[戻る]

12月31日 水  行く年

 来年は金がかかりそうなので、今朝方まで夜勤に出てきた。
 で、来年の仕事の予定は、今のところ5日のみ。
 それ以降の予定は、毎年恒例、来年になってみないとわからない。
 まあ、狸の先行きなど、ウン十年前からずっと不透明、有り体に言えば、北極点の真冬の極夜なのである。
 極夜の中で明日の青空を望むほど、狸も粗忽ではない。

 それでも年越し蕎麦と海老天は調達できたし、ちまちまおせちも雑煮の準備もできた。
 現在の口座残高に今月分の日銭が振り込まれれば、来月のアレコレも注射代もなんとかなる。
 仮にそれっきり一文なしになったとしても、姉の歳末援助物資があるから餓死はしないし、二月には年金が入る。
 つまり、少なくとも三月までは、死なない限り生きている勘定なのである。
 狸も丸っきりの馬鹿ではない。

 さて、録画中の『年忘れ にっぽんの歌』でも見ながら、新年を迎えるとしよう。
 紅白は、あとから早送りでチェックすればいい。

          ◇          ◇

 そんなこんなで――。
 ここを覗いていらっしゃる、ごく少数の奇特な皆様、今年もお世話になりました。
 来年もよろしくお願いするほど生命力に自信のない狸ですが、力尽きるまでは、皆様の御健勝をお祈りいたします。



12月24日 水  プレゼントは目玉に注射

 大学病院で、一回目の硝子体内注射を受けてきた。
 屈強な看護士たちが数人がかりで狸をベッドに押さえつけ、女王様姿のサディスティックな女医さんが冷たい笑顔を浮かべながら、狸の瞳にぶっとい注射針をブスリと……。

 ……んなわきゃねーだろう、おい。

 ちゃんと看護婦さんが消毒用の点眼薬や局所麻酔用の点眼薬を垂らした後、まぶたを固定された右目に、女医さんが毛髪程度の太さの針を通すだけなので、一瞬チクリとしたようなしなかったような、くらいの感覚でした。
 もっとも、注射されたのは白目の部分なので、狸自身が『毛髪程度の太さの針』を視認できたわけではありません。あくまで女医さんによる例え話です。

 ちなみにYOUTUBEで眼科医さんの動画を探したら、これが狸の受けた説明と一番近かった気がします。

     

 狸が患ったのは『網膜静脈閉塞症』による『黄斑変性症』。ただし、やはりほっときゃなんとかなるレベルではなかったので、今後、経過を見ながら四週間おきに眼底検査と硝子体内注射を受けた後、症状が安定してきたら注射の頻度を減らす、そんな感じらしいです。

 問題は――そう、検査費と薬価を合わせると、三割負担でも、ほとんど一回五万円。
 いわゆる高額医療費が適用されても、ほんの一部しか戻ってこない。
 これを何回繰り返すことになるか、それは神のみぞ知る。

「クリスマスなんだから一発で治してください」――。
 などと、いくらサンタクロースにお願いしても、「おまえ、俺に何か頼める立場か? お釈迦様に頼めばいいだろう」と、天からの声が返るだけである。

 そしてお釈迦様は、「この世界も網膜静脈も黄斑も、すべては無常。生きること自体が苦。ならば、おまえが盲目になってもならなくとも、盲人への慈悲をあまねく悟りなさい」と、狸を優しくなでてくれるだけである。
 それでも、どこぞの造物主のように、いきなり世界を水浸しにしたり、自分に従わない奴を残らず地獄送りにしたりはしない。

          ◇          ◇

 ころりと話は変わって、本日の大学病院の眼科外来は、歳末だからか大入り満員。
 狸は午後三時半から四時の予約をとっていたのだが、それ以前の予約客が受診を終えた頃にはすでに六時過ぎ、狸の治療が終わったのは午後七時半過ぎ。
 大学病院の会計は、断固として六時に終了してしまうので、それ以降の会計は、次回にまとめて清算するとのこと。
 結果、銀行でおろした大枚はそのまま持ち帰ることになったのだが、どのみち来月には消えてなくなる。

 それでもいつもよりゴージャスなチキンは食えたし、年越し蕎麦にも海老天の二本くらいは乗せられそうだし、ちまちまおせちと雑煮の材料を揃えるほどの金は確保してある。
 日銭の実入りが物価の上昇に追いつかなくとも、多くの貧困国に比べれば、この国はまだまだ豊かなのだ。
 そして狸も、まだ足腰が立つ。

