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05月12日 日  雑想

 徘徊の途中、歩道橋の上で足を休めながら、ウスラボケっと外環の車列を眺めていたら、近頃、自動車というものが、やたらと攻撃的に見えてしまう理由に思い当たった。
 近頃の新型車の多くが、怒りに目尻を釣り上げて、歯を食いしばりながら走っている。
 実際は、ライトを含めたフロントのデザインによって、一見そんな感じに見えてしまうだけなのだが、車をデザインする方々だって、そう見えてしまうことを承知の上で、わざわざそうデザインしているに違いないのである。

 昔の乗用車は、ほとんどが、もっと柔和なデザインであった。
 かなりゴツめの乗用車、あるいはトンガったスポーツカーでも、ライトあたりの目つきは、たいがい柔和に仕上がっていた。
 デザインする側も、当然、そのほうが売れるから、そう作っていたはずである。
 しかし今は、目尻を釣り上げて、歯を食いしばっているような顔の車が売れるらしい。
 無論、ファミリー向けの軽乗用車などは、今でも人のいい顔をしているのだが、いかんせん、多勢に無勢である。

          ◇          ◇

 ケーブルで録画しておいた、ブラピの『ブレット・トレイン』を観た。
 あらゆる意味でハチャメチャな、殺し屋だらけのスラップスティック犯罪コメディーで、腹いっぱいになりすぎて、しまいにゃ吐き戻しそうになった。
 それでも楽しくイッキ見できたのは、絶妙に人間的な殺し屋たちと、いい具合にユルんだブラピの演技と、パズルのようにきっちり組まれたシナリオのおかげである。

 原作は日本のミステリーらしいから、パズル的な整合性は原作由来なのだろうが、おとぼけモードのブラピの個性がなかったら、途中で吐き戻していたかもしれない。
 元ヤクザの剣豪に扮した真田広之さんも、スラップスティック映画と心得た上で、あくまで大真面目に演じているのがいい。

 コロナのせいで日本ロケができず、全部あちらのセットやCGで再現(?)した日本が、それはもうハチャメチャで笑えると事前に聞いていたから、それも楽しみにしていた。
 なるほど、そんな噂どおり、笑い転げるほど妙ちくりんで、それでも妙に血の通った、ホットなジャパンであった。
 しかし、日本に縁のない海外の観客が、こんなジャパンを期待して来日したら、さぞかしがっかりすることだろう。

 それにしても、舞台となる新幹線が『ゆかり』ってのは、元祖『ひかり号』のシャレだろうとは思いつつ、プレートが写るたんびに「おいおいおい」と脱力してしまった。

          ◇          ◇

 ところで、狸がカクヨムに連載中の大長編伝奇物件を、ここまでの八十何回ぶん、テキストにして25万字弱、一日で突っついて下さった方がいらっしゃるようだ。
「おいおい、ほんとに読んでくれたのかよ」と、首をひねりつつ――。

 ――いや、待てよ。
 今時のパソコンとネット環境なら、それこそ何十回ぶんでも、瞬時にダウンロード可能なわけである。
 大昔、亀のようなパソコンとテレホーダイしかなかった頃、リンクを選んでダウンロードできるソフトを使って、一晩かけて御贔屓の方のページをまるまる保存し、後日、オフラインでゆっくり目を通したりしていた狸自身を鑑みれば、そう不自然な数字ではない。

 どうか愛用のテキスト・ビューワーでも使って、読みやすい形で、のんびり目を通していただきたいものである。


05月05日 日  子供の日

 端午の節句なので、柏餅を食った。
 江戸川の菖蒲園で、鯉幟も眺めた。
 菖蒲湯には入れなかったが、森の香りの入浴剤で、それなりにハレの気分を味わった。
 もう思い残すことは何もない。

 でもやっぱり柏餅はうまかったので、ちょっと思い残している気がしないでもない。
 来年は、味噌餡の柏餅を探して食いたいと思う。

 ところで味噌餡の柏餅、以前は近所のスーパーでも売っていた気がするんだが、今年は見つからなかった。
 見つからないと言えば、近頃、スーパーでカレー饅を見かけない。
 以前は中華食品コーナーに、たいがい肉饅と餡饅とカレー饅が並んでいたものだが、なんでだか近頃は、カレー饅だけハブられてしまったようだ。
 コンビニと違って、薄利多売が必須なスーパーのこと、売り上げ順にアイテムを絞っているのだろうなあ。
 そして残ったアイテムも、じわじわと値が上がり、利が薄い商品は店頭から消えてゆく。
 店頭に欠かせない定番商品も、ステルス値上げが止む気配はない。

 ……ああ、いかんいかん。
 子供ならぬ老狸ゆえ、子供の日にも、つい愚痴をこぼしてしまう。
 せっせと徘徊していれば、甍の波も雲の波も鯉幟も、まだロハでなんとか見られるのだから、それでヨシとしよう。


05月02日 木  ちょっとつぶやく

 夏になったり冬に戻ったりで、また咽頭炎が疼きだす。
 狸の肉体は、本当に老いてしまったのだなあ。
 まあ、若い頃より悪化しにくいのが救いである。

          ◇          ◇

 しかし青空文庫の猫耳物件だけが、なんでアクセスが増えていくのだろう。
 検索ロボットか何かが悪戯しているのかと思ったが、他の作品のアクセスは、まったく増えないのである。
 うん。カクヨム版が呼び水になったんだと、肯定的に解釈しとこう。

          ◇          ◇

 『科捜研の女』つながりで、近頃、内藤剛志さんが刑事役を演じる国産ミステリードラマの旧作にハマり、西村京太郎さんや今野敏さんの原作小説も読んでみようかと、図書館で覗いてみたりするのだが――。
 あかん。文体と波長が合わず、読み続けられない。おまけに原作の十津川警部や樋口警部、ドラマの内藤剛志さんとは別人だし。
 まあ、原作ファンの方は、また別の尺度で見るのでしょうね。
 ドラマだって、いや十津川警部なら誰それさんのがいい、とか。