、血液そのものが噴出したような有り様で、マジにこのままトイレで死んでゆくのかと覚悟したが、翌日、ひとまず噴出が治まった隙に医者に這いこんだら、どうも典型的な細菌性の腸炎らしく、脱水に気をつけながら寝たきりで過ごし様子を見るよう忠告された。
 で、言われた通りに、湯冷ましと缶入りカロリーメイトで渇死や餓死を避けつつ寝たきりになっていたら、翌日半ばには血便が水様便に、翌々日の夜半には軟便へと変わり、今ではすっかりバナナ状に戻っている。

 その間も、ずっと寝たきりだったわけではない。
 夜明け前に目が冴えてネットを覗いたりもしていたし、あらかじめ毎日投稿するように設定してあったカクヨムの猫耳物件を再チェックしたり、三日目あたりからは録画物件をチェックしたりもしていた。

 で、我ながら老化を痛感したのが、久々に買い物に出たら目眩がしてしばらく歩行不能に陥ったことと、ひめゆり部隊関係のドキュメンタリー番組や『ハチ 約束の犬』(アメリカでリメイクされた『ハチ公物語』ですね)を観ていたら、マジに慟哭して、涙腺が完全決壊してしまったことである。
 病気で心身が弱っていたせいもあろうが、低血糖で歩けなくなるのは何年も前に糖尿の薬を飲み始めたばかりのころ以来だし、近頃めっきり涙もろくなったとはいえ、テレビの前でここまで長くマジ泣きするのは、人生初であった。
 でもまあ、身体的な回復力はまだ残っているようだし、巷でよく見かけるブチギレ老人になるよりは、ひとりでおいおい泣いている爺いのほうが、まだマシである。

 残る問題は、ここ一週間まったく仕事に出られず、口座残高が限りなくゼロに近づいていることだが――。
 はい、恥を忍んで、久しぶりに姉に援助要請してしまいました。
 先立たない不孝をお許し下さい。

 あ、あと、もうひとつ、びっくりしたことがある。
 夏に寝込んで、次に外に出たら、冬になっていた。
 ニュースでもネットでも「秋はいったいどこに消えた」と嘆いている方が多いが、来年も再来年もこんな調子だったら、マジに俳句の季語を大改訂しないといけなくなる。


11月05日 日  マジに夏は来ぬ

 うっわ〜、なにこれ、ウッソ〜ウッソ〜。
 外に出たら、マジ真夏じゃん。
 お日様だけで、ガングロになれちゃうじゃん。
 おまけにむしむしシケっぽくて、Tシャツ1枚でも、汗びっしょりじゃん。
 こんなん、もう、いっとーナウい、これ歌うっきゃないじゃん。

     

 ……こんな軽口に逃げるしか、気候変動にも、人類の根性ダダ下がりにも、耐えられる気がしない。

 昨今話題の生成AIも、早い話、人類が発した情報を元に全てを生成する以上、人類を超える存在になどなれるはずがないわけで、共倒れするのがせいぜいだろうと狸は思う。

 たとえば究極のAIが、記憶力や理解力や判断力のみならず創造力さえ誇るようになり、しまいにゃ人類を駆逐したとしても、その先は、どのみちAI同士で、馴れ合うか潰し合うしかないのである。

          ◇          ◇

 新たに推敲しながら、カクヨムでも小分けにして公開しはじめた猫耳物件は、もはや、すらかき氏と天野氏のおふたりしか目を通し続けてくださらない状態だが、旧知の天野氏のみならず、カクヨムで初めて知ったすらかき氏に毎回チェックしていただけるのは、望外の喜びである。

 すらかき氏の発表する古雅な作品から察するに、もしや、かなり年輩の方なのだろうか。
 最初の頃に食いついてくれた推定お若い方々も、狸世代の古物パロディーを連発するうちに「なんじゃこりゃ」「パロ元が不明でわけがわからん」と、ひとり残らず離れてしまったようだが、すらかき氏は、たぶん、ほとんどのパロ元を知っていらっしゃる世代なのではないか。

 いずれにせよ、あれだけ明治以前の日本語を使いこなし、万葉調まで自家薬籠中のものとしている方が、どこまであんなロリおたでトンデモな猫話につきあってくださるか、この先が不安ではある。

 いや、もしかしたら、氏にはまったく畑違いの、しかし好奇心の対象としては無視できないロリおたトンデモ猫話を、氏には同調困難と思われるヤングなラノベ調ではなく、老人流儀の戯文として表現しているから、氏にも同調可能となり、好奇心が満たされているのかもしれない。

          ◇          ◇

 さて、読者数は数名にも満たないが、狸の趣味でちまちまと打ち続けているシリアス怨霊伝奇物件も、なんとか生きている内に、完結させたいものである。


11月01日 水  夏は来ぬ

 明日から、また夏が来るそうだ。
 しかし、嘆くまい、バテるまい。
 狸よりずっと年長なのに、立ちっぱなしで元気に歌っている方々も、いらっしゃるのである。

     

 このお三方が、元気に立って歌っているうちは、世界も滅ぶまいと思う。