 余談になるが、治療後に右目を眼帯で覆われたため、帰穴時のラッシュの中、駅の階段で何度も足を踏み外しかけた。
 片目だと、遠近感がまったくつかめないのである。足元も、他人との距離も。 
 片目だけでもこうなのだから、両目が見えない方々は、どんなに辛かろう。
 これも、お釈迦様のお導きに違いない。

 まあ、サンタクロースやキリスト様だって、目の不自由な方には優しかろうが、てっぺんの親玉は、いささかあやしい。 



12月18日 木  師走の狸走

 右目のマダラボケが改善している自覚はなく、来週には超ゴージャスなプレゼントを網膜に届けることになりそうだ。
 とはいえ、クリスマス・イブなのだから、いつもよりゴージャスなチキンも食いたいし、年越し蕎麦にはいつもよりゴージャスな天麩羅を乗せたいし、正月にはチョンガー向けのちまちまとしたおせちも、まともな雑煮も食いたい。

 と、ゆーわけで、狸はせっせと稼ぎ続けねばならない。

          ◇          ◇

 結果、カクヨムに連載中の怨霊物件は、年末年始の更新を断念した。
 それでも人並みに、いや狸なりに自己顕示欲はあるので、冬向きの旧作短編を推敲し、投入しようかと思っている。

 しかし、怨霊物件の前回更新分のラストだけが、あいかわらず毎日毎日、1PVずつ増えてゆく。
 どんなシステムの仕業なのかは不明だが、このままだと、それ以前のPVが4とか5で、ラストだけ100超えになりかねない。

 まあ、そんなことを気にするのは狸自身だけなのだけれど、お願いだからロボット君、全回をまんべんなくつっついてはくれまいか。
 読んでいようといまいと、人にもロボットにも、それくらいの優しさはあってしかるべきだと思うが、どうか。



12月11日 木  実はそれほどヤバくないような、でもやっぱりヤバいような

 月曜は近所の眼科医院で『眼底出血』と聞いてかなりビビったが、本日、大学病院で判明した病名は『網膜静脈閉塞症』であった。
 つまり、網膜上の微細な静脈の一部が詰まって血流が漏れ出し、赤い糸状に固まっていたわけである。
 現状の微細さだと、これ以上無暗に固まりまくるわけではなく、代謝によって患部が自然治癒する可能性もあるそうだが――。

 問題は、いつになったら自然治癒するか、である。
 余分な水分による網膜のむくみが解消しない限り、狸の右目の視界は、部分的に歪んだままなのである。
 つまり、間が悪いと狸は長期間、貞子の犠牲者の顔を見続けねばならない。

 幸い、現代医学は加速度的に進化しているから、眼球の硝子体内に注射して回復を促す薬品もあるそうだが――。
 驚くなかれ、検査と薬価を合わせれば、注射一回で、ぬわんと五万円。三割負担でも五万円ですよ。

          ◇          ◇

 しかし、背に腹は代えられぬ、とゆーわけで、クリスマスイブに初回の予約がとれた。
 その日、まず改めて眼底を検査し、自然治癒に向かっていれば、とりあえず様子見。
 自然治癒の気配がなければ、自分へのプレゼントとして、まず五万円を投入。
 ただし、それ一回で回復する保証はなく、前例では、月に一度の注射を複数回重ねる患者も少なくないらしい。

 わははははははは。
 高額医療費って、ひと月なんぼでしか計算してくれんのよなあ。
 なんぼかは戻ってくるにしろ、血圧と血糖関係の医療費も鑑みるに、戻ってくるのはほんの一部。
 十何年前のヘルニアは、同じ月のうちに手術と二週間入院をこなしたから、後日、かなり戻ってきたのである。

 ……でもまあ、今は年金が入るだけ、良しとしよう。
 この国の国民保険が、まだ破綻していないだけ、良しとしよう。
 今回、狸を担当してくれたのが、なかなかフメる女医さんであったことも、良しとするにやぶさかではない。

