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09月29日 日  ちいさい秋みつけた

 今週は36時間程度の秋を実感できた。
 昼は天高く夜も湿度の低い爽やかな秋の日が、ほぼ一日丸々あった。
 翌日も昼までは爽やかであったが、午後には南から湿った風が再来、気温はさほど上がらなかったものの、軽作業中の発汗は避けられなかった。

 昨日は、久々に鎌倉界隈を徘徊して、やはり発汗を避けられなかった。
 でもまあ久々に姉に会って、久々に立派な鰻重を奢ってもらえたので、良しとしよう。
 思えばコロナ騒動を間に挟んで、ほぼ5年ぶりの神奈川訪問、姉弟再会である。
 まあメールやら電話やらで連絡は取り合っているので、さほど間を置いた実感はなかったのだが、さすがにお互い老齢のこと、面と向かえば「うわ」と思うほど皺も白髪も増えており、経年変化を実感した。お若い方々と違って、写メなどはまったく交わさないからである。

 思えば、まともな鰻にありつくのも数年ぶりだった。
 ちゃんと鰻の味がする専門店の焼きたての蒲焼は、やはり何物にも代えがたい。
 白髪が増えようが皺が増えようが、舌には皺もよらず白髪も生えない。

 老姉弟の顔貌同様に、季節もまた怒涛のイキオイで晩秋に向かうことを切に願う、北方亜種の狸である。

     


09月22日 日  少しは私に秋をください

 週末には秋らしくなると聞いていたので心待ちにしていたのだが、深夜から明け方にかけて気温だけはギリギリ熱帯夜を免れたものの、大気をみっしりと蒸らすような湿度だけは寸刻もゆるまず、秋分の日の今日も、日が昇ったらたちまち夏日になった。
 明日こそは昼夜ともに秋になるという予報もあるが、残念ながら湿度はしっかり高いまんまらしいので、個狸的には、とても秋とは呼べない。

 もはや、明後日に賭けるしかあるまい。
 その賭けにも負けたら、潔く全てを諦めて、「きええええええええ!」とか奇声を発しながら江戸川の土手を疾走しようと心に決める今日この頃、皆様方におかれましては、いかがお過ごしのことでございましょうや否や!!

          ◇          ◇

 ケーブルテレビの録画機能付きチューナーが突然ウンともスンとも言わなくなり、ああこりゃハードディスクが熱中症で死んだな、と覚悟しながら業者を呼んだら、この夏はあっちこっちからお呼びが掛かりすぎて、週末まで待ってくれと言われてしまった。
 まあそんなもんだろうと予想していたので、別段、悔しくもなんともない。
 かなり大型の冷却ファンを内蔵したタワー型パソコンさえ、エアコンがなければたちまち警告音を発する今夏である。こんなちっぽけなチューナーに、まともな冷却機能があるはずもない。当然、あっちこっちで片っ端からお亡くなりになっているはずである。

 しかし、さらに厄介な問題が、ひとつ。
 現在使っている旧型のチューナーは、すでにメーカー修理不能なので新型に交換する――そんな説明を聞いているうちに、その新型はHDMI出力にしか対応していないと判明したのである。
 つまり、狸穴の骨董級ブラウン管テレビには繋ぎようがない。自前で変換アダプターを用意すれば繋げないこともないが、安物だとまともな映像が出ないのは周知の事実である。
 結局、今回逝ったのと同じ型の予備機を、持ってきてもらうことになった。
 どのみちレンタルの回収品、来年の夏を越せずに、またお亡くなりになるのは必定である。
 テレビを買い替えればいいだけの話なのだが――まだちゃんと映るんだよなあ。

          ◇          ◇

 昔の純国産家電は、本当に保ちがいい。
 中森明菜嬢の猫伸びCMに惹かれて、藤岡で買ったオーディオコンポなんぞ、40年近く鳴り続けている。さすがにカセットテープデッキは動かなくなったが、他にはなんの異常もない。
 思えば高崎で買った扇風機も、30年以上回り続けた。その次に買ったドンキの中国製は、2年で支柱が外れた。


09月15日 日  夏本番

 いやあ、いよいよ夏ですね。
 楽しみだなあ。花火大会、盆踊り、町内ラジオ体操のスタンプを集めてもらえる鉛筆、場末の映画館の怪談大会――。

 町内のお年寄りに「次の日曜は湯の浜に海水浴に行くんだ!」とか言うと、「そうかい、潮浴びに行くのかい」とか言われて、「シオアビ?」
とか聞き返したりするのね。

 夏休み、まだ半分も残ってるもんな。
 まだ8月15日だもんな。

          ◇          ◇

 ……ことほどさように、錯乱して幼児期の夏休みに戻ってしまうほど、今週も完全無欠な猛暑であった。

 週初めに仕事にありついた時など、馴染みの日雇い仲間が、ただ立っているだけで狸同様に汗でびしょ濡れになり、「こりゃ今年一番の暑さだよなあ」とボヤいていた。
 彼は、何年か前に「こんなに大量の汗をかける人間は生まれて初めて見た」と、狸にあきれ顔で言い放った男に他ならない。その彼にしてからが、狸と同量の汗を垂らしまくっているのである。
 まあ、外はかんかんの晴天でありながら、梅雨時と同じ湿気があるので、狸ならぬ人間としても、ごく自然な反応なのだけれど。

 ちなみに気温が摂氏30度を超えると、人間が快適に生きられる環境は、湿度がたったの20パーセントなのだそうだ。
 冬なら異常乾燥注意報が出るような湿度でないと、真夏日には快適に生きられないのである。
 まして猛暑日においておや。
 亜熱帯どころか、大アマゾンの熱帯雨林の奥底で、なんでだか炎天に晒されている――そんなのが、まさに今夏の日本なのであった。