 そういえば十何年前、マクワウリなみに巨大化した狸のキ●タ●袋を最初に診てくれたのも、まだ若い女医さんであった。



12月08日 月  ちょいヤバ狸

 先週あたりから、右目が部分的に霞んでいるのに気づき、本日、駅近くの眼科で検査してもらったら――。
 ぬわんと、右目に眼底出血が見つかってしまった。

          ◇          ◇

 そもそも眼科にかかるのは、小学校の頃に結膜炎をやった時以来なので、診療技術の進化には驚愕した。
 目薬で瞳孔を開き、眼球内の写真をあっちこっちの角度から撮りまくり、短時間の内に3D解析までできる。

 右目の網膜の画像を見ると、確かに左目には見られない赤い糸のような部分があり、それが出血部分である。
 ちっぽけな糸先のくせに、それが原因で網膜に水がたまり、視野の異常に繋がるのだそうだ。
 確かに、左目の網膜表面を3D解析で横から示したものと、右目のそれでは、右目が明らかに厚く、波打って見える。
 医師の所見によれば、緊急手術が必要なほどではないが、どうやら先週どころの発症ではなく、それ以前からじわじわ進行していたらしい。

 ちなみに左目にも緑内障の初期症状が見られるとのことだが、今のところ視力の異常は自覚できないし、その眼科でも、正月明けからゆっくり治療すればいいレベル。
 その左目が、遠近両様眼鏡によってしっかり見えすぎ、かえって右目の異常に気づくのが遅れたらしい。
 確かに昔から、矯正視力も左のほうが優秀で、右目の衰えを補っていた。

 どのみち眼底出血の治療は、眼球への薬剤注射が必要なので、市井の眼科医院では対処できず、以前ヘルニアで開腹手術したことのある大学病院に、紹介状を書いてもらった。
 明日には予約を入れる予定だが――さて、今後の狸の運命やいかに。

          ◇          ◇

 まあ、最悪、右目が弱視のままでも、左目をこれ以上悪くしなければ日常生活は可能なわけだが、子供のころから愛好していたステレオ写真を見られなくなるのは、ちょっと残念である。
 ビューマスターのリールはけっこうコレクションがあるし、1950年代のステレオカメラでせっせと撮影した、自前のステレオペアも大量にある。
 でもまあ、ここ数年はしまいっぱなしだから、それもまたこの世と同じ無常、そう割り切れないことはない。

 むしろ問題は、懐具合である。
 家賃や光熱費は、いくら狸が「無常だから気にしないでください」と哀願しても、先様は「そうだね、無常だから気にしないよ」とは言ってくれない。
 いっそヘルニアの時ほど治療費がかさめば、後日、高額医療費として戻ってくるのだが。

          ◇          ◇

 ところで現在、右目の視界全体がぼやけているわけではなく、網膜の表面が水ででっこまひっこましているぶん、よく見える部分と見えない部分がある。
 その見える部分と見えない部分の境目が、上下左右に微妙にズレている。

 こうしてテキストを打っているだけなら、輪郭が明瞭なぶん、脳味噌が左目を優先してくれるので問題ない。
 ところが、仕事場やら買い物中やら、その微妙なズレに人様の顔がかかると――。
 貞子の呪いで、もうすぐ死ぬ人の写真――そんな歪みが生じて、ドキリとすることがある。

 まあ、よほどタイミングが悪くないと、そこまで怖くは歪まないんですけどね。



12月01日 月  そのうち誰もいなくなる

 狸の私見だと、もはや世界中の大国の多くが大ボラ吹きの詐欺師に支配されている訳だが、我が国はすでに大国の座から滑落しているので、大ボラ吹きの詐欺師に支配されているという現実を国民の過半数が支持していようといまいと、世界的には大した影響がない。
 国民の経済格差がひたすら拡大してゆく中、騙されていた国民が「……あれ、なんかおかしくね?」と気づいた頃には、今現在そこそこの生活ができている方々も、そこそこ以下の生活水準に落ちているだけの話である。

 でもなあ。
 やっぱり戦争だけは、やってほしくないのよなあ。
 過去の戦争も今日日の戦争も、貧しい若者から先に死んでゆくだけだ。

          ◇          ◇

 以前、原始仏教的な利他主義こそが平和への道、とここに記したが、正確には利己主義でも利他主義でもなく、無常の世においては自分も他者も等価の存在、ただそれだけのことである。
 それこそが、狸の憧れる「うにょうにょごにょごにょ慣れ合い慣れ合い」の世界、すなわち全世界の猫鍋化なのである。

 どのみち人類も、猫と同じただの生物種、わざわざいがみ合わなくたって、そのうち絶滅するのだ。