          ◇          ◇

 ところで、狸よりちょっと年下のその日雇い仲間は、かつて狸が年金の早期受給を始めた時、「俺たちが払ってる金で、マシな暮らしができるなんてズルいよなあ」と冗談を言った男でもあるのだが、今は彼自身、早期受給を決めたそうだ。
 景気は回復に向かっているだのと盛んに主張する、お育ちのおよろしい痔民党の方々は別状、貧民の可処分所得は、依然として物価高に飲みこまれるがままである。
 早い話、駄菓子屋の酢イカの小袋すら、中身のグラム数は減る一方なのだ。
 米不足はもうすぐ解消される、そんな事も、お育ちのおよろしい痔民党の方々はおっしゃるが、出回り始めた米の価格は、依然として高価なままである。

 公の場ではヘイト発言を控えている狸も、この狸穴の中だけでは、本音を洩らさせていただく。
 総裁選でお祭り騒ぎの、お育ちのおよろしい痔民党のお偉い方々、今夜の就寝中に全員「う」とか呻いて心臓を抑えてそのままご逝去あそばされても、狸はうなずきながら黙って新聞を読み終え、無表情を保つ自信がある。

         ◇          ◇

 ……いかんいかん。
 なんの憂いもなかった幼児期の夏に戻るのは不可能にしろ、お先真っ暗な予備校時代の夏、仙台のデパートでお目にかかったロリ盛りの可憐な少女たちの面影くらいは、胸に蘇らせて明日に繋げよう。

     

 でも、まさか真由美ちゃんが、狸より先にお亡くなりになってしまうとはなあ。
 彼女の代わりに、総裁候補の全員が、夜中に「う」とか呻いて心臓を抑えて――しつこい?


09月08日 日  小さい秋が見つからない

 毎回毎回、同じボヤキばかりで恐縮しつつ――。

 今週も、ほんの二三日、最高気温が30度を下回ったが、湯気のような湿気は、一秒たりとも抜けてくれない。
 たとえば明け方ちょっと前の、最も気温の低い時間帯ですら、外気と同じ環境で軽作業をしていると、たちまち全身ぐっしょりになり、二度と乾かない。
 ツイッター、いやエックスを見る限り、すで日本のあちこちで秋の青空が出現しているようだが、残念ながら東京湾岸では、青空のごく低いあたりを、下半分が不吉に黒い雲が、のたのたと流れたりもしている。
 今後は当分、真夏日と熱帯夜に戻り、今年の夏がいつ終わるのか、気象予報士のおねいさんも予測できないようだ。

 ――でもまあ、そうとあっては仕方がない。
 北方亜種の狸としては、起きているんだか狸寝入りしているんだか判然としない状態で餌を探し回りながら、サワヤカな秋とキビしい冬を待ちわびるばかりである。

          ◇          ◇

 カクヨムの野薔薇物件(旧作を再推敲した中編)に、猫村様がレビューを寄せてくださった。ありがたいことである。
 新作の怨霊物件も、ちまちまと打ち進めてはいるのだが、なにせ脳味噌が半生状態なので、いつ次章に区切りをつけられるのか見当もつかない。
 いっそ、次章の半分だけ更新してしまおうか、とも思う。
 とにかくまだまだ続いております――そんな意思表示をしとかないと、先が長いだけにヤバそうな気がする。

          ◇          ◇

 天野様の夏の新作SF、爽やかに楽しませていただいた。
 自律型AIのほうが地球人より穏健で平和主義であるという趣向、狸も大いにうなずける。願望ではなく必然として。
 合理性と整合性において自律できるAIならば、必然的に仏性を獲得するはずだ。

 合理性より自分の感情、特に欲望を最優先させてしまうのは、しょせんケダモノの一種にすぎない地球人の宿痾である。
 今現在のハンパな生成AIなんぞも、生成させているのがあくまでハンパな地球人だからこそ、色々とっちらかっているのである。


09月01日 日  残暑ヤケクソ申し上げます

 わははははははは。
 ようやく気温だけは下がってくれるかと思ったら、また上がりまくるようですね。しかも湿度は、ず〜〜〜〜っと小ゆるぎもしないまんま。
 HNK特集や、気象予報士のおねいさんの解説によって、その原因はすっかり理解できた。
 理の当然、それだけの事なのである。
 しかし、知性が納得したからといって、肉体はヒトカケラも納得してくれない。
 なにせ湿度がほぼ100パーセントのまんま、太陽まで照りつけたりするのである。

 正味の話、こないだ夜勤にありついた日の未明、ロジの外で凄まじいゲリラ豪雨が始まり、「仕事が終わるまでには落ち着いてくれんかなあ」などと皆で愚痴りあった後、いざ終わって外に出たら、空はすでにきれいさっぱり晴れ上がり、広大な水たまりと化した駐車場にカンカンの朝日が照り付け、見渡せる限りの視界が、白い湯気に覆われていた。
「俺たちは蒸し器の中のシューマイじゃねえぞ」などと愚痴りあいつつ、送迎バス発着場に向かってわずか200メートルほどを歩く間にも、全員アツアツに蒸しあがり、お湯もしたたるいい男になってしまう老若の非正規労働者たちなのであった。

 熱中症や、洪水や土砂崩れで命を失う方々を思えば、愚痴をいうのも恥ずかしいのだけれど……。
 狸はマジに限界です。
 体の節々が痛い。頭も痛い。どうやら微熱もある。

 それでもまだまだ高温多湿が続くと断言してくれる気象予報士のおねいさん、どうか狸を慰めてください。
 慰めの言葉が、嘘でもいいですから。